鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

五丈原(三国志)図鍔 浜野矩随 Noriyuki Tsuba

2012-02-29 | 鍔の歴史
五丈原(三国志)図鍔 (鍔の歴史)


五丈原(三国志)図鍔 浜野矩随

 矩随は、江戸時代中期以降江戸に隆盛した奈良派の流れを汲む金工の一人。浜野初代政随の弟子。
 この鍔は、江戸時代に大流行した『三国志演義』に取材したもの。死んだ諸葛孔明の像を戦車に載せ、未だいきているかのように装う蜀軍。これを攻める魏の司馬仲達は、死んだはずの孔明の姿を見て軍を退かせてしまった。「死せる孔明生ける仲達を走らす」の語源である。孔明は、かつて野に伏していたことがあったことから伏龍、臥龍とも呼ばれており、これによって龍に擬えられている。
 極上質の朧銀地を高彫にし、金銀赤銅素銅を象嵌し、これに力強い鏨を切り込んで迫力のある画面を生み出している。この鏨の強さが活かされた作品でもある。
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馬師皇図小柄 乗意 Joi Kozuka

2012-02-28 | 鍔の歴史
馬師皇図小柄 (鍔の歴史)


馬師皇図小柄 乗意

 利壽、安親と共に奈良三作と尊称されている杉浦乗意の小柄。乗意は和漢の歴史人物や伝承の人物を題に採り、けっして高肉に彫り出すわけではない『肉合彫』という技法を用いながらも、恰も量感のある高彫のように、立体的に表現するを得意とした名人。この作例においても、彫り出された顔の部分や胸の手などは地面からごくわずかに高いという程度。にもかかわらずこれほどに立体感と奥行き感がある。丁寧な彫刻によって細部の描写も優れている。これらの技術や感性が、後の江戸金工の多彩な表現と題材に繋がってゆくのである。江戸時代の金工の祖の一人と謳われる理由がここにある。朧銀地を極微細な石目地に仕上げ、龍も肉合彫に毛彫と片切彫、その周囲に微細な点刻を加え、渦巻く雲の様子を表現しているところも独創的。
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雨龍図鐔 長州萩中智光 Tomomitsu Tsuba

2012-02-27 | 鍔の歴史
雨龍図鐔 (鍔の歴史)


雨龍図鐔 長州萩中智光

 南蛮鐔を紹介したことがある。その影響を受けているのであろうか、異風な意匠が魅力の鐔。赤銅地を高彫にし、目玉は金色絵、耳際を透かして雲を配しているところなどは特に面白い。迫力もあるし、何と言っても奇抜なところ。中原智光は超有名工というわけでもないが本作を見るように技量が優れており、さすが長州鐔工と、ここでも感動を生み出す感性の鋭さを再確認する。
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桐唐草透図鐔 京金工 Kyo-kinko Tsuba

2012-02-24 | 鍔の歴史
桐唐草透図鐔 (鍔の歴史)


桐唐草透図鐔 京金工

 耳に龍を配し、地を大きく窓開けし、ここに肉彫地透で唐草を這わせ、桐を家紋のように配している。素敵な図柄であるが、流派の不明な京の金工と極められている。耳際に繊細な平象嵌で文様を廻らしているのも上品。このように耳に龍を配して主題を装飾する手法は間々みられるのである。ここでの龍は額縁のように主題ではなく、桐紋を装飾する文様である。76.5ミリ。
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波龍図鐔 政知 Masatomo Tsuba

2012-02-23 | 鍔の歴史
波龍図鐔 (鍔の歴史)


波龍図鐔 長陽群龍亭静壽翁政知

 耳際に雨龍を薄肉に彫り出し、中央に荒れ狂う海原を肉彫に表現した作。どちらが主題とも言えず、両者があってこその図柄といえよう。激しく押し合う波の近世的な表現に、雨龍の古典的表現。色合い黒い鉄地一色の作。こうしてみると、長州鐔工は文様化された作も上手であることが分かる。81.5ミリ。
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雲龍図鐔 仙台金工 Sendai-Kinko Tsuba

2012-02-21 | 鍔の歴史
雲龍図鐔 無銘 (鍔の歴史)


雲龍図鐔 無銘 仙台金工

 鉄地の鐔一面に金の線象嵌で雲を描き、その間に龍と裏面に独鈷を配している。龍の身体には点状に金を配して鱗としたものであろう、文様化された図柄で面白い構成である。78.3ミリ。


唐草に龍文図鐔 安親

 古様式の太刀に用いられている分銅形鐔を刀の鐔に意匠した作。過去に紹介したことがある。鉄地肉彫仕立て。楯ともみたが、分銅形鐔の新味ある意匠と考えたほうが面白い。また、耳を構成しているのは獅子であろうかとも考えたが、龍で良いと思う。安親には情緒的な作風や江戸時代の絵画風作品、古典に倣った作など様々あるが、江戸時代中期、金工における創造性は、この安親があってこそ高まったと考えられる。80.5ミリ。
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雅文図鐔 平田七宝 Hirata Tsuba

2012-02-20 | 鍔の歴史
雅文図鐔 (鍔の歴史)


雅文図鐔 平田七宝

 簡潔な石目地仕立ての赤銅地に雅な文様を散らした作。金線で縁取り下中に様々な色合いの七宝を組み合わせており、その繊細な技術にも驚かされる。この表の右上にある円弧状の文様は龍である。小魚の稚魚のような意匠だが、まさしく龍。このような龍もある。作者の銘はないが七宝を家伝とした平田家の作。平田家には富岳などを題に得た大胆な図柄もあるが、このような繊細な文様表現も魅力。総体は雅文で、その中に龍が紛れてしまいそうだ。61ミリ。

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這龍透図鐔 忠時 Tadatoki Tsuba

2012-02-18 | 鍔の歴史
這龍透図鐔 (鍔の歴史)


這龍透図鐔 忠時作

 赤坂派は様々な図柄を題に得てはいるが、いずれも特異な意匠からなる透かしで人気が高く、江戸時代を通じて栄えている。その六代目(忠時三代)の、文様化された龍の図。鉄地に鍛え肌を浮かび上がらせて渦巻き流れる雲を表わし、これに龍と火炎宝珠を陰に透かしている。奇抜と言おうか、同時代には創造性の高い優れた意匠も生み出している忠時であり、古典と新味を融合させた独風を狙ってのものであろうと想像する。面白い作例である。84.8ミリ。

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雲龍図鍔 崎陽山人若芝雲龍軒是高 Koretaka-Jakushi Tsuba

2012-02-17 | 鍔の歴史
雲龍図鍔 (鍔の歴史)


雲龍図鍔 崎陽山人若芝雲龍軒是高(花押)

 長崎に栄えた若芝(じゃくし)と呼ばれる一派の、八代目に当たる是高の作。若芝は代々用いた号銘で、鉄地高彫に極めて細い線を刻み、この部分に金を擦り込んでぼかしの妙趣を採り入れるを特徴としている。この鍔では、地鉄そのものを渦巻き状の鍛えた肌を鮮明に浮かび上がらせて荒れ狂う海原を表現し、これを背景に雲龍を描き出している。主題の周囲をわずかに彫り込んでおり、龍の身体はこれによって浮かび上がっている。迫力のある作である。79.5ミリ。
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波龍図小柄 熊谷義之 Yoshiyuki Kozuka

2012-02-16 | 鍔の歴史
波龍図小柄 (鍔の歴史)



波龍図小柄 熊谷義之(花押)

 義之は仙台の生まれで、江戸に出て肥後細川家の抱え工となった、江戸肥後と呼ばれる金工。専ら鉄地に金布目象嵌の手法で華やかな風合いの肥後金具を製作し、流行の源となった金工でもある。鉄地以外にもこのような赤銅地高彫の作品を遺している。この小柄も、鏨を強く切り込んで高彫に表現した迫力のある作品である。色金を一切用いないところに凄みが感じられる。
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珠喰雨龍図鍔 松陽斎如英 Joei Tsuba

2012-02-15 | 鍔の歴史
珠喰雨龍図鍔 (鍔の歴史)


珠喰雨龍図鍔 松陽斎如英

 この鍔も風変わりな龍を表現したもの。如英は水戸金工。切羽台を珠に見立てて意匠し、これに喰らいつく龍を題に得ている。爪は一段と鋭く、鬣が風に巻き上がっている。鉄地を打ち返し、地荒らしに仕上げ、立ちこめる暗雲の様子を巧みに表現。高彫の手も確かに、立体感に溢れている。目玉も鋭い。とにかく奇異なる意匠構成であり、魅力大なる作品である。86ミリ。
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雲龍図鐔 銘 寛斎 Kansai(Bunyu) Tsuba 

2012-02-14 | 鍔の歴史
雲龍図鐔 (鍔の歴史)


雲龍図鐔 銘 寛斎鐫

 激しく波立つ海原、巻き上がる暗雲、稲妻の走る大空を掻き分けるように姿を現わす龍神。鉄地を磨地に仕上げ、打ち込むような太い片切彫と鋤彫、肉高く龍神の頭を彫り出し、身に纏う火炎を金の象嵌で表わし、目玉は金に赤銅、苔生す身体は多彩な鏨を打ち込み、鋭く宙を掻く爪、綺麗に揃った鱗、辺りを探る触角などすべてにおいて荒々しい表情を演出している。寛斎は三代赤文を襲名した桂野文雄の号で、加納夏雄の門下で修業した巧手である。77ミリ。
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雨龍図鐔 伯龍子壽孝 Toshitaka Tsuba

2012-02-13 | 鍔の歴史
雨龍図鐔 (鍔の歴史)


雨龍図鐔 伯龍子壽孝作

 壽孝は東龍斎清壽の門人。清壽流の作風を展開している鐔だが、龍には独創が感じられる。清壽の龍の作例は過去に紹介したことがあるのだが、参考に小柄を載せる。
 鉄地に鎚の痕跡を残して地荒らしのように仕上げて雲を表わし、切羽台の糸巻菱形は表裏で天空を八つに分ける、即ち全天を意味しているのかも知れない。あるいは七宝文風の洒落た意匠か。高彫になる龍神は鬣を翻して迫力あり、火炎は金の布目象嵌、下には朧銀地になる龍が象嵌されている。81ミリ。


波龍図小柄 東龍斎清壽
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雲龍図鐔 松尾月山 Gssan Tsuba

2012-02-12 | 鍔の歴史
雲龍図鐔 (鍔の歴史)


雲龍図鐔 松尾月山作

松尾月山は京都大月派の重鎮川原林秀興の門人、その奇抜な龍神。葵木瓜形の鉄地を微細な石目地に仕上げ、これを雲に見立て、雲を掻き分けるように姿を現した龍を金高彫象嵌している。筋骨隆隆、四肢の張った身体もそうだが、顔の表情が良い。彫り込み深く高肉に彫り出し、鬣は渦巻き、顎から口を経て鼻の辺りなどは実際の動物を手本として表現したとも考えられるほどの写実感がある。宙を掻き宙を蹴るその鋭い爪、鱗の様子も独創的である。81.2ミリ。
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雨龍図鐔 金龍斎秀國

2012-02-10 | 鍔の歴史
雨龍図鐔 (鍔の歴史)


雨龍図鐔 金龍斎川秀國

 江戸時代後期の京都大月派の川原林秀國の、巧みな図柄構成になる雨龍図。切羽台の周囲に寄せる波を描き、その周囲の地面は大海の天上にひろがる黒雲、打ち返した鋤き残し耳の際には岩場を高彫にしている。これを背景に大空を這う龍を高彫金布目象嵌で描いている。波飛沫も金象嵌。大月派の巨匠光興は、このような空間演出よりも、室町時代の水墨画や禅の意識を漂わせる作品を好んだようである。その門人が、世の中の動きに応じたものであろう、洒落た風合い、空間構成にも新趣を採り入れるようになっている。銘にある川は川原林の略。81ミリ。□

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