枇杷に千鳥図小柄 堀江興成
藤原定家自選歌集『拾遺愚草』に取材。
花鳥十二ヶ月図揃い小柄より十一月
花 「冬の日は木草のこさぬ霜の色を 葉かへぬ枝の花ぞまがふる」
鳥 「千鳥なく賀茂の河せのよはの月 ひとつにみがく山あゐの袖」
枇杷に千鳥図小柄 堀江興成
藤原定家自選歌集『拾遺愚草』に取材。
花鳥十二ヶ月図揃い小柄より十一月
花 「冬の日は木草のこさぬ霜の色を 葉かへぬ枝の花ぞまがふる」
鳥 「千鳥なく賀茂の河せのよはの月 ひとつにみがく山あゐの袖」
立鶴図小柄 浜野保随
「なにはがたための葦をふみしだきなくらむたづはわがためにかも」
伊勢集より
鶴を題に得た作品は意外に多い。それらの多くは飛翔する様子を彫り描いているが・・・
残菊に鶴図小柄 堀江興成
藤原定家自選歌集『拾遺愚草』に取材。
花鳥十二ヶ月図揃い小柄より十月
花 「かみなづきしもよの菊のにほはずは 秋のかたみになにをおかまし」
鳥 「夕日かげむれたるたづは射しながら しぐれの雲ぞ山めぐりする」
尾花に鶉図小柄 堀江興成
藤原定家自選歌集『拾遺愚草』に取材。
花鳥十二ヶ月図揃い小柄より九月
花 「花すすき草のたもとのつゆけさを すてて暮れゆく秋のつれなさ」
鳥 「人目さへいとど深草かれぬとや 冬待しもに鶉なくらん」
浮舟図三所物 後藤程乗
源氏物語 浮舟に取材
薫が宇治に隠れ住まわせていた浮舟を、匂ノ宮が探し出し、自らのものとしてしまった。薫に比較して情熱的な匂ノ宮に魅かれる浮舟だが・・・苦しんだ末に自ら命を絶つことをえらぶ。
匂ノ宮 「長き世を頼めてもなほ 悲しきは ただ明日知らぬ命なりけり」
浮舟 「心をば嘆かざらまし命のみ 定めなき世と思はましかば」
江口君図鐔 大月光興
謡曲「江口」に取材した作。西行が遊女に詠みかける「世の中をいとうまでこそかたからめ 仮のやどりを惜しむ君かな」
遊女が「世をいとう人としきけば仮のやどに 心とむなと思うばかりぞ」と応じたという。
この鐔の図には江戸時代の禅僧東海沢庵和尚の詞書がある。
さらに興味深いのは、一休禅師が遊女地獄太夫と和歌を交わしているという伝承も重ねられていること。
遊里を歩く一休に地獄太夫が詠みかける。
「山居せば深山の奥に住めよかし ここは浮世のさかい近きに」
「一休が身をば身ほどに思わねば 市も山家も同じ住処よ」
一休がこれに応える。
一休髑髏図小柄 後藤程乗
「正月は冥途の旅の一里塚 めでたくもありめでたくもなし」
一休禅師の歌とされているが、一休の生き方に重ねられたものであろう。
萩に雁図小柄 堀江興成
藤原定家自選歌集『拾遺愚草』に取材。
花鳥十二ヶ月図揃い小柄より八月
花 「秋たけぬいかなる色とふく風に やがてうつろふもとあらの萩」
鳥 「ながめつつ秋の半も杉の戸にまつほどしるき初鴈のこゑ」
女郎花に鵲図小柄 堀江興成
藤原定家自選歌集『拾遺愚草』に取材。
花鳥十二ヶ月図揃い小柄より七月
花 「秋ならでたれもあひみぬ女郎花契りやおきし星合のそら」
鳥 「ながき世にはねをならぶる契りとて 秋まちわたる鵲のはし」
頼政鵺退治図目貫
二条天皇が鵺の鳴き声に夜も眠れぬ日が続く。そこで頼政が召し出され、弓で鵺を退治する。
この場面が良く描かれるのだが、『平家物語』では、頼政が和歌に優れていることを併せて述べている。
「人知れず大内山の山守は 木隠れてのみ月を見るかな」
この歌で昇殿を許され、
「昇るべきたよりなき身は木のもとに しゐを拾ひて世を渡るかな」
この歌で三位に昇進している。
常夏(撫子)に鵜飼図小柄 堀江興成
藤原定家自選歌集『拾遺愚草』に取材。
花鳥十二ヶ月図揃い小柄より六月
花 「大かたの日かげにいとふ水無月の そらさへをしき常夏の花」
鳥 「みじか夜のう河にのぼるかがり火の はやくすぎ行くみな月の空」
橘に水鶏図小柄 堀江興成
藤原定家自選歌集『拾遺愚草』に取材。
花鳥十二ヶ月図揃い小柄より五月
花 「ほととぎすなくや五月のやどがほに かならずにほふのきのたち花」
鳥 「まきのとをたたくくひなのあけぼのに 人やあやめの軒のうつり香」
胡蝶図目貫
『源氏物語』胡蝶に取材。
紫上 「花園の胡蝶をさへや下草に 秋待つ虫はうとく見るらむ」
斎宮 「胡蝶にも誘はれなまし心ありて 八重山吹を隔てざりせば」
桜の下での華やかな宴。胡蝶と迦陵頻伽に扮した子供が描かれる。
鶯宿梅図鐔
毎年訪れる鶯。梅の木が失われてしまい、この春にはどうなるのだろう。
紀内侍「勅なればいともかしこし鶯の 宿はと問はばいかが答えむ」
大鏡などに記されている伝承。梅の樹を持ち去った天皇に対し、和歌でやんわりと恨みを伝えている・・これが雅なんだろうな。