25日(日).昨日池袋の東京芸術劇場で第3回音楽大学オーケストラ・フェスティバルのコンサートを聴きました 当初,第2回公演が昨年開催予定だったのが3.11大震災の影響で中止になっていたもので,7つの私立音楽大学が3日間にわたって交響曲の名曲を中心に交代で演奏するものです
初日公演のこの日は武蔵野音楽大学(指揮:北原幸男)がショスタコービチの「交響曲第5番」を,昭和音楽大学(指揮:大橋秀也)がファリャのバレエ音楽「三角帽子」を,洗足学園音楽大学(指揮:秋山和慶)がベルリオーズの「幻想交響曲」を演奏します
入場料は一律1,000円ですが,全席指定です.間近にチケットを買ったので1階席が取れず3階B43,やや右サイドの通路側席をかろうじて取りました 1,2階席はほぼ満席,3階席はまだ大分余裕があります
最初に昭和音楽大学大学院生・館山幸子さん作曲の「ファンファーレ」を同大学のブラスセクション8名が演奏 次いで武蔵野音楽大学管弦楽団のメンバーが入場してきます.全体を見渡すと弦楽器を中心に女性奏者が圧倒的に多いことに気が付きます オケの編成は左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,ヴィオラ,チェロ,その後ろにコントラバスという配置を取ります 弦楽器の首席の位置には外国人奏者(多分,同大学の講師)が構えています.大学を挙げてトップバッターを務めるオケとしての意気込みを感じます
指揮者・北原幸男が登場,気合とともにショスタコーヴィチの第5交響曲の第1楽章が始まります 北原はタクトを振りますが,第3楽章「ラルゴ」のみタクトを置いて両手で指揮をします.若干,管楽器に不安定さを感じましたが,なかなかの熱演で,拍手喝さいを浴びました
一旦20分の休憩に入り,2曲目のファリャ「三角帽子」の演奏前に,洗足学園音楽大学3年生・大山智司君作曲の「ファンファーレ」を同大学ブラスセクション12人が演奏 次いで,昭和音楽大学管弦楽団の面々が登場します.やはり,女性の比率が高いことに気が付きます このオケは左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントバスという配置を取ります
指揮者・大勝秀也がタクトを持って登場します.「三角帽子」を生で聴くのは初めてです.最初にティンパ二とトランペットのファンファーレがあって,オケ全員の手拍子なども入り,メゾ・ソプラノの独唱で幕が開きます
プログラムを見た時には,ショスタコの「第5」とベルリオーズの「幻想」の間に無理やりつっこんだな,という印象を持ったのですが,演奏を聴くと,選曲の妙というか,なかなか面白い曲で思わず耳を傾けてしまいます.色彩感豊かな演奏です
また20分の休憩があり,今度は武蔵野音楽大学4年生・加藤新平君作曲の「ファンファーレ」を同大学のブラスセクション11名が演奏 次いで洗足学園音楽大学管弦楽団の面々の入場です.このオケのみコンマスが女性です.オケはやはり女性が圧倒的に多いですが,ブラスセクションは男性比率が高いようです
指揮者・ロマンス・グレイの秋山和慶が颯爽と登場します 私がこのコンサートのチケットを買ったのはこの人の指揮振りを観たかったからです.第1楽章「夢想と情熱」,第2楽章「舞踏会」と順調に進み,第3楽章「野の風景」に入るころ,かなり大きな揺れがあり,しばらく続きました.地震です 体感的には震度3以上です.すぐに腕時計を見ると短針はちょうど6時を指していました.近くの席の人はおろおろして「地震だ地震だ」と囁きあっていました オーケストラのメンバーも気づいたらしく演奏をやめる奏者も出てきました 指揮者の秋山さんは一旦演奏を止めるのか,と思える仕草も一瞬見られましたが,タクトを下ろすことなく演奏を続けさせました 次が第4楽章「断頭台への行進」なので,そのことを知っている人は内心穏やかでなかったのではないか,と思います そんなこともあったせいか,オーケストラはフル回転,圧倒的なフィナーレで締めくくり,ブラボーと拍手の嵐で迎えられました.ちなみに前2つのオケではブラボーはかかりませんでした.これは明らかに地震を乗り越えて演奏を続行した秋山効果です このオケにとっては地震が自信につながった演奏会ではなかったか,と思います
1つのコンサートで3演目,休憩2回をはさんで3時間半の長丁場でした 終演後,下りエスカレーターに乗ってケータイの電源を入れると,間もなく着信音が鳴りました わがPCビル防災センターO隊員からで「午後6時,ビル内地震計で震度4を計測した.館内を巡回したが,エレベーターが1機停止したほかは特に異常なし」という報告がありました
この東京芸術劇場でコンサートの最中,地震を体験したのは今回が2回目です.1回目はもう20年以上前のことで,現代作曲家の宗教曲を聴いている最中でした ちょうどパイプオルガンのモダン面を使って演奏している時でした 今回と同じくらいの揺れだったと記憶しています.現在の東京芸術劇場は耐震工事をしてリ・オープンしたばかりなので,今回は安心して聴いていました
3つのオケを聴き終わって思うのは「それぞれの大学で優れた学生が選ばれて演奏したわけだが,この中で近い将来どれほどの人がプロの音楽家として活躍していけるのか」ということです.今回の出演者は3大学合計で250人位ではないかと思いますが,1%いるかいないか,でしょうか 彼ら,彼女らの両親は大変だと思います.莫大なお金を注ぎ込んで,幼いころから楽器を習わせ,音楽大学に進ませ,せっかく卒業したのに就職先はなし・・・・・箔をつけるために海外に留学させるか・・・・・またまた莫大なお金がかかる・・・・・費用対効果の面でこれほど効率の悪い選択肢も少ないかも知れませんね. 他人事ながら同情に堪えません