鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

水辺に鷺図二所物 京後藤 Goto Futatokoro

2019-07-31 | 鍔の歴史
水辺に鷺図二所物 京後藤


水辺に鷺図二所物 京後藤

 蛇籠は川辺に水草の繁みをつくり淀みをつくり、そこが小魚の恰好の隠れ場所となる。鷺も寄ってくる。いい絵になる。人工的なものながら、絵画の添景としてはよく採られるのは、川辺の強く意識させる題材だからであろうか。確かに鷺ともよく合う。

水辺に鷺図小柄 Kozuka

2019-07-31 | 鍔の歴史
水辺に鷺図小柄


水辺に鷺図小柄

 江戸時代前期の作で、古調な意匠が素敵な作。赤銅地高彫で、わずかに水滴を金銀の露象嵌で表しているだけ。色金が少ない分落ち着きがあり、静かな空気感を伝えている。古金工に通じる美しさを備えている。

水辺に鷺図鐔 庄内金工 Shonai Tsuba

2019-07-30 | 鍔の歴史
水辺に鷺図鐔 庄内金工


水辺に鷺図鐔 庄内金工

 古金工にも通じる、鄙びた風情を漂わせている作。蛇籠に水辺の岩、芦の繁る様子など、主題は水辺の風景であり遠く飛翔する鷺は添景のようなもの。総体に風景の文様化が進んでいる。

柳に鷺図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2019-07-29 | 鍔の歴史
柳に鷺図目貫 古金工


柳に鷺図目貫 古金工

 古調な作。打ち出し強くふっくらとさせ、地を透かして主題を際立たせている。室町時代の特徴的な作風。柳の枝垂れ掛かる様子、その流れるような幹、翼を休める鷺との構成が見事。

山水に水辺鷺図鐔 古金工 Kokinko Tsuba

2019-07-27 | 鍔の歴史
山水に水辺鷺図鐔 古金工


山水に水辺鷺図鐔 古金工

 表裏図変りとした、古刀期に間々みられる構成の鐔。赤銅地の素朴な石目地に高彫金銀の色絵。鐔全体に題材を散し配している。金家のように空白を活かして主題を一部にのみ描くという構成は、もう少し時代が下ってのものであろう。空白を活かしたほうが作品として良いと感じるのは、鑑賞者の勝手。作者はそれぞれの時代において、時代の要求で製作している。

鷺図鐔 一拳 Ikken Tsuba

2019-07-26 | 鍔の歴史
鷺図鐔 一拳


鷺図鐔 一拳

 後藤一乗門下の一拳の作。水辺の鷺を題に得ている。鷺は一年中見かけることから、俳句でも季語にはならないようだ。この鐔では浮草があるも、繁茂する植物は単に水辺の添景という意味であろう、夏の風景に間違いない。鷺を切羽台に表現している鐔は師の一乗にもあり、面白い構成である。

葛図小柄 埋忠 Umetada Kozuka

2019-07-22 | 鍔の歴史
葛図小柄 埋忠


葛図小柄 埋忠

 埋忠一門の特徴的文様化された葛図作品。朧銀、あるいは山銅地に平象嵌の手法。墨絵のように感じられるのが面白く、墨絵象嵌とも呼ばれる。埋忠の平象嵌は、時代の下ったかが象嵌のような諸工の平滑な処理に比較して、象嵌部分に量感があるのが特徴。葛は野を覆いつくすように成長する。熱い夏を象徴する植物だ。葛根と呼ばれ、薬効があることも図に採られた理由。


葛図小柄 

 時代の上がる、美濃彫様式の葛図小柄。くっきりと高彫されているのが良く判る。特に図柄の際端を削ぐようにしている。

茄図目貫小柄二所物 古金工 Kokinko Futatokoro

2019-07-19 | 鍔の歴史
茄図目貫小柄二所物 古金工


茄図目貫小柄二所物 古金工

 夏の植物を題とした作品を紹介している。茄というと秋の食べ物のように感じるが、夏の盛りに、もぎたての茄をたたき割って塩を振りかけただけでいただく。胡瓜やトマトと同じ食べ方だが、とても美味しい。夏の植物と考えていいだろう。古くから小道具にも採られているのは面白い。薬種とされていたのであろう。縁頭は江戸時代の奇麗な彫刻表現。

夏草図三所物 信壽 Nobutoshi Mitokoro

2019-07-18 | 鍔の歴史
夏草図三所物 信壽


夏草図三所物 信壽

 菊は秋草に数えられるが、秋草とは晩夏の植物のこと。この三所物で主たる存在感を示している芙蓉の持つ盛夏の印象とは少し温度差があるかもしれない。芙蓉のほかには、朝顔、百合、鉄線、撫子、秋海棠のようなもの、野菊、萩、桔梗、菊、ツワブキ、蓬であろうか、金地に高彫で赤銅や銀の色金を多用し、暑い真夏の空気感を創出している。

ノキシノブ図縁頭 勝國 Katsukuni Fuchigashira

2019-07-17 | 鍔の歴史
ノキシノブ図縁頭 勝國


ノキシノブ図縁頭 勝國

 夏の植物というより、夏の風物。歯朶を軒に吊るして涼感ある空間を演出する。日本的な美観を題材としたもの。このような空間に出会うと、ほっとする。ギンギンに冷房したビルにいると、悲しい気分におちいってしまう。勝國は水戸金工。

蕗図鐔 秋田正阿弥 Akita-Shoami Tsuba

2019-07-16 | 鍔の歴史
蕗図鐔 秋田正阿弥


蕗図鐔 秋田正阿弥

 冬の終わりころに固く結んでいた蕾が、暖かな陽光を受けて花を咲かせる。フキノトウと呼ばれたそれが、夏にはこのように大きな葉をだす。なんて不思議な植物だろう。この鐔は、その造形的に魅力がある。透かしと金線による葉脈も印象的。夏が待ち遠しくて夏の植物図の作品を紹介しているが、そろそろ梅雨も明けるのだろうか。

秋海棠図鐔 平田 Hirata Tsuba

2019-07-13 | 鍔の歴史
秋海棠図鐔 平田


秋海棠図鐔 平田

これも木陰でひっそりとしている印象の、夏の植物。ベゴニアと呼ばれる外来の同種の植物には太陽の下で華やかに咲くものもあるが、秋海棠は控えめな存在感がある。この鐔では、七宝による花も葉も、花の印象に沿うよう鮮やかに表現していないのがいい。

水引図小柄 後藤光晃 Mitsuakira Kozuka

2019-07-12 | 鍔の歴史
水引図小柄 後藤光晃


水引図小柄 後藤光晃

 ミズヒキも木陰に咲く清楚な花。大きく描いているのだが、後藤家らしい題材に取り組み、上品に表現している。写実的で生命感に満ちており、なにより美しい。後藤家の末の方の一人であるため、初期の工に比較して技量が落ちるように評価する方もいるようだが、どうなんだろう、並べて比較してみても決して技量が落ちるとは思えない。時代の上がる工を高く評価したい気持ちはわかるが、作品そのものをみてほしい。