鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

桜花文透図鐔 刀匠・甲冑師

2010-03-20 | 
桜花に松皮菱透図鐔 刀匠


① 桜花に松皮菱透図鐔 無銘刀匠

 
②桜花文透図鐔 無銘甲冑師

 時代の上がる鐔の装飾は、Photo①の例のように極めて簡素である、この小穴は、腕抜緒(うでぬきお)と呼ばれる紐を通すためのもので、本来は装飾性が求められる要素ではないのだが、洒落者が単調な小穴に独創的で簡潔な装飾を施し、後に流行に至ったのであろう、桜花の他にも、梅花、酢漿草(かたばみ)などなど似た小透かしがある。鉄地を平滑にし、単純に小穴を穿っただけの作である。刀匠鐔(とうしょうつば)の起こりは、古い時代に、刀匠が自らの作刀に合わせて製作したことによるという。
 Photo②も同様に鉄地に簡潔な桜花の小透かしを設けた鐔。耳を一段高く仕立てており、この技法が甲冑金具に通ずるところがあるため、甲冑師鐔(かっちゅうしつば)と呼び分けている。ただし、刀匠鐔と称しても刀匠が、あるいは甲冑師と呼ばれる鐔を必ずしも甲冑師が製作したとは断定できない。
 鉄鐔の場合、彫刻の技術より、鉄肌そのものを楽しむ風があり、これが金工作品との大きな違いである。しかも掌中で撫でることによって鉄の風情を直接楽しむことが出来るところに古鉄鐔の魅力がある。一般に金工物は、手で触れると、微量の酸や塩気など汚れによって変色することがある。