人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「ブルックリン」「これが私の人生設計」を観る~ギンレイホール/堀俊輔著「こんな僕でも指揮者になれた」を読む

2016年11月17日 07時43分05秒 | 日記

17日(木).昨夜,娘に付き合ってNHKテレビの「ガッテン!」を観ました テーマは「速報!米国NASAが発表・若返り&老化防止の鍵  免疫力・骨肉度・筋力  運動より効果大の秘策」というものです 結論から言えば,NASAの実権結果によると,老化現象を防ぐ最も簡単で効果がある方法は,寝る時間を除いて,30分おきに立ち上がることだそうです これは立ち上がることによって,耳の奥にある「耳石」という器官が動かされ,そのことが老化現象を防ぐのに役立つということのようです 番組を観ながら思ったのは,座ったまま長時間コンサートを聴いたり,映画を観たりするのは老化促進以外の何ものにもならないということです 同じコンサートでもマーラーやブルックナーの長大な交響曲や,1幕だけで30分以上かかるオペラなど(ましてワーグナーの楽劇など!)を観ることは ほとんど自殺行為に等しいということになります まさかコンサートや映画の最中に立ち上がることも出来ないし,いったい私はどうしたら良いのでしょうか NASAの発表とは言え,コンサートを聴いたりや映画を観たりする非日常が日常化している私にとってはNASUすべがありません

ということで,わが家に来てから今日で779日目を迎え,日米欧の金融大手とシンガポール中央銀行が,年内にも仮想通貨技術を使った資金取引システムの実証実験を始めるというニュースを見て ひと言述べるモコタロです

 

          

                ぼく ビットコインは知らないけど ラ  ビットコインなら知ってるよ 

 

  閑話休題  

 

昨日,神楽坂のギンレイホールで「これが私の人生設計」と「ブルックリン」の2本立てを観ました 最近は早稲田松竹と新文芸坐に行く機会が多く,ギンレイホールは久しぶりです

「これが私の人生設計」はリッカルド・ミラーニ監督による2014年 イタリア映画(103分)です

天才建築家として国外で成功を収めたセレーナは,故郷が恋しくなりイタリアに帰国する しかし,イタリアでは女性が活躍するには就労状況が厳しく,仕方なくカフェでアルバイトをして生計を立てることにする セレーナはカフェのオーナーのバツイチ男フランチェスコと魅かれ合うが,実は彼はゲイだった ある集合住宅が再開発案を募集していることを知ったセレーナは,自分の設計案だということを隠して,フランチェスコを架空の上司にでっち上げて応募することにする この案が見事に採用されることになるが,企みがばれないようにするために四苦八苦するする羽目に陥る

 

          

 

最初のうちはイタリアのお国柄か,登場人物の誰もが喋りまくっていて,大したプロットもない他愛のない三文映画だと思って観ていました しかし,セレーナが最後には会社の”同僚”から実力が認められるようになるシーンを観て,思い直しました それにしても,テレビ会議で架空の上司(フランチェスコ)が話すとき,彼が大阪出張中という設定ということは理解できるものの,背景が日本の城で,障子のそばに桜の花が咲いているというシチュエーション(すべて壁紙)や,琴の音色が聞こえてくるのは良いとして,次にドラの音が聞こえてくるのは 中国とごっちゃに考えているのではないかと苦笑してしまいました

2本目の「ブルックリン」は,ジョン・クローリー監督による2015年 アイルランド・イギリス・カナダ合作映画(112分)です

 

          

 

1950年代のアイルランド.おとなしく目立たない性格のエイリシュは,小さな町の食料品店で働いていたが,妹の将来を案じた姉の計らいで単身ニューヨークに渡る 高級デパートの売り子として働くことになるが,田舎とはまったく違う環境にホームシックになる しかし,イタリア系移民の青年ト二ーと出逢い,愛し合うようになってから,引っ込み思案だった性格が変わっていく 仕事も恋も順調にいき都会人として生き生きと過ごすようになった彼女だったが,故郷から悲しい知らせが届く 彼女はアイルランドに帰るが,そこでは違う出逢いが待っていた.揺れ動く彼女はどういう決断をするのか

 

          

 

この映画ではシアーシャ・ロ―ナンという女優がヒロインのエイリシュを演じていますが,アイルランドの片田舎の少女から,ニューヨークのブルックリンで洗練された女性として生まれ変わっていく姿を見事に演じていました この映画では,姉とエイリシュの間,トニーからエイリシュへと手紙のやり取りがありますが,ケータイもない時代には手紙が重要な手段だったんだな とあらためて思いました それと同時に,この映画のストーリーから,なぜか太田裕美の「木綿のハンカチーフ」を思い出してしまいました.結論は違うのですが

 

  も一度,閑話休題  

 

堀俊輔著「こんな僕でも指揮者になれた」(ヤマハミュージックメディア)を読み終わりました 堀俊輔氏は1950年 大阪市生まれ.早稲田大学を経て東京藝大で指揮と作曲を学ぶ 87年秋山和慶氏の推薦を受けて東京交響楽団に入団.90年副指揮者として東響特別演奏会で正式デビュー.94年オラトリオ東京を創立.現在 中部フィルハーモニー交響楽団正指揮者・音楽主幹を務めています

 

          

 

「あとがき」で本人が書いている通り,堀俊輔氏がこの本を書こうと思った動機は,ピアニスト 中村紘子の名著「チャイコフスキー・コンクール」を読んで強い感銘を受けたから,というものです 2003年4月に”図らずも”プロコフィエフ国際コンクールに審査員として招待されるというチャンスに恵まれ,ますますその気になったようです

他の指揮者と違って,堀氏の場合は どこかの指揮者コンクールに入賞してデビューするといった形をとっていません.いわば大指揮者・秋山和慶氏のもとで”下積み”を経験しながら指揮活動を行ってきたわけです この本には恩師・秋山氏と東京交響楽団に対する溢れる愛情が書かれています 読んでいて「なるほどそうだな」と思ったのは「挨拶は東響の優れた伝統」という項です.堀氏は書きます

「始業時の礼儀正しさは全国のオーケストラの中で東響がピカ一である 東響に客演する指揮者達が,口を揃えて『東響さん,練習を始める時,起立するだろう,あれ感激するんだよな』と嬉しそうに語る.確かに始業時に起立するオーケストラは,僕の経験では世界中で東響だけだ.他のオーケストラでは,指揮者が『おはようございます』と指揮台から挨拶しても知らんぷり.これが普通である

「なるほどそうだな」と思ったのは,フェスタサマーミューザでの演奏会のリハーサル時に,楽員が全員立って指揮者に『おはようございます』と挨拶しながら一礼するのを目撃したからです この本によると この習慣は昭和30年代後半には確立されていたそうです.こういう伝統は素晴らしいと思います

ところで自称ヘルベルト・フォン・ホリヤンは幼少時から「軍艦マーチ」が大好きだったそうです 正式には「軍艦行進曲」という曲名らしいのですが,ホリヤンによると,イントロの四小節は「これだけで世界のマーチ史上に残る傑作」で,これに対抗できるのはスーザの「星条旗よ永遠なれ」わずか1曲だということです この曲を振りたいという願いは東京消防庁音楽隊の練習場で叶ったとのことですが,軍隊の行進曲ということでか,本番では演奏できなかったとのこと 今やパチンコ屋のテーマ音楽か右翼の宣伝音楽か,と言われるようになってしまった軍艦マーチをこれほどまでに愛する指揮者がいたとは思いもよりませんでした

審査員として呼ばれた「プロコフィエフ国際コンクール」について1章を割いて書いていますが,2003年のコンクール,しかも指揮者のコンクールなので,出てくるコンテスタントの名前で知る人が一人もいません なので,どこの国の誰がどうだったと書いてあってもさっぱり分からないというのが実感です それは中村紘子氏の「チャイコフスキー・コンクール」でも同じようなものなのですが,ここは筆力の違いが鮮明に出てきます その意味で,中村紘子は凄いと言わざるを得ません

ホリヤンはチラシを自分で作った経験から”音楽を職業にすること”について語ります

「音楽もよくよく考えてみると,このチラシと同じ運命なのだ.ヴァイオリンやピアノを時間と金をかけて勉強しても,そのほとんどが世の中には認められず,ゴミ箱行きとなる 一個の才能がつぼみから成長し,花を咲かせ結実する如く,職業として成り立つ可能性は極めて少ない.しかし,音楽する者,そんなことはどうでもよいことなのだ ほとんどが水の泡となり,ゴミとなっても,最大の努力を注入する馬鹿さ.それが何千万分の一の”イチ”を手にする唯一の方法なのだ それを時間をかけて一つずつ増やしていけばよい.この効率の悪さこそが我々音楽家に与えられた宿命である

これは音楽を職業とすることに対するホリヤンの決意表明だと思いますが,「音楽で食っていく」ということは,言葉で言うほど簡単ではないのではないか,と思ってしまいます 世の中の需給関係で言えば,”あまりにも多くの供給”に対し,”あまりにも少ない需要”というのが現状ではないか,と その一方で,「人生は一度だけだからなぁ」という感想も持ちます.いずれにしても「後で後悔しないように生きるしかない」と思う今日この頃です

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« METライブビューイングでワー... | トップ | 新国立オペラでプッチーニ「... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事