鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

松樹に雉子図鐔 荒井辰成 Tatsunari Tsuba

2014-03-31 | 
松樹に雉子図鐔 荒井辰成


松樹に雉子図鐔 銘荒井辰成(花押)

 朧銀地高彫金銀素銅色絵象嵌。老松に蔦の絡まる様子は秋。その下に独り立つ雉子は高彫に翼文様は素銅の色を活かした平象嵌で鮮やか。独特の世界観が窺える作品である。ちょっとシュールに感じられるところが魅力であり、辰成なる金工については有名ではないものの、その感性を再確認したいところである。

雉子図鐔 石黒是美 Koreyoshi Tsuba

2014-03-29 | 
雉子図鐔 石黒是美


雉子図鐔 銘石黒是美(花押)

 石黒派が最も得意とした正確な構成で精巧細密に彫り出し、写実表現した花鳥図。雉子は桜などと共に描かれることが多く春の鳥として捉えられることが多いのだが、このように眺めてみると、春に留まらない、夏から秋にかけて活躍する鳥、即ち季節感を特に持たない鳥とされているようだ。草の陰に寄り添う雌雄の雉子。ただ眺めていたい作品である。是美は政美の子で、後にその二代目を襲う。幕末の名工の一人である。






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雉子図縁頭 岩本昆寛 Konkan Fuchigashira

2014-03-28 | 縁頭
雉子図縁頭 岩本昆寛


雉子図縁頭 銘岩本昆寛(花押)

 朝日を背景に繁殖期のオスの、大きく翼を広げて母衣打ちと呼ばれるアッピールをしている場面。赤銅魚子地に高彫金銀朧銀素銅の色絵象嵌。魚子地に薄肉彫、遠くの雲は金色絵、空間を活かした構成で、もちろん雉子は細部まで精密。昆寛には鳥に題を得た作品が多い。いずれ、幾つか紹介できるだろう。











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狐に雉子図縁頭 利壽 Toshinaga Fuchigashira

2014-03-27 | 縁頭
狐に雉子図縁頭 利壽


狐に雉子図縁頭 銘利壽(花押)

 突然の狐に驚く雉子。顔にハート形の赤色文様が浮かび上がっていることから繁殖期にある様子。自然界の一場面を捉え、攻撃的な狐の存在を活かしている。とは言え、なんとなくマンガみたいであるところがうれしい。精巧細密でありながらも硬質な鋭さを避け、暖か味の感じられる作としているのである。江戸に隆盛した奈良派の名工利壽。赤銅石目地高彫、的確な金銀素銅の色絵表現。











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椿に雉子図小柄 Kozuka

2014-03-26 | 小柄
椿に雉子図小柄

椿に雉子図小柄 

 早春の水辺に佇む雌雄の雉子。我が国の春の一場面を美しく表現している作品。赤銅魚子地に、赤銅の黒を活かした金銀素銅の色絵をくわえて鮮やかな場面としている。写実的で精密な彫刻による雉子の動きがいい。傍らに咲く椿のありようもいい。流れる小川も、遠くが霞んでいるように省略され、しかも描かれているところは写実的だ。








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雉子図小柄 堀江興成 Okinari Kozuka

2014-03-25 | 小柄
雉子図小柄 堀江興成


雉子図小柄 銘堀江興成

 二月の大雪では、電車も止まり、吹雪の中を歩いて帰った。その折、毎年のような春が来るのだろうかと感じたが…、必ず春が訪れるのは我が国。その自然観。
 藤原定家が一年十二ヶ月の花鳥に擬えて詠んだ和歌に取材した作品の一。

花…桜
かざしをる道行人のたもとまで 桜に匂うきさらぎの空
鳥…雉
かり人のかすみにたどる春の日を つまどふ雉のこゑにたつらん

 もちろん男女の間で交わされた心模様が背景となっている。赤銅魚子地高彫金銀色絵。絵画でもこの題が採られた例を見るが、絵画では決して表現することのできない世界がある。








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鳥刺に猟犬図鐔 岩本昆壽 Konju Tsuba

2014-03-24 | 
鳥刺に猟犬図鐔 岩本昆壽


鳥刺に猟犬図鐔 銘猩々夫岩本昆壽(花押)

 昆壽は岩本昆寛の高弟。鳥刺は、鷹狩に使われる鷹の餌を獲る職。犬を使って鳥を追い出すのであろうか。草の茂みから鳥が追い立てられた瞬間を巧みに描いている。装剣小道具に、このような成犬を描いた作が比較的少ないのは理由があるのだろうか。先に数点紹介したように、仔犬はとにかく愛らしいものだ。この鐔で飛び立つのは雀であろうか、あるいは雲雀か。師である岩本昆寛は、市井の人物に取材した作品や、様々な鳥の図の作品を遺している。昆壽のこの作品は、師の求めた世界観に通じている。

仔犬図目貫 Menuki

2014-03-22 | 目貫
仔犬図目貫


仔犬図目貫

 誕生したばかりの子犬。ころころとした愛らしい様子が巧みに表現されている。丸々とした目玉、手足も同様に愛らしい。犬が飼い主に対して従順であることに擬えて、犬侍などの言葉があるが、実は仕官の当てがなく浪人している侍からの妬み、あるいは反幕勢からの言葉であろう。仔犬は可愛らしいのだが、成長して後にどのような姿格好になるのだろうか、楽しみでもあろう。犬は、決して悪い意味合いで描かれることはない。柄に巻き込まれているため見難いが、ご容赦願いたい。

仔犬図小柄 Kozuka

2014-03-20 | 小柄
仔犬図小柄


仔犬図小柄

 江戸時代後期の作とみているのだが、ここにも貝殻で遊ぶ仔犬が描かれている。このような仔犬のおもちゃは伝統的なものなのであろうが、意味が良く分らない。愛らしい姿が春の野山を背景に描かれている。真鍮地高彫色絵。

仔犬図小柄 後藤光理 Mitumasa Koduka

2014-03-18 | 小柄
仔犬図小柄 後藤光理


仔犬図小柄 銘後藤光幸(光理)

 快活に遊んでいる仔犬を描いた、後藤宗家十二代光理の作。こうして眺めると、仔犬でさえ後藤家の作品には二疋獅子や二疋牛などの構成と同じ、阿吽の意識が表わされていることが分る。動きと生命感が特に良く現れている。

仔犬図目貫 後藤宗乗 Sojo-Goto Menuki

2014-03-17 | 目貫
仔犬図目貫 後藤宗乗


仔犬図目貫 後藤宗乗

 やはり何かしらの器物をくわえて遊ぶ仔犬を題に得た目貫で、後藤宗乗と極められている。宗乗は室町時代の金工。現代では、この犬がくわえている鋤のような、羽箒のようなものが何を意味しているのか良く分らない。裏目貫の方は扇をおもちゃにしているようだ。首輪があり、単に遊んでいる様子というだけでなく、次第に闘犬など成長してゆく仔犬の姿が思い浮かぶ。




仔犬図笄 古後藤 Goto Kogai

2014-03-15 | 
仔犬図笄 古後藤



仔犬図笄 古後藤

 アワビの貝殻であろうか、紐を付けたその貝殻をくわえて遊ぶ仔犬。良く見かける図柄だが、伝統的な何かを意味しているのか、単に遊んでいる姿として捉えたものか良く分らない。仔犬の快活な様子が古風な彫口で表されている。赤銅魚子地に据紋した工法だが、裏面にからくり止めしている様子が現れており、時代の上がる工法の一つであることが窺え、作品の面白さに加えて技術面でも楽しめるものである。

仔犬に早蕨図鐔 宗光 Munemitsu Tsuba

2014-03-14 | 
仔犬に早蕨図鐔 宗光


仔犬に早蕨図鐔 銘宗光作


 生まれたばかりの子犬の脇に、やはり萌え出たばかりの蕨。両者の丸々と膨らんだ様子が愛らしい。暖かい太陽の存在が明示されている作品である。こんな季節が最も好きだという方が多いと思う。筆者もそんな一人であり、暖かな日差しの下での散策がしてみたくなり、丹沢辺りを目指すのが例年である。

芍薬図鐔

2014-03-13 | 
芍薬図鐔


芍薬図鐔

芍薬
 「立てば芍薬、座れば牡丹…」などという言い回しがあるのだが、よく似た牡丹と芍薬の違いはどこにあるのだろうか。芍薬は草で冬枯れがあり、牡丹は木のままで冬を越える、というように違いは明確だが、それでもよく似ているし、花が咲いている頃には普通に混同して「牡丹」と思ってしまう。一般に背丈は芍薬の方が低く、牡丹が大きく育つ。とすれば「立てば芍薬…」は逆か。葉も違い、牡丹は掌のように大きく広がり、芍薬は比較的細くなるそうだ。すると、この鐔の図は芍薬に違いない。