鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

韋駄天図目貫 後藤徳乗 Tokujo-Goto Menuki

2014-08-30 | 鍔の歴史
韋駄天図目貫 後藤徳乗



韋駄天図目貫 後藤徳乗

 後藤宗家五代徳乗と極められた金無垢目貫。同種の作では頗る大振りの仕立て(一般的後藤作同図に比較して倍以上の量感がある)。古作に倣って裏面からの打ち出しを強くしてふっくらとした地造りとしている。表からも裏からもその量感が判る。先に紹介した宗乗の目貫と同様に、頭の部分を裏面まで彫り上げているのが見どころ。これは時代の上がる作に間々見られる特徴であるが、代別までの判断材料とはなっていないようである。事実、初代祐乗極めの作にも、三代乗真極めにもある。特に人物描写に重点が置かれた作品に採り入れたのであろう。
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熊谷に敦盛図目貫 後藤宗乗 Sojo-Goto Menuki

2014-08-27 | 鍔の歴史
熊谷に敦盛図目貫 後藤宗乗



熊谷に敦盛図目貫 後藤宗乗

 写真の目貫は、室町時代後期の後藤宗家二代目宗乗作と極められている。後藤家の作は、上三代までは銘がなく、代が降っても銘が切られている作は比較的少なく、多くは極め物。江戸時代後期なってようやく在銘作が見られるようになり、代別判断の要となっている。即ち、銘のない作品について作者特定や代別云々は、どれほど研究が進んでも出来ないというのが現実である。それ故、多くの金工研究家は、銘のない作品についての作者や代別にかかわる言及は避けている。また、それが故に伝何某という表記が生まれてくる。日本美術刀剣保存協会の鑑定書においても、在銘作と無銘の作では鑑定書の意味が異なる。在銘作においては、その銘が正しいか否かを判断するもので、無銘の作については、極めた作者や流派の特徴を備えているか否かが判断されているのである。例えばAと極められた無銘作については、作者がAであることを認めているのではなく、作者Aの特徴を備えた作であることを認めているのである。
 この目貫は源平合戦に題を得たもので、量感豊かにふっくらと打ち出し、高彫部分はより高く、彫り込んだ部分はより深くと、図像がくっきりと表現されている。源平合戦図など人物を描いた作が多くなるのは、四代光乗の頃以降からであるというのが一般的な見方である。だが宗乗と極められていることから、また、人物図は、初代祐乗にも極めの作例があるように、初期にもわずかながらあると考えて良いのだろう。裏面の兜部分を見てほしい。裏は柄に巻き込まれる運命にあるため、一般的に彫刻がされない。ところがこの目貫では、兜を兜のように丸みを持たせてそのままに表現しているのである。ただしこの点は、総ての宗乗作の特徴というわけではない。裏面からの打ち出しの鏨の痕跡は、古金工極めに比較してなだらかに仕上げられているのも見どころの一つ。
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苦瓜図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2014-08-26 | 鍔の歴史
苦瓜図目貫 古金工



苦瓜図目貫 古金工

 苦瓜、即ちゴーヤーである。古くは茘枝とも呼んだ。苦みに薬としての効用があると考えられていたようで、図柄としては比較的多い。身が熟して割れた様子をも捉えている。最近では至るところでゴーヤーの自家栽培がおこなわれているが、その流行が未だ来ていなかった20年前、この茘枝と呼ばれている植物がゴーヤーであることを確かめるために種を取り寄せて栽培を試みた。見事に実が爆発して赤い種が飛び出している様子を実見し、なるほどと理解した思い出がある。
 裏面からの内出し強く、際端を絞っている様子が良く分る。葉の表面に施されている小判形の窪みは、わずかな周囲の盛り上がりによって打ち込みによる工作であることが理解できる。裏面の鑑賞においても、その様子が想像でき、瓜の筋の工作の痕跡も浮かび上がっていて面白い。根が切り取られている。このような例は頗る多い。不要なら最初から備えなければ良いのだが、必要と考えられていながら、それを利用しなかったのだ。実際に柄の一部に小穴を設け、そこに根を差し込む工作が成されている例もあるが、根が効果的に処方されていない例が比較的多いのだ。実用の段階で根が曲げられている例もある。理由は単一ではなさそうで、不明。ただし、拵の様式は、剣術の流儀や国柄によって目貫の巻き込み方、高さ、位置などがずいぶんと異なるもの。それに比べて目貫の構造は比較的一定している。それが故に、後に、自らが望む処方を採らねばならない場合、際端の高さや根を様々に工作するのであろうことが想像される。そんなことに思いを巡らせるのも面白い。
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花筏図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2014-08-25 | 鍔の歴史
花筏図目貫 古金工



花筏図目貫 古金工

 比較的厚手の素材を打ち出し、立体的な画面を創出している。これも使用していた痕跡が裏面に残されており、しかも詰め物が施されている。柄に安定させるため、あるいは接着性を高めるためであったと思われる。詰め物が剥がれている部分の鏨の痕跡は明瞭で、打ち出し、打ち込みの際の裏側の様子も窺えて興味深い。柄に据えるため、際端を摺り込んでいるのも判る。このような例は頗る多い。
 花筏図は、桂川の上流から筏に組まれて流し降ろされる材木に、嵐山辺りで桜が散り掛かるといった風情ある景色を文様化したもので、京都の雅を示す図として好まれたものであった。比較的作例が多いことから、古くからかなりの流行があったと推測される。このような図の金具を用いて拵を製作して楽しんでも良いだろう。
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猛虎図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2014-08-22 | 鍔の歴史
猛虎図目貫 古金工



猛虎図目貫 古金工

 竹林をのし歩く猛虎。虎の顔つきは後藤系のそれとは異なって違った意味で迫力がある。身体の文様は斑状で豹のようにも見えるが虎を意図したものと考えて良い。彫り込む鏨の直線を活かした迫力ある造り込みが魅力である。これも裏面を観察してみよう。赤銅地を強く打ち出して際端を高く仕立て、わずかに内側に絞っていることが判る。これにより立体感が更に高まる。自在鉤図目貫に比較して肉厚である。実際に拵に装着されていたものであるため、裏面に汚れが付着しているが、打ち出しの痕跡も観察は可能。笹の葉の筋に沿った裏面の筋も面白い。抜け穴の処理は単に透かし抜いているだけで、所謂バリの除去をしないのが普通だが、なぜだろうかと考えてしまう。柄糸で巻き込まれる裏面という認識からであろうか。根は陰陽の仕立て。
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自在鉤図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2014-08-21 | 鍔の歴史
自在鉤図目貫 古金工




自在鉤図目貫 古金工

 秋草に虫を描いた古美濃の目貫を裏側から観察したように、目貫では、柄に巻き込む場合には裏面が見えなくなることから、裏面に残されている工作の痕跡を隠すということがないことから、特に裏の要素の観察を重要視している。もちろん観察できる部分であれば全面が鑑賞の要素である。裏側からの打ち出しの様子とその後の処理の様子など、また、際端の様子、その端部の様子など、ごくごく小さな金具だが鑑賞の要点は多いのである。この目貫は、極端に薄手に打ち出し、中央辺りがふっくらと盛り上がっているように高彫とし、所々に抜け穴を施して図像が線構成によるもののように表現している。時代の上がる作では唐草文図が特徴を示しているように、この目貫も図柄は自在鉤という器物だが構成は唐草文風に曲線を組み合わせたもの。裏面を観察すれば、薄手、際端を絞って図柄がくっきりと立っているかのように表現している様子が良く分る。
 このような作例を鑑賞していると、現代金工が目貫を製作しない理由が良く分る。鏨を切り込む際、ちょっと下ちからの入れ具合で下地が変形してしまう恐れがある。鍔ほどの厚い地金であっても、文の打ち込みにおいては下地の変形を考慮しなければならないのだから、目貫の工作を考えると、恐ろしいほどの技術が想像される。古作をこのように比較的健全な状態で楽しめるのだから、有難いことだと思う。
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秋草図小柄 美濃 Mino Kozuka

2014-08-20 | 鍔の歴史
秋草図小柄 美濃



秋草図小柄 美濃

枝菊に葛が巻き付き、その背後には撫子が咲くといった秋草を図案化したもの。金地の打ち出し高彫。技術と風合いは桃山時代以前の美濃彫様式だが、極めは江戸時代初期とされている。仕立て直しが江戸初期ということであろうか。彫り際がシャープであり、大変に美しい。単に美濃様式の深彫表現というだけでなく、かなり手の込んだ装飾を加えている。拡大写真で判るだろうか、高彫部分に細かな鏨を加えて自然味ある景色に仕立てているだけでなく、葉の小判型の打ち込みの中に細かな魚子を打っている点が面白い。
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秋草図笄 古金工 Kokinko Kogai

2014-08-19 | 鍔の歴史
秋草図笄 古金工



秋草図笄 古金工

 赤銅魚子地高彫金色絵。笄は、小柄と違って厚手の地鉄そのものに深彫を行い、要所に鏨を打ち込んで精密な窪みを表わしている。目貫と良く似た図案であり、表現であるが、異なるのは、薄手に打ち出した目貫と、地がしっかりとしている笄という地造りそのものである。この時代の色絵は、かなり肉厚感のある金の薄板を固着させるもの。今のメッキとは異なる。色絵の剥げた部分の観察により、色絵の下地にもしっかりとした彫刻が施されており、色絵の上からも彫刻や打ち込みが施されていることが理解できよう。
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吉野桜図鍔にコメントを頂きましたが・・・

2014-08-18 | 
すいません。
加賀金工の吉野桜図鍔にコメントを頂きました方。
申し訳ありません。
思い出のお話を書いていただいたにもかかわらず、
返事を載せる手順を間違えて、削除してしまいました。

同様の図は、鍔だけではなく目貫、縁頭、小柄などにもあり、幾つかの作例を実見していますので、豪壮華麗な風合いが好まれて流行したのかもしれません。
黒漆塗りの鞘に黒糸巻の柄に同図の金具で纏めた拵。
華やかではありますが、お洒落で格好いいだろうなと想像します。

善財 一
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葡萄図小柄 古美濃 Komino Kozuka

2014-08-18 | 鍔の歴史
葡萄図小柄 古美濃


葡萄図小柄 古美濃

 赤銅地一色の魚子地に高彫表現した唐草状の葡萄。高彫部分の際が鋭く仕立てられている点などから古美濃と極められている。この小柄も同様に打ち込み痕を装飾に採り入れている。葉の中央部分に四点。裏面が観察できないのが残念である。目貫と同様に、高彫部分は裏からの内出しと表面からの鏨による彫り込みで描くのだが、美濃彫様式は特に高低差がある。目貫と同じであれば裏側に当て金がなければ、薄手の地板など曲がってしまうだろう。最後に魚子地の地板を正確な平面として仕上げているわけだから、小柄製作の技術はすごい。
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秋草図目貫 古美濃 Komino Menuki

2014-08-16 | 鍔の歴史
秋草図目貫 古美濃


秋草図目貫 古美濃

 金無垢地を裏面から打ち出してふっくらとした下地を作り出し、表面に鏨を加えて彫り込み、秋草各々の特徴ある姿態を浮かび上がらせている。表面を彫り込むことによって葉脈や花弁の筋、花の際の表情を創出しているのだが、これに加えて特殊な鏨を打ち込むことによってシャープな彫り際を示す部分が各所に見られる。この目貫では左側の花の楕円形の窪みのこと。もちろん女郎花の花は魚子地状に鏨を打ち施した痕跡によるものである。金無垢地だけでなく赤銅地にもこのような例があり、打ち込むという工法によって下地を壊してしまうのではなかろうかという疑問もある。裏面を見てほしい。確かに裏側の中央の花や女郎花の花房には、その形状をそのままに映しているような痕跡がある。即ち、これら打ち込みを行った花の部分には、花の形状の当て金があったと推測されるのである。
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波に壺透図鍔 平田 Hirata Tsuba

2014-08-14 | 鍔の歴史
波に壺透図鍔 平田


波に壺透図鍔 無銘平田

 肥後金工平田彦三の特徴がみられる作。これも面白い作である。素銅地を様々な点刻のみで装飾しているのである。波に壺の組合せは、お目出度い席において演じられた謡曲でも知られているように猩々の伝説。覆輪は可動式の小田原覆輪で、これも平田の得意とするところ。さて、地の文様描写は、波が大小深く浅くと変化を付けた三角形の点状に蹴ったような鏨使いで連続した線を描写する方法。同様に壺の周囲と切羽台の周囲、雲の輪郭も蹴ったような三角の点描で表現している。雲の中と壺にのみ小さな円形の点刻を連続させている。地面は腐らかしを施して微妙な抑揚を付けており、これらが素材である素銅地に妙なる変化を生じさせている。味わい格別のものがある興味深い作である。73ミリ。□
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藻貝図鍔 古金工 Kokinko Tsuba

2014-08-12 | 鍔の歴史
藻貝図鍔 古金工


藻貝図鍔 古金工

 赤銅地高彫金色絵。背景には古拙な魚子地を施している。この鍔における彫刻手法としては、高彫に大小の点刻のみ。稚拙な魚子地であれば、魚子地は揃わずにいっそう砂浜に見えてくる。高彫された貝と藻草の表面にも点刻が散らされている。天地左右に配されているのは岩であろうか、この表面にも点刻があり、粒の大きさや布置を変えているのが良く分る。興味深いのは切羽台に打ち施されている点刻。無造作に散らされているように思えるが、唐草状に連なっているのが判る。その単に打ち込んだ小穴の周囲には魚子地と同じ鏨になる点刻が蒔かれており、装飾に工夫が凝らされていることが判る。頗る面白い作例である。66.5ミリ。
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菊花図鍔 古正阿弥 Koshoami Tsuba

2014-08-09 | 鍔の歴史
菊花図鍔 古正阿弥


菊花図鍔 古正阿弥

鉄地を鋤き込んで菊花状に仕立て、その表面に金の布目象嵌を施した作。耳に素銅地の覆輪状の金具を設けて装飾としている。布目象嵌が剥落して叢になっており、その表情が何とも魅力的だ。加えて、素銅地の表面を詳細に観察してほしいのだが、腐らかしによるものであろう、微妙な凹凸があり、面白い表情となっている。この手法により古正阿弥と極められたものであろうが、この鍔は肥後の国に伝わったもの。耳の金具の腐らかしの処理などは肥後平田や西垣にもあり、図柄そのものも肥後菊図であり、古正阿弥の手法を採り入れた肥後金工志水甚吾の作と推考される。この点が頗る面白い。桃山文化の影響下での作であろう、奇抜ながら洒落ており、美しい。83.5ミリ。
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四阿図鍔 正阿弥 Shoami Tsuba

2014-08-08 | 鍔の歴史
四阿図鍔 正阿弥


四阿図鍔 正阿弥

 江戸時代の正阿弥派の作。鉄地を肉彫にし、所々に鑢目を切り込んで金の布目象嵌としている。布目象嵌の技法の好例で、一部に露象嵌も散している。布目象嵌で軒先の苔生した様子を的確に表現している。江戸時代には、このように、あるいはさらに発展させて布目象嵌の美観を強めている。布目象嵌にも多様な技法があるので、いずれ紹介する。83ミリ。
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