鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

粟穂に鶉図目貫 Menuki

2014-05-31 | 目貫
粟穂に鶉図目貫



粟穂に鶉図目貫

 丸々とした鶉が粟の落ち穂を啄ばむ図は、豊穣なる稔りの様子を表現したもの。暖か味のある色合い鮮やかな金無垢地を厚手に肉取りし、量感のある高彫としており、見るからに贅沢。嘴鋭く目もくっきりとし、羽根の重なる様子を綺麗に揃った毛彫で加え、さらに丁寧に細かな羽毛を描き加えて柔らか味のある肌合いを表現している。

秋草に鳥図縁頭 石黒是美 Koreyoshi Fuchigashira

2014-05-30 | 縁頭
秋草に鳥図縁頭 石黒是美


秋草に鳥図縁頭 銘 寛斎石黒是美作

 丸々とした雀と鶉。石黒派の中でも技術の優れた金工の一人であり、秋草や草花と鳥の組合せを間々見かける。もちろん花鳥図は石黒派の独創分野ではあるが、きらりと光るものが是美にある。雀の表情が愛らしい。カワイイなどと表現するものではない、とは思いつつも、そんな風情である。赤銅魚子地高彫金銀素銅色朧銀絵。わずか5種類の金属だが、ここには絵の具を用いた絵画を超越した色彩を感じてしまう。大変に優れた技術であると思う。世界に誇るべき芸術である。

竹林に雀図小柄 Kozuka

2014-05-28 | 小柄
竹林に雀図小柄


竹林に雀図小柄

 竹林に雀は、まさに舌切り雀。では、雀は本当に竹林に巣をつくるのだろうか。あるいは竹林に群れ集まるのだろうか。それを組み合わせて家紋にしてしまうなんて、なんて素敵なんだろうと思う。餌を探しているという雰囲気ではなく、何か語らっているかのような・・・、やはり昔語りが背景にあるのだろうか。

雀図小柄 光美 Mitsuyoshi Kozuka

2014-05-27 | 小柄
雀図小柄 光美


雀図小柄 銘 光美(花押)

 これも障子貼替えの糊を作るためのすり鉢。赤銅魚子地を背景に、他の景色を排除しているところは後藤流だが、ここからイメージするのは・・・舌切り雀の昔語りを思い浮かべてしまうが、まさにそんな風景だ。


雀図鐔 奈良正吉 Masayoshi Tsuba

2014-05-26 | 
雀図鐔 奈良正吉


雀図鐔 銘 奈良正吉(花押)

 如何なる場面を描いているのであろうか、カメラでスナップしたような、街角のとある瞬間を捉えているような図。暖簾をくぐる人物、それを横目で見ている犬。表にはすり鉢に雀。これは障子の貼り替えのための糊を作っているところであろうか。雀は頗る写実的表現。この表裏の組み合わせはいかなる意味があるのだろうか。意味は別として、確かに面白い瞬間を捉えていると思う。

籬秋草に雀図鐔 江戸金工 Tsuba

2014-05-22 | 
秋草に雀図鐔 江戸金工


秋草に雀図鐔 無銘江戸金工

 自然の野山を背景に採り入れた庭園がある。借景である。昨今では借景も可能な場がなくなりつつあるが、江戸時代には、ごく当たり前に借景も可能であったと思われる。そうした景色を借りるというわけではないが、庭園は外部の野山と連続しているのが当たり前で、わずかに垣根が内外の境界、しかもその境界と見なす垣根も景色となる。そのような空間を描いている。秋草が咲き、川がながれ、おそらく庭に引き込まれているのであろう。老松も落ち着いた空間を生み出している。雀や野鳥も、ごく当たり前に飛来して景色となる。赤銅魚子地高彫金銀素銅色絵。

雀図目貫 松下亭元廣 Motohiro Menuki

2014-05-21 | 目貫
雀図目貫 松下亭元廣


雀図目貫 銘 松下亭元廣

鳥瞰図などと呼ばれる視線がある。天空から見下ろした景色で、空を飛べない人間が、鳥にでもなったようなあり得ない視野を指すのだが、この目貫が、まさに小さな鳥瞰図、雀の視線でとらえた図と言っても良いだろう。刈りとられた稲がある。そこへ行っておなか一杯にしたいのだが、何やら近づけない仕組みがあるような気配。人に追われたのであろうか、あるいは空の上から人の立ち去る瞬間をまっているかのようである。だが、何とも優しい表現。金地容彫、銀朧銀素銅赤銅の置金色絵平象嵌を駆使している。

芦雁図目貫 古美濃 Komino Menuki

2014-05-20 | 目貫
芦雁図目貫 古美濃


芦雁図目貫 古美濃

 芦の構成に唐草の風合いが感じられる。光行などの作と同じ場面を捉えているのだが、ずいぶんと雰囲気が異なる。画風が違うとは絵画の表現だろうが、桃山時代以前に時代の上がる金工の中でも、特に創意高い金工が存在したことを証明するものであり、この分野の研究をしてもらいたいと願うのは私だけではないだろう。個名は見出せなくてもいい、単に古金工だとか古美濃だとかに分けず、もう少し詳しい分析と分類を試みてほしい。

帰雁図小柄 堀江興成 Okinari Kozuka

2014-05-19 | 小柄
帰雁図小柄 堀江興成



帰雁図小柄 銘堀江興成

花鳥十二ヶ月揃い小柄から

花…萩
秋たけぬいかなる色と吹く風に
 やがてうつろふもとあらの萩

鳥…雁
ながめやる秋の半もすぎの戸に
 まつほどしきる初かりの声

 思う人の到来を待ちわびる歌。芦と雁の取り合わせは、我が国の自然観が良く現れているものと思うが、萩との組み合わせも面白い。首を垂れた萩の叢枝が風を待っているように、自らも・・・。自然美に対する感性、我が国の自然に感謝したい。

落雁図縁頭 後藤光舊(奮) Mistufuru Fuchigashira

2014-05-17 | 縁頭
落雁図縁頭 後藤光舊(奮)


落雁図縁頭 銘後藤光舊(奮)

 菊岡光行の芦雁図と同じような場面を絵にしたものだが、落雁の言葉とおりに真っ逆さまに降下する雁を描いている。波は文様化されているが、雁の姿は比較的写実味があり、飛び立つ様子、頭を下げて鳴いている様子などすべてに動きがある。優れた作品だと思う。

三日月に雁図小柄 Kozuka

2014-05-16 | 小柄
三日月に雁図小柄



三日月に雁図小柄

 心象的表現である。即ち、このような景色を捉えることは不可能。絵であるが故に可能な表現である。波は片切彫で穏やかに続いており、その上を帰巣の雁が一羽。さらにその上から眺めおろしているわけであり、このように細い月は月齢1.5日ぐらいだから、空は明るくて見えないし、波にも映るはずがない。でも素敵な構成とされている。飛翔への憧れが生み出した想像の世界とも言えよう。朧銀地高彫金色絵、裏板には金と銀で赤銅の上に削継として装飾性を高めている。

月に雁図目貫 Menuki

2014-05-15 | 目貫
月に雁図目貫


月に雁図目貫

 歌川広重の月に雁図で良く知られているように、姿を現した夕月に帰雁の取り合わせは、素敵な画面構成である。落雁の呼称でも知られるように、帰巣の雁の様子は絵になる。目貫では、鶴などのように飛翔する姿が表わし易いのであろうか、ここでは雲間に月をと対比の構成としており、これはこれでまとまっている。目貫という限られた空間を活かすために月と雁を別に描いたのであろうか。

芦雁図小柄 吉岡因幡介 Inabanosuke Kozuka

2014-05-14 | 小柄
芦雁図小柄 吉岡因幡介



芦雁図小柄 銘吉岡因幡介

芦原に隠れて翼を繕う雁。芦の枝を横に伸ばして横画面を活かした構成としている。因幡介には、白鳥図小柄があり、同様の一羽の美濃描写で、水に浮かんでいる様子を描いた作がある。このような構成を好んでいたものであろうか、興味深い。