彼女は「貴方が降りたら私は落ちる」と脅迫めいたことを言ってくる。
仕方がないので「じゃあ降りないよ」と言うと、彼女は嬉しそうに「ありがとう、約束だよ。破ったら貴方も落ちてね？」と言う。
この言葉にゾッとしながらも、彼女を落ち着かせることが優先だと自殺を食い止めたい一心で、男は「わかった、約束するよ」と言う。
そのとき、電車が揺れ、そして彼女の方を見た男は、彼女の不可解な言動のすべてを理解する。
しかしもう遅い。
降りたら彼女は落ちる、そして男もまた落ちるのだから。
そんな話を思い出したから、恐くて隣のOLの方を見れやしない。
・・・そうっと気づかれないように、通路を隔てた反対側の電車の窓ガラスに映る自分の姿を見てみた。
窓ガラスには、席に腰掛けた自分の姿は映っているのだが、その横のOLの姿は映っていなかった。
正確に言うと、なにか黒い服を着た人の陰になって、彼女の姿は映らないのだ。
もちろん、通路にも、反対側の座席にも誰もいない。まして、黒い服を着た女性なんて。
不思議に思って窓ガラスにもう一度目を戻すと、今度は普通に隣のOLの姿が映っていた。
隣のOLがぼくの方に頭を乗せて寝ている。その姿が正面の窓ガラスに映って見えた。
だが、後ろを振り返って、頭の後ろにある窓ガラスを覗く気にはなれない。
そこに何かが映っていてOLの方をじいっと見ていたら、恐すぎる。
駅に着くまでの我慢だ。今日は、家がやけに遠い。。
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