全英連参加者のブログ

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WELATÊ MIN Ê BIÇÛK

2022-06-07 04:00:00 | 全英連参加者 2022

マイスモールランド ポスタービジュアル 埼玉に住む17歳のクルド人サーリャ。
 すこし前までは同世代の日本人と変わらない、ごく普通の高校生活を送っていた。
 あるきっかけで在留資格を失い、当たり前の生活が奪われてしまう。
 彼女が、日本に居たいと望むことは“罪”なのだろうか――?

 「国家を持たない世界最大の民族」と呼ばれるクルド人。埼玉県には2000人ほどのコミュニティが 存在するが、クルド人が難民認定された例はこれまでないに等しい。そして、本作の企画が動きだした2017年 当時より、出入国管理及び難民認定法(入管法)を巡る状況は、悪化の一途をたどっている……。
 この現状を、17歳の少女の目線を通して描いたのは、是枝裕和監督が率いる映像制作者集団「分福」に在籍する新鋭・川和田恵真監督。イギリス人の父親と日本人の母親を持つ監督が、成長過程で感じたアイデンティティへの想いを元に、理不尽な状況に置かれた主人公が大きな問題に向き合う凛とした姿をスクリーンに焼き付け、本作を企画段階からサポートした是枝監督の『誰も知らない』(04)の系譜に連なる“日本の今”を映し出した。


 やっと見ることができました。4日(土)Movix川口です。

 主人公サーリャ、家族が生活するのは埼玉県川口市であり、通学している学校は県南の街・川口市近辺の県立高校にしか思えない描かれ方。学校の先生として、彼女、父親、妹弟の置かれている状況を、相当考えされされた。

 僕が仕事に就いたころ、外見でエスニシティーがNon-Japaneseと思えることはまれだった。当時から入学時の提出書類(在学保証書等)に、保護者・本人の国籍欄はない。学校も調査はしない。仕事で保護者氏名を見るのは、指導要録を書く時くらい。しかしここ20年ほどで、状況は変化した。外見で類推できるケースや、そもそも生徒名が外国名であることが目につくようになった。保護者どちらかの日常言語が日本語ではないこともめずらしくない。でも、サーリャのように自分はドイツ人と言い、実はクルド人難民であることを隠しているような場合は、周囲のものが気づくことは難しい。そんなことを考えた。学校も先生もサーリャのような立場の生徒には、何も役には立てない。行政も同じだろう。現下のウクライナの人々のあつかいと、クルド人難民のあつかいの差は... 国の有無。見ていて息苦しい部分がある作品だと感じた。

 本作はエンタテインメントの形をとるものの、いわゆるbased on the factの作品、それぞれの役には裏打ちとして実在の人がいる。サーリャは高校生、妹は中学生、弟は小学生である。3人ともちゃんと学校行けたのだろうか。そんなことまで考えさせられた。


 主人公のチョーラク・サーリャ(17)役
 嵐莉菜(あらし・りな)

 本作が映画初出演・初主演となる嵐さんもサーリャとは違うが、かなり複雑なethnicityのバックグラウンドを持つ。
 ああ、こんな感じの生徒いるかもしれないなあと感じた。現在 18歳。今後注目の存在(女優のみならず)だろう。

 サーリャのバイト仲間・崎山聡太(17)役
 奥平大兼(おくだいら・だいけん)

 出たての頃の伊藤健太郎さんみたいな雰囲気。
 『MOTHER マザー』(’20年)主演・長澤まさみの息子役。


 総太をはじめとしてサーリャの周囲の人たちは、日本社会・日本人のクルド人に対する無知、無関心を象徴している感じがした。無視ではなく無知からくる対応の冷たさ。胸が苦しくなるようなものがたり。
 ・・・でも、現実はもっと過酷なのだ。

 「仕方がない」ものがたりの中でサーリャが何度か言う。それを納得してしまうことは、この無知を知らされた人間には恥ずべきこと=苦しいこと。自分は何ができるのか。何もできない自分がそこにいることを思い知らされる。それでも知ってしまったので...
 ・・・堂々巡りである。

パンフレット表紙  映画のパンフレットの表紙は   をバックに、My Small Landである。文字のまわりの線は埼玉県。そう見えたのは僕だけではないだろう。 

 このエントリのタイトルは、ポスターに書かれていた言葉。クルド語だと思い、Google翻訳で調べてみた。日本語で「私の小さな国」、英語で「My Small Country」である。

 文中敬称略

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