人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

素足のピアニスト~アリス沙良オットのピアノ・リサイタルを聴く

2012年11月06日 06時57分07秒 | 日記

6日(火).昨夕,初台の東京オペラシティコンサートホールで,アリス沙良オットのピアノ・リサイタルを聴きました 彼女の演奏を聴くのは今年6月6日にサントリーホールでパーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放送交響楽団と共演したリストのピアノ協奏曲第1番を聴いて以来です.プログラムは①モーツアルト「デュポールのメヌエットによる変奏曲ヘ長調K.573」,②シューベルト「ピアノ・ソナタ第17番ニ長調」,③ムソルグスキー「展覧会の絵」の3曲です

アリス=沙良・オットは1988年ドイツ人の父と日本人の母のもとミュンヘンに生まれました 4歳から本格的にピアノを学び,5歳で最初のコンクールで入賞したのを皮切りに世界各地のコンクールに入賞してきた実力者です

 

          

 

自席は1階17列11番,センターブロックの左通路側です.会場は9割方埋まっている感じです 会場の照明が落とされ,アリス=沙良・オットがパープルの袖なしドレスで登場します 足に注目しました・・・・・・やはり素足です 世界中に何人ピアニストがいるか分かりませんが,リサイタルで素足でピアノを弾くピアニストはアリスしかいないでしょう プログラムに音楽評論家の萩谷由喜子さんが「聴衆と密なコミュニケーションをとり,ともにホールの空気をつくりあげていくのが好き,と語る彼女は,床の振動を素足で感じることで聴衆と一体になろうとしているのだろう」と書いています.そうかも知れませんが,彼女に訊いてみないと分かりません

1曲目のモーツアルト「デュポールのメヌエットによる変奏曲K.573」が軽快なテンポで始まります この曲は1789年,プロイセン宮廷での即興演奏の際に作曲されたと言われており,チェリストで宮廷楽長だったデュポールの関心を引こうと,彼のチェロ・ソナタから主題を取っています.アリスは9つの変奏ごとに音の表情を変えて演奏します

2曲目のシューベルト「ピアノ・ソナタ第17番ニ長調D.850」は交響曲”グレイト”と同じ時期に書かれた長大な作品です シューベルトのピアノ・ソナタは滅多に聴く機会がなく,馴染みが薄いので,すんなりと頭に入ってきません 第1楽章を聴きながら,そういえばこの曲は村上春樹の「海辺のカフカ」の中に出てきたよな・・・・・・どこの部分だったかな・・・・などと考えていました.集中力がない証拠ですというのは,昨日から風邪気味で,内科で眠くなる風邪薬をもらってきて夕食後に飲んだのが原因だと思います

休憩時間は15分でしたが,ホワイエのCD売り場は,この日演奏するムソルグスキーを収録した最新盤CDを求める人たちが蟻塚を作っていました.相当売れたでしょうね

 

          

 

最後の組曲「展覧会の絵」はロシア五人組の一人,ムソルグスキーが作曲し,1922年にラヴェルが編曲して人気が出た曲です ムソルグスキーの親友の一人だった画家のヴィクトル・ハルトマンの遺作展で絵を観た時の印象をもとに作曲しました.第1曲「グノームス」から第10曲「キエフの大門」まで10曲から成る組曲です

アリスが登場,一礼して,座ると同時に右手で最初の”プロムナード”を弾きはじめました アリスの弾くのを観ていると,切れ味の鋭い日本刀を想起します 歯切れの良いピア二ズム 気迫で押していく推進力 ピアニッシモからフォルテッシモまで,崩れることなく明快に鳴らし切ります 素足で踏むペダルの音がドン・ドーンと床に響くのが17列の自席まではっきり聴こえます.彼女はこの感覚を得るために素足で弾くのか,と感じました 最後の「キエフの大門」を聴いた時は,そのスケールの大きさに圧倒され「やっぱり,このピアニストは凄い」と感嘆しました.

満場の拍手に応えて,アンコールを演奏しました.リストの「パガニーニの主題による超絶技巧練習曲第5番”狩”」です あれだけの熱演の後にもかかわらず,平然と超絶技巧曲を演奏すのですから大物です さらに,鳴り止まない拍手 に応えて,穏やかなシューマンの「ロマンス第2番」を演奏してくれました

この日のリサイタルは,あらためてアリス=沙良・オットという弱冠24歳のピアニストの非凡な才能と技巧とを再確認する機会になりました

 

          

 

当日配られたチラシの中に,来年9月30日にアリス=沙良・オットのピアノ,チョン・ミュンフン指揮フランス国立放送フィルによるラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」他のコンサート・チラシが入っていました.これは是非ものです.今から予定に入れておくことにします

 

          

 

          

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