人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ティーレマン+シュターツカペレ・ドレスデンでワーグナーの楽劇「ラインの黄金」を聴く~ザルツブルク イースター音楽祭 in JAPAN

2016年11月19日 08時38分23秒 | 日記

19日(土).わが家に来てから今日で781日目を迎え,今年の新語・流行語大賞候補30点が決まったという広告を見て感想を述べるモコタロです

 

          

              世界的には「EU離脱」か「トランプ現象」,国内的には「バケモンGO」かなぁ

 

  閑話休題  

 

昨夕,サントリーホールで「ザルツブルク イースター音楽祭イン ジャパン ~ ホール・オペラ ワーグナー:楽劇『ラインの黄金』」を聴きました サントリーホール前のカラヤン広場では光のクリスマス・ツリーが輝いていました

 

          

 

さて,この公演はサントリーホール開館30周年を記念して復活した”ホール・オペラ”です 「ザルツブルク イースター音楽祭」は,ヘルベルト・フォン・カラヤンが1967年に生まれ故郷のザルツブルクに私財を投じて創設した音楽祭です

キャストはヴォータン=ミヒャエル・フォッレ(バリトン),フリッカ=藤村実穂子(メゾ・ソプラノ),フライア=レギーナ・ハングラ―(ソプラノ),アルベリッヒ=アルベルト・ド―メン(バス・バリトン),ミーメ=ゲアハルト・ジーゲル(テノール),ローゲ=クルト・シュトライト(テノール),ドンナ―=アレハンドロ・マルコ=ブールメスター(バリトン),フロー=タンセル・アクゼイベク(テノール),ファーゾルト=ステファン・ミリング(バス),ファフナー=アイン・アンガー(バス),エルダ=クリスタ・マイヤー(メゾ・ソプラノ),ヴォークリンデ=クリスティアーネ・コール(ソプラノ),ヴェルグンデ=サブリナ・ケーゲル(メゾ・ソプラノ),フロスヒルデ=シモーネ・シュレーダー(コントラルト).管弦楽=シュターツカペレ・ドレスデン,指揮=クリスティアン・ティーレマン,舞台統括=デニー・クリエフです

指揮者のクリスティアン・ティーレマンは18歳からカラヤンのアシスタントを始め,21歳の時にこの音楽祭でカラヤン指揮による「パルシファル」の音楽助手を務めました 1997年から2004年までベルリン・ドイツ・音楽総監督を,2004年から2011年までミュンヘン・フィルの音楽総監督を務め,2012年にシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者に就任,2013年にザルツブルク・イースター音楽祭の芸術監督に就任しています

 

          

 

シュターツカペレ・ドレスデンは1548年にザクセン州のモリッツ選帝侯によって創立され,世界最古の歴史と伝統を誇るオーケストラの一つです 歴代の楽長にはウェーバーやワーグナーがいます このオーケストラはリヒャルト・シュトラウスとの関係が深く,「サロメ」「エレクトラ」「ばらの騎士」を含む9つのオペラを初演しています

私はこのオーケストラが大好きで,1973年(昭和48年)10月19日の来日公演(リヒャルト・シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」他:中野サンプラザ)を手始めに,1978年4月4日(ワーグナー「トリスタンとイゾルデ~前奏曲と愛の死」,ブルックナー「交響曲第5番」:東京文化会館), 78年4月19日(ベートーヴェン「レオノーレ序曲第2番」「交響曲第6番」「交響曲第7番」:日比谷公会堂),1981年6月13日(リヒャルト・シュトラウス「歌劇”ばらの騎士”」:NHKホール),81年7月6日(シューベルト「交響曲第8番”未完成”」,ブルックナー「交響曲第4番」:東京文化会館)と,ほぼ来日の度に聴いていましたが,それ以降はチケットが未整理のため(あるいは捨てたか)不明です.81年7月の公演が最後だったかも知れません その当時は,まだドイツが東西に分かれており,ドレスデンは東側にあったので,オーケストラは共産圏からやってきたのです

私がなぜこのオーケストラが好きになったのかと言えば,最初の公演(1973年)の時に聴いた「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」の演奏で,オーケストラから醸し出される伝統的ないぶし銀のような音色にすっかり魅了されてしまったのです あの時は,指揮者(クルツだったと思う)が急病で来日出来なくなり,ヘルベルト・ブロムシュテットが代わりに振ったのです 幸いチケットが整理されて残っていたので会場が中野サンプラザと分かったのですが,まったく覚えていません あの頃は,FM放送からベートーヴェンやブラームスの交響曲が流れてくるとシュターツカペレ・ドレスデンの音だ と判別することが出来ました

この頃の演奏で一番このオケの良いところが発揮されているのはクルト・ザンデルリンクが指揮をした「ブラームス:交響曲全集」(1971年録音)です ザンデルリンクは1960年から東ドイツのベルリン交響楽団の音楽監督・首席指揮者を務めていましたが,64年~67年の間はシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者を兼務しています 彼はこの期間以外にもたびたびスターツカペレ・ドレスデンでタクトを振っていたようです

 

          

 

ザンデルリンクが指揮をしたブラームスの交響曲全集は,ベルリン交響楽団を指揮した1990年録音盤があり,当時のクラシック界ではこの曲の決定版と言われていました しかし,個人的にはシュターツカペレ・ドレスデン盤の方が好きです

 

          

 

今回の公演を聴くに当たってマレク・ヤノフスキ指揮シュターツカペレ・ドレスデンによるCD(1980年12月録音)で予習しておきました

 

          

 

さて,話を本来の「ザルツブルク イースター音楽祭」に戻しましょう.サントリーホールの入口でアテンダントの女性に言われた言葉に驚きました.「本日は休憩がございません」.ワーグナーの楽劇「ラインの黄金」は正味2時間以上かかります.舞台転換の必要がないホール・オペラ(演奏会形式)とは言え,歌手陣にとっても聴く側にとっても極めて厳しい条件ではないか,と思いました しかし,出演者側の歌手とオーケストラも了承の上での ぶっ通し公演でしょうから文句を言う訳にもいきません 迷わずトイレに行きました

自席は2階LD1列4番です.左ブロック右から3つ入った席です.ちょっと意外だったのは,満席だと思っていたら6~7割程度の入りだったことです 1階席後方,2階席左右と後方に空きが目立ちます.ともにS席:43,000円,A席:36,000円という高額チケット代が空席の理由だと思われます なお,自席はB席ですが29,000円でした.これが高いか安いかはこの日の公演の出来不出来にかかっています

ステージ上はフル・オーケストラが後方にいくほど高くなるように段差を付けた床の上に配置されます.左から奥にコントラバス,前に左から第1ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリンという対向配置をとります.右サイド奥にはハープが6台スタンバイしています

歌手陣が歌う場所はP席を舞台に代えた特設ステージです 背景は4枚の大きなふすまに墨で山々を描いたような“墨絵”のような景色で,ちょっと違和感があります 舞台統括のデニー・クリエフが 日本公演ということを意識してわざわざこうした舞台背景を用意したとすれば,それは違うのではないか,と思います ワーグナーの楽劇には似合いません

 

          

 

ティーレマンが登場し指揮台に上がります.オーケストラ・ピットに入る時のように椅子に座って指揮をします ステージの照明が落とされ,演奏者は各自の楽譜を照らすスポットライトを頼りに演奏します.さっそく序曲の演奏に入りますが,この音楽はラインの河底の様子を描いています.低弦の弱音から始まって,徐々に楽器が加わって大きなうねりとなります.こういうところがワーグナーの最大の魅力です 少しずつ変化があり,いつの間にかとんでもない大きな変化を遂げているような感じです 

第1場で最初に登場するのはラインの黄金を守る3人の乙女ですが,これは普通だと思いました しかし,乙女たちと戯れたいとニーベルング族の小人・アルべリヒ(バス・バリトン=アルベルト・ド―メン)が登場して歌を歌うと,これが凄いのです 第2場では神々の長ヴォータン(バリトン=ミヒャエル・フォッレ)と 妻で婚姻の神フリッカ(メゾ・ソプラノ=藤村実穂子),そして火を司る半神ローゲ(テノール=クルト・シュトライト)が登場しますが,これがまた凄いのです さらに,この場ではヴォータンが巨人たちに建設させていたヴァルハル城の報酬としてフリッカの妹フライア(愛と青春の女神)を与える約束になっていたのですが,このフライア(ソプラノ=レギーネ・ハングラ―)が凄いのです その時,シュターツカペレ・ドレスデンの迫力たっぷりの演奏に乗って登場する巨人族の兄ファーゾルト(バス・バリトン=ステファン・ミリング)と弟ファフナー(バス=アイン・アンガー)がまた凄いのです 

このように出てくる歌手すべてが世界のオペラハウスで歌っている超一流の歌手ばかりなのには圧倒されっ放しです 極め付けは第4場で,この楽劇で一度しか出てこない智の神エルダ(メゾ・ソプラノ=クリスタ・マイヤ―)です この人は2015年10月の新国立オペラにエルダを歌ってデビューしていますが,たった1度の出番で聴衆の心を鷲掴みします

 

          

 

このように,この公演は「よくもここまで世界中から凄い歌手陣を揃えたものだ」と言いたくなるようなレヴェルの高いアーティスト揃いでした 実力からして,誰もが主役を張れる歌手陣だと思いました

さて,最後にシュターツカペレ・ドレスデンの演奏ですが,さすがに30~40年前に聴いたオケの音とはまるで違っていました 歴史と伝統が続いているとは言え,構成メンバーも変わっているし,他のオーケストラと同様,インターナショナル化が進んでいるように思いました 個人的には東ドイツ時代のシュターツカペレ・ドレスデンの方が良かったと思いますが,その後 東西ドイツの統一など 政治・経済的変化もあり,オーケストラも変わらざるを得なかったのでしょう そうは言うものの,この日のシュターツカペレ・ドレスデンは首席指揮者ティーレマンの完璧な統率力のもと渾身の演奏を展開していました

最後の音が鳴り終わってから,しばし しじまがあり,ティーレマンがタクトを下すと会場割れんばかりの拍手とブラボーがステージに押し寄せました これ程レヴェルの高い演奏は滅多に聴く機会がないでしょう 間違いなく今年のマイ・ベスト5に入ると思います

 

          

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2 コメント

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ラインの黄金 (ナカタ)
2016-11-19 12:17:38
Toraさん、次回お目にかかるときは、是非このお話をお聞かせ下さい。
返信する
読響定期で! (tora)
2016-11-19 21:29:24
ナカタさん,コメントありがとうございました.
24日に読響定期があるので休憩時間にコーヒーを飲みましょう
返信する

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