tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

「THIS IS SHE」その3

2010-02-07 22:27:01 | 日記

 今、彼女は、久米島の海域を覚えることに夢中だ。昨年は、久米島に毎月のように来て潜っていた。

 ぼくは今回、彼女と一緒に久米島の海に潜り、ダイビング後のタンクの残圧を非常に気にするようになってしまった。

 ぼくはもともと、ダイビング中のタンクのエアの消費が他のダイバーと比べて同じぐらいか、若干、早いかもしれない。
といのも、インストラクターが設定したダイビング・スケジュールに沿って水中を巡り、安全停止に入るときは、たいていはタンクの残圧が40~70kg/cm^2なのだ。
一緒に潜った男性ダイバーも同じようなタンクの残圧。
この40kg/cm^2の残圧は、10リットルタンクで10 x 40 = 400リットルの空気が残っている事になる。
安全停止の水深は5m。絶対圧は1.5気圧になるので、タンクからは270リットルの空気が吸える。
空気の消費率は、男性の場合はだいたい12~15リットル/分位。最大を取って15リットル/分としても、20分近く吸えることになる。
3分間の安全停止、および、それに続く、9m/分以下の浮上速度でも、安全に水面に到達できる空気の量だ。

 この安全停止に入る時のタンクの残圧40kg/cm^2は、ぼくにとって一つの目安であり、これよりも残圧が少なくなるようなダイビング・スケジュールは、なにか対策が必要ということになる。逆に言えば、タンクにエアをたくさん残してもダイビングが終わってしまえば役にたたないので、タンクのエアを効率的に使ったダイビングとも思っていた。

 ところが、久米島のダイビング。潮の流れが速くダイバーからの呼吸の泡が広がってしまうため、ダイビング・ボートでダイバーの呼吸の泡を追うということができない。
したがって、ダイビングは、エントリーしたボートの位置に戻るというスタイルにならざるを得ない。
ダイビング・セオリーにしたがって、行きは潮に逆らって、帰りは潮に乗ってというコースを取る。しかし、トンバラ付近では潮の流れが頻繁に変化するので、潮に乗って戻ってくるときに、かなりの方向修正が要求される。
もちろん、潜る前に潮の流れや強弱を確かめるのだが、潜った後も変化するので潮の流れによって適切に方向修正をかけるしかないのだ。
ほとんど目標物がない中層を泳ぎ、久米島のスーパー・インストラクターは完璧にアンカーを打ったボートの位置まで案内することができる。これは、もう、神業としか言いようがない。

 だが、ダイビングでは最悪の場合を想定することが必要である。万が一、ダイビングの終盤、水深10mでボートまでまだ距離がある場合、タンクの残圧が40kg/cm^2のゲストがいたら、インストラクターたちはどうするのだろうか。状況にもよるが、いろいろ選択肢がある中で多くのインストラクターが選択すると思われるのが、予備のセカンドステージ(オクトパス)・ブリージング。つまり、自分のエアをゲストにシェアしながらボートの下までの移動だ。
だがこの場合、オクトパスのセットの仕方によっては、ゲストと向き合って不自然な姿勢で泳ぐことになる。

 流れの強いトンバラを潜り終えて、ぼくのタンクの残圧は50kg/cm^2だった。ボートに上がり、タンクのバルブを閉めるときの残圧。いつもどおりの残圧だった。ところが、久米島のスーパー・インストラクターの指示は、「トンバラに潜るときは14リットルのタンクを使うこと」だった。それに加えて、ウェートを1kg減らすこと。
タンクを10リットルから14リットルに大きくすることで、よりたくさんの空気が吸えることになる。タンクの重量はやや重くなるのだが、水中では浮力が働くので全く問題はない。そして、腰につけたウェートを1kg減らすことによって、腰の位置を上げてより水平の姿勢をとることができ、泳ぐときの水の抵抗を減らすことができるから、空気の消費量を減らせる。つまりは、石橋を叩いて渡るような慎重な対策だった。
14リットルのタンクを使ってのダイビングで、残圧は80kg/cm^2だった。いつもは水中でもどる途中で確認する十分すぎるくらいの残圧なのだが、これで何があっても安全を十分に確保することができる。

こうした的確な判断と、ほとんど目標物がない中層でのナビゲーション。慶子さんはこれをマスターしようとしている。
 
 
 
 
 

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