13日(土).昨日は読売日響の2017年度年間会員継続・変更手続き開始日でした 「定期演奏会」会員で現在の席を変更したい場合は電話で手続きをしなければなりません.午前10時から電話受付開始というので何度も電話を掛けたのですが,最初のうちは「電話が混みあっているので後でかけ直してください」というアナウンスが流れていたのに,11時を過ぎたころからは全く繋がらなくなってしまいました 今回は,サントリーホールの改修工事に伴い10回のうち5回は東京芸術劇場に会場が代わることもあり 1人当たりの手続き時間が長くなっているのでしょう それにしても何回かけてもウンともスンとも言わない電話にはいい加減 頭にきます やっと繋がったのは午後4時半でした.私の場合は東京藝術劇場での新たな席は読響側から提案されている席で同意しており,サントリーホールでの座席変更を求めています 通路側もしくは通路に出来るだけ近い席という条件を出したので,かなり限られた席しか残っていませんでした これまで1階中央ブロック後方の通路側席でしたが,思い切って2階LBブロックに移ることにしました.後方の通路から1つ入った席です.私の場合,左サイドか右サイドかを選択する場合は,出来るだけピアニストの運指が見える左サイドを選ぶようにしています.したがってRBでなくLBを選びました 今までの席より良くなるのか悪くなるのか,実際に音を聴いてみなければ分かりませんが,これで面倒な手続きが一つ終わりホッと一息です 残るは恐怖の請求書が届くのを下を向いて待つだけです ということで,わが家に来てから今日で775日目を迎え,リビングから廊下に出ようと顔でドアを開けようと奮闘するモコタロです
このドアを開ければ 向こう側に出られるんだよね
開かないんなら 実力行使だ 顔を突っ込んで開けてやる!
なんだ 最初から開いてたじゃん 開いてて良かった! セブン・イレブン いい紀文
閑話休題
三澤洋史著「オペラ座のお仕事」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)を読み終りました 著者の三澤洋史氏は1955年,群馬県高崎市生まれ.国立音楽大学声楽科を卒業後 ベルリン芸術大学指揮科を首席で卒業,2001年9月から新国立劇場で専属の合唱指揮者を務めています この間 1999年から2003年まで,バイロイト音楽祭で祝祭合唱団の合唱団指導スタッフとして従事しています
この本には,筆者が合唱指揮者になるまでの経緯から,オペラ座での合唱指揮者の役割,オペラ公演のリハーサルでのワガママ指揮者との相克,バイロイトでの思い出,世界の巨匠指揮者,好きなオペラに至るまで,幅広い話題を提供していて 飽きることがありません
三澤氏の合唱指揮者としてのスタンスは第5章「NOと言う合唱指揮者」の中に書かれています 彼は「世界で最も尊敬する合唱指揮者は 1972年から27年間もの間 バイロイト祝祭合唱団を率いて世界に類を見ないレベルにまで高めたノルベルト・バラッチュである」と書いています
「バラッチュはよく指揮者と喧嘩した.バイロイトで相手がジュゼッペ・シノーポリやアントニオ・パッパ―ノなどであっても,彼は,自分の作り上げた合唱音楽を壊されることを許さなかった そんな時は指揮者も負けていない.『何を,たかが合唱指揮者め!』という感じで自分の音楽的意向を通そうとする.そこに軋轢が起こる でもバラッチュはどこまでも自分を押し通す.『合唱指揮者もここまで音楽的主張をするのか!』と驚嘆した 彼から学んだ一番大きなことは,合唱指揮者とは合唱のサウンドを作り出す芸術家なのだということだ 合唱団の音取りなどの下ごしらえをして公演指揮者に渡すための仲介者などではないのだ」
これを踏まえて,三澤氏は合唱指揮者としてのスタンスを次のように語っています
「僕も,自分のめざす合唱サウンドに対する確固たるイメージを持っている それを実現するために,バラッチュがやっていたように,時にはひとりひとりの発声にまで踏み込んでそれを指導することも厭わない.現在の新国立劇場合唱団のサウンドの全責任は僕が負っている.さらに音楽的には,音取りのみならず,明日このまま自分が指揮をして演奏会が出来るくらいまで徹底して合唱音楽を作り込み,公演指揮者に渡す しかし,指揮者が『こうしたい』と言った場合,その意図を実現するための方向転換をすることに決して躊躇しない.むしろ,どうやったら指揮者の音楽的方向性に沿って,しかも合唱団も充分に生かしながら上演にこぎ着けるか最善の道を探ることに命を懸ける」
現在,日本には数えきれないほどの合唱団が存在しますが,その中で世界に通用するのは「新国立歌劇場合唱団」と「バッハ・コレギウム・ジャパン」コーラスの二つだと思います 新国立歌劇場合唱団がそれだけのレベルに高められたのは,合唱指揮者・三澤洋史氏の豊かな経験と音楽に対する確固たる信念に基づく合唱指導があってこそだと思います
この本を読むと,オーケストラ指揮者と同じくらい,あるいはそれ以上に,合唱指揮者も普段から大変な苦労をしていることが分かります
彼は,最後に最も好きなオペラを2つ挙げています.それはモーツアルト「魔笛」とワーグナー「パルジファル」です 三澤氏は この二つのオペラについて「誰にも書けそうで 決して誰にも書けない音楽史上の奇蹟である」と評しています
新国立オペラの会員はもちろんのこと,オペラをご覧になる方に広くお薦めします