ツバキの花の咲き終わった4~5月ごろ、ホテル椿山荘の年老いた支配人が出入りの植木職人に電話をかける。
「今年もお願いしますね」
電話を受けた代々続く下町の植木職人の3代目は、今風の刈り上げた頭にぱらりと下した天辺の長髪を揺らしながら、電話に向かってお辞儀する。
「まいどどうも。今年の春は成長が速かったから強めに剪定しておきますね」
そう答えて、指輪をはめた手で携帯の通話ボタンを押す。。
そんなイメージの、世代交代した昔ながらの頑固な植木職人さんたちが手入れしたであろう椿山荘のツバキたち。
みごとに無駄な枝が省かれ、すきっと枝葉の隙間を通して広い庭が見渡せる。
なにかこう椿山荘のツバキたちは、おしゃれな都会っ子、つまり、シティボーイやシティーガールたちを見ているようで洗練されていてカッコいい。枝が込み合ってないから写真写りも最高だ。
構図を選ばなくても、自然と日本画に描かれた椿の花風に収まる。行儀がいいのだ。
それが田舎のツバキたちのように、たくましさや野性味にかけているとしても。。
実際、生命力が強いのは、どっちの方なんだろう。自由奔放に育てられたツバキと管理されたツバキと・・・。
ひとつだけ言えるのは、多くの人の目を楽しませられる分、椿山荘のツバキたちは幸せなのかもしれない。