人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「上田京&恵谷真紀子とドイツの仲間たち」を聴く~津田ホール

2012年11月22日 06時58分52秒 | 日記

22日(木).昨夕はJTアートホールで「フィラ―ジュ・クインテット」のコンサート(①ハイドン「弦楽四重奏曲第38番”冗談”」②ラヴェル「弦楽四重奏曲ヘ長調」③フォーレ「ピアノ五重奏曲第2番」)を聴く予定だったのですが、一昨日、元の職場のA君が,同じ21日に津田ホールで開かれる室内楽コンサートの招待券があるのだが一緒にどうか、と声を掛けてくれたのです 

コンサートは「上田京&恵谷真紀子とドイツの仲間たち」というタイトルで、プログラムを確認すると①モーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番変ホ長調K.493」、②マーラー「ピアノ四重奏曲イ短調」、③ブラームス「ピアノ四重奏曲第3番ハ短調」とあり、こちらの方が断然魅力的なので、迷わずこちらのコンサートに行くことにしました A君の知人の奥様がヴィオラの恵谷真紀子さんという関係から招待券が手に入ったとのことです.いつもながらA君の顔の広さには驚きます 「フィラ―ジュ・クインテット」のコンサートには職場の同僚Aさんに行ってもらうことにしました

 

          

 

ピアノの上田京さんは東京藝大大学院卒、イタリア・ヴィオッティ国際コンクール入賞者で、現在東邦音楽大学で後進の指導に当たっています ヴィオラの恵谷真紀子さんは同じく東京藝大大学院卒、ウィリアム・プリムローズ国際ヴィオラコンクール入賞者で、現在武蔵野音楽大学非常勤講師を務めています ヴァイオリンのフローリン・パウルさんはルーマニア生まれ、1977年、ロン・ティボー・コンクールで最高位入賞(1位なしの2位),現在北ドイツ放送交響楽団のコンサートマスターを務めています チェロのクレメンス・ドルさんはドイツ出身,フランクフルトBDIチェロコンクール第1位,現在武蔵野音楽大学客員教授を務めています

自由席なので,開場時間の6時半には千駄ヶ谷駅前の津田ホールに入りました.このホールは独身時代に高橋真理子のコンサートを聴きに来たという記憶があるのですが,どうも会場が異常に狭く感じ,ポピュラー音楽をやるような会場とは思えなかったので,遅れて到着したA君に尋ねてみると,このホールは相当古く広さも昔のままだいというので,私の記憶違いかもしれません

会場はほぼ8~9割方埋まっている感じです その多くは出演者の関係者,とりわけ大学の教え子が多いように思いました.自席は1階M列7番で,センターブロック通路側です

1曲目のモーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番変ホ長調K.493」は長調の特性がよく表れた明るいメロディーに溢れています 前年に書かれたピアノ四重奏曲第1番ト短調K.478のデモーニッシュな曲想とは対極にあります ピアノとヴァイオリンの主導によって軽快に演奏されました

2曲目のマーラー「ピアノ四重奏曲イ短調」は,作曲者が16歳の時の作品です この曲は,数年前に公開された映画「シャッターアイランド」の冒頭で有効に使われた曲です 映画の中でこの曲が流れてきたときはブラームスの曲か と思ったほど曲想が暗く,情熱的でした.この曲をナマで聴くのは今回で3回目です.1回目は10年位前に新日本フィルが井上道義の指揮でマーラー・チクルスをやった時に,同フィルの首席が演奏したのです その時に出演したヴィオラの白尾偕子さんの情熱的な演奏姿が印象的でしたが,数年後に彼女は癌(?)に侵され死去しました 2回目は数年前に東京文化会館で開かれた「東京の春・音楽祭」のときに演奏されたものです 今回の演奏を含めて聴くたびに思うのは,この曲は”マーラーの青春の歌”だな,ということです

 

          

 

休憩後のブラームス「ピアノ四重奏曲第3番ハ短調」を何と表現すれば良いのでしょうか 冒頭ピアノの強打に続く弦の思いつめたような曲想は,まるで崖の上から海に突き落とされるような衝撃です ブラームスは何と暗く重い音楽を書くのでしょうか

そう思ってプログラムの解説をあらためて見ると,

「ブラームスは出版商ジムロックにあてた手紙に『この楽譜の扉に,ピストルを頭に向けている人の姿を書くといいでしょう すると,音楽についての一つの概念を得ることができます』と書いている」

とありました.この曲は1854年4月に着想されていますが,その年の2月に恩師シューマンがライン河に身を投げて,その後精神病院に収容されていたという事実があります つまり,この曲にはシューマンの悲劇と彼の妻クララへの満たされない想いが込められた,情念が渦巻いた曲なのです

第3楽章「アンダンテ」に入り,ピアノの伴奏にのせてチェロが美しいメロディーを奏でると,それまで続いてきた重苦しい雰囲気から解き放たれ,明るい光が差し込んでくるのを感じます 1曲目のモーツアルトでも,2曲目のマーラーでも,アンサンブルに紛れて前面に出てこなかったチェロが,ここで一気に花を咲かせ主役に躍り出ます

第4楽章の冒頭,ベートーヴェンの「交響曲第5番ハ短調」の”運命の動機”が聴こえます このブラームスのピアノ四重奏曲も同じハ短調です.ブラームスがベートーヴェンの第5番を意識してこの曲を作ったのは明らかでしょう ただし,同じハ短調でもブラームスのこの楽章における”運命の動機”の扱いはむしろ軽快ささえ感じさせます 崖から突き落とされたままでは終わらないということでしょうか

アンコールにはシューマンの「ピアノ四重奏曲」の第3楽章”アンダンテ”が演奏されました ブラームスのアンコールにシューマン,心憎い演出ですね

 

 

          

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