鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

刀剣関連初心者本のブームで・・・

2015-04-18 | その他
再度のお知らせ

半月ほど前にお知らせしたように、現在、空前の刀剣関連の出版ブームであります。背景に、刀剣をキャラクター化したゲームが流行しているからとのこと。刀剣そのものへの関心が高まっているのではなさそうだが、それでもゲーム好きの中にはお店にも鑑賞に来られる場合がある。御刀の販売にはつながらないのだが、刀剣店としては、少しでも理解をしていただこうと、容易な説明を心がけるなど対応は欠かせない。同時に歴史関連以外の出版社から刀剣関連のムック誌を出したいとの相談が頗る増え、その対応も容易ではない。多くは写真を貸してほしい、ということだが写真だけでおさまらず、説明にまで及ぶ。
宝島社から、さらに6月中にもう一冊出したいとの話があり、現在はその対応に追われる始末。
これら出版ブームの背後にある『日本刀大全』(学研)も、売れ行きは好調で、その初心者版(元来が初心者向けの本だからさらに易しくしたもの)も出ることになった。もちろん『日本刀大全』ⅠとⅡの良いところを集めたもの。
このような状態であり、もうしばらく、このブログは虫食いのように飛び飛びで続けることになりそう。

茸透図鐔 古金工 Kokinko Tsuba

2015-04-18 | 鍔の歴史
茸透図鍔 古金工


茸透図鍔 古金工

 古くから、写真の鍔に施されているような虫食いの文様がある。古い倒木などにみられる虫食いの様子を鍔の意匠として採り入れたもので、この鍔では下に施された茸の透と対応させて、深い森の中を心象表現していると考えて良いだろう。山銅地を木瓜形に造り込み、耳際を薄手に仕上げ、小振りの土手耳に立てている。表面に鎚目を施して鋤彫を加え、所々に金と銀の象嵌で虫を表わしている。虫食い状の鋤彫は、もちろん意図的の施したものであるため、砂張鐔に見られるような自然の凹凸ではない。地模様にも唐草風の動きが感じられ、古様式の装飾性が感じられる。製作は室町時代から桃山頃の古金工と推考される。熔けた金属やガラスが冷却固化する際に収縮して生じた自然な穴や窪みとは異なるが、頗る面白い。

菊花図鐔 國友貞栄 Teiei Tsuba

2015-04-03 | 鍔の歴史
菊花図鐔 國友貞栄


菊花図鐔 國友貞栄

 溶融した金属などが冷却固化した際に収縮して微細な空隙を作ることがある。七宝のガラス質物質に似ている。その面白さは、鏨で彫るという作業では生じ得ない、頗る自然で、意図を超越した文様の創造である。焼物にも似ている。平面に仕上げて文様美を追求しながら、そこに自然な空隙を生じさせたのが砂張象嵌。さらに、文様の要素として、溶融しなかった金属や介在物もある。この鐔が良い例だ。何でこのようなことを考えたのであろうか。普通であれば汚いとか荒れているとか評価される表面だが、面白い「景色」に変じているのである。表は大胆な菊花に繊細な唐草文、裏は松葉に梅。すごい感性だ。