鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

牡丹に雪笹図鐔 埋忠彦左衛門

2020-02-29 | 鍔の歴史
牡丹に雪笹図鐔 埋忠彦左衛門


牡丹に雪笹図鐔 埋忠彦左衛門

写真を間違えました

 埋忠明寿の門流で、京都に栄えた金工の一人。以前にも紹介したことがあると思うが、とても洒落た意匠の作品。切羽台の周囲に金銀の布目象嵌で牡丹を文様表現している。これだけでも完成度が高いのに、陰の表現で雪の積もった笹を透かしている。主題はどちらなんだろう。このように思いを廻らしてしまうほどに、文様美に加えられた透かしは印象的な平面を生み出す。寒牡丹。唐草文。雪笹。なんて素敵なんだろう。

雪輪に傘図鐔 正阿弥 Shoami Tsuba

2020-02-29 | 鍔の歴史
雪輪に傘図鐔 正阿弥


雪輪に傘図鐔 正阿弥

すいません 写真を間違えました

 鉄地透かし鐔。陰陽の透かしによって雪輪が構成されている。この洒落た感じは江戸時代に入って以降のものであろう。雪輪とは、ボタン雪のようにほんわりとした雪を印象的に文様化したもの。江戸時代中期以降に流行した雪の結晶模様とは異なり、それ以前に普通に雪の様子として、あるいは雪を表現するものとしてこの形状が用いられていた。着物の図柄としても採られている。傘が肉彫地透で、その上に降り積もっているわけではないが、もくもくと降り落ちてきている様子が、見事に文様表現されている。


菊花透かし図鐔 Kamakura Tsuba

2020-02-27 | 鍔の歴史
菊花透かし図鐔


菊花透かし図鐔 

 陰陽に表現している作だが、菊花が大きな見どころであろう。大胆にも、半分だけ菊花としている印象深い構成である。櫃穴の周囲に小さな透かしを設けて左右非対称の美観を強めている。かなり計算された作品だが、この作者についてはよく判っていない。いわゆる鎌倉鐔(昔の先生が鎌倉彫に似ているからと命名したようだ)で、薄肉彫り部分にわずかに金の布目象嵌が施されている。製作された時代も不明で、おおよそ桃山頃とみられているのだが、この時代に、好き嫌いはあるが埋忠明寿を超すのではないかとも思えるほどの感性を示した鐔工がいたことの面白さがある。

宝珠図鐔 埋忠明寿 Myoju Tsuba

2020-02-26 | 鍔の歴史
宝珠図鐔 埋忠明寿


宝珠図鐔 埋忠明寿

 江戸時代における金工の発展は、後藤家やこの埋忠明寿などが基礎にあると言ってもよいだろう。殊に明寿は、桃山頃に登場した琳派の美意識を背景に文様美を追求した金工である。以前に紹介したことのある、素銅地に九年母を墨絵のように表現した鐔が良い例である。この鐔は鉄地だが、地に変化をつけてこれを景色とし、文様を片切彫と布目象嵌で表し、さらに陰影でも透かし表している。透かしを大きくとるのではなく、小透と呼ぶ程度なのだが、画面に活かしている。この組み合わせに妙趣が感じられる。ただ眺めているだけでも飽きない。地の動き、文様の動き。不思議に満ちた作品でもある。

法螺貝図鐔 正阿弥盛国 Morikuni Tsuba

2020-02-25 | 鍔の歴史
法螺貝図鐔 正阿弥盛国


法螺貝図鐔 正阿弥盛国

 伊予正阿弥派の金工。表は素銅と赤銅の混ぜ金で、その波状の文様を活かし、法螺貝もまた文様を突き詰めた装飾性の高い作。裏は鉄地で、透しがわかり易い。貝殻つながりで紹介したのだが、透かし模様は鐔において装飾技法の上において大きな意味合いを持つことはたびたび紹介してきた。図柄を陰影に表現するものを陰透かしという。この場合は、陰陽を組み合わせていると言うべきか、地の斑模様も面白いが、透しの構成美も楽しめる。表裏の装飾が異なる点での表裏の違いは前に紹介した政徳の鐔が良い例だが、このような素材の違いは極端な例ではあるものの、奇抜さが極まっている。

貝殻玩具茄図鐔 正阿弥政徳 Masanori Tsuba

2020-02-22 | 鍔の歴史
貝殻玩具茄図鐔 正阿弥政徳


貝殻玩具茄図鐔 正阿弥政徳

 貝殻に紐が結わえられている。これが何だか良く分からない。このような物体を犬がくわえて遊んでいる図があることから、玩具と考え、古い文化に詳しい方に聞いたのだがご存じないと言う。今は存在しないのかもしれない。表裏全く異なる図柄としている点が興味深い。透かし鐔だと表裏の図を揃えざるを得ないのだが、透かしに影響されなければ全く異なる図柄や文様として仕立てることができ、一枚を掛け替える楽しみも生まれる。果たしてそれだけだろうか。何か意味があるのではないか。何しろ裏の茄が波にもまれている図は普通ではない。意味が分からないのが悔しいのだが、とにかく面白い。…装剣小道具だけではないのだが、古い器物に描かれている図柄を鑑賞するという点では、このような楽しみ方もあるということだ。

雛飾りに蛤図鐔 吉岡因幡介 Inabanosuke Tsuba

2020-02-21 | 鍔の歴史
雛飾りに蛤図鐔 吉岡因幡介


雛飾りに蛤図鐔 吉岡因幡介

 ひな祭りの頃(旧暦)は、潮干狩りの季節でもあった。下の目貫も同じ季節観が示されている。貝は蛤。蛤の貝殻を合わせて遊ぶ「貝合わせ」などは香ともかかわりがあり、雅な風情が漂う。そのような季節観がテーマとなっている。時代は江戸後期、古作に見られる貝尽し図とは印象が異なるも、背後にはやはり自然が与えてくれる豊かさに感謝の念が示されている。下の目貫は、表が桃の節句で、裏が端午節句。

節句図目貫 野村正英

浜辺に貝図鐔 満重 Mitsushige Tsuba

2020-02-20 | 鍔の歴史
浜辺に貝図鐔 満重


浜辺に貝図鐔 満重

 満重は江戸後期の江戸の金工。デザイン、構成、高彫色絵の技術も高い。魚子地を砂浜に擬えているのであろう、製作の意識は古金工などと同じところにあるのだろうが、はるかに彫刻技術も優れて写実的であり、洗練された絵画となっている。特に波の使い方がいい。
下の鐔は特に時代の上がる作。古拙というべきか、魚子地も揃わず、江戸時代の優れた彫刻とは趣を異にする、別種の味わいがある。古作としての面白さであろう。鐔の耳際に岩場を想わせる部分がある。鮑であろうか貝の表現も一様であり、時代も上がるように感じられる。

藻貝図鐔 古金工

藻貝図鐔 貞栄 Teiei Tsuba

2020-02-19 | 鍔の歴史
藻貝図鐔 貞栄


藻貝図鐔 貞栄

 鉄地に砂張象嵌の手法で表現した作。下も同じ手法による間の作。特に砂張独特の質感が活かされているというわけではないが、間派らしい文様表現である。
 間派の鐔のデザインは表裏全く異なることがある。下の図は藻と貝であっているのだが、上の貞栄の鐔は、藻貝と粟穂に兎で、仮に意味があるのであればそれが判らない。でも頗る面白いから深く追求しない。




鮑図鐔 越前記内 Kinai Tsuba

2020-02-19 | 鍔の歴史
鮑図鐔 越前記内


鮑図鐔 越前記内

 記内の鐔工にまま見られる貝殻図。時代の上がる文様風表現とは全く異なる。鐔全体をまさに貝殻のように立体的に仕立てている。形状だけでなく、歳を重ねることによって生じた年輪上の皺や他の生物の付着している殻の質感まで、巧みである。鉄地肉彫。

十字に藻貝図鐔 古金工 Kokinko Tsuba

2020-02-18 | 鍔の歴史
十字に藻貝図鐔 古金工


十字に藻貝図鐔 古金工

 赤銅魚子地高彫金色絵。この十字は何を意味しているのだろうか、メッセージを含んでいるような、強い印象を受ける。上級武将の注文であろうか、彫口が丁寧で、赤銅の素材もいいようだ。
 こうして古作を眺めてみると、個性的で…もちろん製作者がいるわけだから個性が出るのは当然であり、一口に古金工だとか、古美濃だとかで一くくりにしてしまうのは惜しい気がする。

藻貝図目貫 古美濃 Komino Menuki

2020-02-17 | 鍔の歴史
藻貝図目貫 古美濃


藻貝図目貫 古美濃

 時代の上がる美濃彫様式の目貫。古い目貫の透かしは、この作例のように処理されることが多い。主題の周囲を打ち抜き、主題を際立たせるのだ。裏から見ると、やはり薄手の仕立てで、際端が内側にすぼまるような、引き締まった構造となっている。

波に貝図目貫 後藤栄乗 Eijo Menuki

2020-02-15 | 鍔の歴史
波に貝図目貫 後藤栄乗


波に貝図目貫 後藤栄乗

 後藤家の中でも、後藤栄乗の活躍したころまで室町時代や桃山文化の影響が強く残っていたと捉えてよいだろう。だから、裏行きを見ても、ふっくらと打ち出し強く、薄手に仕立てられていることがわかる。透かしを大胆に施している点も古金工の作風と同じだ。意匠が洗練されており、ちょっと視点を間違えると幕末の金工の作と思い違いをしそうだ。彫口も進化している。でも、古典の要素が残っているから面白い。

藻貝図笄 後藤乗真 Joshin Kougai

2020-02-14 | 鍔の歴史
藻貝図笄 後藤乗真


藻貝図笄 後藤乗真

画面いっぱいに彫り出した古風な作。高彫された紋の中央辺りがこんもりと肉高く彫り出されている。しかも大胆な構成。金色絵の一部が剥がれてはいるも、それが景色となっている。乗真は室町後期の金工。


波に貝図小柄 古金工 Kokinko Kozuka

2020-02-14 | 鍔の歴史
波に貝図小柄 古金工


波に貝図小柄 古金工

 これも豊漁を意味しているようだ。波を背景にしているのは、砂浜に並べられた獲物をイメージしているのであろうか。様々な貝がある。

波に貝図目貫 古金工

 これも波を背景にしているという点で似た構成の作。ところ狭しと並べられた状態も豊漁を印象付けている。