鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

花文図鐔 古金工 Kokinko Tsuba

2021-02-27 | 鍔の歴史
花文図鐔 古金工


花文図鐔 古金工

 山銅の地金が素朴な味わい。黒化して時の流れを感じさせる。主題である花と葉は毛彫で、その周囲の地面には粗い点刻を魚子地風に施している。ただし、魚子地ではない。古拙という表現が適切であろう、時代は室町初期まで上がるのではなかろうか、小柄笄の櫃穴の形状が時代の上がることを示している。櫃穴の周囲に細い筋彫があり、耳際にも筋彫がある。点と線の象嵌に応仁があるも、それ以前の作かとも推考される。

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唐草文図鐔 古金工 Kokinko Tsuba

2021-02-26 | 鍔の歴史
唐草文図鐔 古金工


唐草文図鐔 古金工

 太刀鐔風の木瓜形。薄手に仕立てた山銅地の表面に、打ち込みで表したかのように彫り込んで、蕨手のような唐草文を叢に配している。その周囲には粗い石目地を施しているが、際立った装飾性を求めているかというと、そうでもなさそうな、それでいて、ひとかたまりとなっている唐草文を眺めると、何かの文字が秘められて(意味のある)いるのではないだろうかと想像を巡らしてしまう図である。時代の上がる彫り込みによる装飾である。

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遠見の松図鐔 埋忠 Umetada Tsuba

2021-02-25 | 鍔の歴史
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遠見の松図鐔 埋忠


遠見の松図鐔 埋忠

 松の並木を小さく描き、左右の櫃穴を大胆な意匠で印象付けた、桃山時代の作。真鍮地は比較的平坦な処理で、腐らかしがされていないため、微細な皺状の凹凸はない。真鍮地金の古風な色変りが、松の図柄の背景にあって古画のような風合いを醸し出している。遠見を意図したものであろうか小さく描いた松は金と銀の布目象嵌。古正阿弥派の鐔工に、鉄地に金の布目象嵌が施されたものが間々みられる。もちろんその影響であろう。布目象嵌とは、地面に切りつけた幾つもの細い筋に金の薄い板を叩き込んで文様とする手法だ。だから鉄地に多いのだが、真鍮地の布目象嵌も味わい深いものである。左右の洲浜透は海辺を意図したものか。


唐草虫食文図鐔 埋忠 Umetada Tsuba

2021-02-24 | 鍔の歴史
唐草虫食文図鐔 埋忠


唐草虫食文図鐔 埋忠

 埋忠派の作品を紹介している。木瓜形の木瓜形の山銅地に微細な放射状の鑢目を施し、金線象嵌で唐草文を廻らし、その合間に虫食い状の窪みを設けている。さらに金の覆輪を廻らして華やかさを演出している。野に打ち捨てられて朽ちかけている器物を見るようだが、鄙と雅が同居しているようで面白い。山銅という素材といい、造り込みといい、大胆な手法にも古金工に紛れる風合いを持っている。虫食いという装飾を採り入れるなど、思考が奇抜であり、桃山の風合いを伝える鐔と言えよう。

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桜楓に雪輪図鐔 埋忠重義 Shigeyoshi Tsuba

2021-02-22 | 鍔の歴史
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桜楓に雪輪図鐔 埋忠重義


桜楓に雪輪図鐔 埋忠重義

 とても洒落た意匠の一つである。桜と楓の組み合わせは、先に紹介した通り。ここでは雪を加え、冬という季節感を明確にしている。雪は古典的な雪輪。江戸時代後期に流行した六角結晶ではない。ふっくらとした、いまにも溶けてしまいそうなほんわかとした球形。色合いが黒みを帯びているが銀と斑金の布目象嵌。

三日月図鐔 埋忠重義 Shigeyoshi Tsuba

2021-02-20 | 鍔の歴史
三日月図鐔 埋忠重義


三日月図鐔 埋忠重義

大胆に三日月を透かし去り、叢雲を一部に構成している。鉄地に陰透と金布目象嵌、強弱変化のある片切彫。実は鉄地に焼手腐らかしが施されており、地面に鍛え肌が板目状に微かに現れている。これも雲を表現したものであろう。

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桜楓図鐔 埋忠重義 Shigeyoshi Tsuba

2021-02-19 | 鍔の歴史
桜楓図鐔 埋忠重義


桜楓図鐔 埋忠重義

 桜も梅も川の流れと組み合わされて風景の要素となっている。それを一つにした。春の景色と秋の景色の融合に他ならない。自然現象としてはありえないのだが素敵な文様が生まれる。紅葉も桜も、散りかかっているわけではないのだが、川の流れを背景に全面に散らし配されて風景の文様化が際立っている。心象的、心の中にある風景だ。

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花桐図鐔 埋忠重義 Shigeyoshi Tsuba

2021-02-15 | 鍔の歴史
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花桐図鐔 埋忠重義


花桐図鐔 埋忠重義

 鉄地薄肉彫に浅い鋤彫を組み合わせ、金布目象嵌で花桐を彫り描いている。切羽台に隠れた幹。切羽台からちよこっとその様子を覗かせている。二つ木瓜形の造り込みは、武蔵鐔の海鼠透でも知られているように、桃山頃にまま製作されている。その二つ木瓜形も雰囲気がいい。


葡萄唐草図鐔 埋忠七左衛門重義 Shigeyoshib Tsuba

2021-02-13 | 鍔の歴史
葡萄唐草図鐔 埋忠七左衛門重義


葡萄唐草図鐔 埋忠七左衛門重義

 先に無銘の葡萄図鐔を紹介したが、本作は繊細な金線で描いた作。赤銅地は微細な石目地で光沢が抑えられて深く沈み、金の葡萄をより一層鮮明に浮かび上がらせている。埋忠明壽が破墨のような技法で葡萄を描いたが、対極にあるように鮮明に、しかも細かな処理。だが、風景を切り取って文様として再構築しているところは同じである。

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菊葉に虫図鐔 埋忠七左衛門重義 Shigeyoshi Tsuba

2021-02-10 | 鍔の歴史
菊葉に虫図鐔 埋忠七左衛門重義


菊葉に虫図鐔 埋忠七左衛門重義

 江戸時代中期の埋忠派には重義銘を刻する金工が、京、江戸、播磨など各地に複数存在する。重義の銘がブランドになっていることを意味している。あるいは各地を巡り歩いて製作したものか。いずれも文様表現になる雅な図柄で、題材は多彩である。この鐔も、自然を垣間見るような構成で、菊の葉を巴に組み合わせているところが面白い。虫は古典的な題材。

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唐草牡丹鉄線図鐔 埋忠 Umetada Tsuba

2021-02-09 | 鍔の歴史
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唐草牡丹鉄線図鐔 埋忠


唐草牡丹鉄線図鐔 埋忠

 古典的な唐草に、牡丹と鉄線を文様として組み合わせた作。赤銅地に金平象嵌を施している。これを木瓜形風に造り込んだ鐔の形状そのものが花を思わせる。金が鮮やかに際立つように赤銅地を活かしている。

葡萄図鐔 埋忠 Umetada Tsuba

2021-02-08 | 鍔の歴史
葡萄図鐔 埋忠


葡萄図鐔 埋忠

埋忠明壽が活躍した時代、俵屋宗達や本阿弥光悦などにより、後に琳派と称された芸術観が起こった。雅な風景の文様表現に代表される独特の美観は、次第に洗練され、鐔装飾の一分野として大きな位置を占めるようになる。埋忠派の作はその初期のものながら、かなり完成度が高い。この葡萄の図においても、古美濃や古金工とは大きく印象の異なる美観が示されている。

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桐紋散図揃金具 埋忠壽斎 Jyusai Soroikanagu

2021-02-05 | 鍔の歴史

桐紋散図揃金具 埋忠壽斎




桐紋散図揃金具 埋忠壽斎

壽斎は埋忠明壽の近縁者で、明壽同様に高位の武家の刀装金具を製作した。本作、あるいは前紹介した金の鐔と同様に、豪奢で風格のある金具を製作している。壽斎の在銘作が極めて少ないことから、本作は、壽斎研究の上で貴重な資料の一つである。金無垢地を鑢目に仕立て、桐紋、菊紋、巴紋などの家紋を打ち込みの手法で全体に散らし配している。興味深いのは、縁金具の裏側に大振りの銘を刻しているところ。

祇園守透図鐔 埋忠 Umetada Tsuba

2021-02-04 | 鍔の歴史
祇園守透図鐔 埋忠


祇園守透図鐔 埋忠

 桃山時代に特徴的な、全体を金一色とした、派手で豪壮な雰囲気の漂う作。図柄は祇園守といって、京都八坂神社が用いた紋章であり、お守りの一種で、これを家紋とした武家もある。この鐔では祇園守をさらに陰陽を明確にした文様としている。室町時代の古正阿弥や尾張、甲冑師などにはない意匠であり、ここにも桃山風が感じられる。

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宝珠図鐔 埋忠明寿 Myoju Tsuba

2021-02-03 | 鍔の歴史
宝珠図鐔 埋忠明寿


宝珠図鐔 埋忠明寿

 先の2点より時代が上がるのではないだろうか、鉄地の作。地造りは甲冑師鐔だ。地面を薄手に仕立てて耳を厚くし、陰透で主題の宝珠を表現している。埋忠の技術の背景には布目象嵌があるのだろう、技法として採り入れた作も多く見る。この鐔では、金の布目象嵌で宝珠を描いている。さらに片切彫でも宝珠を描いている。変化に富んだ地造りの趣はもちろんだが、装飾の技法についても良く観察してみたいところだ。

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