鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

丁子唐草図縁頭 美濃 Mino Fuchigashira

2015-07-30 | 鍔の歴史
丁子唐草図縁頭 美濃


丁子唐草図縁頭 美濃

江戸時代初期の美濃彫様式の作。美濃彫の伝統を守ったもので、縁を高く仕立て、図柄の周囲を深く彫り込み、図を極端に肉高く表現するのが特徴。ここで、縁端部が意識されている点が見どころ。古くは甲冑類の飾り金具などに同様の縁を意識して文様を唐草状に展開させた例がある。その古様式を伝えるものとして捉えて良いだろう。このような高彫表現で、仮に端部に小縁が存在しなかったら、と考えるとどうだろうか。既に存在する作品に「もしこれがなかったら」などという評価は愚かなことだが、深彫に小縁の存在は欠かせない表現であり手法だと思われる。引き締まった空間が生み出されているのだ。
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家紋図小柄 古金工 Kokinko Kozuka

2015-07-23 | 鍔の歴史
家紋図小柄 古金工


家紋図小柄 古金工

 波を背景に家紋を散らした簡潔な図柄。波は地模様として好まれたらしく、多々の作品にみられる。この繰り返す波の運動に永遠の生命を感じると共に、大海の生産力、未知なるものを運び来る驚きなどなど、波の背後にあるものへの想いは大きい。さて、この小柄の端縁部は魚子地と金色絵による筋状装飾からなっている。額縁風で面白い。時代の上がる小柄そのものが珍しいのだが、江戸時代の小柄のような形式化が見られないのである。
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花卉図三所物 後藤光晃 Mitsuakira Mitokoromono

2015-07-17 | 鍔の歴史
花卉図三所物 後藤光晃


花卉図三所物 後藤光晃(花押)

 後藤宗家十七代目の光晃は、宗家の伝統を守ると同時に新趣の作風にも挑戦し、このような美しい空間からなる作品を生み出した。真黒な赤銅魚子地高彫金色絵、金の小縁と裏哺金で画面を引き締めている。四季の花々一つ一つがくっきりと鮮やかに感じられる。これが黒蝋色塗鞘の拵に備わっていたらと考えると感動的だ。どうしても拵総体の美しさへと想いが広がる。□
 下写真は金の縁がない小柄の作例だが、金の小縁がなくても素晴らしい。この作品の場合には、むしろ画面から外へと空間が連続しているように感じさせる。もちろん高い技量が備わってのものである。

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蓑亀図小柄 後藤廉乗 Renjo Kozuka

2015-07-16 | 鍔の歴史
蓑亀図小柄 後藤廉乗


蓑亀図小柄 後藤廉乗

装剣小道具には、描かれている文様や主題を強調したり鮮明にするために、その周囲に装飾を施すことがある。地文もそのひとつであるが、さらにその周り、即ち端部にも装飾を施すことがある。鐔では耳に装飾を加え、縁頭には小縁などを加えることがある。
 写真の縁頭は、端部をわずかに高く仕立てて金の色絵を施している。これによって柄と縁や頭の間に明るい線が生まれ、印象が強まる。特に黒糸と赤銅地の縁頭を分ける金の線は目立つ。
 後藤家の小柄が典型。赤銅地の地板を一段鋤き下げた部分に別彫りの赤銅魚子地高彫色絵とした地板を嵌め込み、その周囲である下地部分には金の薄い板を被せる。そのまま裏板まで金で包み、裏には鑢目を施す。これが金哺(きんふくみ)である。赤銅地の図柄の周囲が金の縁で装われて額縁のような雰囲気が高まる。絵画的な装飾を目的としたことが判る。上の写真例は後藤廉乗と極められた作。伝統を守った図柄であり、また表現手法である。□
 下の柄は、縁頭に金の小縁が効果的な作。



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狐図目貫 堀江興成 Okinari Menuki

2015-07-14 | 鍔の歴史
狐図目貫 堀江興成


狐図目貫 堀江興成

 案山子に身構える狐の表情が頗るいい。作者は阿波蜂須賀家に仕えた堀江興成。精巧緻密な彫刻を得意とし、特に平安王朝美を再現するような雅な作品を多く遺している。案山子などは、現代風にみるなら田舎くさい風景図とも感じるが、江戸時代にはもっと身近なものであったろう。江戸府内にも狐やタヌキがいたのだ。金無垢地容彫に置金手法。下地である金にも調子がある。銀を混ぜ込んだ金を用いて色調に変化を求めているのだ。
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雀図目貫 松下亭元廣 Motohiro Menuki

2015-07-11 | 鍔の歴史
雀図目貫 松下亭元廣


雀図目貫 松下亭元廣

 上から見ただけでは金地なのか朧銀地なのか判らないだろうが、雀の頭の拡大写真を見ると、二層に地金の質が異なっていることは明瞭。下地は裏の観察で金無垢地、これに銀、素銅、朧銀の塑像を置金し、さらに要所に赤銅や素銅の平象嵌を加えている。松下亭元廣は江戸後期の京都金工で、精巧緻密な彫刻表現を得意とした。雀の目の表情が特にいい。
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鳩図目貫 Menuki

2015-07-09 | 鍔の歴史
鳩図目貫


鳩図目貫

 金無垢地に高彫などの手法で別彫りした各部を溶着させる手法が置金。象嵌ではなく、金の上に置くように固着させている点が見どころであり、芋継と同様に、素材が擦り減ってもなおその特徴ある色合いを失わないことから、象嵌と同じ目的で用いられたものだが、象嵌は脱落の可能性がある点で異なる。上からの観察では分り難いが、際端をみれば一目瞭然。金地の上に別彫りの塑像が重ねられていることが判る。

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猛虎図目貫 後藤光乗 Kojo-Goto Menuki

2015-07-06 | 鍔の歴史
猛虎図目貫 後藤光乗


猛虎図目貫 後藤光乗

金地、あるいは赤銅地への平象嵌は鮮やか。この目貫では二疋虎の姿がいい。構成が巧みであり、しかも二疋が視線を合わせているところが古典的で深い意味を秘めているといった感がある。作品が持つ印象は、もちろん作者の意図するところが表現されているのか、否か、技量の差異がそこに出るのだが、細部まで緻密に彫り上げる彫刻技術はもちろんのこと、このような構成美まですべてにおいて光乗は優れていた。金地の明るさを突き詰め、赤銅の黒を活かすためにも芋継の手法を採り、要所に金あるいは赤銅の平象嵌を加えている。ただただ唸って、見入ってしまう作品である。

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牧童図目貫 後藤徳乗 Tokujo-Goto Menuki

2015-07-04 | 鍔の歴史
牧童図目貫 後藤徳乗


牧童図目貫 後藤徳乗

 後藤宗家五代徳乗と極められた目貫。図柄は十牛図に取材したものであろうが、牧童の表情が豊かであり、禅の教えとは離れても十分に楽しめる。二疋の牛が主題であることはもちろんで、その表現は後藤のもの。牛の姿勢や動きが画一的にならず、しかも牧童の存在によって画に物語的な広がりが感じられる。この種の図が多い理由が理解できよう。金無垢地打ち出しに、わずかに衣服の文様部分に赤銅の細い線状平象嵌を加えている。赤銅地の色絵部分との比較で、この技法の持つ意味が理解できると思う。
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唐人物図目貫 後藤 Goto Menuki

2015-07-01 | 鍔の歴史
唐人物図目貫 後藤


唐人物図目貫 後藤

 桃山時代の後籐の作。容彫された金地と赤銅地を、中央辺りで芋継(合着)しているのが裏行で判る。金の処方においても、表の金無垢地部分と、手綱などの赤銅の上に金色絵とされた部分の比較をしてみると良く判る。当然のことだが、金無垢地の方が色調子において優っている。
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