鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

秋草図目貫 後藤光来

2010-03-05 | 目貫
秋草図目貫 銘 後藤光来


秋草図目貫 銘 後藤光来

 元来は揃金具とされていたものであろうが、後藤光来(こうらい)の目貫のみを鑑賞することができた。多彩な色金を組み合わせ、岩をも添えて野の一場面として描き表わしている。彫刻表現が、より緻密に、より繊細になっていることが理解できよう。この目貫の大きさは、左右がわずか30ミリほどである。苔生す岩は素銅と朧銀、これに蔓を這わせる昼顔、岩の下には笹があり、菊と女郎花、薄が顔をのぞかせている。菊花と女郎花の小さな花の集まりを、鮮やかな金の粒の集合で表現しているところに新しさがある。ただし、岩を描くことは揺るぎない存在感を暗示しているもので、武家に好まれた画題の一つでもある。単に華やかだけでなく武家としての存在感、その中に清楚な美空間が楽しめる作品である。
 後藤光来は後藤一乗の次男で、文政十一年の生まれ。一乗の補佐をして京都と江戸を往還、装剣小道具の製作よりも他の職務に追われていたのであろうか、作品は少ない。