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ケラトサウルス・ナシコルニス



ケラトサウルスのホロタイプ標本USNM 4735は、スミソニアンの国立自然史博物館に長年、展示されていたが、改装工事のため取り外され、再クリーニングが進められた。その機会にCarrano & Choiniere (2016)は、ケラトサウルスの前肢の骨格について研究し、アベリサウルス類などケラトサウリアの前肢の退化との関連についても考察した。ホロタイプ標本では左の前腕と手がよく保存されている。ただし指骨は完全ではないので、正確な指骨の数はわからない。

ケラトサウルスの前肢は関節状態で堆積したと考えられるが、手根骨は保存されていない。前腕(橈骨、尺骨)と手(中手骨、指骨)の間に隙間があるので、軟骨性の手根骨が1,2個あったと考えられている。橈骨・尺骨はディロフォサウルスやエオアベリサウルスと似ている。また中手骨もディロフォサウルス、ベルベロサウルス、エオアベリサウルスと似ており、特殊化したリムサウルスとは似ていない。中手骨はI~IVの4個とも保存されており、中央のII, III が大きくI, IVは小さい。指骨はII, III, IV に1個ずつ保存されている。第I指の指骨は保存されていないが、中手骨の関節面から指骨があったとわかる。第II, III指にはII-1, III-1が保存されており、関節面があることから短いが機能的な指があったと考えられる。第IV指には1個だけ小塊状の指骨があるが、半球状の関節面があることから、あと1個指骨があったことが示唆される。痕跡的ながら2個あったということである。

ケラトサウリアの中の系統関係は、研究者の間で一致していない。ケラトサウリアにはケラトサウルス科、エラフロサウルス科、ノアサウルス科、アベリサウルス科というべき系統があり、伝統的にはケラトサウルス科が基盤的で、ノアサウルス科とアベリサウルス科が互いに近縁で合わせてアベリサウルス上科Abelisauroideaをなす、と考えられてきた。
 Wang et al. (2017) はリムサウルスの個体発生の論文で、ケラトサウリアの大規模な系統解析を行った結果、まずエラフロサウルス類を含むノアサウルス類と大型のケラトサウルス科やアベリサウルス科を含むグループに分かれるという系統関係を得た。つまりケラトサウルス科とアベリサウルス科はより近縁となった。
 Delcourt (2018)はケラトサウリアの短い総説の中で、Wang et al. (2017)の系統解析を採用し、ケラトサウルス科とアベリサウルス科を合わせたクレードをエトリガンサウリアEtrigansauria と命名した。ここではケラトサウルス科にエオアベリサウルス、ケラトサウルス、ゲニオデクテスが含まれている。
 しかしその後もアルゼンチンのアベリサウルス類の研究者は、伝統的な系統関係を変えておらず、Wang et al. (2017) やDelcourt (2018)の考えが定着しているわけでもなさそうである。


参考文献
Matthew T. Carrano & Jonah Choiniere (2016) New information on the forearm and manus of Ceratosaurus nasicornis Marsh, 1884 (Dinosauria, Theropoda), with implications for theropod forelimb evolution, Journal of Vertebrate Paleontology, 36:2, e1054497, DOI: 10.1080/02724634.2015.1054497

Rafael Delcourt (2018) Ceratosaur palaeobiology: new insights on evolution and ecology of the southern rulers. Scientific Reports (2018) 8: 9730 | DOI:10.1038/s41598-018-28154-x

Wang, S. et al. (2017) Extreme Ontogenetic Changes in a Ceratosaurian Theropod. Curr. Biol. 27, 144–148.
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