人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

上岡敏之+読響でシューベルト&ショスタコーヴィチの「ピアノ五重奏曲」を聴く~読響アンサンブル

2016年11月10日 08時01分02秒 | 日記

10日(木).昨日の朝日朝刊「オピニオン面」の「ことばの広場 校閲センターから」は「言葉の変化(上)」として言葉の使い方の変化を超略次のように紹介しています

「芥川龍之介は『とても』は『かなわない』などの否定形を必ず伴ったのに,東京では『とても寒い』という用法が広まっている,と指摘した.円地文子も 文章の中で『とても』を肯定に遣う気にはならない と記している.『とても良い』などは,今や当然のように使われるが,なじまないとされた時期もあったのだ

ひと昔前に「ヤバイ」が「マズい」「危ない」などに使われていたのが,今や「カッコいい」と肯定的に使われるようになったのも言葉の使い方の変化の表れでしょう 言葉の使い方は時代の変遷とともに変化していくようですね ということで,わが家に来てから今日で773日目を迎え,英国のEC離脱決定に次いで 今年2度目の想定外の出来事となったアメリカ大統領選挙の結果を受けて 感想を述べるモコタロです

 

          

             「上り坂」「下り坂」そして第3の坂「まさか」がアメリカで起こってしまった

             てっきりジョーカーだと思っていたトランプはエースになってしまったようだ

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「豚としめじの味噌チーズ炒め」「生野菜サラダ」を作りました  「豚としめじ~」は初挑戦ですが,子供たちにも好評でした

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日の日経朝刊に「音大に新専攻  職業選び充実~専門家以外の道も示す」という見出しの記事が載っていました.記事を超訳すると

「近年,音楽大学の間に,商業音楽やリベラルアーツ(教養教育)のコースを新設する動きが広がっている 東京音楽大学では来年度『ミュージック・リベラルアーツ』専攻を音大で初めて立ち上げる.1年生で英語スキルを習得し,2年生から原則英語で人文,社会,自然科学の教養を学ぶ 念頭に置くのは,ハーバード大など海外では一般大学に音楽学部などが設置されている点だ.野島学長は『音楽は実社会で無駄にはならず,教養として力を持つ.一般企業に就職する学生にも広く門戸を開き,国際的に活躍する人材を育てたい』と語る 昭和音大は,吹奏楽の歴史から指揮,編曲までを体系的に学ぶ国内初の『ウィンドシンフォニー』コースなど4コースを新設する.プロ奏者はもちろん,国内約1万1千の中学・高校にある吹奏楽部などの指導者を育てる.音楽大学がコースを新設する背景には,学生の就職環境の変化がある.プロ演奏家が狭き門であることに変わりはないが,近年は音楽教室や教員の需要が減少.一般企業への就職を志向する学生が増えている

としています.そして,東京音大の2015年度の就職先を紹介しています.それによると,「進学・留学」が34.0%で一番多く,次いで「企業」が17.6%,「教員」9.3%,「音楽教室講師」と「音楽活動」が各8.4%と続き,「公務員」が0.6%,「その他」が21.7%となっています 「その他」の割合がかなり高いと思いますが,具体的にはどんな内容なのでしょうか? まだ買っていませんが『最後の秘境  東京藝大』(二宮敦人著・新潮社)には,「東京藝大の卒業生の半分近くが行方不明になる」と書かれているそうですから,東京音大でも似たような状況ということでしょうか

それにしても,芸術系の大学にご子息を通わせている親御さんは経済的に大変なご苦労をされているのではないかと同情します わが家にも4年制の美術大学を出て現在無職の娘が約1名いますので他人事ではありません 音大でも高い授業料を4年間払って,卒業したと思ったら就職先がほとんどないというのが 上の東京音大のデータからも読み取れます   世の中厳しいですね.誰のせいなんでしょうか

 

  最後の,閑話休題  

 

昨夕,よみうり大手町ホールで読響アンサンブル・シリーズ 第12回「上岡敏之と読響メンバーの室内楽」を聴きました プログラムは①シューベルト「ピアノ五重奏曲『ます』イ長調」,②ショスタコーヴィチ「ピアノ五重奏曲ト短調」です

開演に先立って読売新聞の鈴木美潮さんの進行により上岡敏之氏の「プレトーク」がありました 最初に鈴木コーディネーターから「皆さん,今日は世界的にみて歴史的な日になると思いますが,アメリカ大統領選挙のことは忘れて演奏をお楽しみください」という挨拶がありました.次いで上岡氏の経歴(長年ドイツのオケで活躍し,現在新日本フィル音楽監督,コペンハーゲン・フィル首席指揮者を務めている)を紹介しました その後,上岡氏がピアノを弾きながらシューベルトとショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲について解説しましたが,興に乗ると止まらない性格のようで,ショスタコーヴィチの曲の解説に至っては,まずピアノでベートーヴェンの第九の第1楽章を演奏し,次にブルックナーの荘重な第9番を紹介し,「それらに比べてショスタコーヴィチは軽い」と実演で示しました 「マーラーは・・・・」というところで,鈴木コーディネーターから「上岡さん,申し訳ありませんが,お時間の関係でこれくらいで・・・」とストップをかけられてしまいました 止めなければ開演時間になっていたことでしょう

さて,本番です.1曲目のシューベルト「ピアノ五重奏曲”ます”」は,ヴァイオリン=太田博子,ヴィオラ=三浦克之,チェロ=芝村崇,コントラバス=小金丸章斗,ピアノ=上岡敏之というメンバーによる演奏です 

この曲は1817年に作られた歌曲「ます」のメロディーを第4楽章に使っていることから”ます”という愛称で呼ばれていますが,1819年7月(作曲者22歳)に作曲されました ピアノ五重奏曲は,プレトークでも話があった通り,通常 弦楽四重奏曲(ヴァイオリン2挺,ヴィオラ,チェロ)にピアノを加える形をとりますが,シューベルトの「ます」はヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,コントラバス,ピアノという編成をとるのが特徴です もう一つの特徴は5楽章から構成されていることです

第1楽章に入ります.第1ヴァイオリンを中心に軽快な音楽が奏でられます 感心するのは上岡のピアノです.本業は指揮者ですが,ピアノもプロ級です この人の良い所は喜びに満ちて演奏するところです 彼の明るい雰囲気が他のメンバーに伝染して楽しい音楽作りが進んでいることが分かります 他のメンバーも演奏することに喜びを感じていることが覗えます.上岡氏はこの調子で指揮をしているのでしょう

 

          

 

休憩時間に,定期会員で当ブログの読者Nさんとコーヒーを飲みました

Nさん:モコタロくんもアメリカ大統領選挙をテレビで観たりするんですか?

tora  :はい.それにしても予想外の結果でしたね

Nさん:予想外と言えば予想外ですね.あら,コンサートを聴きに来てこんな話をしていちゃいけませんね.もっと余裕をもって聴かなくちゃ ところで,今度の読響定期はかなり高齢のピアニストが演奏しますよね

tora   :イエルク・デームスですね.毎年のように「今年が最後の来日」とか言われて,また来年も来るというピアニストです

Nさん:演奏家って高齢でも演奏していけるんでしょうかねぇ

tora   :そうですね.ヴァイオリニストではギトリスがいるし

Nさん:指揮者はどうなのかな?

tora   :指揮者は自分では演奏しないから長生きするんじゃないかな.朝比奈隆とか・・・・

そんな話をしているうちに,あっという間に15分が経ってしまいました.休憩時間は20分にしてほしいと思います

休憩後はショスタコーヴィチ「ピアノ五重奏曲ト短調」です この曲は1940年(作曲者34歳)に作曲されました.シューベルトと同じく5つの楽章から成りますが,コントラバスはありません 演奏は,第1ヴァイオリン=赤池瑞枝,第2ヴァイオリン=山田友子,ヴィオラ=長岡晶子,チェロ=松葉春樹,ピアノ=上岡敏之というメンバーです

この曲は,ピアノ=ウラディミール・アシュケナージ+フィッツウィリアム弦楽四重奏団によるCDで予習しておきました

 

          

 

ピアノの上岡氏は今度はメガネを着用しています シューベルトに比べてショスタコーヴィチは楽譜が音符で真っ黒で読み取りにくいのでしょう 第1楽章がピアノの力強い演奏で入ります 上岡氏は腰を浮かせてピアノを打ち下ろします.冒頭から緊張感に満ちています この曲で面白いのは第3楽章「スケルツォ」です.第2楽章から180度転換した曲想で,ショスタコーヴィチ特有の諧謔的で暴力的とまで言えるような激しい音楽が展開します この楽章の終結部は,フルスピードで走っていたスポーツカーが急ブレーキをかけたため,運転手が慣性の法則で前につんのめるような感じで,予告なく放り出されるような感覚を抱きます.この放心状態の感覚がたまりません 一転,第4楽章では,チェロのピッツィカートに乗って第1ヴァイオリンがロシア民謡風のメロディーを奏でますが,赤池瑞枝のヴァイオリンがとても美しく響きました

もう一つ面白いのは最後の第5楽章の終結部です 今までの不安な音楽は何だったのか というような楽観的な曲想が現れ,終結部はフォルテで「ジャーン」と終わるのではなく,あくまでも軽く「はい,これで おしまい」という感じでソフトに終わります これがまた,ショスタコーヴィチらしいアイロニカルな終わり方で好きです.5人の演奏はショスタコーヴィチの魅力を十二分に引き出した素晴らしいパフォーマンスでした

アンコールはコントラバスを加えた6人で,モーツアルトの「ピアノ協奏曲第23番変ホ長調K.488」から第2楽章「アダージョ」を演奏し,満場の拍手を浴びました 実はこの曲の一部は「プレトーク」で,シューベルトの憧れの作曲家としてベートーヴェンとともに挙げられたモーツアルトの曲を紹介する過程で上岡氏が演奏していたのです さすがは上岡氏です.本番前からアンコールの伏線を張っていたのです まさか,シューベルトとショスタコーヴィチの曲のコンサートのアンコールでモーツアルトの曲を,しかも私の一番好きなK.488を聴くことができるとは思いもよりませんでした この日の公演はアンコールを含めて素晴らしいコンサートでした

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ゾルタン・コチシュの冥福を祈る/村上春樹著「女のいない男たち」を読む

2016年11月09日 07時27分13秒 | 日記

9日(水).アメリカ大統領選挙は8日朝(日本時間同日夜)から各州で順次投票が始まり,同日夜(日本時間9日午後)にも大勢が判明する見通しとのことです 民主党のクリントン候補と共和党のトランプ候補の「どちらを選びたいか」ではなく「どっちも気が乗らないけど,どっちがマシか」という前代未聞の洗濯を余儀なくされているアメリカ国民には同情を禁じ得ません おっと,4年に一度の大統領選挙という潜在一隅のチャンスに選択を間違えました.洗剤意識の為せるワザです.水に流してください 

ということで,わが家に来てから今日で772日目を迎え,,博多駅前の道路が 地下鉄延伸工事のため 大きく陥没した事故のニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

               大穴を当てるのは競馬だけでいいのに 福岡市の名誉は陥没してしまうたい

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「牛肉と大根の煮物」と「生野菜とワカメのサラダ」を作りました 「牛肉~」は煮た後,20分くらい放置しておいたら味が染み込んで美味しくなりました

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日の朝日朝刊に「ピアニスト コチシュさん死去」という死亡記事が載っていました.超訳すると

「ハンガリーを代表するピアニストで指揮者,作曲家のゾルタン・コチシュさんが6日 死去した.64歳だった.同世代のピアニスト,アンドラ―シュ・シフ,デジュー・ラーンキとともに『ハンガリーの三羽がらす』と呼ばれた.10月に音楽監督を務めるハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団と来日する予定だったが,体調不良で降板していた」

コチシュは確かモーツアルトのCDを持っていたな,と思い出し,CD棚のモーツアルト・コーナーの約700枚の中から「モーツアルト 4手のためのピアノ・ソナタ全集」(2枚組)を探し出しました 演奏はデジュー・ラーンキとゾルタン・コチシュで,収録作品は①ソナタ ハ長調K.19d,②ソナタ ニ長調K.381,③ソナタ 変ロ長調K.358,④ソナタ ト長調 K.357,⑤ソナタ ヘ長調K.497,⑥ソナタ ハ長調K.521の6曲です

 

          

 

2枚目の1曲目に収録されたソナタ ヘ長調K.497を聴いてみました 第1楽章「アダージョーアレグロ・ディ・モルト」,第2楽章「アンダンテ」,第3楽章「アレグロ」から成りますが,第1楽章でアダージョを経てアレグロに入ると,歌劇「魔笛」の「パパゲーノのアリア」によく似た旋律が現れ,思わずニンマリしてしまいました このソナタが作曲されたのは1786年で,歌劇「フィガロの結婚」,「ピアノ協奏曲第23番」,「同第24番」,「交響曲第38番”プラハ”」など充実した作品が次々と作曲された時期です その頃にすでに最晩年の傑作「魔笛」(1791年10月初演)の中のアリアが構想されていたのか と再発見したような気持ちになりました

二人の演奏はテンポ感が良く 軽快そのものです 昨日の記事を見なければ,普段なかなか聴く機会のないモーツアルトの「4手のためのピアノ・ソナタ」に耳を傾けることはなかったでしょう  亡くなられたコチシュさんにお礼を言うとともに ご冥福をお祈りします

 

  最後の,閑話休題  

 

村上春樹著「女のいない男たち」(文春文庫)を読み終りました 村上春樹は1949年 京都生まれ.早稲田大学文学部演劇科卒.79年「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞したのを皮切りに,これまで数々の文学賞を受賞してきましたが,ノーベル文学賞はまだです

 

          

 

この本には「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェラザード」「木野」「女のいない男たち」の6つの短編小説が収録されています

著者は「長編小説にせよ短編小説にせよ,自分の小説に まえがき や あとがき をつけるがあまり好きではなく」と「まえがき」に書いていますが,村上春樹らしいな,と思います

最初の「ドライブ・マイ・カー」は,死後も舞台俳優の心をかき乱す妻の話です この中にクラシック音楽の話が出てきます

「帰り道ではよくベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴いた.彼がベートーヴェンの弦楽四重奏曲を好むのは,それが基本的に聴き飽きしない音楽であり,しかも聴きながら考え事をするのに,あるいはまったく何も考えないことに,適しているからだった

村上春樹がここで書いているベートーヴェンの「弦楽四重奏曲」が具体的にどの曲を指すのかは本人でないと分かりません 「ラズモフスキー」かも知れないし,「ハープ」や「セリオーソ」かも知れないし,後期の傑作群のどれかかも知れないし,あるいは初期の作品かも知れません 想像するに,何となく「大フーガ」ではないような気がします

「イエスタデイ」は,東京生まれなのに完璧な関西弁を話すことにこだわる男から,付き合っている彼女を貸すと言われる話です

「独立器官」は,52歳の美容整形外科医の恋煩いの話です 話の中で,主人公が女性全般について次のように述べています

「すべての女性には,嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっている どんな嘘をどこでどのようにつくか,それは人によって少しずつ違う.しかしすべての女性はどこかの時点で必ず嘘をつくし,それも大事なことで嘘をつく 大事でないことでももちろん嘘はつくけれど,それはそれとして,いちばん大事なところで嘘をつくことをためらわない そしてそのとき ほとんどの女性は顔色ひとつ,声音ひとつ変えない.なぜならそれは彼女ではなく,彼女に具わった独立器官が勝手におこなっていることだからだ

私には思い当たる節がありますが,皆さんはいかがでしょうか

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エルマンノ・オルミ監督「聖なる酔っぱらいの伝説」「緑はよみがえる」を観る

2016年11月08日 08時01分06秒 | 日記

8日(火).わが家に来てから今日で771日目を迎え,米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントンの私用メール問題を巡り,FBIが再調査の結果 訴追を求めない方針に変わりないことを表明したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

              気がメールと嘆いていたクリントンはFBIをヒラリとかわしたね 結果は読めた! 

 

  閑話休題  

 

昨夕,クリームシチューと生野菜・ツナ サラダを作りました 寒い夜はシチューがいいですね

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,文京シビックチケットに行き「響きの森クラシック・シリーズ2017-2018シーズン」シリ―ズセット券を引き取ってきました 本来は予約確定ハガキと現金を持参しなければならないのですが,ついハガキを忘れてしまい ダメ元で話をしたら,予約番号と座席指定番号を手帳に控えていたので,何の問題もなくチケットを受け取ることが出来ました 9月のチョン・ミョンフンのベートーヴェン「交響曲第3番”英雄”」が楽しみです

 

          

 

  最後の,閑話休題  

 

昨日,早稲田松竹でエルマンノ・オルミ監督「聖なる酔っぱらいの伝説」と「緑はよみがえる」の2本立てを観ました 「聖なる酔っぱらいの伝説」は1988年公開 127分の作品です

 

          

 

パリ・セーヌ川の橋の下を住み家としている路上生活者アンドレアスは,ある日 不思議な紳士から,日曜の朝に聖テレーズ像のあるリシュー教会でミサの後に金を返すことを条件に,200フランを貸してもらうことになる それからというもの,彼の身の上に奇跡的な出来事が立て続けに起こる ワインを飲むために立ち寄ったカフェで見知らぬ男から仕事が提供されたり,買った財布の中に大金が入っていたり,若いダンサーのギャビーと出逢い つかの間のアバンチュールを楽しんだりと 良いことが続いた  アンドレアスは何度か紳士との約束を果たすために教会へ出向くが,そのたびに,彼が昔炭鉱夫だった頃の友人の妻カロリーヌと再会したり,幼馴染みのヴォィテクと再会したりして,なかなか約束が果たせない ある日曜日,教会の前のカフェでヴォィテクと待ち合わせをしたアンドレアスは,少女に姿を変えた聖テレーズを見る.その場で卒倒したアンドレアスは教会に運ばれ,少女に見守られながら息を引き取る

この映画の冒頭,クラリネットの不思議なメロディーが流れます 何の曲かは分かりませんが,ストラヴィンスキーの音楽です この映画では全編を通してストラヴィンスキーの音楽,主に管楽器による音楽が使われています しかし,使われているのは,われわれがコンサートやCDで知っている「春の祭典」や「ペトルーシュカ」や「火の鳥」ではありません これ以外のストラヴィンスキーの音楽に不案内な私にとっては曲名がさっぱり分かりませんが,あまりにもその場その場にピッタリの音楽なので,まるでストラヴィンスキーがこの映画のために書いたのではないかと思うほどです

2本目の「緑はよみがえる」は2014年公開 76分の短編映画です

 

          

 

1917年の冬.北イタリアの激戦地アジア―ゴ高原では,オーストリア軍と戦うイタリア兵たちが大雪に埋もれた塹壕の中に籠っていた 飢えや病気で次々と倒れていく中で,司令部から不条理な指令が下され,兵士たちは次第に追い詰められていく そんな中,オーストリア軍の猛攻撃が彼らを襲う

この映画はオルミ監督が父親から聞いた戦争の記憶を再現したものです.夜の山の美しさが印象に残ります

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プラハ国立歌劇場公演でベッリーニの歌劇「ノルマ」を観る~グルベローヴァ期待のノルマはいかに?

2016年11月07日 07時57分32秒 | 日記

7日(月).わが家に来てから今日で770日目を迎え,仲間らしきウサギに遭遇して とまどっているモコタロです

 

          

                                     おやっ ボクに似た動物がいるぞ いったい何ものだ?

 

          

                なんだって? 「今年は残り少なくなったね」がヒントだって?

 

          

             2017が気になってたけど ペット・ショップの来年のカレンダーだってさ

 

  閑話休題  

 

昨日,東京春祭ワーグナー・シリーズVol.8「神々の黄昏」のチケットを手配しました 朝10時から電話・ネットでの先行予約受付開始ということだったので,早々にネットでアクセスしたのですが,「アクセス集中につき 後でやり直してほしい」旨の表示が出ています.何度かやり直してダメだったので,30分後に再挑戦したら今度は繋がりました 4月1日(土)と4月4日(火)の2回公演がありますが,土曜は申し込みが集中して良い席が取れないだろうという予測を立て,4日の座席指定を取りました S席で左ブロック9列目ですが,残念ながら通路側は取れませんでした.それでもかなり良い席です

出演はジークフリート=ロバート・ディーン・スミス,アルべリヒ=トマス・コニエチュニー,ブリュンヒルデ=クリスティアーネ・リボール,ヴァルトラウテ=エリーザベト・クールマン,ハーゲン=アイン・アンガー他,管弦楽=NHK交響楽団,合唱=東京オペラシンガーズ,指揮=マレク・ヤノフスキです

私は 昨年の春祭ワーグナー「ワルキューレ」を2015年に聴いた「マイ・ベスト1」に選んでいます 今年の「ジークフリート」も現時点でマイ・ベスト3に入っています 最高の指揮者・キャストによる「春祭ワーグナー」シリーズはクラシック好きには聴き逃せません S席:21,600円,A席:17,500円,B席:13,400円,C席:10,300円,D席:7,200円,E席:4,100円,U25席:2,000円となっています.このうち先行予約の対象はS,A,B席です.より良い席を確保するためには電話か,ネットで登録のうえ予約を入れることをお勧めします 電話は03-3322-9966,ネットは「東京春祭」で検索してください.先行予約は11月22日(ネットは23日)までとなっています

 

          

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,渋谷のオーチャードホールでプラハ国立歌劇場の来日公演,ベッリーニの歌劇「ノルマ」を観ました 出演は,ノルマ=エディタ・グルベローヴァ,ポリオーネ=ゾラン・トドロヴィッチ,アダルジーザ=ズザナ・スヴェダ,オロヴェーゾ=オレグ・コロトコフ,フラヴィオ=ヴェーツラフ・ツィカーネク,クロティルデ=シルヴァ・チムグロヴァ―,指揮=ペーター・ヴァレントヴィッチ,演出=菅尾友です

この公演を観るために,先週はマリア・カラスの歌う「ノルマ」のCDで徹底的に予習をしてきました.待望のノルマ公演です

 

          

 

「物語は紀元前50年ごろのガリア地方.ローマ帝国の支配下に置かれているこの地方は,ローマから派遣された総督ポリオーネが統治していた.一方,現地の人はオロヴェーゾのもとで反乱の機会を狙っていた.彼の娘で巫女の長のノルマは禁を破ってひそかに敵のポリオ―ネと愛し合い,子供をもうけていた.しかし,ポリオ―ネは若い巫女アダルジーザに心を移していた.この3人の三角関係のもつれにより,最後にはノルマとポリオ―ネは愛を取り戻すが,禁を破った罰として二人とも自ら火刑台に向かう」

 

          

 

自席は1階18列3番,左ブロック左から3つ目の席です.会場はほぼ満席です 皆 グルベローヴァがお目当てでしょう.グルベローヴァはスロヴァキアのブラティスラヴァ生まれ.1970年にウィーン国立歌劇場でモーツアルト「魔笛」の夜の女王で本格的なデビューを果たし,カール・ベームに認められ リヒャルト・シュトラウスなどのオペラを歌い,その後レパートリーを広げ,コロラトゥーラ・ソプラノとして名を馳せました その以降,ドニゼッティ,ベッリーニなどベルカント・オペラに取り組み,オペラの頂点に立ちました

 

          

 

拍手の中,指揮者のペーター・ヴァレントヴィッチがオーケストラ・ピットに入り,序曲の演奏に入ります マリア・カラスのCDでバックを務めたトゥリオ・セラフィンによる”劇的緊張感漲る”演奏に比べると迫力不足ですが,ベッリーニの序曲の魅力はしっかりと伝えています 演奏は良いのですが,ホールの音響が最悪です 音の固まりがボワーンと広がっていく感じです.オーケストラ・ピットから出る音ということを割り引いても,ひどい音響です これだからオーチャード・ホールは敬遠したくなるのです

ステ―ジはコンクリートむき出しのような地味でシンプルな舞台造りになっています 第1幕が始まり,合唱に続いてノルマが登場しますが,グルベローヴァを見て「ずいぶん歳をとったなあ」と思いました.年月の流れは歌手にとって残酷です 合唱「ノルマのお出ましだ」に次いで,ノルマがこのオペラの最大のアリア「清らかな女神」を歌う場面になりました フルートによる緩やかな息の長い旋律が流れグルベローヴァのアリアを導きます

ところが,どうしたことでしょうか.グルベローヴァの口から出て来た歌声は音程が狂っているとしか言いようがない不安定なものでした とても信じられないことが目の前で起こっています 声が上ずった状態で修正がきかないまま待望のアリアが終わってしまいました 何のために29,000円ものお金を注ぎ込んで,しっかり予習してきたのでしょうか 本当にガッカリしました.ところが,アリアが終わると1階後方,2階席からブラボーがかかりました.絶対「ブラボー屋」が雇われているに違いありません わざとらしいブラボーでした.私は ベラボー と叫びたくなるのをじっと我慢しました 会場は拍手に満たされていましたが,私の周りの人で拍手をしている人は一人もいませんでした.自分に正直に生きている人が集まっていたようです

その後も,第1幕の「ノルマとアダルジーザの二重唱『ああ,思い出す.私もそうだった』」でも不安定さは変わらず,どちらがヒロインなのか分からないような歌唱力でした 第2幕に入ってから一時良くなったかな,と思わせる場面もありましたが,残念ながら「ノルマとアダルジーザの二重唱『お願い,子供たちを連れて行って』」,「ノルマとポリオ―ネの二重唱『とうとう私の手に』」でも好調さを取り戻すまでには至りませんでした

しかし,絶望ばかりしていたら何も得るものはありません ノルマ以外に救いを求めることにしました.幸いにもグルベローヴァに師事したズザナ・スヴェダが完璧に近いアダルジーザを歌い 演じていました また,ポリオーネを歌い 演じたゾラン・トドロヴィッチは新国立オペラの「カルメン」でドン・ホセを,「蝶々夫人」でピンカートンを歌った人ですが,終始 力強い歌声で安定感のあるテノールを聴かせてくれました 第1幕の「アダルジーザとポリオーネの二重唱『ならば去れ,冷たい人よ』」は絶妙のアンサンブルでした また,ノルマの父オロヴェーゾを歌ったオレグ・コロトコフはプラハ国立歌劇場のソリストですが,深みのあるバスで聴衆を魅了しました

あらためてプログラム冊子をめくってみたら,グルベローヴァは1946年生まれであることが分かりました ということは今年がちょうど70歳ということになります この日の不調は加齢によるものなのか,この日が来日公演の最終日ということで公演旅行の疲れがピークに達していたということなのか,本当のところは本人でなければ分かりません

今回のプラハ国立歌劇場の来日公演の演目はベッリーニ「ノルマ」とモーツアルト「魔笛」の2本で,10月15日から11月6日まで(22日間)のうち15日間,神奈川,盛岡,横須賀,大宮,福岡,松山,びわ湖,大阪,長野,名古屋,東京と全国を”巡業”しています その意味ではハードスケジュールですが,「ノルマ」は6公演で,グルベローヴァが歌うべき「ノルマ」のノルマ  は10月26日(水)福岡,11月3日(木)名古屋,そして11月6日(日)東京の3公演です 前の公演から名古屋が中7日,東京が中2日での出番です.今回の最終公演で グルベローヴァは中2日では回復できなかったということでしょうか

全2幕が終わり,幕が降りるとブラボーと拍手の嵐が起こりましたが,出場者全員のカーテンコールに付き合ってから,早々に引き上げてきました 何人かの歌手が良くても,肝心のヒロインが不調ではその公演は成功したとは言えないでしょう.本当に残念です

 

          

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シモーネ・ヤング+ワイラースタイン+東響でドヴォルザーク「チェロ協奏曲」,ブラームス「交響曲第4番ホ短調」を聴く

2016年11月06日 08時48分35秒 | 日記

6日(日).わが家に来てから今日で769日目を迎え,あまりにもお尻が汚いので 生まれて初めてお風呂に入れてもらい 恐怖で声が引きつるモコタロです

 

          

                                  お風呂怖いよ~ 水嫌いだよ~ 早くここから出してくれよ~

 

          

                                     何でも言うこと聞きますです お代官様 ここから出してくだせえ

 

          

                                 ああ やっと外に出られた~ もうイヤ! こんな生活 痛氾生活ってか

 

  閑話休題  

 

昨日,サントリーホールで東京交響楽団の第646回定期演奏会を聴きました プログラムは①ドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」,②ブラームス「交響曲第4番ホ短調」です ①のチェロ独奏はアリサ・ワイラースタイン,指揮はシモーネ・ヤングです

 

          

 

1曲目はドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調」です オケの態勢は,左奥にコントラバス,前に左から第1ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,第2ヴァイオリンという対向配置をとります コンマスはグレブ・二キティン.ゴージャスなゴールドの衣装を身に付けたワイラースタインがシモーネ・ヤングと共に登場します

シモーネ・ヤングは,オーストラリア出身で ドイツを本拠として活躍している女性指揮者です 2015年までの10年間 ハンブルク州立歌劇場総裁兼ハンブルク・フィル音楽総監督を務めていました ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスのオペラが得意分野のようで,世界中のオペラ劇場でタクトをとっているとのことです 外見を見る限り,ワーグナーを指揮するというよりもブリュンヒルデを歌う方が似合っているような雰囲気を醸し出しています

一方,アリサ・ワイラースタインは,天才チェリスト ジャクリーヌ・デュ=プレ以来,ダニエル・バレンボイムがエルガーの協奏曲で共演したことで話題を呼んだ女性チェリストです

ヤングはメガネを着用しています.コンチェルトなので譜面を見て指揮をとるということです ヤングのタクトで第1楽章が開始されます.やがて独奏チェロが入ってきますが,10月21日にN響定期で同曲を弾いたロシアのクニャーゼフほどの迫力はないものの,説得力があります 独奏ホルンはヨーロッパ遠征疲れでしょうかお疲れ気味でした 一方,フルート首席の相澤政宏,オーボエ首席の荒木奏美,クラリネット首席のエマニュエル・ヌヴ―はいつもながら素晴らしい演奏を展開していました

第2楽章のアダージョではワイラースタインの操るチェロ(1730年製ドメニコ・モンタニャート)の美しい音色が会場いっぱい響き渡りました 良い気持ちで聴いていると,左ブロックの方から,曲に合わせてメロディーを口ずさむ高齢男性の歌声が聞こえてきました 定期演奏会では珍しいことですが,時々いますね,こういう困ったおじさんが 本人だけが興に乗っていて周りに迷惑をかけていることに全く気付いていない最悪の状況です 「あんたの歌を聴きに来たんじゃないんだよ」と叫びたくなります.せっかくのワイラースタインが台無しです

第3楽章では,高音から低音までニュアンスに満ちたワイラースタインのチェロが美しいメロディーを歌います 名門デッカ・クラシックがチェリストとして初めて専属録音契約を結んだそうですが,「看板に偽りなし」その実力を存分に発揮しました

会場いっぱいのブラボーと拍手に,ワイラースタインはバッハ「無伴奏チェロ組曲第3番」からサラバンドを瞑想的に演奏し,聴衆のクールダウンをはかりました

 

          

 

休憩後はブラームス「交響曲第4番ホ短調」です この曲は1884~85年(作曲者51~52歳頃)に作曲されました.シモーネ・ヤングは今度はメガネを着用していません.つまり暗譜で指揮をとるということです ヤングのタクトによって第1楽章が開始されます.何ともやるせないメランコリックなメロディーが奏でられます ヤングは後半に入ると急にテンポを上げ,畳みかけるように曲を終結させました この人の音楽作りの一面かも知れません.第2楽章はアンダンテ・モデラートの指示そのものの演奏でしたが,第3楽章は相当速いテンポで駆け抜けます そして間を空けずに第4楽章に入りますが,この楽章も第1楽章と同様,後半にテンポをアップしてオケを煽り立てます この曲でもフルート,オーボエ,クラリネットを中心に木管楽器群が優れた演奏を展開していました 左ブロックの「浪花節」はオケのフォルテにかき消されたようです あのおじさんが定期会員でないことを祈ります

熱狂的な聴衆の反応から,繰り返されるカーテン・コールでステージに呼び戻されるシモーネ・ヤングは,管楽器を立たせ,オケ全体を立たせ,深々と前に後ろに一礼します 

ヤングの本領はオペラで発揮されるようなので,今度はワーグナーの楽劇を聴いてみたいと思いながら帰途に着きました

 

          

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「矢崎彦太郎+新交響楽団」,「東京藝大チェンバーオケ」のチケットを買う/村上春樹著「職業としての小説家」を読む

2016年11月05日 07時54分15秒 | 日記

5日(土).クラシック音楽のフリーペーパー「ぴあクラシック」秋号に掲載の「マエストロ曽我大介の知っ得!納得!クラシック」に「おしえて そがさん!」というコーナーがありますが,この号の質問は

「指揮棒を使わない指揮者もいるが,どうしてか? また 指揮棒を使う人でも,ある楽章に入ると指揮棒を置いて指揮する場面がある.どういう理由か?」

というものです これに対して東京ニューシティ管弦楽団正指揮者の曽我大介氏は概ね次のように答えています

「指揮棒は,指揮者の動きを拡大し,見やすくするツール オペラの暗いピットや大きな舞台で視認性が求められる時には必要 それ以外の場面では無くても差し支えない 指揮棒を使った方が腕を動かす量が少なくて済み,指揮者にとっての省力 ツールでもある

指揮棒が「省力 ツール」という指摘には目から鱗が落ちました 指揮者の中には最初から最後まで指揮棒を使わず,両手で指揮をしている人もいますが,相当体力を使っているのでしょうね  でも拍手喝さいを受ければ,指揮者の”手がら”になるわけで,奮闘努力が報われるのでしょうか

ということで,わが家に来てから今日で768日目を迎え,韓国の朴大統領が機密文書を支援者のチェ・スンシル容疑者に渡していた問題で,大統領が 必要なら検察の調査に応じると語ったというニュースを見て,韓国を取り巻く情勢を懸念するモコタロです

 

          

              コリア~大変だ!  この機に"北"がキターッてならなきゃいいな

 

  閑話休題  

 

今飲んでいるワインがなくなりそうなので,新しく3本買ってきました 2本はボルドーの赤で,1本は今年秋収穫の 山梨特産デラウェア種の白です 「夏はビール,冬は熱燗」の中間ということでもないのですが,秋はワインがいいですね 早速,夕食時に白ワインを開けて,買ってきたプチ・チーズ・セットをつまみながら飲みましたが,フルーティーでとても美味しく,味にうるさい娘も絶賛していました

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

チケットを2枚買いました  1枚目は来年1月29日(日)午後2時から池袋の東京芸術劇場コンサートホールで開かれる「新交響楽団第236回演奏会」です プログラムは①ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」,②同「バレエ音楽”遊戯”」,③ストラヴィンスキー「バレエ音楽”火の鳥”」(全曲版)です 指揮はフランスものに定評のある矢崎彦太郎です

 

          

 

2枚目は2月12日(日)午後3時から上野の東京藝大奏楽堂で開かれる「東京藝大チェンバーオーケストラ第28回定期演奏会」です プログラムは①モーツアルト「交響曲第35番ニ長調K.385”ハフナー”」,②イルジー・パウエル「ファゴット協奏曲」,③モーツアルト「交響曲第39番変ホ長調K.543」です 指揮者なしで,②のファゴット独奏は藝大客員教授・岡崎耕治です これはK.543狙いです

 

          

 

  最後の,閑話休題  

 

村上春樹著「職業としての小説家」(新潮文庫)を読み終りました 今更ですが,村上春樹のプロフィールを簡単にご紹介しておきます 1949年 京都市生まれ.早稲田大学第一文学部卒業.1979年「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞してデビュー 最近では毎年のようにノーベル文学賞候補に挙がりながら毎年受賞を逃していることで有名な小説家です

 

          

 

この本は,分かり易い言葉で書いた「小説の書き方入門書」と言っても良い本です まず,自分自身がどのように小説家になったのか,その後どのように歩んできたのかを語り,オリジナリティーとは何か,何を書けば良いか,長編小説はどのように書けば良いのか,といったことについて持論を述べています 「あとがき」に本人が書いているように,この本は「出版社から依頼を受けて書いた文章ではなく,最初から自発的に,いわば自分のために書き始めた」文章を集めたものです

小説家になるきっかけは野球観戦だったそうです  もうすぐ30歳になる頃の1978年4月,ヤクルト スワローズ ファンである村上春樹は神宮球場にヤクルト・スワローズ対広島カープの試合を観に行ったそうです 1回裏,ヤクルトのヒルトンがレフト前にヒットを飛ばしたのを見たとき,村上は,ふと「そうだ,僕にも小説が書けるかもしれない」と思ったとのこと この”啓示”がキッカケになり「風の歌を聴け」を書き始め,これが彼の小説家としてのスタートになったそうです なお,この年ヤクルト スワローズは日本シリーズを制し,日本一に輝きました 村上春樹がヤクルト ファンだということは知っていましたが,野球観戦が小説家になるきっかけになったことは初めて知りました

「オリジナリティーについて」という章の中で,彼はストラヴィンスキーの「春の祭典」を引用しています

「『春の祭典』を聴いても,現代の聴衆はそれほど戸惑ったり混乱したりしませんが,今でもやはりそこに時代を超えた新鮮さや迫力を体感することはできます そしてその体感はひとつの大事な『レファレンス』として人々の精神に取り込まれていきます.つまり音楽を愛好する人々の基礎的な滋養となり,価値判断基準の一部となるわけです 極端な言い方をすれば,『春の祭典』を聴いたことのある人と,聴いたことのない人とでは,音楽に対する認識の深度にいくらかの差が出てくることになります

これは実感として分かります.同じクラシック音楽を聴くにしても,より多くの作曲家の より多くの作品を聴いている人の方が,音楽史の中でのその作品の位置づけを理解して聴くことが出来るので,作品への理解が深いはずです

また,同じ「オリジナリティーについて」の中で,奇しくも今年ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランについて触れています

「ボブ・ディランも1960年代半ばに,アコースティック楽器だけを使ったいわゆる『プロテスト・フォークソング』のスタイルを捨てて,電気楽器を使うようになったときには,従来の支持者の多くから『ユダ』『商業主義に走った裏切り者』と悪し様に罵られました でも今では彼が電気楽器を使い出したことを批判するような人はほとんどいないはずです.彼の音楽を時系列的に聴いていけば,それがボブ・ディランという自己革新力を備えたクリエーターにとって,あくまで自然で必須な選択であったことが理解できるからです

このように書いた 小説家としての村上春樹は,ボブ・ディランの歌をどのように評価しているのでしょうか? ”文学”としてノーベル文学賞に値すると捉えているのでしょうか? 彼がどのように思っているか興味のあるところです

これに関連して「文学賞について」の章の中で,彼は次のように書いています

「賞の価値は人それぞれによって違ってきます.そこには個人の立場があり,個人の事情があり,個人の考え方・生き方があります いっしょくたに扱い,論じることはできない.僕が文学賞について言いたいのも,それだけのことです.一律に論じることはできない.だから一律に論じてほしくもない

村上春樹という人は,何か賞を取っても取らなくても,外野からいろいろと言われてきたので,ここでは開き直っているのかも知れません また,上の文章から推測するに,彼はボブ・ディランのノーベル文学賞受賞については「個人の立場があり,個人の事情があり,個人の考え方・生き方がある」ので,あえてコメントしようとは思わない,とでもコメントするのかも知れません

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ブラームス「交響曲第1番」,伊福部昭「シンフォニア・タプカーラ」他を聴く~新交響楽団第235回演奏会

2016年11月04日 07時59分20秒 | 日記

4日(金).わが家に来てから今日で767日目を迎え,久しぶりに顔のドアップで登場するモコタロです

 

          

               いや~ めっきり寒くなったねぇ もうかりまっか?

 

  閑話休題  

 

昨日,池袋の東京芸術劇場コンサートホールで新交響楽団第235回演奏会を聴きました プログラムは①吉松隆「鳥のシンフォニア”若き鳥たちに”」,②伊福部昭「シンフォニア・タプカーラ」(1979年改訂版),③ブラームス「交響曲第1番ハ短調」です 指揮は東京藝大招聘教授で千葉交響楽団音楽監督の山下一史です

新交響楽団は1956年創立,会社員,教員,学生など様々な職業・年齢にわたる団員で自主運営されているアマチュアオーケストラの草分け的存在です 音楽監督・芥川也寸志の指導のもとに旧ソ連演奏旅行,ストラヴィンスキー・バレエ三部作一挙上演など,意欲的な演奏活動を展開してきました

 

          

 

自席は1階H列12番,左ブロック右通路側席です.会場は8割以上は入っているでしょうか 楽員にはチケット・ノルマがあるらしいので,何割かは楽員の関係者でしょう.私のように,ただ好きな音楽を聴きたくてチケットを買うお客は少数派かも知れません それにしてもこの動員力にはいつも驚きます.それは演奏が優れているからこそです

1曲目は吉松隆「鳥のシンフォニア”若き鳥たちに”」です 吉松隆は1953年東京・渋谷生まれで,作曲を伊福部昭の弟子・村松禎三に師事しました.したがって,伊福部昭の孫弟子に当たります あくまでも独学であることにこだわり,現代音楽が無調で前衛的な傾向にあるのに反して,調性とメロディーのある音楽を作ることに挑み続けてきました 彼の作品の多くは「鳥」をテーマにしており,今回の演奏曲目も「鳥のシンフォニア」となっています この曲は2009年に仙台ジュニアオーケストラの委嘱で作曲された5楽章から成る作品で,山下一史の指揮で初演されました

オケは左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという態勢をとります 指揮者・山下一史が登場し早速第1楽章に入ります.「鳥のシンフォニア」の標題の通り,各楽器が鳥の鳴き声を模して歌を紡いでいきます 面白いのは第3楽章で,ジャズのイディオムを使って書かれています.スイング感溢れる楽しい曲です そして最後の第5楽章が,仙台ジュニアオーケストラ創立20周年を祝う賛歌となっています 勇壮で解放感に満ちた音楽を聴きながら,鳥が大空を自由に飛んでいる光景を目に浮かべていました

演奏後,山下が会場中央の席にいた吉松隆氏をステージに招き,握手を求めました.写真で見たとおりかなり恰幅のよい重量級の人でした

2曲目は「ゴジラ」の作曲家として有名な伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」(1979年改訂版)です 伊福部昭は北海道に生まれ,北大卒業後に林務官の仕事の傍ら独学で作曲を続け,民族色の強い個性的な作品を多く残しました タプカーラとはアイヌ語で「自発的に踊る」という意味です.「シンフォニア・タプカーラ」改訂版は,新響が1980年に開催した伊福部昭の個展で初演され,新響では今回が16回目の演奏となるそうです

第1楽章「レント・モルトーアダージョ」,第2楽章「アダージョ」,第3楽章「ヴィヴァーチェ」の3つの楽章から成ります この曲をLPレコードで初めて聴いた時の強烈な印象は忘れられません まず頭に浮かんだのはベートーヴェンの「交響曲第7番」第4楽章です.まさに「リズムの饗宴」です

それと同時に,日本人にドビュッシーのような曲が作れないのと同様,欧米人には伊福部昭のような曲は作れないだろう,と思いました 新響の演奏を聴いていると,この曲の改訂版を初演したという歴史と伝統の重みを背負ったオーケストラの熱き想いがヒシヒシと伝わってきました 伊福部昭の音楽は日本人の誇りだと思います

 

          

 

休憩後はブラームス「交響曲第1番ハ短調」です ブラームスはベートーヴェンの9つの交響曲を重荷に感じて作曲に慎重になり,構想から21年もの歳月をかけて交響曲第1番を作曲しました.すなわち22歳ごろから下書きにかかり,1876年,43歳の時に完成したのです 当時の名指揮者ハンス・フォン・ビューローは,完成度の高いこの曲を ベートーヴェンの交響曲第9番に次ぐ「交響曲第10番」と名付けました

山下一史のタクトで第1楽章がティンパ二の52連打で開始されます この冒頭は素晴らしいですね.何事も最初が肝心です.このオケを聴いていつも思うのは弦楽セクションの厚みのある音と,フルートが素晴らしい演奏をすることです もちろん,オーボエもクラリネットもファゴットもホルンもみんな良いのですが,いつも絶好調という訳にはいかないでしょう.それとティンパ二が素晴らしい とくにベートーヴェンやブラームスをやる時は気持ちが良いほど胸のすく演奏をしてくれます

新交響楽団のメンバーは毎週土曜日午後の3時間,練習を重ねているらしいのですが,サラリーマン,自営業,学生,主婦など それぞれ本業で忙しい中,時間を作るのは大変だと思います それでも時間を作り精進を重ねるのは音楽が好きだからでしょう 練習では楽しいことよりも辛いことの方が多いかもしれません 私には何もできませんが,これからもコンサートを聴くことで皆さんを応援したいと思います

 

          

 

なお,次回のコンサートは,下のチラシの通り,来年1月29日(日)午後2時から東京芸術劇場コンサートホールで開催されます 私は来年の手帳に予定を入れました

 

          

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第15回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール第2位・岡本誠司「ヴァイオリン・リサイタル」を聴く

2016年11月03日 08時18分14秒 | 日記

3日(木・祝).文化の日は「晴れの特異日」と言われていますが,その言い伝えのとおり東京は朝からよく晴れています 絶好のコンサート日和ですね ということで,わが家に来てから今日で766日目を迎え,お姉ちゃんの部屋で黒の衣装をかじっているモコタロです

 

          

             おやつは飽きたから お姉ちゃんの衣装を味見したら   叱られちゃったよ

 

  閑話休題  

 

昨日は凄く寒かったので,夕食はおでんにしました  秋になってから初めてエアコンの暖房をつけました.今年は秋が短く冬が長いような気がします

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

昨日,晴海の第一生命ホールで「雄大と行く 昼の音楽散歩 岡本誠司ヴァイオリンが歌うロマンス」公演を聴きました プログラムは①クライスラー「愛の喜び」,②同「愛の悲しみ」,③クララ・シューマン「3つのロマンス」,④ラフマニノフ「2つのサロン風の小品」,⑤シベリウス「ロマンス」,⑥スーク「愛の歌」,⑦シマノフスキ「神話」から3つの詩,⑧エルガー「愛のあいさつ」です 岡本誠司は1994年生まれ,20歳でJ.S.バッハ国際コンクールで優勝した東京藝大在学中の俊英,ピアノ伴奏はパリ高等音楽院ピアノ科・室内楽科准教授の上田晴子です

 

          

 

岡本誠司の演奏を聴こうと思ったのは,6月30日に開かれた東京藝大「モーニングコンサート」で弾いたハチャトゥリアンの「ヴァイオリン協奏曲ニ短調」の演奏が素晴らしかったからです

自席は1階6列11番,左ブロック右から2つ入った席です.会場は7割程度の入りでしょうか 会場を見渡すと帽子を被ったままの男性が数人目に付きました コンサートを聴くのに帽子を被ったままというのはどうなんでしょうか? もちろん,中には「帽子をとると頭が涼しすぎて風邪を引きそう」という止むを得ない頭髪事情をかかえている人もおられることでしょう そうでもない限り,帽子を被ったまま演奏を聴くのは演奏者に対して失礼だと思いますが,皆さんはどうお考えでしょうか?  ベスト・アンサーには,当該者に成り代わって脱帽します

さて,岡本誠司と植田晴子がステージに登場し,さっそくクライスラーの「愛の喜び」と「愛の悲しみ」の演奏に入ります 岡本はおそらくストラディヴァリウス・クラスの名器を駆使して美しい音色で喜びと悲しみを弾き分けます 抑制された演奏の美しさが光ります

ここで,ナビゲーターの山野雄大が登場,岡本誠司が 先週ポーランドで開かれた第15回ヴィエ二ャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで第2位を獲得したことを紹介(会場  ),次に演奏するクララ・シューマンの人と曲について解説しました それによると,今でこそ夫のロベルト・シューマンの方が有名だが,当時は妻のクララの方が大ピアニストとして名を馳せており,演奏旅行に行く先々でロベルトはクララのマネージャーと間違えられたほどだったそうです ロベルトはそのたびに「も~ 頭にクララ」と言ったかどうかは分かりません

クララ・シューマンの「3つのロマンス」は1「アンダンテ・モルト」,2「アレグレット」,3「情熱をこめて速く」から成ります いずれもロマンティックな曲想ですが,どうしてどうしてなかなか聴かせる曲です 彼女に限らず女性作曲家の作品が演奏される機会があまりないのは残念なことです

次に,ラフマニノフ「2つのサロン風の小品」が演奏されます 1.「ロマンス」,2「ハンガリー舞曲」の2曲ですが,「ロマンス」は 聴く限り 「サロン風」というような優雅さは感じません むしろ濃厚で深い情感に溢れています.そして「ハンガリー舞曲」は激しく技巧的な曲で,こちらもサロン風とは趣が異なります 両曲ともラフマニノフらしい聴きごたえのある作品です

次にシベリウス「ロマンス」が演奏されます.この作品は1915年に書かれた「4つの小品」の第2曲です シベリウスは交響曲とか「フィンランディア」などで,独自の個性を発揮した曲を作っていますが,「ソナチネ」とかこの「ロマンス」のような小さいながらも魅力溢れる曲も書いています 

次いで,ヨゼフ・スーク「愛の歌」が演奏されます もともとは「6つのピアノ小品」の第1曲でした.とてもロマンティックな曲です ヨゼフ・スーク(1874-1935)はドヴォルザークの弟子で娘婿でもあるチェコの作曲家です.もう一人の同姓同名のヴァイオリニスト,ヨゼフ・スークは彼の孫です 私は彼の演奏するCDを4枚持っていますが,残念ながら「愛の歌」は収録されていません

 

          

 

          

 

          

 

          

 

ここで,山野雄大が登場,「これまで聴いてきたクライスラーからスークまでの曲は,流れるようなメロディーで すんなりと耳に入ってきたと思うが,これから聴くシマノフスキの曲は美しい曲だが 趣が異なる」と解説,ピアニストの植田晴美にマイクを譲ると「印象派的な感じがする.あるいは,ターナーの絵のような感じ」と印象を述べていました

ポーランドの作曲家カロル・シマノフスキ(1882-1937)は,緻密で神秘的な音楽を突き詰めた人で,「神話:3つの歌」は彼の代表作です ギリシャ神話をモチーフにして想像を膨らませた作品で,1「アレトゥーサの泉」,2「ナルシス」,3「ドリアードと牧神」から成ります

この曲の演奏に入って,植田晴子のピアノが俄然輝いてきました それまでは何とかヴァイオリンを引き立てて・・・・と控えめな演奏に徹していた感がありますが,シマノフスキの第1曲「アレトゥーサの泉」に入るや否や,水を得た魚のように自由自在に弾き始めました ヴァイオリンとの丁々発止が聴きものでした

なるほど,山野氏の解説の通り,この曲は今まで聴いた曲とは美しさの性質が違います ひと言で言えば「神秘的」です.特に弱音による演奏が強く印象に残る曲です

 

          

 

最後にエルガーの「愛のあいさつ」が演奏されました これは「愛」とか「ロマンス」をテーマにしたコンサートでは定番の曲です

アンコールは,岡本がヴィエニャフスキ・コンクールの時にも弾いたヴィエニャフスキの「華麗なるポロネーズ第1番」を華々しく演奏,盛大な拍手を浴びました 

岡本誠司は大器の器だと思います 演奏は言うまでもなく,トークでの話の内容も話し方もしっかりしていて,良い意味での”自己主張”があると思います これからも注目していきたいと思います

休憩なし90分の「昼の音楽さんぽ」,2000円で十二分に楽しむことが出来ました

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「ノルマ」をカラスのCDで予習する/誉田哲也著「Qrosの女」を読む/門脇麦主演・岸善幸監督「二重生活」を観る

2016年11月02日 07時49分10秒 | 日記

2日(水).わが家に来てから今日で765日目を迎え,2020年の東京オリンピックのボート会場が3カ所提案されたというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

            ボート会場だけに 早く決めて 準備に漕ぎ出して欲しいなぁ

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「鶏ももキャベツの味噌マヨガーリック」と「生野菜とツナのサラダ」を作りました 「鶏もも~」は日本酒を擦りこんで薄力粉をまぶしてフライパンで焼くのですが,いつも焦げ付いてしまいます サラダ油が足りないのかな

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

6日(日)にプラハ国立歌劇場の来日公演 べッリーニの歌劇「ノルマ」(主演:エディタ・グルベローヴァ)を聴くので,今週はCDによる予習週間です

 

          

 

レファレンスCDは,ノルマ=マリア・カラス,ポリオーネ=フランコ・コレルリ,アダルジーザ=クリスタ・ルートヴィヒほか,トゥリオ・セラフィン指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団による1960年9月のステレオ録音です

 

          

 

マリア・カラスは1948年11月30日にフィレンツェ市立歌劇場で「ノルマ」を初めて歌って以来,65年5月29日の不調で第2幕がキャンセルとなったパリ・オペラ座の公演まで,58年のローマ歌劇場における中断公演を含めて90回歌っています カラスにとって「ノルマ」は究極の当たり役となったのです.「ノルマ=カラス」という図式が出来上がってしまった結果,後のソプラノ歌手は「ノルマ」に手が出なくなってしまったとも言えるでしょう この「ノルマ」の大成功をはじめとして,オペラ界の紀元前(B.C)・紀元後( A.D)は「ビフォア・カラス,アフター・ディーヴァ」と言われるようになりました

マリア・カラスの声は決して美声ではありません しかし,いったん出された歌声は,それ自体がドラマをはらんでいます 文字通り「ドラマティック・ソプラノ」なのです 一度 彼女の歌を聴いたら決して忘れられないでしょう.カラスはそういう力を持っています

なお,下のCDは上記1960年盤のハイライト盤です 「清らかな女神よ」をはじめ主なアリアが収録されていますが,劇的緊張感が漲る「序曲」が収録されていないのが唯一残念なところです

 

          

 

これとは別に,カラスは1954年4月~5月にモノラル録音で「ノルマ」を収録しています こちらは,カラスの他に,ポリオーネ=マリオ・フィリッペスキ,アダルジーザ=エベ・スティニャーニ他が出演し,セラフィン指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団が演奏しています カラス絶頂期の歌声が聴けます

 

          

 

マリア・カラスのお陰で私は「ノルマ」が大好きなのですが,日本ではなかなか上演の機会がないのが残念です それでも,普段から情報を収集して これまで生で3回観ました 2003年7月6日 東京文化会館でディミトラ・テオドッシュウがノルマを歌った「イタリア ベッリーニ大劇場カターニア」の来日公演(下のパンフレット),紀尾井ホールでの日本人歌手による公演,市民オペラ公演の3回です 今回の来日公演でもダブルキャストでノルマを歌うテオドゥッシュウは さすがに素晴らしかったのですが,今度は世界最高峰のソプラノ  グルベローヴァが歌うというので大いに期待しています

 

          

 

  またまた,閑話休題  

 

誉田哲也著「Qros(キュロス)の女」(講談社文庫)を読み終りました 誉田哲也の作品は文庫化されるたびにこのブログでご紹介してきました 1969年東京生まれ.学習院大学卒.2002年に「妖(あやかし)の華」で第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞を受賞してデビューし,その後,「ストロベリーナイト」や「ジウ」シリーズで警察小説の第一人者として活躍してきました

 

          

 

「Qros(キュロス)」とは日本のファストファッションを代表する一大ブランドという設定.UNIQLOをモデルにしているのではないかと想像できます

QrosのテレビCMに登場した正体不明の美女,通称「Qrosの女」 ものすごく可愛いのに誰だか名前も分からない ネット上でも話題彷彿のCM美女はどこかの芸能事務所の秘蔵の新人か,あるいはアジア系の無名の外国人タレントか・・・「週刊キンダイ」芸能記者の矢口慶太は,世間を騒がせている謎の美女「Qrosの女」の素性を暴くべく奮闘する ある日,CMで彼女と共演した藤井涼介の自宅を,先輩記者・栗山と一緒に張り込んでいるとそこに当人が現れる 藤井との熱愛スクープが取れるか と意気込むが逃げられてしまう ところが,世間で騒がれている当の本人(真澄)は,偶然が重なってCM出演が急きょ実現したが,先輩女優には妬まれ,ネットでは私生活を暴かれ,安心して外を歩けない不自由な生活を強いられていた そんな生活に追いやったのは意外な人物だった.そこには何の苦労もなく突然有名になった”ぽっと出の”新人に対する妬みが隠されていた

栗山の提案で,真澄は「Qrosの女」から解放され自由を取り戻すことが出来,さらに真澄に似た別の人物(りん)を新しい「Qrosの女」として正式にデビューさせることになります りんは真澄と違い芸能界向きの目立ちたがり屋なので,上手くやっていけるように描かれていますが,果たしてファストファッションのような「使い捨て」の世界で どこまで生き延びていけるのか,という疑問も頭に浮かんできます

 

  最後の,閑話休題  

 

早稲田松竹で「二重生活」を観ました これは岸善幸監督による2015年製作126分の作品です

 

          

 

この作品は小池真理子の同名小説を岸善幸監督が映画化したデビュー作です 

哲学科の大学院生・白石珠(門脇麦)は,担当教授の篠原(リリー・フランキー)のアドヴァイスから,一人の対象者の生活や行動を追跡して記録する『哲学的尾行』を実践し,修士論文にまとめることにする 珠は戸惑いながらも,たまたま近所に住む石坂(長谷川博巳)の姿を目にし,豪奢な一軒家に美しい妻と娘と暮らす石坂を追跡する生活が始まる 追跡の途中,珠は石坂が女と会っている所に遭遇しメモを取る.一方,石坂の妻は夫が隠れて外で女と会っていたことに気づき,二人で会っている現場に乗り込む その時,現場に珠が居たことで,石坂は自分が尾行されていたことに気づき,妻の依頼で尾行したのだろうと珠に詰め寄る 珠は正直に修士論文のための尾行だったと言い訳するが なかなか信じてもらえない

この映画は門脇麦の単独主演作ということです 「愛の渦」もそうでしたが,門脇麦っていつもメガネをかけている役柄を演じているような気がします メガネを外した素の顔との落差が激しいですね そこが彼女の魅力を引き立てる監督の狙いなのでしょうか? 役者としてはまだまだこれから,という気がしますが,将来性はあると思います

ところで,この映画ではサイド・ストーリーとして篠原教授の物語がありますが,死を前にした母親を安心させるために 独身の篠原が取った行動には理解できるところがあります それにしても,現代は お金さえ払えば何でもやってくれる世の中なんだな,と感心すると同時に 何か寂しい気がしました

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アファナシエフ「ピアニストは語る」他 音楽関係の本を5冊買う/「クリーピー 偽りの隣人」を観る

2016年11月01日 08時13分08秒 | 日記

11月1日(火),皆さ~ん 今日から11月ですよ~ 今年もあと2か月ですよ~ ということで,わが家に来てから今日で764日目を迎え,まだ昨日のハロウィンに浸っているモコタロです

 

          

           昨日 渋谷のスクランブル交差点で 「ハロー!」「Win!」とうまくいったのかな?

 

  閑話休題  

 

昨日,夕食に「スタミナ丼」,「生野菜とサーモンのサラダ」「小松菜のお浸し」を作りました 「スタミナ丼」は息子のリクエストです

 

          

 

  も一度,閑話休題  

 

本を5冊買いました 今回はすべてクラシック音楽に関係した本です 1冊目は舟橋三十子著「形式から理解するクラシック」(ヤマハ・ミュージック・メディア)です

 

          

 

2冊目は大日向俊子著「あなたが知らない”裏”音楽史」(ヤマハ・ミュージック・メディア)です

 

          

 

3冊目は堀俊輔著「こんな僕でも指揮者になれた」(ヤマハ・ミュージック・メディア)です

 

          

 

4冊目はヴァレリー・アファナシエフ著「ピアニストは語る」(講談社現代新書)です

 

          

 

5冊目は新保環一郎著「クラシック音楽鑑賞事典」(講談社学術文庫)です これは読むというより調べる方ですね

 

          

 

いずれも当ブログでご紹介していきますが,その前にまだご紹介していない本が何冊かありますので,そちらを優先させます

 

  最後の,閑話休題  

 

昨日,早稲田松竹で「クリーピー 偽りの隣人」を観ました これは黒沢清監督による2016年製作 130分のサスペンス・スリラーです

 

          

 

元刑事で犯罪心理学の大学教授の高倉(西島秀俊)と妻の康子(竹内結子)は新居に引っ越すが,隣の家に住む西野(香川照之)の異常な性格と行動に翻弄されるようになる 西野には妻と娘がいるが,妻は姿を見せないし,娘は西野を「あの人はお父さんじゃない」と言う 高倉は西野を怪しいと思うようになる.一方,大学で高倉は6年前に起き 未解決となっている一家3人失踪事件に興味を持ち,同僚とともに事件現場を訪れる 事件当時,修学旅行で不在だった早紀のみが失踪を免れたが,早紀は記憶をなくしていた.高倉はその早紀から当時の記憶を思い起こさせようと詰め寄る.そうしているうちに,6年前に事件のあった住居の隣の廃屋を捜索した高倉の同僚は3人の死体を発見する これが西野との接点に結びついていく.西野の家には地下室があり,そこに彼の秘密が隠されていた

西野は恐怖で人を支配するのではなく,中毒性のある薬を注射することにより従属させる方法を取るのですが,人を殺すのに自分では手を下さず,他人にやらせる気の弱い面があります 電車で年寄りに席を譲るやさしい一面がある一方で,平気でうそをついたり,他人を薬で支配することを平然とやるという典型的なサイコパスです

この映画の主役は誰が何といっても西野を演じた香川照之です 相手の話す言葉に敏感で,いきなり顔の表情が豹変するサイコパスの特徴を自然に演じています 見ていて,次に何をやるか怖くなるくらいです 

TBSドラマ「半沢直樹」で宿敵の大和田を演じたあたりから,香川照之の悪役ぶりは板についてきたと言えるでしょうか

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