人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

小菅優+カメラ―タ・ザルツブルクによるモーツアルト「ピアノ協奏曲第20番,第25番」を聴く

2012年11月04日 06時58分08秒 | 日記

4日(日).昨日,新宿ピカデリーで今日のMETライブビューイング,ドニゼッティ「愛の妙薬」の指定席を予約し,丸の内線で四谷に出て,総武線に乗り換えて錦糸町に向かいました 駅に着いたので降り口を探してキョロキョロしていると,目の前に元の職場のA君が現われ,同じすみだトりフォニーホールに向かうところでした 前日に続いて小菅優のピアノ,ハンスイェルク・シェレンベルガ―指揮カメラ―タ・ザルツブルクによるモーツアルト演奏会を聴くためです

会場でコーヒーを飲みながら,アンコールは何を演奏するかの予想をしました A君は歌劇「劇場支配人」序曲ではないかという意見,私は歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」序曲ではないかという意見でした二人とも外れることは後で分かります

この日のプログラムは①歌劇「ドン・ジョバンニK.527」序曲,②ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466,③ピアノ協奏曲第25番ハ長調K.503,④交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ」の4曲です

小菅優は1983年東京生まれ,9歳からリサイタルを開きオーケストラと共演,2004年モーツアルテウム音楽大学卒業,2005年にカーネギーホールでデビュー・リサイタルを開き,高い評価を得ました 指揮のシェレンベルガ―はカラヤン時代のベルリン・フィルで首席オーボエを務めていた名手です

 

          

 

自席は1階17列10番.会場は7~8割埋まっている感じです 拍手に迎えられオケのメンバーが入場します.コンマスは昨日と同じピアニスト,エレーヌ・グリモーによく似た女性です.シェレンベルガ―が登場し,「ドン・ジョバンニ」序曲のタクトを振り下ろします.人はこの序曲の冒頭を”デモーニッシュ”(悪魔的)と言いますが,恐ろしいほど運命的な音楽です.オケは高い集中力でモーツアルトに対峙します

小菅が黒と赤を基調としたドレスで登場します 2曲目のピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466も”デモーニッシュ”と言われる音楽です 第1楽章冒頭の人の心を抉るようなドラマチックな音楽は誰にも真似が出来ないでしょう 第2楽章「ロマンツェ」は映画「アマデウス」のフィナーレで使われました.「男はつらいよ」で大原麗子が出た時にも使われていました.穏やかでロマンチックな曲です

さて,小菅は第2楽章の終了から間を置かず第3楽章「ロンド」に入ります.ピアノとオーケストラ,とくに管楽器との掛け合いが見事です シェレンベルガ―はプログラムに寄せたインタビューの中で「今年2月にピアノ協奏曲第20番を小菅優さんと録音した時,指揮者としての私のコンセプトは”ピアノとオーケストラの戦い”でした」と述べています.そういう意味では,第2楽章までの”協奏曲”は第3楽章に”競奏曲”に入ったと言えるでしょう

第3楽章で小菅は見事なカデンツァを弾きました.前日第23番の協奏曲を聴いた時も思ったのですが,初めて聴くメロディーだったので,誰の作曲したカデンツァなのだろうか,ということです

休憩後のピアノ協奏曲第25番ハ長調K.503は,前半の第20番ニ短調とは対極にある作品で,明るく希望に満ちた音楽です 第1楽章は序奏が長く,モーツアルトのピアノ協奏曲の中で最も長いのではないかと思うくらい長いので,ピアニストは出番をひたすら待つことになります この間,小菅は管楽器の方を見て身体でリズムを取ります.オケとのコミュニケーションを取ろうとする姿勢が見られます

長い序奏に続いてピアノが軽やかに入ってきます.これを聴くと”ピアノは女王だな”と思います 主役はなかなか出てこないのです.この曲も,カデンツァが初めて聴くメロディーです.ベートーヴェンの”運命の動機”のメロディーが出てきてハッとしました.第2楽章,第3楽章を通じてオーボエとフルートが雄弁に語ります

小菅の演奏を観ていると,身体全体で自分自身を表現していて,モーツアルトを演奏するのが楽しくて仕方がない,といったオーラを感じます 彼女には”天性のモーツアルト弾き”を感じます.モーツアルトの演奏者はこうでなければいけません 第3楽章はまさにピアノとオケとの”競奏曲”で,軽快なテンポで疾走します

会場は拍手とブラボーの嵐です.

 

          

 

ピアノが舞台の袖に引き上げられて,オケがスタンバイします.シェレンベルガ―がタクトを持たず登場します.しかし,オケの方に振り向くと,いつの間にか右手にタクトを持って構えています 多分,左袖にタクトを隠しておいて,振り向きざまに右手で引き抜くのだと思います.コシャクなことをやってのけます.あなたは手練ベルガ―か

交響曲第38番ニ長調K.504は,ピアノ協奏曲第25番の完成の2日後に完成しました.つまり,モーツアルトはこの2曲を同時並行的に作曲していたことになります 通常,交響曲は4つの楽章から成りますが,この”プラハ”は3楽章から構成されています

第1楽章冒頭は,まるで「ドン・ジョバンニ」と同じ世界です.冒頭からのアダージョ部分では「ドン・ジョバンニ」が聴こえ,さらに「魔笛」も聴こえます

シェレンベルガ―は,メリハリをつけながら軽快なテンポで音楽を進めます.弦楽器も,管楽器もノリノリの演奏を展開します.さらに日本人のティンパ二奏者による乾いた連打が快いアクセントを付けます

会場を満たした拍手とブラボーに応えてアンコールの演奏があるようです.なんと,シェレンベルガ―がオーボエを持って再登場しました コンマスに合図して開始されたのは,モーツアルトのオーボエ協奏曲K.314の第3楽章「アレグロ」でした あのベルリン・フィルの名オーボエ奏者,シェレンベルガ―の”弾き振り”ならぬ”吹き振り”でオーボエ協奏曲が聴けるとは夢にも思いませんでした 彼はまったく衰えを見せていません.今なお全盛期の高いテクニックと音楽性を維持しているのは流石だと思います

小菅優のピアノに加え,シェレンベルガーのオーボエが聴けて,この日のコンサートはいつになく思い出深いものになることでしょう

 

          

        

 

 

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