ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

捕獲動物の肉をジビエで有効活用  スモールアイデアNO 282

2019-05-08 16:49:48 | 日記


 京都府の福知山市の山奥に、イノシシなどの野生動物を焼却する施設があります。年間4200頭ほどが、処理ができるように作られていたものです。でも、2017年度は7200頭が処理されています。この20年の間に、日本全国では野生のシカやイノシシが増えて、農作物や森林の食害が深刻化しています。自治体の焼却処分が間に合わず、山に埋められるイノシシやシカも多いのです。2017年の捕獲頭数は、合計で約115万頭にもなっています。この115万頭のうち、食肉などに利用されたのは1割以下にすぎないのです。イノシシのボタン鍋は、昔から有名なのですが、有効利用されていない鳥獣類も多いのです。現状では、この100万頭が有効利用されていないことになります。農水省や自治体、民間団体は、この100万頭のうち少しでも、ジビエ利用に回そうと頭をひねっているところです。これからの課題は、ジビエ消費の拡大になるようです。
 そこで、イノシシやシカの有効利用について考えてみました。一般的にいえば、最高級のブランド牛でも精肉したばかりのものは美味しくありません。エイジングとよばれる熟成の工程を経て、初めてブランド牛にふさわしい味わいになります。エイジングの間に、肉に含まれるタンパク質分解酵素が肉の線維がゆっくりと分解していきます。分解を経て肉質が柔らかくなり、アミノ酸が遊離するために、肉の旨味が引き出されるわけです。野外で捕獲されるイノシシしやシカの肉は、エイジングすることが困難でした。野外で仕留めてから、1時間ほどのうちに血抜きをしないと、どうしても臭いが残ってしまうのです。処理と加工を適切にしないと、ブランド和牛のような売り物にはなりませんでした。近年、
捕獲や加工処理、流通などの各段階で様々な対策、支援策が打ち出されてきているのです。
 最近はイノシシの捕獲現場で、食肉処理ができる移動車両が活躍しています。以前は困難だった処理や加工が、移動車の出現によって、市場にすぐに出せるまでになってきました。ある狩猟捕獲者と料理人を兼ねる職人の方は、捕獲したシカやノシシをすぐに血抜することができます。この処理の終わった肉を熟成させて、地元や東京などのレストランに提供する方もいます。熟練者が捕獲し処理すれば、良い肉ができたわけです
 さらに、面白い工夫がされるようになりました。シカやイノシシなどのジビエ肉の流通を管理するクラウドシステムが開発されたのです。このジビエクラウドシステムは、イノシシやシカの捕獲や加工の日時、捕獲者、処理の状況、加工工場名をクラウドで管理するというものです。QRコードを作成して、製品に貼って流通させ、トレーサビリティー(生産履歴の追跡)体制を整え、消費者に安全安心をアピールできます。ジビエのトレーサビリティーを整えることで、情報の共有が可能になります。ジビエ肉の品質の情報とその生産量が、このシステムを使用することで国民の間で共有できることになるのです。
 1億人のうち1%がジビエに関心を持てば、100万人のジビエ市場が生まれることになります。今までこのジビエ市場がマイナーだった理由は、獲れるイノシシ数量が不安定で、多くの人に分からない中で市場の流通が行われていたためです。捕獲数が分かれば、供給量を安定させ、供給を確実にすることができます。分からないために、100万頭分のジビエの肉が焼却されたり、埋められていたわけです。捕獲数がわかり、需要が増えれば、今まで焼却していた肉を、傷めずに商品価値を上げて流通に回す工夫がなされます。均ーのイノシシやシカの肉を、外食業者に提供することが可能になります。常に食肉として手に入ることが分かれば、調理法の工夫や料理が考案されることになるでしょう。日本文化の原点には、自然からの恵みを粗末しないという理念があります。捨てるために捕獲するという無駄な仕組みをなくし、日本らしいジビエ食文化を作りたいものです。野生動物は、ますます増えることが予想されます。持続可能なビジネスになるかもしれません。