tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

邪宗門 神経のにがき魔睡

2010-02-18 22:59:57 | プチ放浪 海沿い編

 
 
 
 

鎌倉・長谷交差点から長谷観音・長谷寺まで、蕎麦屋さんと雑貨屋さんが並び、その奥左側はお好み焼き屋さんと旅館一軒置いて土産物屋さんがある。
右側は骨董品屋さんに続いてうなぎ屋さん。そして、長谷寺の駐車場の手前には、かつて「邪宗門」という喫茶店があった。
最初にその店に入ったのは、30年以上も前のことだった。

喫茶店「邪宗門」の名前の由来は、北原白秋の詩「邪宗門秘曲」から来ている・・・らしい。
その「邪宗門 扉銘」には魔法のような次の3行の言葉がある。

  ここ過ぎて曲節の悩みのむれに、        
  ここ過ぎて官能の愉楽のそのに、        
  ここ過ぎて神経のにがき魔睡に。 
       
白秋は、キリシタンを「邪宗」としながらも、そのイメージが醸し出す一種まがまがしいエグゾティシズムに酔い痴れている。
邪宗門の店のドアを開けると、レトロ調の調度品が目に飛び込み、まさにエグゾティシズムの雰囲気があった。
・・・残念だが、今は長谷の店はもうない。数年前に小田原に移転したとのこと。

伊豆下田にも「邪宗門」という喫茶店がある。下田ダイバーズのダイビング・インストラクターに聞くと、ちょくちょくお客さんを誘ってコーヒーを飲みに行くらしい。
「いい店だから行って来なよ」
の言葉に誘われて、河津桜の写真を撮った帰りに一人で寄ってみた。

下田の邪宗門は、古民家を改築したお店だった。
南伊豆や松崎の方に古くからある白と黒の碁盤目が斜めに交差するなまこ壁の外観で、古風で独特の下田情緒をかもし出している。
店内は、古い小物や酒のとっくりが無造作に並べられていて、年代を感じる煤けた赤いポストがすえられている。
酸味の強い香りのいいコーヒーを飲みながら、店の奥さんのお話を聞いた。

下田は元々風待ちの港町。当時の家屋の多くは船大工の手によるものらしい。
両側を奥まで伊豆石を積み、その上に船底をひっくり返した様な天井が乗る。
土間、広間、座敷と並列した間取り。広間は板敷きで、土間と合わせて天井がない。太い梁が組み合わさって露出する。
その梁は自然に曲がった材を使っている。

かつて、作家の故・松本清張は、「花実のない森」で
「珍しい町の風景だ。近年、こういう古めかしい場所がだんだん少なくなっている。世に有名なのは、伊豆の下田と備中の倉敷だが、ここにもそれに負けないような土蔵造りの家が並んでいる。」
と江戸時代から明治の町、柳井を形容している。
伝統を感じる建物の中で静かにファインダーを覗き込むと、そこに違った時代が存在するような気がする。


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