コーヒーの消費量が、世界的規模で増加しています。さらに嬉しいことには、2018~9年のコーヒー生育が順調で、豊作の観測が出ているのです。コーヒーを愛飲している人びとには朗報でしょう。コーヒー生豆の収穫は木の生育に左右され、ブラジル産は隔年で表年と裏年を繰り返すことは、愛飲家によく知られています。生産が多い表年の2018~9年は、良好な気候に恵まれ収穫が順調でした。普通の流れからすると、今年の2019~20年は裏年になり、作柄が悪化する年になるわけでした。でも、生産の減る裏年に当たるのですが、豊作の予測が広がっているのです。
ブラジルの2018~9年の生豆生産量が前年度比25%増の6300万袋(1袋は60kg) と予測し、過去最高水準になるようです。この豊作により、コーヒーの国際価格が安値で推移しています。指標となるアラビカ種は、4月上旬に13年ぶりに、ロブス夕種は約3年ぶりの安値をつけました。生産国の灌漑設備が充実し、施肥の技術が向上し、品種改良が、良い方向に働いているようです。コーヒーの消費拡大により、生産者の意欲が高まったことも原因なのでしょう。結果として、コーヒー農園のケアが行き届き、よく実っているということになります。
もう一つの傾向は、生産国において、コーヒーの愛好家が増えているということです。生産国の消費量が、急増しているのです。最大生産国ブラジルの2018~9年度の消費量は、2300万袋と過去5年で15%増える見通しになっています。6300万袋を生産し、2300万袋を消費することになります。世界には、4000万袋のコーヒーを輸出するだけになるのです。べトナムは世界2位の生産国で、インスタントに使うコーヒーを生産しています。べトナムの消費量は、300万袋と49%増えています。世界4位の生産国、インドネシアの消費量も、5年で53%増えているのです。内需拡大を反映し、インドネシアの輸出量は5年で約2割減る見通しになっています。コーヒーの消費量が増えている国は、人口が増加し経済成長が続く東南アジアや中南米のコーヒーの生産国に多いのです。
今までは、日米欧の合計消費量が世界の50%を占めていました。2018~9年度の日米欧の合計消費量は、8100万袋に達しています。コーヒーの主要生産国、ブラジル、べトナム、コロンビアその他を含めた9ヵ国の合計消費量は、5000万袋と5年で25%も増えているのです。生産国では、品位が低いとされるロブスタ種の消費が多かったのです。でも最近は、高品質なアラビカ種をメインとするコーヒー店が増えています。ロブスタ種が幅を利かす屋台におけるコーヒー販売だけでなく、アラビカ種を含む高級なコーヒーの消費が新興国を中心に拡大が続いているのです。
余談ですが、中国ではコーヒーに異変が起きています。創業1年にも満たないラッキンというコーヒーチェーン店が、中国で圧倒的な地位を築いてきたスクーバックスを脅かす存在に急成長しているのです。ラッキンは、2018年1月に北京に1号店を出店しました。それが、1年3カ月の間に中国全土に約2300店をオープンしたのです。主に、コーヒーの小型の持ち帰りの店の営業をしています。ラッキンは2杯購入すれば、もう1杯無料とする拡販セールを武器にして人気を集めました。若者は、コーヒーの味は変わらなければ、価格の安いラッキンを選ぶようになっているのです。中国で3600店を構えるスクーバックスには、まだまだ余裕があるのでしょう。でも、油断しているとアマゾンのように撤退に追い込まれるかもしれません。
中国のコーヒー戦争を見るまでもなく、コーヒーの愛飲者は中長期にみれば増加する傾向が読み取れます。消費需要は世界的に底堅く、中長期的には相場上昇を招きそうな要因が多いのです。アジアの新興国にコーヒーの習慣が広まれば、ビジネスチャンスが広がります。中国のラッキンを見るまでもなく、工夫次第でスタートアップが可能になります。
コーヒーは、酒やタバコと同じようにカフェインによる依存症が知られています。依存症まで行かないまでも、愛好者は、コーヒーから離れがたい人達です。一度コーヒーの香りや味に親しんだ人達は、末永い消費者であり続けるわけです。固定した消費者でもあるのです。コーヒーが豊作の時、愛好者を増やし固定客にしてしまえば、コーヒービジネスは持続可能なビジネスになります。
もう一つの発想は、豊作貧乏でコーヒー農園を辞めた経営者の土地を、積極的に買いに出ることです。いずれ相場が上昇することは確実でしょう。農園を解雇された人びとを雇い入れて、コーヒー園を再利用していくことも面白かもしれません。