鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

万両図小柄 後藤程乗 goto-teijo kozuka

2019-11-30 | 鍔の歴史
万両図小柄 後藤程乗


万両図小柄 後藤程乗

万両、千両、藪柑子などは、雪の中に真っ赤な実、あるいは暖か味のある白い実をつけて鮮やかであることから、お正月の飾りなどに尊ばれている。その清楚で風情ある景色を描いた小柄。風景としての捉え方、雪のありようなどが独特の肉取りや高彫、微細な鏨の加刻などで美しい。

軍馬図小柄 法橋程乗 goto-teijo

2019-11-29 | 鍔の歴史
軍馬図小柄 法橋程乗


軍馬図小柄 法橋程乗

 後藤程乗自身銘の、珍しい地彫になる作。野に放たれて躍動する軍馬。まだ鞍を外さぬまま野に飛び出してしまった。若々しさ、強さ、生命感などが表現されている。このような後藤の伝統から離れた作風に挑んでいるのも時代の要求であろうか、加賀金工と交わった程乗の為せるものということであろうか頗る面白い。

虎の児渡し図小柄 後藤程乗 goto-teijo kozuka

2019-11-29 | 鍔の歴史
虎の児渡し図小柄 後藤程乗


虎の児渡し図小柄 後藤程乗

 これも程乗極め。やはり上手だと思う。多彩な図柄に挑み、見事に作品化している。虎の児渡しは禅の問答にも通じる題であるが、虎そのものも武家に好まれた要素であり、霊獣と共に描かれる。

龍頭鞭図小柄 後藤程乗 Goto-teijo Kozuka

2019-11-28 | 鍔の歴史
龍頭鞭図小柄 後藤程乗


龍頭鞭図小柄 後藤程乗

 鞭と采配。武家の持ち物だが、龍の頭を備えた鞭としており、武家の象徴という意味か。貫禄のある作品である。彫口も引き締まっている。鞭の様子が、龍の背骨のようで、これも表現として面白い。後藤程乗極め。

波に剣巻龍図小柄 後藤顕乗 goto-kenjo kozuka

2019-11-27 | 鍔の歴史
波に剣巻龍図小柄 後藤顕乗


波に剣巻龍図小柄 後藤顕乗

龍の彫り出されている波文の地板は朧銀地。



波に這龍図小柄 加賀後藤

 波泳ぎの龍。小柄そのものが大振りの仕立て。ここに珠を手にしている双龍が華麗に彫り描かれている。

葵祭図小柄 後藤顕乗 goto-kenjo kozuka

2019-11-27 | 鍔の歴史
葵祭図小柄 後藤顕乗


葵祭図小柄 後藤顕乗

 加賀後藤の作風を再確認している。こうして眺めていると、図柄の選択や表現方法、色金の多彩さも含めて変わりつつあるように感じられる。時代の移り変わりもあろうが、その変革の先を行ったのが加賀後藤であったろうか。傘に葵。この組み合わせで葵祭りなのだろうか、顕乗極め。


苫舟図小柄 後藤顕乗

 これも面白い。後藤家では考えられない図柄。七代顕乗の作であることを十代廉乗光侶が極めている。こんな作品もあるのだと、改めて感じ取りたい。

軍馬図小柄 後藤悦乗 goto-etsujo kozuka

2019-11-26 | 鍔の歴史
軍馬図小柄 後藤悦乗


軍馬図小柄 後藤悦乗

 松の木に繋がれ、激しく躍動する軍馬。嘶く声も聞こえてきそうな場面を題に得ている。悦乗は程乗の子で理兵衛家を相続した。程乗と同様に加賀前田家に出仕して加賀金工の発展に寄与した。

桜井の駅図小柄 後藤顕乗 goto-kenjo kozuka

2019-11-26 | 鍔の歴史
桜井の駅図小柄 後藤顕乗


桜井の駅図小柄 後藤顕乗

楠木正成とその子正行の別れの場面。『太平記』に取材したもの。後藤家には源平合戦に取材した作品が多い。源平合戦の各場面は、武家が備えるべき意識として大きな意味を持つところから、常に腰に備える武具の図柄として好まれたに違いない。『太平記』になると、かなり武士の行動原理が異なってきているように思われ、画題として捉えた名場面も少なくなる。死を覚悟の楠木正成。その行動に学んだ正行。加賀後藤のひとり、顕乗の極め。

四睡図小柄 後藤程乗 廉乗 光壽 Goto-Teijo Kozuka

2019-11-22 | 鍔の歴史
四睡図小柄 後藤程乗 廉乗 光壽


四睡図小柄 後藤程乗 廉乗 光壽

 これも面白い。虎を枕としている豊干禅師、寒山、拾得の四者が眠る図は、禅機画として好まれた。ここでは、中央の豊干禅師を程乗が彫り描いている。寒山が廉乗、拾得が光壽。三工による、資料的価値も高い貴重な合作。

狐罠図小柄 後藤程乗 Goto-Teijo Kozuka

2019-11-22 | 鍔の歴史
狐罠図小柄 後藤程乗


狐罠図小柄 後藤程乗

 面白いのがこの図柄。狐を捉えようとしている図だが、狐は罠であることを見破っているようだ。真剣な猟師に対して何やら笑っているようにも感じられる狐の表情が面白い。貴重な後藤程乗自身銘が刻された作。この図には深い意味があるのだろうが、良く判らない。

子犬図目貫 後藤程乗 Teijo Menuki

2019-11-21 | 鍔の歴史
子犬図目貫 後藤程乗


子犬図目貫 後藤程乗

 犬は安産を願って描かれることがある。お守りとされたりもする。犬が多産であることから、また、母性が強いことからのものであろう、子孫繁栄をも含めて好まれた図柄である。装剣小道具では子犬が描かれることが多い。また、アワビの貝殻や紐の付いた貝殻を口にしている図も多いのだが、この点については意味が判らない。しかも多くが子犬として描かれ、成犬はまず見ない。

牡丹獅子図二所物 後藤程乗 Te

2019-11-20 | 鍔の歴史
牡丹獅子図二所物 後藤程乗


牡丹獅子図二所物 後藤程乗

 赤銅一色ながら豪奢で華やか。古典的な牡丹に後藤家の伝統的な獅子を組み合わせた作ながら、匂い立つような妖艶さを漂わせている。漆黒の素材がこれほど美しいものかと、改めて感じさせてくれる。金の色金など必要がない。程乗の作で光美の極め

雲龍図鐔 加賀後藤 Kaga-Goto Tsuba

2019-11-19 | 鍔の歴史
雲龍図鐔 加賀後藤


雲龍図鐔 加賀後藤

 古典的太刀鐔様式を取り入れながらも打刀に使えるよう構成したもの。耳に額状の装飾を施し、ここにも雲を金の色絵で彫り描いている。こうした華麗な風合いが作品の背景にあり、しかも伝統的な龍神を主題としている。美観を重視した作品である。


波龍図小柄 加賀後藤

撫子図鐔 加賀後藤 Kaga-Goto Tsuba

2019-11-18 | 鍔の歴史
撫子図鐔 加賀後藤


撫子図鐔 加賀後藤

 後藤家は基本的に鐔や縁頭を製作しなかった。この鐔はとても奇麗なため、また後藤家の作品を考える上でも興味深い存在であるところから、幾度か紹介している。加賀後藤ならではの作品である。でも、これを製作したのは誰なのだろう。
 モニターによっては、鐔の表面に施されている魚子地によってモアレが生じる。この鐔も表面が斑に見える。先に紹介した水野在銘の鐔がちょっとひどく、左右対称に縞になって見える。これは、モニターの画面が奇麗に揃った点の連続によって構成されていることと、鐔の表面に打ち施されている魚子地が同様に奇麗に揃っているため、両者の微妙なずれと重なり合いによって画像に濃淡が生じることによる。即ち、鐔の表面に打たれている魚子地が、頗る揃っていることの証しである。すべて手作業による魚子地である。


吉野桜図鐔 加賀後藤

 これも誰の製作になるのだろうか、とても興味がある。後藤本家としては伝統的に鐔を製作しないことから、加賀においてこそ自由な製作が可能であったと考えられる。赤銅地を魚子地に仕立て、高彫、象嵌、金色絵を専らとする後藤家だが、ここでは、華やかな図柄構成だけでなく、素銅を色絵に加えている。時代の下がった後藤であれば色金の多様性も考慮されるが、桃山文化の影響下と考えられるこの鐔では、素銅地を用いた作として比較的早い時期のものではないだろうか。

菊慈童図縁頭 加賀後藤 Kaga-Goto

2019-11-16 | 鍔の歴史
菊慈童図縁頭 加賀後藤




菊慈童図縁頭 加賀後藤

 金地の贅沢な作。水野の作風を先行するように感じられる。菊花や人物には後藤の作風が窺えるも、後藤の本家にはないだろうなと思わせる。細やかな彫口で、人物の描写も優れている。このような無銘物が加賀後藤と極められることがあるのだが、誰が製作したものであろうか興味は尽きない。