鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

花文図鐔 赤坂忠重 Tadashige Tsuba

2020-10-31 | 鍔の歴史
花文図鐔 赤坂忠重


花文図鐔 赤坂忠重

 桜と撫子だろう。これまでに紹介してきた赤坂鐔とは異なり、陰透の手法を採っている。それでも、文様の崩し方には赤坂の特徴が現れている。赤坂鐔工の中での忠重は、本家である忠時の弟子という立場であったが、技量と感性が特に優れており、師を越えて人気が高い。創造性の豊かな金工であった。

菊花図鐔 赤坂忠時 Tadatoki Tsuba

2020-10-27 | 鍔の歴史
菊花図鐔 赤坂忠時


菊花図鐔 赤坂忠時

 鐔全面を菊花に見立て、その中に葉と、横から眺めた一輪の菊を構成しているように感じられる。巧みで美しい構成だ。放射状に切羽台と耳とをつないだ鐔は、車透、阿弥陀透などと呼ばれ、古い甲冑師鐔などにもある。この鐔は、そのまま菊花の図へと装飾性を高めたもの。細く揃った放射状の線が美しく構成されている。

菊花図鐔 赤坂忠時 Tadatoki Tsuba

2020-10-26 | 鍔の歴史
菊花図鐔 赤坂忠時


菊花図鐔 赤坂忠時

 優しく延びた枝葉に一輪の花房。遠くに垣根が見えている。地面と切羽台にわずかながら葉を毛彫で表している。直線によるわずかな情報で庭植えの菊であることを分からせている。

松樹図鐔 赤坂忠時 Akasaka Tsuba

2020-10-22 | 鍔の歴史
松樹図鐔 赤坂忠時


松樹図鐔 赤坂忠時

 老松図。おぼろげに見えることからであろうか遠見松の呼称もある。今では山に陽が沈んでゆく様子や、日の出の様子をみることが少なくなってしまったが、松樹の茂った山に陽が沈んでゆくと、まさにこの鐔のような景色となる。松樹の背後にまんまるな太陽。陰影として松樹を描くことの理由は、あるいはこのような自然観があったのではないだろうか。そして定型化した図柄となる。

梅樹図鐔 赤坂忠重 Akasaka Tsuba

2020-10-19 | 鍔の歴史
梅樹図鐔 赤坂忠重


梅樹図鐔 赤坂忠重

 耳を曲線に構成し、すうっと伸びる枝は直線的。開き始めた花を全面に散らし、真冬の澄んだ空気を感じさせる図柄としている。


梅樹鐔 赤坂忠重

 これも同じ主題。比較的簡素に構成している。


梅樹図鐔 古赤坂 Akasaka Tsuba

2020-10-17 | 鍔の歴史
梅樹図鐔 古赤坂


梅樹図鐔 古赤坂

 耳を幹とし、屈曲して空間を彩る枝を切羽台から地面に掛け手て構成する手法は、梅や松に多い。大地に蟠っている龍神に擬えて臥龍梅などとも呼ばれる構成と通じるところがある。赤坂独特の省略の仕方が美しく、これもパッと見ただけでは分かりにくい図柄である。枝ぶりも巴状に流れるような構成とされていていい。

桐図鐔 赤坂忠重 Tadashige Tsuba

2020-10-16 | 鍔の歴史
日本刀買取専門サイト 銀座長州屋

桐図鐔 赤坂忠重


桐図鐔 赤坂忠重

 肥後金工の西垣勘四郎を手本とした、江戸中期の赤坂の銘工忠重の作。風に揺れている桐樹の陰影。障子などに映ったその様子を文様化したものと捉えてよさそうだ。図柄に動きがあるのも風を感じさせる要素。とにかく美しい。


桐図鐔 赤坂忠則

 これも分かり易い桐の代表的構成。上の忠重の鐔と比較してほしい。これも構図に動きがあっていい。

桐図鐔 赤坂 Akasaka Tsuba

2020-10-15 | 鍔の歴史
桐図鐔 赤坂


桐図鐔 赤坂

 分かりにくいが、これも、長く鐔の図柄を見てきた人であれば即座に理解できる。処々に桐の特徴が捉えられている。耳の内側の処理が、視覚的に戸惑わせるのだろう。このようなところも巧みである。陰影の面白さ。

桐図鐔 古赤坂 Akasaka Tsuba

2020-10-14 | 鍔の歴史
桐図鐔 古赤坂


桐図鐔 古赤坂

 ぱっと見ただけでは何だか良くわからない。桐ではなかろうかと想像し、いくつかの桐図鐔を眺め、他の桐図と比較した末に桐図と判断した。簡潔ながら表情が豊かで、面白い。桐図鐔というと、肥後の西垣などを思い浮かべる。西垣勘四郎は、茶の美観を採り入れて歪んだ鐔を遺している。この鐔にもそのような自然の成り立ちを想わせる、造形的な不均衡があり、興味深く見ている。

分銅に柊図鐔 赤坂 Akasaka Tsuba

2020-10-12 | 鍔の歴史
分銅に柊図鐔 赤坂


分銅に柊図鐔 赤坂

 これも何の植物であるのか分からず、葉に尖っているところがあるので柊と見たようだ。そもそも赤坂鐔工は植物の葉をこのように表すことがある。枯れ枝に残る二枚の葉。繊細な彫口であり、赤坂独特の崩し方も面白い。分銅がどこか歪んでいるのも意図してのものであろう。


枯木に分銅図鐔 赤坂

 上の鐔と全く同じ構成。葉が落ちて枯れ枝のみ。季節が深まっていると捉えればいいだろう。

沢瀉図鐔 古赤坂 Akasaka Tsuba

2020-10-08 | 鍔の歴史
沢瀉図鐔 古赤坂


沢瀉図鐔 古赤坂

 赤坂鐔工独特の文様化というか図柄の草体化は、本来の植物とは時に離れてしまうことがあり、分かりにくく、画題を求めるのに苦労することがある。これもその一つ。沢瀉と見たようだが、実は良くわからない。でも赤坂の風合いが濃密で素敵な構図となっている。

文繋図鐔 赤坂 Akasaka Tsuba

2020-10-07 | 鍔の歴史
文繋図鐔 赤坂


文繋図鐔 赤坂

 風雅な趣のある様々な文様を、耳と切羽台を繋ぐように散し配した作。宝尽と同じ文様もあるのだが、ここでは自然観をも加味しているのであろう、竹、菊、雪を加え、雁金や丁子などは古い鉄地透鐔にもままみられる文様の一つ。先に紹介した鐔に鯰が配されていたが、ここでも鯰が採られている。その理由が分からないのだが興味深いところである。