人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ガエタノ・デスピノーサ+ハイモヴィッツ+新日本フィルでショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番」 「交響曲第15番」他を聴く

2016年11月20日 09時13分59秒 | 日記

20日(日).わが家に来てから今日で782日目を迎え,米大統領選挙でトランプ氏が勝利して以来インフレ期待が高まり,債券価格の下落が続き,債券利回りが急上昇しているというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

           米の長期金利が急上昇してる? 気軽に米が買えないね 僕の牧草を食べる?

 

          

           何だ 米ってコメじゃなくてアメリカのことだったのか 恥かいちゃった!退場しよ

 

  閑話休題  

 

昨日,すみだトリフォニーホールで新日本フィル第556回トパーズ(トリフォニー・シリーズ)定期演奏会を聴きました  トリフォニーのロビーもクリスマス・モードです

 

          

 

この日のプログラムは①ロッシーニ「歌劇”ウィリアム・テル”序曲」,②ショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番変ホ長調」,③同「交響曲第15番イ長調」です ②のチェロ独奏はマット・ハイモヴィッツ,指揮はガエタノ・デスピノーサです

ショスタコーヴィチのコンチェルトとシンフォニーがメインのプログラムの中に,なぜロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲を1曲目に持ってきたか・・・・ショスタコーヴィチ好きは すぐにピンときます

オケのメンバーが配置に着きます.すると,”ちょっとした有名人”サスペンダーおじさんが おっとり刀で最前列に着きました その直後に登場したコンマスの豊嶋泰嗣氏が「なんだ このおじさん」という顔で見下しています 相変わらず 注目されたい性格が治っていないようです

オケの編成はいつも通り,左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという並びです 第2ヴァイオリン奏者・篠原英和氏も元気な姿を見せています

指揮者のガエタノ・デスピノーサは1978年,イタリア・パレルモ生まれの38歳.2013年9月からミラノ・ヴェルディ交響楽団首席客員指揮者を務めています

 

          

 

1曲目の「歌劇”ウィリアム・テル”序曲」は,ロッシーニ(1792-1868)が37歳のころに初演した4幕ものオペラの序曲です この物語はドイツのシラーの「ウィルヘルム・テル」に基づく英雄劇ですが,テルは伝説上の人物と考えられています 4部構成ですが,われわれが親しみを感じるのは第4部「アレグロ・ヴィヴァーチェ」の「スイス軍の行進」です トランペットのファンファーレに導かれ,スイス軍の勇壮な行進が敵を目指して突き進みます デスピノーサ+新日本フィルの小手調べといったところ.軽快に駆け抜けます

2曲目はショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番変ホ長調」です 1970年イスラエル生まれ,1984年に13歳でメータ指揮イスラエル・フィルのソリストとしてデビューを果たしたマット・ハイモヴィッツが登場します

この曲はチェロの巨匠ロストロポーヴィチに献呈されています 4楽章構成ですが,第3楽章はカデンツァ楽章なので実質的には急ー緩ー急の協奏曲スタイルをとっています 第1楽章の冒頭は,チェロにより 人をおちょくったような軽快な音楽で開始されます.こういうところは いかにもアイロニーが身上のショスタコーヴィチらしくて好きです  チェロの本領は低音の魅力ですが,第2楽章ではそれに逆らって高音の音楽を奏でます.ハーモニクス奏法(倍音奏法)と言うそうですが,これもショスタコーヴィチらしいところです 第3楽章のカデンツァは技巧的な音楽で,聴かせました.第4楽章は行進曲風の軽快なテンポが印象的です

会場いっぱいの拍手に,ハイモヴィッツはアンコールにバッハの「無伴奏チェロ組曲第3番」から「サラバンド」を鮮やかに演奏,再び聴衆の喝采を浴びました

 

          

 

休憩後はショスタコービチ最後の交響曲である「交響曲第15番イ長調」です この曲は第1楽章「アレグレット」,第2楽章「アダージョーラルゴーアダージョーラルゴ」,第3楽章「アレグレット」,第4楽章「アダージョーアレグレットーアダージョーアレグレット」から成ります

第1楽章を聴いていると,ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲の「行進曲」のメロディーが聴こえてきます ここで1曲目につながりましたね 第2楽章は金管楽器による荘重な音楽が展開しますが,まるでワーグナーの楽劇を聴いているようです 第3楽章では再びウィリアム・テルの行進曲が聴こえてきて,第4楽章ではワーグナー「ニーベルングの指環」の「運命の動機」と「トリスタンとイゾルデ」の「前奏曲」が聴こえてきます このように,交響曲第15番は他の作曲家の作品(自分の作品も,らしい)を自由に引用して,まるでパロディー音楽のような内容になっています この曲の作曲中,ショスタコーヴィチは「なぜこれらを引用したのか分からない」とお茶を濁しているらしいのですが,そんなことはないでしょう.アイロニーが身上のショスタコーヴィチのことですから,周到な計算が背景にあったことは間違いないと思います

ショスタコービチは聴けば聴くほど面白くなってくる作品が多いと思います 本番を聴くに当たっては予習するのが理想ですが,今回はベルナルト・ハイティンク指揮ロンドン・フィルのCDで予習しました

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

トリフォニーホールチケットセンターで,12月17日(土)午後4時からトリフォニーホールで開かれる「パイプオルガン クリスマス・コンサート」のチケットを買いました プログラムはバッハ「小フーガ ト短調」,チャイコフスキー「くるみ割り人形」から、クリスマス・キャロル・メドレーほか 出演者はパイプオルガン=山本真希,ソプラノ=鷲尾麻衣です 全席指定1,500円,理屈抜きで楽しみたいと思います

 

          

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ティーレマン+シュターツカペレ・ドレスデンでワーグナーの楽劇「ラインの黄金」を聴く~ザルツブルク イースター音楽祭 in JAPAN

2016年11月19日 08時38分23秒 | 日記

19日(土).わが家に来てから今日で781日目を迎え,今年の新語・流行語大賞候補30点が決まったという広告を見て感想を述べるモコタロです

 

          

              世界的には「EU離脱」か「トランプ現象」,国内的には「バケモンGO」かなぁ

 

  閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで「ザルツブルク イースター音楽祭イン ジャパン ~ ホール・オペラ ワーグナー:楽劇『ラインの黄金』」を聴きました サントリーホール前のカラヤン広場では光のクリスマス・ツリーが輝いていました

 

          

 

さて,この公演はサントリーホール開館30周年を記念して復活した”ホール・オペラ”です 「ザルツブルク イースター音楽祭」は,ヘルベルト・フォン・カラヤンが1967年に生まれ故郷のザルツブルクに私財を投じて創設した音楽祭です

キャストはヴォータン=ミヒャエル・フォッレ(バリトン),フリッカ=藤村実穂子(メゾ・ソプラノ),フライア=レギーナ・ハングラ―(ソプラノ),アルベリッヒ=アルベルト・ド―メン(バス・バリトン),ミーメ=ゲアハルト・ジーゲル(テノール),ローゲ=クルト・シュトライト(テノール),ドンナ―=アレハンドロ・マルコ=ブールメスター(バリトン),フロー=タンセル・アクゼイベク(テノール),ファーゾルト=ステファン・ミリング(バス),ファフナー=アイン・アンガー(バス),エルダ=クリスタ・マイヤー(メゾ・ソプラノ),ヴォークリンデ=クリスティアーネ・コール(ソプラノ),ヴェルグンデ=サブリナ・ケーゲル(メゾ・ソプラノ),フロスヒルデ=シモーネ・シュレーダー(コントラルト).管弦楽=シュターツカペレ・ドレスデン,指揮=クリスティアン・ティーレマン,舞台統括=デニー・クリエフです

指揮者のクリスティアン・ティーレマンは18歳からカラヤンのアシスタントを始め,21歳の時にこの音楽祭でカラヤン指揮による「パルシファル」の音楽助手を務めました 1997年から2004年までベルリン・ドイツ・音楽総監督を,2004年から2011年までミュンヘン・フィルの音楽総監督を務め,2012年にシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者に就任,2013年にザルツブルク・イースター音楽祭の芸術監督に就任しています

 

          

 

シュターツカペレ・ドレスデンは1548年にザクセン州のモリッツ選帝侯によって創立され,世界最古の歴史と伝統を誇るオーケストラの一つです 歴代の楽長にはウェーバーやワーグナーがいます このオーケストラはリヒャルト・シュトラウスとの関係が深く,「サロメ」「エレクトラ」「ばらの騎士」を含む9つのオペラを初演しています

私はこのオーケストラが大好きで,1973年(昭和48年)10月19日の来日公演(リヒャルト・シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」他:中野サンプラザ)を手始めに,1978年4月4日(ワーグナー「トリスタンとイゾルデ~前奏曲と愛の死」,ブルックナー「交響曲第5番」:東京文化会館), 78年4月19日(ベートーヴェン「レオノーレ序曲第2番」「交響曲第6番」「交響曲第7番」:日比谷公会堂),1981年6月13日(リヒャルト・シュトラウス「歌劇”ばらの騎士”」:NHKホール),81年7月6日(シューベルト「交響曲第8番”未完成”」,ブルックナー「交響曲第4番」:東京文化会館)と,ほぼ来日の度に聴いていましたが,それ以降はチケットが未整理のため(あるいは捨てたか)不明です.81年7月の公演が最後だったかも知れません その当時は,まだドイツが東西に分かれており,ドレスデンは東側にあったので,オーケストラは共産圏からやってきたのです

私がなぜこのオーケストラが好きになったのかと言えば,最初の公演(1973年)の時に聴いた「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」の演奏で,オーケストラから醸し出される伝統的ないぶし銀のような音色にすっかり魅了されてしまったのです あの時は,指揮者(クルツだったと思う)が急病で来日出来なくなり,ヘルベルト・ブロムシュテットが代わりに振ったのです 幸いチケットが整理されて残っていたので会場が中野サンプラザと分かったのですが,まったく覚えていません あの頃は,FM放送からベートーヴェンやブラームスの交響曲が流れてくるとシュターツカペレ・ドレスデンの音だ と判別することが出来ました

この頃の演奏で一番このオケの良いところが発揮されているのはクルト・ザンデルリンクが指揮をした「ブラームス:交響曲全集」(1971年録音)です ザンデルリンクは1960年から東ドイツのベルリン交響楽団の音楽監督・首席指揮者を務めていましたが,64年~67年の間はシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者を兼務しています 彼はこの期間以外にもたびたびスターツカペレ・ドレスデンでタクトを振っていたようです

 

          

 

ザンデルリンクが指揮をしたブラームスの交響曲全集は,ベルリン交響楽団を指揮した1990年録音盤があり,当時のクラシック界ではこの曲の決定版と言われていました しかし,個人的にはシュターツカペレ・ドレスデン盤の方が好きです

 

          

 

今回の公演を聴くに当たってマレク・ヤノフスキ指揮シュターツカペレ・ドレスデンによるCD(1980年12月録音)で予習しておきました

 

          

 

さて,話を本来の「ザルツブルク イースター音楽祭」に戻しましょう.サントリーホールの入口でアテンダントの女性に言われた言葉に驚きました.「本日は休憩がございません」.ワーグナーの楽劇「ラインの黄金」は正味2時間以上かかります.舞台転換の必要がないホール・オペラ(演奏会形式)とは言え,歌手陣にとっても聴く側にとっても極めて厳しい条件ではないか,と思いました しかし,出演者側の歌手とオーケストラも了承の上での ぶっ通し公演でしょうから文句を言う訳にもいきません 迷わずトイレに行きました

自席は2階LD1列4番です.左ブロック右から3つ入った席です.ちょっと意外だったのは,満席だと思っていたら6~7割程度の入りだったことです 1階席後方,2階席左右と後方に空きが目立ちます.ともにS席:43,000円,A席:36,000円という高額チケット代が空席の理由だと思われます なお,自席はB席ですが29,000円でした.これが高いか安いかはこの日の公演の出来不出来にかかっています

ステージ上はフル・オーケストラが後方にいくほど高くなるように段差を付けた床の上に配置されます.左から奥にコントラバス,前に左から第1ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリンという対向配置をとります.右サイド奥にはハープが6台スタンバイしています

歌手陣が歌う場所はP席を舞台に代えた特設ステージです 背景は4枚の大きなふすまに墨で山々を描いたような“墨絵”のような景色で,ちょっと違和感があります 舞台統括のデニー・クリエフが 日本公演ということを意識してわざわざこうした舞台背景を用意したとすれば,それは違うのではないか,と思います ワーグナーの楽劇には似合いません

 

          

 

ティーレマンが登場し指揮台に上がります.オーケストラ・ピットに入る時のように椅子に座って指揮をします ステージの照明が落とされ,演奏者は各自の楽譜を照らすスポットライトを頼りに演奏します.さっそく序曲の演奏に入りますが,この音楽はラインの河底の様子を描いています.低弦の弱音から始まって,徐々に楽器が加わって大きなうねりとなります.こういうところがワーグナーの最大の魅力です 少しずつ変化があり,いつの間にかとんでもない大きな変化を遂げているような感じです 

第1場で最初に登場するのはラインの黄金を守る3人の乙女ですが,これは普通だと思いました しかし,乙女たちと戯れたいとニーベルング族の小人・アルべリヒ(バス・バリトン=アルベルト・ド―メン)が登場して歌を歌うと,これが凄いのです 第2場では神々の長ヴォータン(バリトン=ミヒャエル・フォッレ)と 妻で婚姻の神フリッカ(メゾ・ソプラノ=藤村実穂子),そして火を司る半神ローゲ(テノール=クルト・シュトライト)が登場しますが,これがまた凄いのです さらに,この場ではヴォータンが巨人たちに建設させていたヴァルハル城の報酬としてフリッカの妹フライア(愛と青春の女神)を与える約束になっていたのですが,このフライア(ソプラノ=レギーネ・ハングラ―)が凄いのです その時,シュターツカペレ・ドレスデンの迫力たっぷりの演奏に乗って登場する巨人族の兄ファーゾルト(バス・バリトン=ステファン・ミリング)と弟ファフナー(バス=アイン・アンガー)がまた凄いのです 

このように出てくる歌手すべてが世界のオペラハウスで歌っている超一流の歌手ばかりなのには圧倒されっ放しです 極め付けは第4場で,この楽劇で一度しか出てこない智の神エルダ(メゾ・ソプラノ=クリスタ・マイヤ―)です この人は2015年10月の新国立オペラにエルダを歌ってデビューしていますが,たった1度の出番で聴衆の心を鷲掴みします

 

          

 

このように,この公演は「よくもここまで世界中から凄い歌手陣を揃えたものだ」と言いたくなるようなレヴェルの高いアーティスト揃いでした 実力からして,誰もが主役を張れる歌手陣だと思いました

さて,最後にシュターツカペレ・ドレスデンの演奏ですが,さすがに30~40年前に聴いたオケの音とはまるで違っていました 歴史と伝統が続いているとは言え,構成メンバーも変わっているし,他のオーケストラと同様,インターナショナル化が進んでいるように思いました 個人的には東ドイツ時代のシュターツカペレ・ドレスデンの方が良かったと思いますが,その後 東西ドイツの統一など 政治・経済的変化もあり,オーケストラも変わらざるを得なかったのでしょう そうは言うものの,この日のシュターツカペレ・ドレスデンは首席指揮者ティーレマンの完璧な統率力のもと渾身の演奏を展開していました

最後の音が鳴り終わってから,しばし しじまがあり,ティーレマンがタクトを下すと会場割れんばかりの拍手とブラボーがステージに押し寄せました これ程レヴェルの高い演奏は滅多に聴く機会がないでしょう 間違いなく今年のマイ・ベスト5に入ると思います

 

          

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新国立オペラでプッチーニ「ラ・ボエーム」を観る/倉澤唯子(Ob)でヴォーン・ウィリアムズ,小林壱成(Vn)でショスタコーヴィチの協奏曲を聴く~東京藝大

2016年11月18日 08時00分13秒 | 日記

18日(金).わが家に来てから今日で780日目を迎え,日本銀行が国際を無制限に購入することを金融機関に通知したというニュースを見てひと言述べるモコタロです

 

          

            国債をそんなに購入しちゃって大丈夫なの? いつか酷債にならないかなあ?

 

  閑話休題   

 

昨日,夕食に「サバの塩焼き」「生野菜サラダ」「トン汁」を作りました サバは鮮魚専門店で買ってきたので新鮮です

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日はコンサートのハシゴをしました まず午前11時から上野の東京藝大奏楽堂で「モーニング・コンサート」を聴きました プログラムは①ヴォーン=ウィリアムズ「オーボエ協奏曲イ短調」,②ショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調」です.①のオーボエ独奏は倉澤唯子,②のヴァイオリン独奏は木林壱成,指揮は山下一史です

全自由席なので,1階14列24番のセンターブロック右通路側を押さえました 1曲目のR.ヴォ―ン=ウィリアムズ「オーボエ協奏曲イ短調」は,オーボエと弦楽のための協奏曲なので,まず弦楽奏者だけが配置に着きます オーボエ独奏は東京藝大4年生の倉澤唯子さんです.指揮者・山下一史と共に ホワイトの鮮やかな衣装で登場した彼女は,同じ藝大の大学院生で東響の首席オーボエ奏者・荒木奏美に全体の雰囲気が似ています

レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ(1872~1958年)は英国の王立音楽学校とケンブリッジ大学で学んだ幅広い教養を持った作曲家です この協奏曲はイギリスの名オーボエ奏者レオン・グーセンスのために作曲されました

第1楽章「ロンド・パストラール」,第2楽章「メヌエットとミュゼット」,第3楽章「終曲:スケルツォ」から成ります 山下一史の指揮で第1楽章に入ります.穏やかで美しいメロディーは,いかにもイギリスの地方の広々とした風景が目に浮かぶようです 作曲者がオーボエの特性を良く知った上で作ったことが窺える曲想です 第2楽章を経て第3楽章に入りますが,ここではひと際オーボエの美しいメロディーが会場に響き渡ります.カデンツァも見事でした

彼女はモダン・オーボエを小畑善昭氏ほかに,バロック・オーボエをバッハ・コレギウム・ジャパンのオーボエ奏者・三宮正満氏に師事しているとのことです バロック面での活躍も期待したいと思います

 

          

 

後半はショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調」です 演奏するのは藝大4年生の小林壱成君です.第84回日本音楽コンクール第3位,モーツアルト国際室内楽コンクール2014第2位ほか,多くのコンクールに入賞しています 私も名前だけは知っていました

ショスタコーヴィチ(1906-1975)はこの曲を1947-48年にかけて作曲しました.当時はいわゆる「ジダーノフ批判」によって,この曲の発表は見送られ,スターリンの死後 1955年にダヴィッド・オイストラフのヴァイオリン独奏,エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルによって初演されました

第1楽章「ノクターン:モデラート」,第2楽章「スケルツォ:アレグロ」,第3楽章「パッサカリア:アンダンテ」,第4楽章「ブルレスク:アレグロ・コン・ブリオ」の4楽章から構成されています 山下一史の指揮で第1楽章が低弦の序奏から重々しく開始されます この楽章を聴いていて いつも思うのは「これはショスタコーヴィチのモノローグではないか」ということです.表に出せない鬱積した気持ちを吐露しているように感じます

第2楽章「スケルツォ」は冒頭,バスクラリネットとフルートによって諧謔的な旋律が奏でられ,ヴァイオリンが荒々しく入ってきます ベートーヴェンやショスタコーヴィチの作品では,美しく響かせるよりも なりふり構わず荒々しく演奏した方が良いところがありますが,この楽章がそうです.小林壱成の演奏はまさにそうした演奏で,なかなかセンスがいいと思いました   と思っていると,ヴァイオリンから「プツン」という音が聞こえました.どうやら弦が切れたようです  ソリストは慌てずコンマスのヴァイオリンと取り替えてすぐに演奏を続けました  弦が切れたヴァイオリンは副主席からヴァイオリン・セクションの後方に回され,最後方の奏者が舞台裏に持っていきました.その後の小林壱成の演奏は集中力に満ちた素晴らしいものがありました

第2楽章が終わり,修理されたヴァイオリンがソリストに渡され,第3楽章に入りました ティンパ二による堂々たる音楽で開始されます.ここでのヴァイオリン独奏は,終盤のカデンツァを含めて弱音が美しく,哀しみさえ感じさせます 第4楽章はティンパ二の連打が活躍するブルレスクで開始されます.躍動感に満ちた独奏ヴァイオリンが荒れ狂います 今までの鬱屈していた暗い気分を一気に払拭するようなエネルギーに満ちた音楽が展開します

会場割れんばかりの拍手とブラボーです 文句の付けようのない素晴らしい演奏でした ヴァイオリンをただ美しく響かせるだけでなく,局面に応じて きたないと思われる音も効果的に出していました 先日のモーニング・コンサートで演奏し 喝さいを受けた岡本誠司君とともに将来が楽しみなヴァイオリニストです.これから注目していきたいと思います

 

          

 

  最後の,閑話休題  

 

次いで午後7時から初台の新国立劇場(オペラパレス)で,新国立オペラ,プッチーニ「ラ・ボエーム」を観ました 新国立劇場の玄関ではクリスマスツリーがお出迎えです まだ11月とは言え,どこに行ってもクリスマス・モードですね

 

          

 

 

キャストは,ミミ=アウレリア・フローリアン,ロドルフォ=ジャンルーカ・テッラノーヴァ,マルチェッロ=ファビオ・マリア・カピタヌッチ,ムゼッタ=石橋栄実,ショナール=森口賢二,コッリーネ=松位浩,ベノア=鹿野由之,アルチンドロ=晴雅彦ほか,管弦楽=東京フィルハーモニー,指揮=パオロ・アリヴァべー二,演出=粟国淳です

 

          

 

新国立劇場における粟国淳演出によるプッチーニ「ラ・ボエーム」は,2003年,2004年,2008年,2012年に次いで今回が5回目の公演です 私はこのすべてを聴いています

このオペラは第1幕:屋根裏部屋で,第2幕:カルチェ・ラタンにて,第3幕:アンフェール関門,第4幕:屋根裏部屋でーの4幕から構成されていますが,粟国演出の見どころは第2幕のカルチェ・ラタンです 背景の建物があちこちに動きます これは機械仕掛けではなく大道具係が手動で動かしているのですが,流れるような動きは見事です 粟国氏はローマのオペラ座でフランコ・ゼッフィレッリ演出の「ラ・ボエーム」を観て圧倒され,舞台創りを仕事とする決心をしたということですが,ゼッフィレッリを超えようという意欲が演出に現れています 彼が観たゼッフィレッリ演出の「ラ・ボエーム」が米METのそれと同じかどうか分かりませんが,METのそれは来日公演の際に目の前で観て圧倒されました あの演出を観た者はあの演出が「ラ・ボエーム」を観る時の”基準”になってしまいます

 

          

 

さて,オペラですから歌手のパフォーマンスの話になりますが,歌手陣の中でダントツに強い印象を残したのはロドルフォを歌ったローマ生まれのジャンルーカ・テッラノーヴァです 彼のテノール・リリコの歌唱は”破壊力”と言っても良いぐらいこのオペラを支配していました あまりにも元気過ぎて,局面によってはもう少し抑えた方が良いのではないかと思うほどでした 女性陣ではミミを歌ったルーマニア生まれのアウレリア・フローリアンが美しいソプラノ・リリコで聴衆を魅了しました また,ムゼッタを歌った石橋栄実は美しくも力のあるソプラノを披露してくれました この人は大阪音楽大学専攻科修了という珍しい経歴の持ち主ですが,これからが楽しみな歌手だと思いました

今回,今までと違う印象を受けたのは,第4幕のフィナーレです ベッドでミミが言切れて,やっとそれに気が付いたロドルフォが「ミミ―!」と叫んで,感動的な幕切れを迎えるのですが,「ミミ―!」の後,幕が降りるまで こんなに間(ま)があっただろうか?ということです これは指揮のテンポのせいだとは思えないのですが,単なる私の勘違いだろうか

 

          

 

それにしても,プッチーニのオペラは泣かせますね.「マダム・バタフライ」にしても,「トゥーランドット」にしても,「マノン・レスコー」にしても,「トスカ」にしても 同じイタリアのオペラ作曲家 ヴェルディと違うところですね

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「ブルックリン」「これが私の人生設計」を観る~ギンレイホール/堀俊輔著「こんな僕でも指揮者になれた」を読む

2016年11月17日 07時43分05秒 | 日記

17日(木).昨夜,娘に付き合ってNHKテレビの「ガッテン!」を観ました テーマは「速報!米国NASAが発表・若返り&老化防止の鍵  免疫力・骨肉度・筋力  運動より効果大の秘策」というものです 結論から言えば,NASAの実権結果によると,老化現象を防ぐ最も簡単で効果がある方法は,寝る時間を除いて,30分おきに立ち上がることだそうです これは立ち上がることによって,耳の奥にある「耳石」という器官が動かされ,そのことが老化現象を防ぐのに役立つということのようです 番組を観ながら思ったのは,座ったまま長時間コンサートを聴いたり,映画を観たりするのは老化促進以外の何ものにもならないということです 同じコンサートでもマーラーやブルックナーの長大な交響曲や,1幕だけで30分以上かかるオペラなど(ましてワーグナーの楽劇など!)を観ることは ほとんど自殺行為に等しいということになります まさかコンサートや映画の最中に立ち上がることも出来ないし,いったい私はどうしたら良いのでしょうか NASAの発表とは言え,コンサートを聴いたりや映画を観たりする非日常が日常化している私にとってはNASUすべがありません

ということで,わが家に来てから今日で779日目を迎え,日米欧の金融大手とシンガポール中央銀行が,年内にも仮想通貨技術を使った資金取引システムの実証実験を始めるというニュースを見て ひと言述べるモコタロです

 

          

                ぼく ビットコインは知らないけど ラ  ビットコインなら知ってるよ 

 

  閑話休題  

 

昨日,神楽坂のギンレイホールで「これが私の人生設計」と「ブルックリン」の2本立てを観ました 最近は早稲田松竹と新文芸坐に行く機会が多く,ギンレイホールは久しぶりです

「これが私の人生設計」はリッカルド・ミラーニ監督による2014年 イタリア映画(103分)です

天才建築家として国外で成功を収めたセレーナは,故郷が恋しくなりイタリアに帰国する しかし,イタリアでは女性が活躍するには就労状況が厳しく,仕方なくカフェでアルバイトをして生計を立てることにする セレーナはカフェのオーナーのバツイチ男フランチェスコと魅かれ合うが,実は彼はゲイだった ある集合住宅が再開発案を募集していることを知ったセレーナは,自分の設計案だということを隠して,フランチェスコを架空の上司にでっち上げて応募することにする この案が見事に採用されることになるが,企みがばれないようにするために四苦八苦するする羽目に陥る

 

          

 

最初のうちはイタリアのお国柄か,登場人物の誰もが喋りまくっていて,大したプロットもない他愛のない三文映画だと思って観ていました しかし,セレーナが最後には会社の”同僚”から実力が認められるようになるシーンを観て,思い直しました それにしても,テレビ会議で架空の上司(フランチェスコ)が話すとき,彼が大阪出張中という設定ということは理解できるものの,背景が日本の城で,障子のそばに桜の花が咲いているというシチュエーション(すべて壁紙)や,琴の音色が聞こえてくるのは良いとして,次にドラの音が聞こえてくるのは 中国とごっちゃに考えているのではないかと苦笑してしまいました

2本目の「ブルックリン」は,ジョン・クローリー監督による2015年 アイルランド・イギリス・カナダ合作映画(112分)です

 

          

 

1950年代のアイルランド.おとなしく目立たない性格のエイリシュは,小さな町の食料品店で働いていたが,妹の将来を案じた姉の計らいで単身ニューヨークに渡る 高級デパートの売り子として働くことになるが,田舎とはまったく違う環境にホームシックになる しかし,イタリア系移民の青年ト二ーと出逢い,愛し合うようになってから,引っ込み思案だった性格が変わっていく 仕事も恋も順調にいき都会人として生き生きと過ごすようになった彼女だったが,故郷から悲しい知らせが届く 彼女はアイルランドに帰るが,そこでは違う出逢いが待っていた.揺れ動く彼女はどういう決断をするのか

 

          

 

この映画ではシアーシャ・ロ―ナンという女優がヒロインのエイリシュを演じていますが,アイルランドの片田舎の少女から,ニューヨークのブルックリンで洗練された女性として生まれ変わっていく姿を見事に演じていました この映画では,姉とエイリシュの間,トニーからエイリシュへと手紙のやり取りがありますが,ケータイもない時代には手紙が重要な手段だったんだな とあらためて思いました それと同時に,この映画のストーリーから,なぜか太田裕美の「木綿のハンカチーフ」を思い出してしまいました.結論は違うのですが

 

  も一度,閑話休題  

 

堀俊輔著「こんな僕でも指揮者になれた」(ヤマハミュージックメディア)を読み終わりました 堀俊輔氏は1950年 大阪市生まれ.早稲田大学を経て東京藝大で指揮と作曲を学ぶ 87年秋山和慶氏の推薦を受けて東京交響楽団に入団.90年副指揮者として東響特別演奏会で正式デビュー.94年オラトリオ東京を創立.現在 中部フィルハーモニー交響楽団正指揮者・音楽主幹を務めています

 

          

 

「あとがき」で本人が書いている通り,堀俊輔氏がこの本を書こうと思った動機は,ピアニスト 中村紘子の名著「チャイコフスキー・コンクール」を読んで強い感銘を受けたから,というものです 2003年4月に”図らずも”プロコフィエフ国際コンクールに審査員として招待されるというチャンスに恵まれ,ますますその気になったようです

他の指揮者と違って,堀氏の場合は どこかの指揮者コンクールに入賞してデビューするといった形をとっていません.いわば大指揮者・秋山和慶氏のもとで”下積み”を経験しながら指揮活動を行ってきたわけです この本には恩師・秋山氏と東京交響楽団に対する溢れる愛情が書かれています 読んでいて「なるほどそうだな」と思ったのは「挨拶は東響の優れた伝統」という項です.堀氏は書きます

「始業時の礼儀正しさは全国のオーケストラの中で東響がピカ一である 東響に客演する指揮者達が,口を揃えて『東響さん,練習を始める時,起立するだろう,あれ感激するんだよな』と嬉しそうに語る.確かに始業時に起立するオーケストラは,僕の経験では世界中で東響だけだ.他のオーケストラでは,指揮者が『おはようございます』と指揮台から挨拶しても知らんぷり.これが普通である

「なるほどそうだな」と思ったのは,フェスタサマーミューザでの演奏会のリハーサル時に,楽員が全員立って指揮者に『おはようございます』と挨拶しながら一礼するのを目撃したからです この本によると この習慣は昭和30年代後半には確立されていたそうです.こういう伝統は素晴らしいと思います

ところで自称ヘルベルト・フォン・ホリヤンは幼少時から「軍艦マーチ」が大好きだったそうです 正式には「軍艦行進曲」という曲名らしいのですが,ホリヤンによると,イントロの四小節は「これだけで世界のマーチ史上に残る傑作」で,これに対抗できるのはスーザの「星条旗よ永遠なれ」わずか1曲だということです この曲を振りたいという願いは東京消防庁音楽隊の練習場で叶ったとのことですが,軍隊の行進曲ということでか,本番では演奏できなかったとのこと 今やパチンコ屋のテーマ音楽か右翼の宣伝音楽か,と言われるようになってしまった軍艦マーチをこれほどまでに愛する指揮者がいたとは思いもよりませんでした

審査員として呼ばれた「プロコフィエフ国際コンクール」について1章を割いて書いていますが,2003年のコンクール,しかも指揮者のコンクールなので,出てくるコンテスタントの名前で知る人が一人もいません なので,どこの国の誰がどうだったと書いてあってもさっぱり分からないというのが実感です それは中村紘子氏の「チャイコフスキー・コンクール」でも同じようなものなのですが,ここは筆力の違いが鮮明に出てきます その意味で,中村紘子は凄いと言わざるを得ません

ホリヤンはチラシを自分で作った経験から”音楽を職業にすること”について語ります

「音楽もよくよく考えてみると,このチラシと同じ運命なのだ.ヴァイオリンやピアノを時間と金をかけて勉強しても,そのほとんどが世の中には認められず,ゴミ箱行きとなる 一個の才能がつぼみから成長し,花を咲かせ結実する如く,職業として成り立つ可能性は極めて少ない.しかし,音楽する者,そんなことはどうでもよいことなのだ ほとんどが水の泡となり,ゴミとなっても,最大の努力を注入する馬鹿さ.それが何千万分の一の”イチ”を手にする唯一の方法なのだ それを時間をかけて一つずつ増やしていけばよい.この効率の悪さこそが我々音楽家に与えられた宿命である

これは音楽を職業とすることに対するホリヤンの決意表明だと思いますが,「音楽で食っていく」ということは,言葉で言うほど簡単ではないのではないか,と思ってしまいます 世の中の需給関係で言えば,”あまりにも多くの供給”に対し,”あまりにも少ない需要”というのが現状ではないか,と その一方で,「人生は一度だけだからなぁ」という感想も持ちます.いずれにしても「後で後悔しないように生きるしかない」と思う今日この頃です

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METライブビューイングでワーグナー「トリスタンとイゾルデ」を観る~サイモン・ラトルの指揮/N響から会員特典CDと2017年カレンダー届く

2016年11月16日 07時59分17秒 | 日記

16日(水).わが家に来てから今日で778日目を迎え,安倍内閣が南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊の部隊に,安全保障関連法に基づく新任務(「駆けつけ警護」)を付与することなどを盛り込んだ実施計画を閣議決定したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

            駆けつけ三杯と違うんだから 行く人は大変だと思うな

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「鶏のしぐれ煮」と「生野菜とサーモンのサラダ」を作りました 「鶏の~」は大根を約10センチ擦り下ろしました

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

NHK交響楽団から年間会員に対する特典CDとカレンダーが届きました CDはパーヴォ・ヤルヴィ指揮によるマーラー「交響曲第1番ニ長調”巨人”」(2015年2月7日.NHKホールでのライブ録音)です

 

          

          

 

カレンダーは1月のヤルヴィ+N響の写真から 12月のティンパ二奏者の写真まで月別にN響の”顔”が紹介されています

 

          

 

  最後の,閑話休題  

 

昨日,新宿ピカデリーでMETライブビューイング,ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」を観ました 地下鉄新宿三丁目駅から歩く途中,伊勢丹のディスプレイにモコタロがモデルのアルバイトで出ていました

 

          

 

さて,この公演は今年10月8日に米メトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です 今回の公演はMETライブの100回目のライブ配信ということで,新演出による上演です

キャストは,イゾルデ=ニーナ・ステンメ(ソプラノ),トリスタン=スチュアート・スケルトン(テノール),マルケ王=ルネ・パーペ(バス),ブランゲーネ=エカテリーナ・グバノヴァ(メゾソプラノ),クルヴェナール=エフゲニー・二キティン(バス),演出=マリウシュ・トレリンスキ,指揮=ベルリン・フィル音楽監督のサイモン・ラトルです

「アイルランドの王女イゾルデは戦勝国コーンウォールの王マルケの元に和議の印として嫁ぐべく船で渡ることになる この政略結婚をマルケに提案したのは王の甥で家臣でもあるトリスタンだった.ところが戦いの際に傷を負ったトリスタンをイゾルデが手当てをしたことから,二人は密かに魅かれ合っていた 二人の苦しみに決着を付けるべく,イゾルデは侍女ブランゲーネに毒薬を所望する 二人はその薬を飲み干すが,それはブランゲーネが毒薬とすり替えた媚薬だった.二人の愛はたちまち燃え上がる.ここから二人の苦悩が始まる.二人はトリスタンの友人メロートの陰謀により逢瀬の現場をマルケ王に見られてしまう トリスタンはメロートの刃に自ら身を投じる.瀕死のトリスタンのところにイゾルデがやってきて『愛の死』を歌いながら息途絶える

映像だけかもしれませんが,指揮者のラトルがオーケストラ・ピットに入るシーンは映し出されません そのシーンはカットしたか,ラトルは最初から指揮台にスタンバイしていたか,どちらかでしょう 舞台の背景には羅針盤らしき大きな円が映し出されています.その中に船が荒波を乗り越えて進んでいく様子が映し出されます 映像を駆使したトレリンスキの演出が際立ちます

METライブの「トリスタンとイゾルデ」は第1幕=約80分,第2幕=約70分,第3幕=約80分から成る超大作で,休憩時間や幕間のインタビュー映像を含めると5時間7分かかります 歌手陣をはじめ指揮者,オーケストラはもちろん大変ですが,観て聴いている当方も相当辛いものがあります 次第に背中やお尻が痛くなってくるし,第一 集中力を維持するのが容易ではありません

 

          

 

第1幕はイゾルデが歌うシーンが多いのですが,スウェーデン生まれのニーナ・ステンメのスタミナと歌唱力には驚くばかりです 凄いとしか言いようのない劇的な表現力を持っています 第2幕はトリスタンの歌うシーンが多いのですが,シドニー生まれのスチュアート・スケルトンはドラマティックな歌唱が説得力を持ちます この人は2012年新国立劇場で「ピーターグライムズ」のタイトルロールを歌って喝さいを浴びました

第2幕から登場するマルケ王を歌うルネ・パーペはMETを代表するバスですが,深みのある声とともにその存在感が抜群です ブランゲーネを歌ったエカテリーナ・グバノヴァはモスクワ生まれですが,演技力も素晴らしいメゾソプラノです

 

          

 

幕間のインタビューで歌手のデボラ・ボイトに

「このオペラはMETでマーラーが振った時に書き込みをしたスコアが残っていて,ラトルさんもご覧になったそうですが,指揮に当たって参考にする点はありますか?」

と訊かれ,ラトルは

「バランス,強弱などです

と答えていました マーラーは1907年 メトロポリタン歌劇場に招かれ 同歌劇場の指揮者となり,1908年1月1日に「トリスタンとイゾルデ」を指揮して大成功を収めたと言われています

          

          

 

今回の公演は メトロポリタン歌劇場がリンカーンセンターへ移設されて50周年を迎える記念すべき公演でした 今シーズンのトップバッターを担ったサイモン・ラトル指揮による「トリスタンとイゾルデ」は,満場のスタンディング・オベーションでカーテンコールに迎えられ,大成功裡のうちに幕を閉じました

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ピエール・ルメートル著「傷だらけのカミーユ」を読む/鷲田清一著「人生は いつも ちぐはぐ」他を買う

2016年11月15日 07時49分49秒 | 日記

15日(火).昨夜は「スーパームーン」を期待していたのですが,東京は曇り空で68年ぶりの名月はまったく見られませんでした ツキがなかったと諦めるしかないですね ということで,わが家に来てから今日で777日目(スリー セブン!)を迎えたモコタロです

 

          

            目が真ん中に寄ってるキミィ 初登場じゃない? 自己紹介しなくていいの?

 

          

                黙秘権行使だってさ まあいいや 悪いヤツじゃなさそうだし・・・・

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「豚肉のにんにく味噌焼き」と「生野菜とタコのサラダ」を作りました ジャガイモは煮過ぎないのがコツです

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

まだ,前に買った本を全部読み終っていないのに本を5冊買いました 病気ですね 1冊目は朝日新聞「折々の言葉」の筆者で哲学者の鷲田清一著「人生はいつもちぐはぐ」(角川ソフィア文庫)です

 

          

 

2冊目は藤谷治著「世界で一番美しい」(小学館文庫)です 私はこの作者を知りませんが,「織田作之助賞」受賞作というキャッチ・コピーに惹かれました

 

          

 

3冊目と4冊目は佐藤正午著「書くインタビュー①②」(小学館文庫)です 佐藤正午の作品はどれも好きで,極め付きは「身の上話」です.最後の1行にやられました

 

          

          

 

5冊目は水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」(集英社新書)です 以前から,いつか買わなくちゃ と思っていた本です

 

          

 

  最後の,閑話休題  

 

ピエール・ルメートル著「傷だらけのカミーユ」(文春文庫)を読み終りました  ピエール・ルメートルは1951年パリ生まれ.2006年,カミーユ・ヴェルーヴェン警部3部作第1作「悲しみのイレーヌ」でデビュー,同第2作「その女アレックス」でイギリス推理作家協会賞を受賞しました 日本では出版が逆になりましたが,「その女アレックス」は週刊文春ミステリーベスト10の第1位,このミステリーがすごい!第1位,本屋大賞翻訳小説部門第1位ほか数々の賞を受賞し大きな話題を呼びました 私は今もなお 最初にこの作品を読んだときの衝撃は忘れられません

この「傷だらけのカミーユ」はカミーユ警部3部作シリーズの完結編です

 

          

 

妻のイレーヌを失ったカミーユ警部は,偶然知り合ったアンヌと恋人関係になるが,ある日,宝石強盗と鉢合わせをしたことから彼女は暴力を受け瀕死の重傷を負う 命を取りとめたものの,犯人は目撃者である彼女を執拗に追い回す 今度こそ愛する人を失いたくないカミーユは警察の同僚に内緒で個人的に彼女を守ろうと奮闘する しかし,強盗たちの本当の狙いはカミーユその人だった.首謀者はいったい誰でどういう動機をもっているのか

物語は3日間の出来事を描いていますが,カミーユという三人称と,「おれ」という一人称の視点で交互に語られていきます この「おれ」が首謀者なのですが,それは最後の3日目に分かるようになっています.前2作でも感じたことですが,プロットがしっかりしているので,最後のどんでん返しが説得力を持ちます 読み始めたら途中で止められない面白さです.強くお薦めします

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新田ユリ+プロースト交響楽団でショスタコーヴィチ「交響曲第5番ニ短調」,シベリウス「フィンランディア」他を聴く

2016年11月14日 07時59分46秒 | 日記

14日(月).昨日の朝刊各紙にロバート・ボーン死去のニュースが載っていました.急性白血病で治療中だったが11日,83歳で死去したとのこと ロバート・ボーンと言えば60年代にテレビで放映されていた「0011 ナポレオン・ソロ」シリーズを思い出します 当時中学3年生でしたが,受験期にも関わらずクラスメイトはほとんど観ており,見ていない者はシカトされていました(その当時はシカトという言葉はありませんでしたが).デビット・マッカラムと組んでカッコいい諜報活動員を演じていました ご冥福をお祈りします

話は360度変わりますが,今日の夜は満月が通常より大きく明るく見える「スーパームーン」になるそうです 1948年以来68年ぶりの大きさとのこと.月は地球の周りを楕円軌道で回っており,スーパームーンは 月が地球に近づく日と満月のタイミングが重なるために起きるそうです 問題は今夜の天気ですが,東京は朝から曇っています.ニュースによると東京では午後4時半~5時半頃期待が出来そうだとのことですが・・・・

ということで,わが家に来てから今日で776日目を迎え,身体のあちこちを舐めまわして健康管理をするモコタロです

 

          

            これは兎にとっては手じゃなくて前足だよ 足からず

 

          

            別に 演技が終わって おじぎしてるわけじゃないんだけどね

 

  閑話休題  

 

昨日は,夕食に宅配ピザを食べました.赤ワインが合います たまにはいいかな

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,ミューザ川崎シンフォニーホールでブロースト交響楽団の第24回定期演奏会を聴きました ミューザ川崎の1階広場では巨大クリスマスツリーのお出迎えです.あと何日寝るとクリスマス

 

          

 

演奏プログラムは①シベリウス「交響詩”フィンランディア”」,②同「トゥオネラの白鳥」,③同「レンミンカイネンの帰郷」,④ショスタコーヴィチ「交響曲第5番ニ短調」です 指揮は1991年東京国際音楽コンクール指揮者部門第2位,現在 日本シベリウス協会会長を務める新田ユリです

プロースト交響楽団は2003年4月の設立,首都圏の大学オーケストラや第18回全日本大学オーケストラ大会合同演奏出演者が中心となって結成されたアマチュア・オーケストラです 私がこのオケを聴くのは今回が初めてです.立派なプログラム冊子と共に演奏曲別のメンバー配置図が配布されましたが,おそらく出演者の家族・友人・知人などが本人を識別しやすいようにと用意したものでしょう

 

          

 

自席は1階C7列33番,右ブロック左通路側席です.ビックリしたのは会場が満席に近かったことです

演奏者が配置に着きます.若いメンバーばかりですが,オケの配置を見て「オヤッ?」と思いました 弦楽器は左から第1ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,第2ヴァイオリン,その後ろにコントラバスという対向配置をとっています ヴィオラとチェロが逆のケースが多く,この並びは極めて珍しいと思います

モーニング姿の新田ユリが登場,1曲目のシベリウスの交響詩「フィンランディア」の演奏に入ります 重厚なブラスの序奏部から主部に移り弦楽器による中間部に入りますが,弦楽器が美しく響きます 終結部は圧倒的な迫力でした

オケの右奥にスタンバイしているトライアングルの音が,右からではなくオケの左サイドから聴こえてきたのには驚きました 音の反射によるものですが,ミューザ川崎の音響特性かも知れません

次いで,一部メンバーが入れ替わったうえ配置換えがあり,2曲目のシベリウスのレンミンカイネン組曲から「トゥオネラの白鳥」の演奏に入ります この曲は弦楽器の弱音に乗ってコーラングレ(イングリッシュ ホルン)の美しくも悲しいメロディーが静かに演奏されるところに魅力がありますが,コーラングレが素晴らしい演奏を展開していました

間を置かず「レンミンカイネンの帰郷」の演奏に入ります.この曲では金管楽器の咆哮が気持ちよく響き,勇壮な音楽が展開します

 

          

 

休憩後はショスタコーヴィチ「交響曲第5番ニ短調」です 再びオケのメンバーの入れ替えと配置換えがあります.新田ユリが再び登場,早速 第1楽章が弦楽器群の力強い総奏によるカノンで開始されます ホルンがちょっと残念なところがありましたが,あまり気にしないことにします.第2楽章は低弦の力強い演奏で始まります.木管楽器群は冴えた演奏で,ホルンはペースを取り戻しました 第3楽章では弦楽器の美しさが際立っていました そして,圧巻だったのは第4楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」です.冒頭から金管楽器群と打楽器が”わが世”を謳歌します.フィナーレは圧倒的でした

この交響曲は第1楽章の苦悩で始まり,第4楽章の勝利で終わる,と解釈されていますが,プログラムの曲目解説にもあるように,「ハッピーエンドに見せかけて,実はその裏に別の意味が隠されていると言われている.例えば,第4楽章に出てくる『ラレミファ#』の音階は,ビゼー『カルメン』の『ハバネラ』から『危ないよ,気を付けろ』という歌詞の部分を引用したもので,スターリン体制への警告を発しているという説」という解釈もあります

いずれにしても,後世の人がいいように解釈しているわけで,われわれとしては耳から入ってくる音楽を純粋に楽しむしかないのだと思います 

この日の演奏は音楽として純粋に楽しむことが出来ました

 

          

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三澤洋史著「オペラ座のお仕事」を読む~新国立劇場・合唱指揮者の舞台裏話/読売日響定期 変更手続きを行う

2016年11月13日 09時04分35秒 | 日記

13日(土).昨日は読売日響の2017年度年間会員継続・変更手続き開始日でした 「定期演奏会」会員で現在の席を変更したい場合は電話で手続きをしなければなりません.午前10時から電話受付開始というので何度も電話を掛けたのですが,最初のうちは「電話が混みあっているので後でかけ直してください」というアナウンスが流れていたのに,11時を過ぎたころからは全く繋がらなくなってしまいました 今回は,サントリーホールの改修工事に伴い10回のうち5回は東京芸術劇場に会場が代わることもあり 1人当たりの手続き時間が長くなっているのでしょう それにしても何回かけてもウンともスンとも言わない電話にはいい加減 頭にきます やっと繋がったのは午後4時半でした.私の場合は東京藝術劇場での新たな席は読響側から提案されている席で同意しており,サントリーホールでの座席変更を求めています 通路側もしくは通路に出来るだけ近い席という条件を出したので,かなり限られた席しか残っていませんでした これまで1階中央ブロック後方の通路側席でしたが,思い切って2階LBブロックに移ることにしました.後方の通路から1つ入った席です.私の場合,左サイドか右サイドかを選択する場合は,出来るだけピアニストの運指が見える左サイドを選ぶようにしています.したがってRBでなくLBを選びました 今までの席より良くなるのか悪くなるのか,実際に音を聴いてみなければ分かりませんが,これで面倒な手続きが一つ終わりホッと一息です 残るは恐怖の請求書が届くのを下を向いて待つだけです ということで,わが家に来てから今日で775日目を迎え,リビングから廊下に出ようと顔でドアを開けようと奮闘するモコタロです

 

          

                      このドアを開ければ 向こう側に出られるんだよね

 

          

                   開かないんなら 実力行使だ 顔を突っ込んで開けてやる!

 

          

           なんだ 最初から開いてたじゃん 開いてて良かった! セブン・イレブン いい紀文

 

  閑話休題  

 

三澤洋史著「オペラ座のお仕事」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)を読み終りました 著者の三澤洋史氏は1955年,群馬県高崎市生まれ.国立音楽大学声楽科を卒業後 ベルリン芸術大学指揮科を首席で卒業,2001年9月から新国立劇場で専属の合唱指揮者を務めています この間 1999年から2003年まで,バイロイト音楽祭で祝祭合唱団の合唱団指導スタッフとして従事しています

 

          

 

この本には,筆者が合唱指揮者になるまでの経緯から,オペラ座での合唱指揮者の役割,オペラ公演のリハーサルでのワガママ指揮者との相克,バイロイトでの思い出,世界の巨匠指揮者,好きなオペラに至るまで,幅広い話題を提供していて 飽きることがありません

三澤氏の合唱指揮者としてのスタンスは第5章「NOと言う合唱指揮者」の中に書かれています 彼は「世界で最も尊敬する合唱指揮者は 1972年から27年間もの間 バイロイト祝祭合唱団を率いて世界に類を見ないレベルにまで高めたノルベルト・バラッチュである」と書いています

「バラッチュはよく指揮者と喧嘩した.バイロイトで相手がジュゼッペ・シノーポリやアントニオ・パッパ―ノなどであっても,彼は,自分の作り上げた合唱音楽を壊されることを許さなかった そんな時は指揮者も負けていない.『何を,たかが合唱指揮者め!』という感じで自分の音楽的意向を通そうとする.そこに軋轢が起こる でもバラッチュはどこまでも自分を押し通す.『合唱指揮者もここまで音楽的主張をするのか!』と驚嘆した 彼から学んだ一番大きなことは,合唱指揮者とは合唱のサウンドを作り出す芸術家なのだということだ 合唱団の音取りなどの下ごしらえをして公演指揮者に渡すための仲介者などではないのだ

これを踏まえて,三澤氏は合唱指揮者としてのスタンスを次のように語っています

「僕も,自分のめざす合唱サウンドに対する確固たるイメージを持っている それを実現するために,バラッチュがやっていたように,時にはひとりひとりの発声にまで踏み込んでそれを指導することも厭わない.現在の新国立劇場合唱団のサウンドの全責任は僕が負っている.さらに音楽的には,音取りのみならず,明日このまま自分が指揮をして演奏会が出来るくらいまで徹底して合唱音楽を作り込み,公演指揮者に渡す しかし,指揮者が『こうしたい』と言った場合,その意図を実現するための方向転換をすることに決して躊躇しない.むしろ,どうやったら指揮者の音楽的方向性に沿って,しかも合唱団も充分に生かしながら上演にこぎ着けるか最善の道を探ることに命を懸ける

現在,日本には数えきれないほどの合唱団が存在しますが,その中で世界に通用するのは「新国立歌劇場合唱団」と「バッハ・コレギウム・ジャパン」コーラスの二つだと思います 新国立歌劇場合唱団がそれだけのレベルに高められたのは,合唱指揮者・三澤洋史氏の豊かな経験と音楽に対する確固たる信念に基づく合唱指導があってこそだと思います

この本を読むと,オーケストラ指揮者と同じくらい,あるいはそれ以上に,合唱指揮者も普段から大変な苦労をしていることが分かります

彼は,最後に最も好きなオペラを2つ挙げています.それはモーツアルト「魔笛」とワーグナー「パルジファル」です 三澤氏は この二つのオペラについて「誰にも書けそうで 決して誰にも書けない音楽史上の奇蹟である」と評しています

新国立オペラの会員はもちろんのこと,オペラをご覧になる方に広くお薦めします

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バッハ・コレギウム・ジャパンでバッハ「ミサ曲ロ短調BWV232」を聴く~第120回定期演奏会

2016年11月12日 09時23分12秒 | 日記

12日(土),わが家に来てから今日で775日目を迎え,アメリカの次期大統領に就任するトランプ氏がオバマ大統領と初会談したというニュースを見て 二人の会話を想像しているモコタロです

 

          

                トランプ「ねえ 僕を信用できる?」 オバマ「Yes I can?」 トランプ「その?は何」

 

  閑話休題  

 

今年もいよいよMETライブビューイングが始まります 本日からのワーグナー「トリスタンとイゾルデ」を皮切りに,来年6月中旬のR.シュトラウス「ばらの騎士」まで10作品が上映されます  さっそく昨日,新宿ピカデリーで,来週火曜日午前10時開演の「トリスタンとイゾルデ」の座席指定をとってきました  この公演ではベルリン・フィル音楽監督サイモン・ラトルが初めてMETのオーケストラ・ピットに入ります 上映時間5時間7分(休憩2回を含む)の長時間上映ですが,今回は3枚綴りの特別鑑賞券(9,300円)も利用できるのでお得です

 

          

 

          

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨夕,初台の東京オペラシティコンサートホールでバッハ・コレギウム・ジャパン(B.C.J)第120回定期演奏会を聴きました 

ホールのロビーでは,假屋崎省吾作「きらめき」がお出迎えです もうすぐ?クリスマスですね

 

          

 

この日演奏されるのはJ.S.バッハ「ミサ曲ロ短調BWV232」です 出演はソプラノ=朴瑛実,ジョアン・ラン,アルト=ダミアン・ギヨン,テノール=櫻田亮,バス=ドミニク・ヴェルナー,合唱・管弦楽=バッハ・コレギウム・ジャパン(B.C.J),指揮=鈴木雅明です

 

          

 

この曲はバッハ・コレギウム・ジャパンによる2007年 神戸松陰女子学院大学チャペルでの録音によるCDで予習しておきました

 

          

 

会場は満席に近い状況です B.C.Jの定期公演は「マタイ受難曲」「ヨハネ受難曲」「ミサ曲ロ短調」の時は例外なくこういう大入り状態になります 「ミサ曲ロ短調」はバッハの曲の中で最も規模の大きい壮大な宗教曲です 1733年頃から37年頃にかけて作曲されたと言われています.「マタイ」や「ヨハネ」の時は弦楽器,管楽器,チェンバロともに2つのグループが左右に分かれて対峙して演奏するシフトをとりますが,この「ミサ曲ロ短調」は通常の態勢をとります 中央にフラウト・トラヴェルソ,その後方にチェロ,ホルン,チェンバロ,ヴィオローネが,中央から左サイドにヴァイオリン,ヴィオラ,ティンパ二,トランペットが,右サイドにオーボエ,ファゴットがスタンバイします オケの後方に5人のソリストを含めた25名のコーラス陣が横一列に並びます

指揮者・鈴木雅明の指揮で 第1部ミサの「キリエ」が合唱で歌われます B.C.Jの合唱を聴いていつも思うのは”透明感”のある合唱だということです それと正確なドイツ語です B.C.Jは何度もドイツをはじめヨーロッパ諸国に演奏旅行に行っていますが,現地の新聞評には「いかに正確なドイツ語で歌っているか」という感嘆の言葉が寄せられているといいます

次いで「グロリア」が歌われますが,これは神の栄光を讃える賛歌で,トランペットとティンパ二の弾むような演奏とともにウキウキするほど喜びに満ちた合唱が高らかに歌われます これは「サンクトゥス」や「オザンナ」でも同様で,トランペットとティンパ二が活躍すると 宗教曲であることを忘れるほどの興奮を覚えます

ソリストたちは合唱のメンバーの一人としても歌います ソロで歌う時,二人でデュオを歌う時と場面によって組み合わせが異なりますが,ソプラノの朴瑛実とジョアン・ランはノン・ヴィブラートの美しい歌声でした ただ,今回の公演で一番良かったのはテノールの櫻田亮とアルト(男性が女声で歌う)のダミアン・ギヨンの二人です 二人とも 透明な声で,しかも まったく無理のない自然な歌い方で,聴衆を魅了しました

ソリストとコーラスを支えた管弦楽のメンバーでは,コンミスの若松夏美,フラウト・トラヴェルソ(フルート)の菅きよみ,前田りり子,オーボエの三宮正満,ファゴットの堂坂清高がいつものように素晴らしい演奏を聴かせてくれました

「ミサ曲ロ短調」は正味2時間かかる大曲ですが,鈴木雅明のメリハリの利いた小気味の良いテンポの指揮により,あっという間に終結部を迎えました 会場いっぱいの拍手とブラボーに何度もカーテンコールがありましたが,良い演奏は作曲者の偉大さを思い起こさせるものです その意味で今回の演奏は「バッハって偉大な人だったんだなあ」とあらためて認識させてくれた素晴らしい演奏でした つくづく バッハ・コレギウム・ジャパンは"少数精鋭の古楽器プロ集団"だと思いました

 

          

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「2014年ジュネーブ国際コンクール受賞者による記念コンサート」を聴く~浜離宮朝日ホール

2016年11月11日 07時58分29秒 | 日記

11日(金).わが家に来てから今日で774日目を迎え,アメリカ大統領選挙で共和党のトランプ候補が勝利して 日経平均株価が1,000円下がったと思ったら,翌日には1,000円戻したというニュースを見て 感想を述べるモコタロです

 

          

                            日経平均がこれほど乱高下したのは前代未聞だ 日本平気 ?

 

  閑話休題  

 

昨夕,浜離宮朝日ホールで「ジュネーブ国際コンクール受賞者による記念コンサート」を聴きました 出演者は2014年の同コンサートで1位から3位までの入賞者です 第1位は韓国出身の18歳 ジヨン・ムン,第2位はアメリカ出身の27歳 パラヴィ・マヒダラ,第3位は韓国出身の25歳 ホンギ・キムです

ジュネーブ国際コンクールと言えば,日本人では2010年にピアノ部門で萩原麻未が第1位を獲得して話題になりました

 

          

 

自席は1階9列6番,左ブロック右通路側です.会場は4~5割の入りでしょうか(2階席は閉鎖).トップバッターは1991年韓国生まれのホンギ・キムで,ラフマニノフ「ピアノ・ソナタ第1番ニ短調」を演奏します 私はこの曲のCDを持っていないので予習が出来ず,いきなり生で聴くことになりました 初めて聴くラフマニノフのピアノ・ソナタは壮大で重い大曲でした 演奏時間にして40分はかかりました.初めてなのでメロディーを追っていくのがやっとで,曲を”鑑賞”するまでには至りませんでした しかし,キムの弾く第3楽章のフィナーレはラフマニノフらしい音の大伽藍で迫力満点でした

2番手はインド系アメリカ人,パラヴィ・マヒダラです.オレンジ系の鮮やかなドレスで登場します 彼女はジュネーブ・コンクールのほか 2013年にロシアの「プロコフィエフ国際コンクール」で第2位に入賞しています

演奏するのはリスト「パガニーニによる大練習曲 作品141です この曲は第1曲「トレモロ」,第2曲「オクターブ」,第3曲「ラ・カンパネラ」,第4曲「アルペジオ」,第5曲「狩り」,第6曲「主題と変奏」から構成されています.いずれも超絶技巧曲で,演奏を聴いていると「弾けるもんなら弾いてみろ」というリストの挑発の声が聞こえてくるような気がします マヒダラは人間業とは思えないスピードと完璧なテクニックで鮮やかに演奏を展開します 一番有名な第3曲「ラ・カンパネラ」では,一音一音の粒立ちが美しく,メロディーが鮮やかに浮かび上がります 演奏姿を見ていると 何の苦もなく流れるように演奏しているように見えます.本当に実力のある人の演奏は常にそうですね.完璧でした

 

          

 

休憩後は,コンクール第1位,1995年韓国生まれの21歳 ジヨン・ムンがシューマン「ソナタ第1番」を演奏します 彼女はジュネーブ・コンクールで第1位を獲得したほか,聴衆賞と特別賞も併せて受賞しており,2015年には高松国際ピアノコンクールで第1位を獲得しています

シューマンのピアノ・ソナタ第1番もCDを持っていないため予習が出来ず,初めて聴くことになりました 実際に聴いた感じでは,ラフマニノフよりもメロディーラインが分かり易いように思いました.この曲も大曲です 演奏を聴きながら「これが本当に弱冠21歳の演奏だろうか」と驚きを禁じ得ませんでした.テクニックだけでなく心が込められた演奏に思いました

3人の演奏を聴いてさすがにジュネーブ・コンクールは水準が高いな,とあらためて認識しました

一昨日が読売,昨日が朝日と毎日 ”新聞社通い”が続きますが,今日は東京オペラシティです

 

          

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