鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

帰雁図鐔 古赤坂 Akasaka Tsuba

2020-09-30 | 鍔の歴史
帰雁図鐔 古赤坂


帰雁図鐔 古赤坂

 三代と極められている古赤坂の作。赤坂鐔工は、江戸時代初期に京都から江戸に出てきた。京都での鉄地透鐔と言えば、京透、あるいは正阿弥派の雅な雰囲気の漂う鐔がある。即ち、赤坂鐔工の祖は正阿弥などに求められる。初、二、三代までの作には銘がないことから、古赤坂と呼び分けている。以降、忠時の銘を代々が襲名し、幕末まで続いている。この鐔では海原をゆったりとした波と帆掛け舟で表現している。赤坂の初期作は武骨な図が多いのだが、三代辺りから構成美を追求した作がみられるようになる。

柳に鷺図鐔 赤坂忠時 Tadatoki Tsuba

2020-09-28 | 鍔の歴史
柳に鷺図鐔 赤坂忠時


柳に鷺図鐔 赤坂忠時

 江戸時代後期、六代忠時の作。かなり洗練された図柄だ。柳の枝垂れた様子や鷺の姿態に赤坂の特徴が良く現れているのだが、鷺の小魚を狙う様子も見事に表現されている。透かしの面白さだけではないよ、と言いたげな作品である。

飛蝗図縁頭 安則 Yasunori Fuchigashira

2020-09-18 | 鍔の歴史
飛蝗図縁頭 安則


飛蝗図縁頭 安則

 この縁頭の鑑賞ポイントは、縁に描かれている菊の葉を貝殻の象嵌で描き表しているところにある。虫の図を鑑賞しているつもりであったのだが、風変わりな素材の作品があったことに気付き、貝殻象嵌に目が行ってしまった。大胆な構成。菊の花はほとんど描かれていないが、なんとも優雅で美しい。貝殻が活きている。飛蝗は高彫に金色絵であったのだが、所々擦り減って素銅地が出ている。なんともその風合いがいい。

鉈豆に虫図小柄 薩摩金工 Satsuma Kozuka

2020-09-18 | 鍔の歴史
鉈豆に虫図小柄 薩摩金工


鉈豆に虫図小柄 薩摩金工

 小柄の本体を鉈豆で意匠し、虫は高彫。薩摩の鐔工は鉈豆図の鉄地肉彫地透の手法で造っている。その強靭な風合いが魅力で、武骨の印象が強いのだが、このような赤銅地に虫を高彫で添え描いて武骨だけではないところを示している。□

蝶図小柄 後藤一乗 Ichijo Kozuka

2020-09-17 | 鍔の歴史
蝶図小柄 後藤一乗


蝶図小柄 後藤一乗

 正確な構図、精密な彫口で彫り出された蝶。小川の流れを銀の線象嵌で表しているだけ。なんて美しいのだろう。装剣小道具はこれ以降どこへ行ってしまうのだろうと感じさせる出来。

蛍図小柄 加賀象嵌 Kaga Kozuka

2020-09-17 | 鍔の歴史
蛍図小柄 加賀象嵌


蛍図小柄 加賀象嵌

 川辺の草むらで乱舞する蛍。背景を色合いの黒い朧銀地で表し、蛍の体は真っ黒な赤銅、発光の様子は金。精巧精密な図柄表現とは言えないが、雰囲気は蛍だね。でも、蛍なんてちょっと珍しい。

虫尽し図鐔 加賀象嵌 Kaga Tsuba

2020-09-16 | 鍔の歴史
虫尽し図鐔 加賀象嵌


虫尽し図鐔 加賀象嵌

 平象嵌を主体とする技法だが、所々に高彫を加え、その表面にも平象嵌を施している。石目地は少し粗目であり、これによって虫たちが一際くっきりと見える。加賀象嵌鐔に多い余白を活かした作風とは異なり、にぎやかな感じ。この感じもいいかなと思う。