鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

桜花文金具拵

2010-03-24 | 
桜花金具拵



① 花筏図小柄 銘 磯部一秀(花押)

 
② 桜花図鐔 銘 一琴(花押)

 
③ 花筏図目貫 舟田一琴


④ 桜花文図頭




Photo①は満開の桜樹の下を流れる筏に取材し、その光景を文様ではなく写実味ある空間として表現した作。作者は出羽国庄内の金工で後藤一乗門人舟田一琴に学んだ磯部一秀(いっしゅう:信義同人)。素銅地を高彫とし、背景はさざ波立つ川面、筏は赤銅色絵、ここに桜が散りかかり、宙を舞う花弁は高彫銀色絵、波間に漂うそれは銀の平象嵌。裏板は春の桜に対する紅葉した楓で、春秋図としているのである。このような春と秋を対比で表現する例もあるが、春の風景としての桜と楓を採り合わせた桜楓図とした例もある。Photo②は一秀の師匠に当る舟田一琴(いっきん)の鐔。素銅地に毛彫のみで枝垂桜を簡潔に描き表わしている。一琴は後藤一乗の門人で、正確な高彫も遺しているが、本作のように強弱変化のある毛彫や片切彫、殊に幅広く断面に丸みのある甲鋤彫を得意とした。簡潔だが美しい鐔である。Photo③の花筏を文様化した目貫も舟田一琴の作。素銅地に銀の桜を、散りかかっているかのように添えている。Photo④の縁頭は桜花を文様化した作。横の留め金部分には桜を思わせる透かしを施している。これらはすべて素銅地。そしてこれらの取り合わせとなる拵が以下の写真である。折金部分は鹿図だが、鞘塗も花筏の文様。

揚羽蝶文蒔絵鞘短刀拵

2009-09-19 | 


 



 華麗な短刀拵を楽しんでいただきたい。
 池田家有縁の武家に伝えられたものと推考される、揚羽蝶の紋所を意匠した揃い物の小柄と目貫、鞘にも華やかに揚羽蝶を蒔絵した合口様式の拵。刀身は古名刀鎌倉時代の山城物が収められていたものであろう。
 小柄は漆黒の赤銅地を綺麗な魚子地に仕上げ、これに金無垢地を高彫とした色合い鮮やかな揚羽蝶の紋を据紋している。黒地に金を際立たせる組み合わせは大名道具としての掟。この拵では、深味のある紫灰色を呈する銀粉塗の出鮫柄を背景に、金無垢地の揚羽蝶紋を出目貫とし、ここでも黒地に金が映えるよう考慮している。鞘の表裏に施された蒔絵は、わずかに肉高く仕立てられた盛上蒔絵で、色を微妙に違えた金粉に銀粉を組み合わせ、蝶の向きを違えて紋を複雑に表現しており、華麗であり格の高さが漂いながらも妖艶な趣が充満している。時代の金着台付ハバキが遺されており、これも貴重な資料である。(小柄の背景が魚子地と呼ばれる綺麗に揃った微細な点の連続であるため、モニターによっては叢になり見え難い場合があります)

拵金具各部の名称

2009-09-19 | 





基本に戻って拵(刀を収める外装)各部の名称を確認する。
全ての拵が、この例にある全ての金具を備えているわけではない。小柄と笄はないものが多いし、頭を金具とはせずに角製としたものある。また、鞘尻に鐺金具を設けたものもある。