去年見た映画の中で、印象に残った映画はI, ROBOT(Will Smith主演)です。Issac Asimovのロボットの出てくる作品はかなり読んでいるので、非常に期待した映画でした。映画論評ではいろいろあったようですが、僕は☆☆☆☆(5個中)でした。
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Asimovのロボットものには、有名なロボット工学の三原則があります。それは、以下の三つです。
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
あまりにも有名なもの。原典は以下のとおりです。
A robot may not harm a human being, or, through inaction, allow a human being to come to harm.
A robot must obey the orders given to it by the human beings, except where such orders would conflict with the First Law.
A robot must protect its own existence, as long as such protection does not conflict the First or Second Law.
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human beingと書いてありますが、これ、もしもロボットができたとしたらもっとも難しい概念になるでしょうね。
老若男女、人種、なにをもって、どこを見て人というのか。双子であってもよく見れば違いがある。人はまさに人それぞれ。どれが人間で、どれが違うのか覚えさせるのではなく、判断させることになります。これ難しいですね。
映画では主人公が反乱を起こしたNS-5型ロボットに追われているとき、一世代前のNS-4型のロボットたちが、"Human in danger"といいながら、身を挺して主人公を救いに行きます。一瞬で人と判断し、第1条に従って行動する。これはすごい。60億を超えるホモサピエンスを全体としてhumanと認定する。乳幼児が男の人をみんなパパと思ってしまうのとはわけが違う。うーん。
言語学というよりは、認知の問題のようです。
…話がずれました。
ロボット工学の三原則を読むと、規則、法律、原則はこんな風に書くんだなって、勉強になります。
全然関係ない話に思えるかもしれないけど、キリスト教の聖書(旧約)にモーゼのお話があります。神がモーゼに十戒を与えますが、そこには「汝殺すことなかれ」といというものがあります。十戒の原典はすべて「おまえは…してはならない」です。神が一人一人に命令することになっています。日本語で考えると、「おまえたち殺し合ってはいけないよ」のように感じられるかもしれませんが、実際は一人一人が神の命令を受け、納得して、人は神と契約を結びます。一対一の契約であり、個人主義の始まりでもあります。
…また、話がずれました。
ロボット工学の三原則でも、主語はA robotであってRobotsではありません。ロボット全体が守るべきことではなく、各ロボットが守るべきことです。一台一台がそれぞれ、この三原則を守るとべし、と決められています。もっともロボットには個人(?)主義が許されませんが。。。
日本語で書かれているものと微妙にニュアンスが違うような気がします。英語・日本語、比較するとおもしろい-勉強するのは難しい-ですね。Asimovのロボットの出てくる作品群は、ロボットの姿を借りて、人間とは何かを考えさせてくれるいい本だと思います。
もちろん映画もおすすめです。
あの技術でアンドリューNDR(バイセンティニアルマン)も作り直してくれないかな。(笑)
何か、ほんとに雑感でした。