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イベリア半島のスピノサウルス類(1)カマリラサウルスのどこがスピノサウルス類なのか


カマリラサウルスは、前期白亜紀バレミアン(Camarillas formation)に、スペイン東部アラゴン州テルエル県カマリリャス村Camarillas villageに生息した獣脚類で、Sánchez-Hernández and Benton (2014)によって記載された。このときは基盤的なケラトサウリアとされ、ジュラ紀のリムサウルスなどと後期白亜紀のアベリサウルス類などの間のギャップを埋める発見とされた。しかし化石は断片的で、歯の断片、いくつかの分離した椎骨、肋骨、後肢の骨からなり、ケラトサウリアとする根拠となる形質は仙椎が6個で完全に癒合しているなど、比較的少数であり後の研究者からは不十分という意見も出ていた。

その後タイの獣脚類研究者であるSamathiらは、前期白亜紀のタイ産スピノサウルス類を研究する過程で、それがスペインのカマリラサウルスと似ていることに気づいた。そこでSamathi, Sander & Chanthasit (2021)はタイ産スピノサウルス類を記載するとともに、カマリラサウルスの再検討を行い、それをスピノサウルス類として再記載した。

それではカマリラサウルスの断片的な化石のどこを見れば、スピノサウルス類とわかるのだろうか。

Samathi et al. (2021) はカマリラサウルスの標本のうち、歯の断片はほとんど情報が得られないとし、また頸椎は他の脊椎骨や後肢の骨と比べて小さすぎ、同一個体とは考えられないとして除外している。そしてカマリラサウルスの尾椎や血道弓について、他のスピノサウルス類などと比較した結果、よく似ていることから暫定的にスピノサウルス類と結論している。

カマリラサウルスの後方の尾椎は、スコミムス、タイ産スピノサウルス類(Phuwiang spinosaurid B)、およびポルトガルの“バリオニクス”と似ている。それらでは例えば、神経棘が棹状でL字型をしており、椎体の後半部の上にあり、後方に傾いている。神経棘の前方に小さな突起がある。また前関節突起は前背方を向いており、椎体の前縁を越えて突出してはいない。

カマリラサウルスの血道弓は、大きな血道孔haemal canal をもつ点で、スコミムス、バリオニクス、タイ産スピノサウルス類(Khok Kruat spinosaurid)、スピノサウルス、イクチオヴェナトルと似ている。一方マジュンガサウルス、ケラトサウルス、カルノタウルスのようなケラトサウリアでは、血道孔は小さい。
 またカマリラサウルスの血道弓には、前面と後面にはっきりした縦の溝longitudinal grooveがある。このような溝は、スコミムス、バリオニクス、Khok Kruat spinosaurid、イクチオヴェナトルにもみられる。この溝は獣脚類に広く分布しているかもしれないが、カマリラサウルスの溝は、少なくともカルノタウルス、マジュンガサウルス、ケラトサウルスのようなケラトサウリアと異なり、溝と稜がより顕著に発達している。
 さらにマジュンガサウルスやケラトサウルスの血道弓には前方突起anterior process があるが、カマリラサウルスとスピノサウルス類にはない。この前方突起がないことは、スピノサウルス類の特徴とされている。

最初の記載でカマリラサウルスの固有派生形質とされた、脛骨の近位部が非常に幅広いという形質や、脛骨の断面がg字形という形質も、程度の差はあるがスコミムスやスピノサウルスにみられるという。



参考文献
Sánchez-Hernández, B. and Benton, M.J. (2014). Filling the ceratosaur gap: A new ceratosaurian theropod from the Early Cretaceous of Spain. Acta Palaeontologica Polonica 59 (3): 581–600.

Samathi, A., Sander, P. M. & Chanthasit, P. (2021) A spinosaurid from Thailand (Sao Khua Formation, Early Cretaceous) and a reassessment of Camarillasaurus cirugedae from the Early Cretaceous of Spain. Hist. Biol. 33, 3480–3494 (2021).
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