ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

東アジアが介護産業のプラットフォームになる   アイデア広場 その466

2019-05-11 17:25:35 | 日記
 人工知能(AI)やロボットが人間の仕事を奪うという風説が、真実みを帯ながら流されています。でも一頃、言われたように、急激に仕事が奪われてはいないようです。その一つが、慢性的な人手不足が続いている事です。もし、研究者や評論家が言うようにAIやロボットが有用で普及していれば、人手は余ってしまうことになります。風説と現実には、どこか乖離があるようです。
 そこで、AIやロボットができることや人間ができること、そして今後どのような労働形態になるのかを調べてみました。回転寿司は、すでに「握り」はロボットが行っています。人間は、ロボットのにぎった握りにネタをのせるだけだの作業です。ロボットの握りはどれも均一なため、ネタに合わせて最適な柔らかさや形にはなっていないようです。素材や鮮度に合わせながら、おいしい形や厚みに切るには熟練の技がいります。べテランになると、魚の解凍具合に応じて包丁の当て方も変えるそうです。今後AIの導入が進めば、高性能カメラやAIセンサーにより最適なカットが、自動でなされるようになっていくだろうと言われています。
 単純で作業量が多い分野には、ロボットが配置されています。このロボットでは、素材に応じて持ち方や包丁の入れ方を微妙に変えることは、まだできていません。素材により調味料や装飾が異なるから、スキマ作業は人が行うことになります。自動化の合間に入るスキマ作業を人間が行うという流れは、自動化に向かう方向で進んでいます。この流れを見れば、ロボットがベテランのコツや熟練が必要な技を人から奪っていくようです。現在の時点では、すべて自動化するのではなく、機能を絞って自動化している経営者が多いということになります。
 別の見方をすると、AIは進んでいるが、ロボットの機能が、追いついていないことになります。シャリの握りはできるが、ネタの鮮度に合わせた厚みに切る技術が追いついていないということです。この二つが、同時にできるロボットができないと、人間の働くスキマ作業は、なくならないということです。人間の行っている作業は単ーの作業ではなく、種類の違った様々組み合せでできています。ロボットは、細かな動きや極細なものを作ることはできるようになりました。でも、多様な動きとか異質な動きができる汎用性の動きができるようになるには、もう少し時間がかかるようです。そのもう少しは、15年から20年といわれています。もう一つのAIやロボットの導入のポイントは、導入費用が人間の給料より低くならないと難しいということです。
 私は、AIやロボットの性能のすばらしさに驚嘆をしていました。AIのアルファ碁が、プロに棋士勝つほどの能力を身につけたとい事実を見せつけられました。プロの棋士は、私たちからすれば、雲の上の人達でした。その専門家に勝ったのですから、これからは全てその方向で動いていくと「刷り込み」をされたようです。これに輪をかけるように、AIが人間の職業を奪っていくというリストを提示されました。そのリストを単純に信じてしまったようです。でも、回転寿司を見ると、寿司職人の仕事がなくなることはないようです。科学者や評論家の方は、AIのできる可能性を強調しました。つまり、「○○ができるようになる」ということを述べたわけです。でも、回転寿司に詳しくないAI研究家は、包丁の使い方やネタの特徴を理解していなかったようです。AIやロボットによる代替可能性が高い50種の職業とか100種の職業と大々的に報道されました。でも、その50とか100の職業についての中身を詳しくは精査していなかったようです。
 とは言え、いずれ多くの職業にAIやロボットが入ってくることは間違いがありません。15年から20年の間は、特化系AIやロボットが主流で、汎用系のものは未完成のようです。汎用系のAIやロボットが運用される条件は、現在人間が行っているスキマ作業を全て代替する完全自動化が実現した場合です。さらに、費用対効果のメリットが、人間より上回ったと判断されたときに、導入されるということになります。
 AIやロボットの批判のようなことを述べてきました。でも、そのメリットを享受するする地域は、日本を含む東アジアだと考えています。東アジアは、人口で世界の4分の1、経済規模で3分1を持つ豊かな地域になりました。(北朝鮮を除く)この地域は、未曾有の超高齢化社会になります。生産人口は、すでに減少傾向を示しています。労働の生産性を高めなければ、今の豊かさを享受できない時代に入りつつあるのです。高齢化社会では、介護の充実が求められます。生産人口の減少という状況のなかでは、人手による介護を極力避ける仕組みを構築しなければなりません。
 余談ですが、Appleは「iPhone」を生産しています。Appleが、アメリカで実施しているのは開発やマーケティングだけです。世界のハイテク産業は、「開発・マーケティング」をシリコンバレーで行っています。そして、実際の大量生産は、台湾や中国で行っています。高品質でローコストな商品を、全世界に台湾や中国は供給しています。ハイテク産業は、年々高度化しています。その電子部品やモジュールは、年々微細になっています。この微細になっていく電子部品やモジュールを供給する国が、日本なのです。これらを製造するための生産財には、微細加工技術が欠かせません。微細加工を行う工作機械も重要です。日本は世界で唯一、この微細加工の技術と工作機械のインフラが整った国なのです。
 中国は、2015年の高齢化率が9.6%で、10億人の内1億人が高齢者になりました。20年後には、21.3%になります。2億人が高齢者になり、その何割かが介護施設に入ることになります。日本の十数倍の介護市場が、生まれることになります。この高齢化の事情は、台湾でも韓国でも同じように押し寄せています。介護を受ける人が多くなればなるほど、必要とされるニーズが蓄積されていきます。介護現場では、車いすや浴槽の改良が行われます。付随して介護職のスキルが向上していきます。向上した技術をAIとロボットに良い意味で奪われるということになります。生産人口の減少が特に顕著になる中で、AIやロボットの導入は必然的に求められます。超高齢化社会は、東アジアで始まります。
 この地域は、高品質でローコストな製品をつくる能力があります。そして、年々高度化と微細化の両面を補完する部品製造能力もあります。そして介護現場のニーズを、もっとも早く手にする位置にいます。介護情報のビッグデータが、利用できるということです。アメリカのシリコンバレーが行っていたプラットフォームの役割を、東アジアのこの地域で起業することも可能だと言うことになります。介護や健康産業のプラットフォームを目指して、精進して欲しいものです。


天然の魚・養殖魚・全自動の養殖   アイデア三題噺 231

2019-05-10 22:01:38 | 日記

 1980年代までは増加してきた漁獲量が、現在では減少しつつあります。海洋漁業の対象魚種の4分の1は、乱礼獲によりすでに資源としては崩壊状態にあるのです。世界の天然物の漁獲量は、2010年に入ってから9000万トン前後で推移しています。代わって、2015年の世界全体の養殖漁の生産量は1億万トンを超え、存在感を増してきています。世界では2013年に養殖量が、天然の漁獲量を上る状況になりました。世界的な人口増で、たんぱく質の需要が膨らんでいます。特に、身体に良いとされる魚類のタンパク質は食材として、世界で人気が急上昇しているのです。天然魚の漁獲量が減る中、需給のギャップを埋める切り札が養殖漁になります。この養殖ビジネスに、企業参入が相次ぐ状態になっているわけです。
 そこで、これからの養殖業を考えてみました。数千匹のトラウトサーモンの群れが、悠々と生け簀を泳いでいます。泳ぐ場所は海ではなく、陸上に作られた養殖場です。これらの魚は、3カ月後には回転ずし店や量販店へ供給されるのです。供給量は、年間30トンになります。海と違って、時化や不漁と行った事態は起きません。飲食店には、確実に、決まった量を提供できるシステムになります。陸上養殖のメリットは、消費地の近くに建設し、物流費を抑えられることです。リードタイムを確実に短縮できるというメリットが生まれます。
 サーモン陸上養殖場のいけすの水は底がはっきりみえるほど透明です。これは、天然の海水や地下水でなく水道水から作った人工海水をろ過システムで清潔に循環させているためです。水温や水質のデータをクラウドで分析、管理して餌やりも自動化しています。人工海水を、バクテリアを使ったろ過システムで清潔に循環させているのです。陸上養殖は水の入れ替えや温度管理で電気代がかさみ、海より2割ほどコストが高いという難点があります。大型のクラウドコンピューティング施設を誘致して、コンピュータを冷やす廃熱を生け簀の温度管理に利用すれば、面白いかもしれません。
 世界的に水産物の需要が高まるなか、養殖の生産量は伸びているわけです。でも、最大の課題は餌代なのです。餌の不足やそのコストが、養殖経営の足を引っぱっています。国際的にも、養殖を効率化することの重要性は増しています。一般に、養殖の餌は、マイワシやカタクチイワシなどの餌魚を使用しています。でも、これも乱獲が祟り、減少しているのです。最近では、大豆ミールなどを餌用に開発する動きもあります。そこで、使われていない海の資源はないかと調べてみました。漁業では、二次生産者の動物プランクトンやオキアミがほとんど獲られることはありません。もちろん、植物プランクトンや他の光合成をおこなう微生物が獲られることもありません。マイワシなどの餌魚は、動物プランクトン食べて成長します。少し遠回りになりますが、プランクトンで餌魚を育て、餌魚でブリや鯛などの付加価値の高い魚を育てるシステムを作ってはどうでしょうか。もしできれば、植物工場のように、養殖工場ができて、そこで自動的に魚の生産が可能になることになります。全自動にすれば、人手をかけずに生産が可能になるかもしれません。

コーヒーの豊作から読み解くアイデア   スモールアイデアNO 283

2019-05-09 17:53:12 | 日記

 
 コーヒーの消費量が、世界的規模で増加しています。さらに嬉しいことには、2018~9年のコーヒー生育が順調で、豊作の観測が出ているのです。コーヒーを愛飲している人びとには朗報でしょう。コーヒー生豆の収穫は木の生育に左右され、ブラジル産は隔年で表年と裏年を繰り返すことは、愛飲家によく知られています。生産が多い表年の2018~9年は、良好な気候に恵まれ収穫が順調でした。普通の流れからすると、今年の2019~20年は裏年になり、作柄が悪化する年になるわけでした。でも、生産の減る裏年に当たるのですが、豊作の予測が広がっているのです。
 ブラジルの2018~9年の生豆生産量が前年度比25%増の6300万袋(1袋は60kg) と予測し、過去最高水準になるようです。この豊作により、コーヒーの国際価格が安値で推移しています。指標となるアラビカ種は、4月上旬に13年ぶりに、ロブス夕種は約3年ぶりの安値をつけました。生産国の灌漑設備が充実し、施肥の技術が向上し、品種改良が、良い方向に働いているようです。コーヒーの消費拡大により、生産者の意欲が高まったことも原因なのでしょう。結果として、コーヒー農園のケアが行き届き、よく実っているということになります。
 もう一つの傾向は、生産国において、コーヒーの愛好家が増えているということです。生産国の消費量が、急増しているのです。最大生産国ブラジルの2018~9年度の消費量は、2300万袋と過去5年で15%増える見通しになっています。6300万袋を生産し、2300万袋を消費することになります。世界には、4000万袋のコーヒーを輸出するだけになるのです。べトナムは世界2位の生産国で、インスタントに使うコーヒーを生産しています。べトナムの消費量は、300万袋と49%増えています。世界4位の生産国、インドネシアの消費量も、5年で53%増えているのです。内需拡大を反映し、インドネシアの輸出量は5年で約2割減る見通しになっています。コーヒーの消費量が増えている国は、人口が増加し経済成長が続く東南アジアや中南米のコーヒーの生産国に多いのです。
 今までは、日米欧の合計消費量が世界の50%を占めていました。2018~9年度の日米欧の合計消費量は、8100万袋に達しています。コーヒーの主要生産国、ブラジル、べトナム、コロンビアその他を含めた9ヵ国の合計消費量は、5000万袋と5年で25%も増えているのです。生産国では、品位が低いとされるロブスタ種の消費が多かったのです。でも最近は、高品質なアラビカ種をメインとするコーヒー店が増えています。ロブスタ種が幅を利かす屋台におけるコーヒー販売だけでなく、アラビカ種を含む高級なコーヒーの消費が新興国を中心に拡大が続いているのです。
 余談ですが、中国ではコーヒーに異変が起きています。創業1年にも満たないラッキンというコーヒーチェーン店が、中国で圧倒的な地位を築いてきたスクーバックスを脅かす存在に急成長しているのです。ラッキンは、2018年1月に北京に1号店を出店しました。それが、1年3カ月の間に中国全土に約2300店をオープンしたのです。主に、コーヒーの小型の持ち帰りの店の営業をしています。ラッキンは2杯購入すれば、もう1杯無料とする拡販セールを武器にして人気を集めました。若者は、コーヒーの味は変わらなければ、価格の安いラッキンを選ぶようになっているのです。中国で3600店を構えるスクーバックスには、まだまだ余裕があるのでしょう。でも、油断しているとアマゾンのように撤退に追い込まれるかもしれません。
 中国のコーヒー戦争を見るまでもなく、コーヒーの愛飲者は中長期にみれば増加する傾向が読み取れます。消費需要は世界的に底堅く、中長期的には相場上昇を招きそうな要因が多いのです。アジアの新興国にコーヒーの習慣が広まれば、ビジネスチャンスが広がります。中国のラッキンを見るまでもなく、工夫次第でスタートアップが可能になります。
コーヒーは、酒やタバコと同じようにカフェインによる依存症が知られています。依存症まで行かないまでも、愛好者は、コーヒーから離れがたい人達です。一度コーヒーの香りや味に親しんだ人達は、末永い消費者であり続けるわけです。固定した消費者でもあるのです。コーヒーが豊作の時、愛好者を増やし固定客にしてしまえば、コーヒービジネスは持続可能なビジネスになります。
 もう一つの発想は、豊作貧乏でコーヒー農園を辞めた経営者の土地を、積極的に買いに出ることです。いずれ相場が上昇することは確実でしょう。農園を解雇された人びとを雇い入れて、コーヒー園を再利用していくことも面白かもしれません。





捕獲動物の肉をジビエで有効活用  スモールアイデアNO 282

2019-05-08 16:49:48 | 日記


 京都府の福知山市の山奥に、イノシシなどの野生動物を焼却する施設があります。年間4200頭ほどが、処理ができるように作られていたものです。でも、2017年度は7200頭が処理されています。この20年の間に、日本全国では野生のシカやイノシシが増えて、農作物や森林の食害が深刻化しています。自治体の焼却処分が間に合わず、山に埋められるイノシシやシカも多いのです。2017年の捕獲頭数は、合計で約115万頭にもなっています。この115万頭のうち、食肉などに利用されたのは1割以下にすぎないのです。イノシシのボタン鍋は、昔から有名なのですが、有効利用されていない鳥獣類も多いのです。現状では、この100万頭が有効利用されていないことになります。農水省や自治体、民間団体は、この100万頭のうち少しでも、ジビエ利用に回そうと頭をひねっているところです。これからの課題は、ジビエ消費の拡大になるようです。
 そこで、イノシシやシカの有効利用について考えてみました。一般的にいえば、最高級のブランド牛でも精肉したばかりのものは美味しくありません。エイジングとよばれる熟成の工程を経て、初めてブランド牛にふさわしい味わいになります。エイジングの間に、肉に含まれるタンパク質分解酵素が肉の線維がゆっくりと分解していきます。分解を経て肉質が柔らかくなり、アミノ酸が遊離するために、肉の旨味が引き出されるわけです。野外で捕獲されるイノシシしやシカの肉は、エイジングすることが困難でした。野外で仕留めてから、1時間ほどのうちに血抜きをしないと、どうしても臭いが残ってしまうのです。処理と加工を適切にしないと、ブランド和牛のような売り物にはなりませんでした。近年、
捕獲や加工処理、流通などの各段階で様々な対策、支援策が打ち出されてきているのです。
 最近はイノシシの捕獲現場で、食肉処理ができる移動車両が活躍しています。以前は困難だった処理や加工が、移動車の出現によって、市場にすぐに出せるまでになってきました。ある狩猟捕獲者と料理人を兼ねる職人の方は、捕獲したシカやノシシをすぐに血抜することができます。この処理の終わった肉を熟成させて、地元や東京などのレストランに提供する方もいます。熟練者が捕獲し処理すれば、良い肉ができたわけです
 さらに、面白い工夫がされるようになりました。シカやイノシシなどのジビエ肉の流通を管理するクラウドシステムが開発されたのです。このジビエクラウドシステムは、イノシシやシカの捕獲や加工の日時、捕獲者、処理の状況、加工工場名をクラウドで管理するというものです。QRコードを作成して、製品に貼って流通させ、トレーサビリティー(生産履歴の追跡)体制を整え、消費者に安全安心をアピールできます。ジビエのトレーサビリティーを整えることで、情報の共有が可能になります。ジビエ肉の品質の情報とその生産量が、このシステムを使用することで国民の間で共有できることになるのです。
 1億人のうち1%がジビエに関心を持てば、100万人のジビエ市場が生まれることになります。今までこのジビエ市場がマイナーだった理由は、獲れるイノシシ数量が不安定で、多くの人に分からない中で市場の流通が行われていたためです。捕獲数が分かれば、供給量を安定させ、供給を確実にすることができます。分からないために、100万頭分のジビエの肉が焼却されたり、埋められていたわけです。捕獲数がわかり、需要が増えれば、今まで焼却していた肉を、傷めずに商品価値を上げて流通に回す工夫がなされます。均ーのイノシシやシカの肉を、外食業者に提供することが可能になります。常に食肉として手に入ることが分かれば、調理法の工夫や料理が考案されることになるでしょう。日本文化の原点には、自然からの恵みを粗末しないという理念があります。捨てるために捕獲するという無駄な仕組みをなくし、日本らしいジビエ食文化を作りたいものです。野生動物は、ますます増えることが予想されます。持続可能なビジネスになるかもしれません。



保護者も保育士も満足する保育園  スモールアイデア NO281

2019-05-07 16:10:28 | 日記
 
 保育園の入園が、かなり柔軟に扱われ入りやすくなったという声も出てきました。認可保育園への入園の仕組みは、市町村が事前に決めた優先順位にそって乳幼児の入園を決めています。乳幼児の保護者の状況や子どもの状況から、優先順位を決めているわけです。親の収入や子どもの年齢、そして保育園の職員数などの調整、いわゆるマッチングが難しい作業になります。各市両村は、これを職員の手作業で行っていいます。職員の作業量や浪費する時間は膨大なものになっているのです。一方、保護者の方も、子どもを預かってもらえれば良いという段階から、子どもの発達成長を重視した保育を求めるようになりつつあります。良い保育園や良い保育士の確保が、求められようになるわけです。
 そこで、保育園のマッチングの問題と良い保育について考えてみました。良い人材を求めて、青田買いに走る現象は今の時代だけではありませんでした。アメリカの事例ですが、優秀な研修医を採用したい病院は競って採用時期を早めていった歴史があります。20世紀の半ばには、採用の決定時期が学生の卒業の2年前にまで前倒しされてしまったのです。今日本で起きているIT技術者の確保状況に似たことが、起きていたわけです。そこで、アメリカでは、研修医と病院がそれぞれの希望をデータべースに提出し、研修医の配属先を決める仕組みを作りました。決められた手順に従い、すべての研修医の配属先を全員同時に決定する仕組みになりました。研修医と研修病院双方の希望を取り入れ、青田買いの横行を防ぐ方法として定着しています。これは、マッチングが成功した事例です。マッチングの問題の解決は、人工頭脳(AI)が得意の分野です。一定の手順に従って、優先順ごとにランクづけをしていく作業を、人間が数日かかる分量を数秒で行ってしまいます。手順さえ正確に作られていれば、早く間違いなく結果を出します。
 子どもの発達に、保育園は大きく影響しています。良い保育園は、子ども自身が持っている興味関心を追求させます。一方で、乳幼児の行動の自由を制限する「しつけ」も行います。適度に自由を制限され子どもは、忍耐力とか自制心が芽生えます。忍耐力とか自制心と呼ばれる非認知力は、就学前の時期に大きく発達するのです。非認知力が高かった子どもは、大人になってからも健康度が高く、社会的地位や所得、そして財務計画性が高いことが知られています。
 最後に提案です。政府の保育園対策に、マッチング専用の人工頭脳(AI)の開発を入れてはどうでしょうか。親の収入や子どもの状況、保育園からの距離などはマッチング要素にはいるでしょう。入れてほしい要素は、保育士さんの要望も入れてほしいのです。乳幼児に接する保育士は、機械ではありません。感情も理性も持った人間です。人間が高度な能力を発揮するためには、高いモチベーションが必要です。どこで、どんな乳幼児と接したいかなどの希望は重要なモチベーションになります。保育園のマッチングAIが開発されれば、市町村の職員の作業量は軽減され、保育を希望する親も子どもも、そして保育士も一定の満足を得ることができます。

オリンピックとセカンドライフ  スモールアイデアNO 280

2019-05-06 18:07:32 | 日記

 2020年東京五輪の大会組織委員会は、競技スケジュールの詳細を発表した。これを見たスポーツ愛好家は、首をかしげたくなったと思います。バスケットボール決勝は、男女とも午前11時半から始まります。陸上はトラック、フィールドの計9種目の決勝を、午前中に行うのです。日本の午前11時半はアメリカの東海岸なら午後10時半、西海岸は午後7時半の時間帯になります。テレビ放映のゴールデンタイムです。選手よりもアメリカの視聴者を優遇するシステムは、放映権にありました。アメリカのテレビ局NBCは、2014年から2032年まで年までの五輪大会のアメリカ向け放映権を独占契約しています。オリンピック委員会(IOC)は、総額1兆3300億円でNBCと独占契約しているのです。大会組織委員会は、「さまざまな利害関係との調整の結果」と報道関係者に話しています。
 そこで、スポーツにおけるさまざまな利害関係について考えてみました。オリンピックで日本人選手が金メダルをとった姿に、日本中の国民が感動します。スポーツには、国民の心を凝集する力があります。トップレベルの競技者は、強い相手と相対したいものです。最高の試合の最高のパフォーマンスに、国民は感動します。金メダルをとった姿に、感動する動物はいません。クーべルタン男爵は、1896年に近代オリンピックを始めました。この時、男爵は、スポーツ活動が当時のヨーロッパ諸国間の政治的諸関係を改善することを期待していたようです。スポーツが、政治から自由であったことは,滅多になかったとといえるでしょう。
 イタリアのローマには、コロセウム(円形闘技場)があります。古代ローマにおいて、食糧に困らなくなったローマ市民は、さらなる娯楽を求め続けました。権力者は毎日のように戦車競走や闘技会といった見世物を開催したのです。ローマ市民をある意味で政治的盲目状態に置いて統治した言葉が「パンとサーカス」でした。パンとサーカスの政治手法は、市民から政治的思考や認識と行動を奪う一種の愚民政策だったともいえます。この種の手法は、中世から近代、そして現代でも採用されています。
 例えば、1962年ごろのカナダ政府は,国家意識の欠如に悩んでいました。同じ国に住んでいないながら、イギリス系とフランス系の中が仲が良くなかったのです。そこで、カナダ政府は、国際スポーツ大会への参加が、国家精神の統一に重要な働きをするとして、スポーツ団体に多くの支援や援助を行いました。また現在では、旧社会主義国家を含めて社会主義国がスポーツを推奨していることは周知のことです。でも、よく見ると奨励の政策には、歴史があります。1917年の10月ロシア革命当時、共産主義政権はスポーツには関心を示さなかったのです。1925年に、スポーツが政府に認められ推進され始めました。そして、1930~31年にG.T.O. (日本の体力テスト)が制定され、スポーツのテストが制度化された後は、スポーツは、政府機関のもとに組織化されたていったのです。これは、スポーツの軍事利用に繋がります。
 古来より、政治(祭り事)や祭は、切っても切り離せない関係にあります。スポーツは,政治のために広範に使われた歴史があります。そして現在、商業主義がオリンピックの高い視聴率をお金に換算するシステムを利用しています。ネット配信の時代となりスポーツの中継は、価値を増大させています。オリンピックは、ある意味でお金を生み出すイベントになっています。1兆円を投資しているNBCが、莫大な投資に見合うものを要求することには、ある意味で合理性があります。人気種目を、最も視聴率を獲得できる時間帯に、実施することを求めることは当然かもしれません。
 最高のパフォーマンスを持つ選手は、自らの稼ぐ力を長く続けて欲しいものです。高い視聴率は、選手にも恩恵をもたらします。視聴率をもたらす選手には、高い契約金が待っています。優れた選手は、現在の国際スポーツの流れを理解しておくべきです。やるべきトレーニングを継続しながら、マスコミ対応や組織と有利な契約をしていくことです。国際スポーツのなかで、客観的に自己を見つめる冷めた姿勢も必要でしょう。最高のパフォーマンスは試合で発揮されますが、そこにいたる経過やトレーニングも視聴率に関係してきます。勝利を手にする過程を知ることは、視聴者を心地良くします。このような説明においても、洗練されたものが求められる時代かもしれません。
 蛇足ですが、良い選手には、優れたエージェントが支援援助することが望まれます。せっかくの才能が、短期間でなくなることは悲しいことです。選手寿命を延ばし、セカンドライフを充実したものにしてほしいものです。


60万人の引きこもりをなくす地道な工夫  アイデア広場 その 465

2019-05-05 17:16:33 | 日記

 40歳から64歳の中高年の引きこもりが、61万人にのぼるという報道がありました。小さい時から自分で判断して、行動をする習慣ができていなかった人に見られる傾向のようです。良い社会人であろうとして、まわりを気にして仕事をしていれば疲れ果ててしまいます。自主的に判断をして、仕事をこなすスキルは経験から身に付くものです。訓練なしに自分自身の生き方が求められると、いろいろな課題を乗り越えることができなくなります。自分なりに活動して、考えて、判断できる、そういう学びの基礎は、幼児期に培われます。幼児期に、親のいうことをそのまま聞いて、「お利口さん」で過ごしていれば、自分の判断ができなくなります。思春期頃になって自分の意見を述べなさいと言われても、℃して良いか分からない子どもになってしまいます。これは、中高年だけの問題ではなく、現実に不登校の小中高生のや40歳以下の青年や壮年にも見られる現象です。
 そこで、自主性や自立的行動をどのように培うのかを考えてみました。遊びに集中する経験を積み重ねることで、子どもは大きく育っといいます。子どもは、遊びの中で自己判断をしながら成長していくものです。子ども自ら行う活動は、盛り上がって楽しいものになります。遊びという活動は開始してから、時間の経過とともに気持ちが盛り上がっていきます。例えば、子どもがパズルやお絵かきに夢中の時、話しかけても、子どもは話を聞きません。活動に夢中になっているのです。活動はピークに達し、意識は高いレベルで集中しています。このような質の高い経験を多くした子どもが、自主性や自立的行動を身につけていくわけです。試行錯誤している途中でお母さんが手出し、口出しすると子どものやる気がなくなります。ある意味で、子どもの未来を奪う行為になるのです。話しかけるタイミングは、子どもが一息ついた時や、作業を完成させた時がべストになります。
 とは言え、最初から全てに熱中するわけではありません。歯磨きは良いことだと分かっていても、なかなか習慣化しません。言葉で「歯磨きしようね」と指示するだけでは、子どもはスムーズに動きません。子どもは、分かることやできることには、スムーズに取り組むものです。親や教師は、子どもの能力や性格を考慮しながら、できることを数多く行わせるスキルを持つことが必要です。できる課題を成就し、成功体験を増し、やる気が出てきます。歯磨きの習慣化では、マグネット版に、ご飯や歯磨きなど、子どもにしてほしい項目を書きます。このような項目が明示されていれば、子どもは目で理解し、自ら身支度をするようになります。項目は、イラストにすると、子どもは理解しやすくなります。文字だけではなくイラストも添えて、子どもに行動のイメージを伝えるわけです。
 保育園での遊びは、子どもたちがいくつかの遊びグループにわかれて遊んでいます。遊びのグループは、導入、頂点、終末が不規則に進行していくものです。理解力には、個人差があります。すぐ理解する子もいますが、時間がかかる子もいます。グループの中には活動のピークに差しかかつているグループもあれば、もうすでに遊びが終末になっているもあります。このいくつかのグループの活動を、一斉にやめさせてば、せっかく集中しているグループの子どもにはやる気がそがれてしまいます。親も教師も、切り替え時には子どどもの気持ちに無理させずに切り替えさせていくスキルや知恵を身につけることが求められます。子どもたちの活動や気持ちの状態を的確に把握することは、親や教師の一つのスキルなのです。家庭や保育園では、どうしても大人の都合で、時間通り進める流れになっています。大人に合わせることに過度に強要すれば、子どもの自立性を奪うことにものなりかねないことを理解することです。
 余談ですが、フィンランドでは「犬を飼っている人は子育てもうまい」と言います。お座り、伏せ、待てなどシンプルなルールを守らせることに慣れているからです。子どもに守らせるルールも、シンプルなものです。早寝早起き、朝食を取り、保育園や学校へ時間を守っていく習慣の形成になります。守らせることで大切なことは、統一性のある注意です。荒れている家庭や学校では、ダブルスタンダードが横行しています。これが横行すると、子ども達は不公平感を持つようになります。家庭の習慣を破って、保育園や学校から乱暴な言葉や行動を、持ち帰る子どもの姿を見かけます。家庭に不満があるときによく見られる光景です。学校の「○○ちゃん」のせいだという前に、家庭の状況を点検した方が良いかもしれない事例です。
 蛇足ですが、子ども達ががんばったり楽しんだりするには、体や心のエネルギーが満ちていないと難しいのです。家庭が円満であれば、このエネルギー補給は、万全ということになります。


花卉や切り花が面白・日本の技術・中国人の好み  アイデア三題噺 230

2019-05-04 17:12:37 | 日記
 
 今、花卉や切り花のビジネスがが面白いようです。切り花では、コロンビア、エクアドルケニアなど赤道付近の温暖な国々で大量に生産されています。これらの国は、単一品目を周年栽培し、消費地となる先進国向けに出荷しているのです、切り花の世界市場は、キクやバラ、カーネーションなどがよく知られています。世界最大の花卉市場があるオランダでは、日本産は同じキクでも平均相場より1.5~2高い評価を勝ち取っています。日本で独自に改良したものなどが、国際的に評価されてきたといえます。切り花を生産する農家は、品質を追究するあまり、コスト意識に弱点がありました。その反面、品質が高く、必要な量を必要な時に正確に届けられる技術を磨いていたのです。例えば、結婚式場に納入する切り花は、開花時期のピークをかなりの確率で結婚式当日にそろえることができる技術を持つ必要があります。開花時期を制御できる技術があって、始めて大手結婚式場の結婚式用に一括納入ができるわけです。花を出荷するバケツを徹底して洗い、バクテリアを少なくし花の日持ちを保っているなどの技術は初歩的なものになります。 
 そこで、日本の切り花ビジネスについて考えてみました。切り花の国内生産額は、2018年時点で約2800億円になります。これは法人の事業所の総額で、個人営業主の売上げは含まれていません。花卉(かき)の輸出額は、100億円程度です。それでも、切り花輸出額は5年間で約6倍に急増し、6年連続の過去最高となる見込みです。2017年の金額別の出荷先シェアは、香港が37%、アメリカが29%、韓国が17%と続いています。日本特有の品種が、評価されて、今後とも輸出は増加する傾向にあるようです。
 花卉の輸出の割合はまだ僅かですが、産地には追い風になっています。花卉は嗜好品のため、国内ではクリスマスなや彼岸などイべント時に消費が伸びます。でも、平常時は単価が低いレベルで推移します。経営が、不安定になる弱点があったわけです。需要期が異なる海外への販路開拓は、経営の安定につながります。経営の安定には、花の栽培と稲作、そして味噌作りなど、通年を通して活動することになります。ここに、花卉の輸出が加われば、通年の活動がより円滑になり、農家の収入が増えるということになります。
 各種の展示会の開催などで、日本産花卉の認知度が高まってきました。中国をはじめとするアジア圏の富裕層が、贈答用に購入するようになってきているのです。輸出される切り花は、アジア圏で縁起が良いとされる赤や黄色の花になっているようです。中国の色は、赤や黄色、そして紫が昔から定番です。皇帝の色とも言われ、故宮などの美術品を見るとよく分かります。そこで使われている花模様は、牡丹、椿、菊、蘭、竹、桂花、松などが多いようです。そして、文字は福、寿、貴、慶、利、宝、豊、順、茂、発、財、昌、隆、和、泰、義、協、合などが使われています。これらの色や模様、そして漢字は中国人が好むものとされてます。とすれなら、これらを組み合わせた切り花を輸出することを工夫しても良いことになります。赤や黄色、紫のキクやバラ、カーネーションを品種改良して、栽培をすることになります。その改良した花に「福寿宝」とか「宝玉貴」の名称を付けて輸出するわけです。中国の方が好む色や文字を使用する発想は、すでにあると思います。でも、組合せは無限にあります。そこに、商機があるかもしれません。



通学してみたい小学校    スモールアイデアNO 279

2019-05-03 17:58:51 | 日記
 2つの小学校の学校行事を参観してきたことの感想です。A小学校での学校行事の参観では、上級生がてきぱきと会場設営の仕事をこなしていく光景がありました。下級生は何もすることがなく、静かにイスに座っていました。非常に効率的に、作業が行われていました。B小学校では、上級生と下級生がマゴマゴしながらしながら作業をしていました。それでも、何とか作業が終了したという光景でした。社会常識的には、時間的な効率やコストが重視されますので、A小学校が評価されると思いました。でも、学校は未熟な子ども達が、先生の支援や助言によって、試行錯誤や切磋琢磨しながら成長する場です。A小学校は、上級生だけの活動の場になっていました。B小学校は、整備に不備が見られましたが、上級生と下級生が協力しながら活動する場を提供していました。、静かにイスに座っているだけでは、下級生は仕事を覚えることはできません。どちらがこれから求められる教育のパターンなのかと思案したわけです。
 そこで、小学校の教育課程を上手に運用し、子ども達の調和のとれた学校生活をどのようにすれば良いかを考えてみました。春の新学期は、職員の人事異動や子ども達の進級や学級編成替えで、小学校の環境が様変わりします。学校の環境が変われば、授業内容や友達関係にも変化が出てきます。新学期の最初は、慣れるまでの慣らし運転の期間になるようです。良い先生は、この期間に子ども達の勉強の得手不得手を把握していきます。1年生の担任は、1年生は何ができて、何ができないのか。1年生には、この時期何が必要で、そのためには何を経験させるのが良いのか。このような課題を探して、その解決に向けて備えていくことでしょう。6年生の担任は、6年生のリーダーシップをどのように向上させるのか。中学にスムーズに溶け込むためには、どのような課題があるのかを考えることでしょう。
 子どもは、自分で考え仲間たちと切磋琢磨しながら、成長していくものです。自己表現に失敗ながら繰り返し、少しずつ分かってもらう中で成長していきます。良い先生は子ども達の人間関係を考慮しながら授業や行事を進めていきます。彼は、1日の作業量を明確にして、子どもに目標を明示しながら仕事をしていきます。子ども達は目標が近づけば、張り切ります。子どもに限らず人間は、目標が近づくにつれて、モチべーションが強くなってくるのです。目標に近づくほどにモチべーションが強められる特性は、「目標勾配」と呼ばれています。良い先生は、この特性を効果的に利用します。目標に近づきやすい学習量や課題を与えれば、良いことになります。優れた先生は、学習状況や発達状況に応じて適切な目標(スモールステップ) を設けることができます。
 優れた先生を有効活用する立場の方は、校長先生や教頭先生という立場の人達です。教育の目的を達成するためには、短い時間、少ない予算で達成することが望ましいわけです。
子ども達のモチベーションを切らすことなく、達成感を持ちながら学習や作業をしてもらえば、子ども達は健全に成長発達していきます。学校全体として、達成感を持ちながら学習や作業をしてもらうという仕掛けを工夫できる管理職が理想でしょう。もちろん、先生方にも適切な目標を提示して、達成感を持ちながら子ども達と接する環境を作ることになります。
 6年生が全てのことをてきぱきとこなし、下級生が静かにイスに座っているだけでは、不十分なようです。上級生と下級生が一緒にやると齟齬をきたすことがあります。でも、失敗する場や成功するチャンスを与える場を与えることは、子ども達の成長に必要なことなのです。いきなり集中力やモチベーションを高めて、全力で授業や作業に取り組んで、成果を上げることはできません。集中力やモチベーションを高める練習の場を提供し、協力する場を提供し、できれば成功体験や達成感を与えることも必要なことです。そんな小学校の授業参観を見たいものです。



笑いを核にした健康都市作り   スモールアイデア NO 278

2019-05-02 18:12:17 | 日記

 世界の文化は80~90%まで欧米がリードし、世界各国に良い意味でも悪い意味でも、その痕跡を残しています。欧米優位の中で、日本文化は質的に欧米文化と肩を並べるほどみごとなものを保持しています。日本文化の中核とも言える日本語は、同音異義語が多いことが特徴です。理由は、音の数が少ないのです。英語には、子音にもRのラリルレロと、Lのラリルレロがあります。他にもBのバビブベボ、とVのバビブベボがあります。音が少ないままに、同じレべルの語彙を持とうとすれば、当然同音異義語が多くなるわけです。その中で、多くの語彙を使い分ける優れた文化をつくりあげてきたのです。
 欧米の演劇は、高く評価されています。その源流は、古代ギリシャから続く伝統とも言えるものです。演劇教育は、イギリスやアメリカで取り入れられています。演劇を通じた教育で重視されたものは、社会的な課題に対して理解を深めることでした。イギリスの小学校の演劇では、いじめや移民などの社会的なテーマにしているのです。欧米に負けずに、日本は古代から短詩型文芸を身分の上下にかかわらず親しんできました。万葉集、古今集から続く、短歌や俳句などは、伝統文化にふさわしいものです。この文化を、日本の学校は教育に取り入れています。この伝統の中には笑いの要素があったのです。そこから派生したものが、川柳、狂歌、都々逸でした。これらの源は、広く深い和歌を中軸とする伝統的な短詩型文芸にその根を持っています。川柳、狂歌、都々逸は、ユニークな笑いを醸し出します。これらのユニークな笑いを醸し出す趣向の極致として、落語があります。笑いについて、日本人は素晴らしい文化、すなわち娯楽を創り上げてきたといえます。
 そこで、日本の笑いを地域に根付かせて、地域の活性化の使うことを考えてみました。大阪に、街全体を1つの宿泊施設とみなす「街ごとホテル」を作り出す構想があります。大阪の西九条と東大阪の地域において、点在する複数の空き家を宿泊施設に改装する計画です。これは、宿泊客に周辺の回遊を促すビジネスモデルで、地域活性化つなげていくものです。宿泊客は近所の銭湯で入浴したり、付近の飲食店で食事を楽しむという趣向です。街全体が、衣食住を提供して、楽しんでもらう仕組みを作ろうとしてるわけです。
 街ごとホテルがあるとすれば、街ごとをアミューズメント施設にする構想があっても良いわけです。また、街ごとを医療介護プラス健康施設にしてもよいわけです。笑いやユーモアが、心臓血管系や免疫系のはたらきを改善する効果を持つことが明らかになってきました。笑いが、免疫効果のあるサイトカインやナチュラルキラー細胞の活動を高めるのです。笑いのある生活が免疫老化に防止に効果があるとすれば、これを利用することが当然考えられます。落語や漫才の会場で、大勢の人々がー斉に笑うとつられて笑うてしまう光景があります。これが伝染して、集団の笑いになります。笑いには、人びとを結びっける絆のようなポジティブな作用もあるようです。
 人間が豊かに生きるためには、福祉に関するインフラを整備が求められます。バリアフリー化は当然として、医療施設も整備することが必要でしょう。人の健康を高める仕掛けが隠されている地域があれば、素晴らしい場所になります。加えて、自然に免疫力を付ける要素が加われば、理想的な地域になります。ここで、落語や漫才の登場になります。医療施設や介護施設に漫才や落語、俳句や川柳などを導入していくわけです。笑いやユーモアが個人や地域の人びとの免疫を強化し、地域を明るくする要素になります。この地域の学校には、万葉集や古今集だけでなく、川柳や落語などの教材を系統的に学べるようにします。笑いを学校教育の内容に入れて、笑いを生涯にわたって享受する地域を作るという構想です。笑いやユーモアを単なる楽しみから、地域の文化活動として取り入れ、さらにその活動が住民の健康増進に繋がる仕組みを作っていくわけです。こんなドンキホーテ的な発想を実現する市町村が現れれば、面白い地域になるかもしれません。