鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

猛禽図縁頭 薩摩金工 Satsuma Fuchigashira

2014-06-09 | 縁頭
猛禽図縁頭 薩摩金工


猛禽図縁頭 無銘薩摩金工

 極肉高に彫り出された鷹。柏の樹の上で獲物を狙っている姿を頭に、縁には爪を隠して飛翔した様子を描いている。縁という金具を無視して表現しており迫力は常の数倍。彫口も高く鋭く精密で、特に嘴の表現がいい。

鶫図縁頭 Fuchigashira

2014-06-03 | 縁頭
鶫図縁頭


鶫図縁頭 無銘

 岩本昆寛の同図を手本としたものであろう、畑におかれた鍬に翼を休める群れ鶫。ちょっと一休み、といったわずかな時間に、鶫に鍬をとられてしまった。追い立てることもなく、飛び去るのを待っている農夫の姿が想い浮かぶ。江戸時代には普通に見られた光景であったろうが、鶫は乱獲されて激減したそうだ。赤銅魚子地高彫色絵。□

菊に鳥図縁頭 銘石黒政守 Masamori Fuchigashira

2014-06-02 | 縁頭
菊に鳥図縁頭 石黒政守


菊に鳥図縁頭 銘石黒政守(花押)

 何の鳥か判断ができない。脱穀後の稲藁であろうか、あるいは菊を囲う藁であろうか、そこに残されたわずかな米粒を探しに集まる鳥。藁の隙間から菊が延び出て花を咲かせている。素敵な風景である。政守は二代目政常の若銘。朧銀地高彫色絵。

秋草に鳥図縁頭 石黒是美 Koreyoshi Fuchigashira

2014-05-30 | 縁頭
秋草に鳥図縁頭 石黒是美


秋草に鳥図縁頭 銘 寛斎石黒是美作

 丸々とした雀と鶉。石黒派の中でも技術の優れた金工の一人であり、秋草や草花と鳥の組合せを間々見かける。もちろん花鳥図は石黒派の独創分野ではあるが、きらりと光るものが是美にある。雀の表情が愛らしい。カワイイなどと表現するものではない、とは思いつつも、そんな風情である。赤銅魚子地高彫金銀素銅色朧銀絵。わずか5種類の金属だが、ここには絵の具を用いた絵画を超越した色彩を感じてしまう。大変に優れた技術であると思う。世界に誇るべき芸術である。

落雁図縁頭 後藤光舊(奮) Mistufuru Fuchigashira

2014-05-17 | 縁頭
落雁図縁頭 後藤光舊(奮)


落雁図縁頭 銘後藤光舊(奮)

 菊岡光行の芦雁図と同じような場面を絵にしたものだが、落雁の言葉とおりに真っ逆さまに降下する雁を描いている。波は文様化されているが、雁の姿は比較的写実味があり、飛び立つ様子、頭を下げて鳴いている様子などすべてに動きがある。優れた作品だと思う。

芦雁図縁頭 菊岡光行 Mitsuyuki Fuchigashira

2014-05-13 | 縁頭
芦雁図縁頭 菊岡光行


芦雁図縁頭 銘菊岡光行

 大徳寺養徳院の襖絵として遍く知られている同図を手本としたものであろう、鉄地高彫象嵌になる作。この組み合わせは、我が国の自然風景を良く捉えたものとして好まれたのであろうか、作品化されたものが多い。この作では、縁と頭は別の部分に備えられるものだが、こうして眺めてみると、縁の芦原の雁と、舞い降りようとしている雁との視線が合一し、しかも鳴き声が聞こえてきそうなほどに嘴を開けている瞬間を捉えている。

鴛鴦図縁頭 石黒盛常 Moritsune Fuchigashira

2014-04-30 | 縁頭
鴛鴦図縁頭 石黒盛常


鴛鴦図縁頭 銘石黒盛常(花押)

 鴛鴦というと、冬の題として採られることが多い。ここでは夏の水草を添えて暖かな水のありようと空気感を演出している。朧銀地高彫に多彩な色金を用いた色絵と平象嵌。多彩な色金とは言うも、赤金銀銅素銅色違いの朧銀だから数種類程度。にもかかわらずこれほどまでに色彩溢れた空間を創出するのだから、金工の技術はすごい。特にこの作品では、縁に描かれている鳥の足を見てほしいのだが、水の中にあるその様子をぼかし表現で描きだしている。すごい技術だと思う。もちろん細部まで精巧で精密、的確な構成である。盛常は二代目石黒政常同人。

鷺図縁頭 春曙堂昆寛 Konkan Fuchigashira

2014-04-28 | 縁頭
鷺図縁頭 昆寛


鷺図縁頭 銘春曙堂昆寛(花押)

 岩本昆寛の手になる鳥図は比較的多く、いずれも我々を楽しませてくれる。朧銀地高彫に金銀赤銅の色絵を駆使して写実味のある空間を生み出している。鷺の姿を捉える視点も良いが、特に動きが良いことに気付くだろう。それぞれの動作の瞬間を写真のように捉えている。微妙にかしげた首の視線の先にあるのはなんだろうか、などと想像を働かせてしまう。

雉子図縁頭 岩本昆寛 Konkan Fuchigashira

2014-03-28 | 縁頭
雉子図縁頭 岩本昆寛


雉子図縁頭 銘岩本昆寛(花押)

 朝日を背景に繁殖期のオスの、大きく翼を広げて母衣打ちと呼ばれるアッピールをしている場面。赤銅魚子地に高彫金銀朧銀素銅の色絵象嵌。魚子地に薄肉彫、遠くの雲は金色絵、空間を活かした構成で、もちろん雉子は細部まで精密。昆寛には鳥に題を得た作品が多い。いずれ、幾つか紹介できるだろう。











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狐に雉子図縁頭 利壽 Toshinaga Fuchigashira

2014-03-27 | 縁頭
狐に雉子図縁頭 利壽


狐に雉子図縁頭 銘利壽(花押)

 突然の狐に驚く雉子。顔にハート形の赤色文様が浮かび上がっていることから繁殖期にある様子。自然界の一場面を捉え、攻撃的な狐の存在を活かしている。とは言え、なんとなくマンガみたいであるところがうれしい。精巧細密でありながらも硬質な鋭さを避け、暖か味の感じられる作としているのである。江戸に隆盛した奈良派の名工利壽。赤銅石目地高彫、的確な金銀素銅の色絵表現。











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群亀図縁頭 藪常代 Tsuneyo Fuchigashira

2014-03-01 | 縁頭
群亀図縁頭 藪常代


群亀図縁頭 銘松風軒藪常代(花押)

 これも水辺に生きる亀を描いたもの。大小揃い。朧銀地高彫に色絵。さらに自然味があり、池を覗き見たような、上からの視線のありようも良く分る。古典的な蓑亀といった作意はないようだが、鄙びた景色として捉えた作者の意識が伝わりくる。

群亀図縁頭 春明法眼 Haruaki Fuchigashira

2014-03-01 | 縁頭
群亀図縁頭 春明法眼


群亀図縁頭 銘春明法眼(花押)

 金無垢地高彫に様々な色金を用いて肉高く表現した蓑亀。長命を願い、あるいは得られた長寿に対して感謝の気持ちを表現したもの。金無垢地高彫に色金は置金の手法であり、贅沢感に極まっている。細部まで正確に彫り表わされた亀は、活きいきとして、という表現など陳腐に思えるほどに精巧。


対鶴図縁頭 安信 Yasunobu 

2014-02-18 | 縁頭
対鶴図縁頭 安信


対鶴図縁頭 銘安信

 真鍮地高彫銀色絵。地には霞を意図したものであろうか流れるような毛彫を加えている。縁は飛翔する姿を風景の中に眺めるように捉えているのだが、頭は明らかに対鶴(むかいづる)の家紋を意識したもので、鶴を対に意匠している。嘴は阿吽の意識を反映して一方が半ば開いている。鶴の身体は銀を主体に赤銅を組み合わせ、嘴のみ金色絵。安信は安親の門人とも二代安親の若銘とも言われている。素敵な作品である。