彦四郎の中国生活

中国滞在記

大学の新年度開始、中国全土から6000人余の新入生が来校か—私は来年1月下旬に中国渡航予定

2022-09-02 16:22:36 | 滞在記

 私が勤める中国福建省の閩江大学の新年度1学期(前期)授業は、来週月曜日(9月5日)から始まる。この9月5日授業開始に間に合うように中国に渡航してほしいとの大学からの強い要請があり、私は7月上旬から中国渡航への準備に取り組み始めた。まず、6月中旬には京都府旅券センターに行き、2023年1月で有効期限の切れる10年パスポートを、新たな10年パスポートにするため申請し、6月下旬に新たなパスポートを受け取った。

 2022年の1月~3月に、世界がウイズ・コロナ政策に転換する中だが、3月下旬から6月1日までの2か月間以上に及ぶ上海市の都市封鎖など、中国だけは超厳格なゼロコロナ政策を堅持し続けて現在にも至っている。だが、外国との人的往来に関しては6月に入り、その厳戒態勢を緩め始めてきた。まず、中国渡航の際に必要だった「PU招聘状」というものの取得が6月に入りいらなくなった。このPU招聘状は、例えば私の場合は、所属する大学が中国政府に申請し、「所属日本人教員の中国渡航を認めます」という内容の文書を発行してもらう。これの取得は申請からほぼ1か月間を要するのだ。(この中国政府発行のPU招聘状は、新型コロナウイルス感染問題後に求められようになったもの)

 そして、「PU招聘状」が発行されて初めて、大学側は、私が中国で就労できるための「就労許可申請書」を中国政府に申請できるというシステム。このため、これらの「PU招聘状」や「就労許可証明書」を持って、私が在日中国大使館などで就労ビザを申請するまでに2カ月間余りを要することとなる。だが、「PU招聘状」が必要なくなったので、1か月間余りで就労ビザ申請に行くことが可能になった。

 外国からの中国入国者は、最低3週間の隔離(指定ホテル隔離2週間+自宅隔離1週間=3週間の隔離期間、コロナ感染がある地域では4週間の隔離(ホテル3週間+自宅1週間=1か月間)が求められていた。5月下旬に、3年ぶりに中国の実家に戻るために中国に帰国した教え子の大阪大学大学院生の場合、実に5週間の隔離期間を求められた。だが、6月28日に、外国からの入国者に対する隔離期間を10日間(指定ホテル1週間+自宅3日間)に短縮するとの内容を中国政府は発表した。かなりの隔離短縮発表に、8月下旬に渡航を予定していた私も少し安堵感をもった。

 そして、大学からの要請があるので、渡航に向けた準備を7月に入り始めていった。立命館大学に行き、最終学歴(大学院)証明書を取得したり、京都府警に行き、無犯罪証明書発行の申請に行ったりと‥。そして、7月下旬になり、在日中国大使館(大阪総領事館)には就労ビザ申請に行く予定をしていた。だが、日本に滞在し、私と同じようにこの2年間オンライン授業をしていた日本人の大学の同僚から、「家庭の事情などで、この8月下旬の渡航が難しくなったので、大学側に来年の1月下旬の中国渡航を希望しました」との連絡が入ったのだった。

  この9月からの1学期の担当授業では、2つの教科でその同僚と同じ教科を担当することになっていた。(大学の日本語学科は、各学年2クラスあるが、同じ教科を1クラスずつ担当することになっていた)  同僚が中国に渡航しないとなると、私は中国の大学の教室で学生との対面授業、もう一方の同僚の授業は日本からのオンライン授業となってしまうこととなる。学生から不満が出ることは目に見えていた。

 そして私は8月上旬に、大学側に事情も説明して「今回8月下旬の中国渡航はやめることにしたいです。来年1月下旬の渡航を希望します」との要請を行った。そして、8月20日すぎになり、ようやく大学側から「了承しました」の返答があった。大学側の、できるだけ早く中国に渡航してほしいという気持ちもよく分かるのだが‥。

 中国渡航の困難さは、さまざまな理由があるのだが、やはり超厳格なゼロコロナ政策継続下での中国生活の大変さへの不安は大きい。そして、飛行機代の高騰も中国渡航者にとっては大変だ。コロナ前には、「福建省福州空港—日本・関西国際空港(厦門[アモイ]航空便)」での往復料金は5〜6万円、片道では2.5万円~3万円程度だったが、現在8月下旬~9月中の片道料金は40万円超にも高騰している。15倍余りもの高騰だ。一応、大学側は、10万円の補助金を出してくれるのだが‥。あとは実費となる。

 中国渡航前の在日中国大使館指定の日本の病院でのPCR検査3回の費用が約6万円、中国での隔離ホテル1週間分の費用が約6万円、中国入国後の5回余りのPCR検査代(?)と、総額で60万円余りの出費となる。大学側からの飛行機代10万円の補助があっても50万円余りもの実費負担となる。このため、もし8月下旬に中国に渡航したら、少なくても来年の7月・8月の2カ月間の大学の夏休み期間までは日本に一時帰国することも、まず、実費負担の大きさでできない。往復で100万円近くかかることになってしまう。

 まあ、こんな事情で、今回の8月下旬渡航は取りやめとなり、大学側からも了承をもらった。だが、来年1月下旬には中国に渡航するつもりではある。5カ月後の来年の1月下旬、中国のゼロコロナ政策や航空運賃はどのようになっているだろうか。

 9月の福建省福州市は、まだまだ真夏の最中であり、気温は30度から36度という日々が続く。10月に入っても気温は28度〜33度前後、11月になり25度前後と少し暑さがやわらいでくる。8月20日すぎに、新学期の時間割や大学の1年間カレンダーが送信されてきて、1学期担当4教科のオンラインシステムの設置が私の携帯電話やパソコン行われた。

 担当教科は、①4回生2クラスの「日本文学作品選読」、②3回生2クラスの「日本概況」、③3回生1クラスの「日本語講演とディスカッション」、④2回生1クラスの「日本語会話3」。時間割的には月・火・木・金の週4日の午前中が授業となる。今週の8月29日(月)からの1週間、各教科のオンライン授業システムが正常に稼働するかどうかを確かめるための試行授業を行った。

 9月の大学構内は、真夏継続の中、さまざまな草花や樹木の花も咲く。日本でもよく見られる百日紅(さるすべり)の花。亜熱帯地方のハイビスカスやブーゲンビリア、ジャスミンなどの花々やインドソケイという名の白や赤の花。バナナもこの年の3回目の実が大きくなり始めるころだ。

 大学の光景も少し懐かしくなり始めてもいる。大学の私の研究室は今、どうなっているだろうか。大学の廊下などに並べられた各個人の自習用の机に置かれたダンボール内の書籍。学生たちの日傘の群れ。大学構内の川や水辺に落ちる夕日の光景などなど‥。

 今年度の新入生たちは、来週火曜日・水曜日に(9月6・7日)に、全国からやって来る。広い大学構内のいたるところで新入生を迎える各学部のブースが設けられる。閩江大学の新入生は毎年6000人余り。ほぼ全員が学生寮に入る。

 父母とともに大学に来る学生もいて、各学部のブースに行き、在学生が寮まで案内をする。大学構内は一つの小さな町のようで、さまざまな生活に必要な店は揃っている。寮に行き、父母とともに布団やマットレス、洗面器などなど、とりあえずの生活に必要な物を購入し、寮の部屋に行く姿も恒例の光景だ。故郷から布団を持って飛行機や新幹線などに乗り、大学に到着する新入生もけっこう多い。

 来週中に入学式や大学生活ガイダンスがあり、再来週の火曜日(9月13日)から新入生は授業が始まる。

 

 

 

 

 

 

 


ペロン米国下院議長の台湾訪問を巡って―中国国内の大熱波と継続されるゼロコロナ政策

2022-09-02 07:22:24 | 滞在記

 米国では大統領、副大統領に次ぐナンバー3の地位にある、ペロシ米国下院議会議長の8月2日夜の台湾訪問は、台湾のみならず、特に中国国内で大きな関心を集めた。中国政府がペロシ氏台訪前から強く反発し、一部メディアが「ペロシ氏訪台を物理的に妨げるべきだ」などと主張したこともあって、ペロシ氏の訪台を阻止せよとの中国国内世論が大きくもなった。中国共産党人民日報系の『環球時報』の前編集長・胡錫進氏は、7月31日に「中国軍による台湾入り妨害に効果がなければ、ペロシ搭乗機を撃ち落とせ」とツィート。

 このような「ペロン訪台阻止」への高まりは、それまでネット上に溢れていた国内のゼロコロナ政策への不満や経済問題への不安といった声がかき消されていったとも伝わる。ペロン氏がマレーシァから台湾に向かう専用機の空路を何百万人もの中国国民がネットで追跡、いつ中国軍がこの専用機を阻止するかと注目していた。ペロン氏が台湾到着後は、中国版ツイッターの微博に、「がっかりして眠れなかった」「胸に何かがつかえているようだ」など、中国政府が実力行使で訪台を止めなかったことへの落胆の声の他、米国や台湾に対する怒りや批判が多く書き込まれた。

 中国外交部の華春瑩報道局長は3日の記者会見で、「ペロシ氏訪台を止められなかったことで落胆している中国国民も多いが」と質問されると、「確かに昨日はペロシ氏の動きに注目した多くの人が眠れない夜を過ごしただろう」としたうえで、「中国側はすでに行動と声明で厳正な立場を表明した。中国の人々の愛国心は理性的であり、自らの国家、政府を十分に信頼している」と述べた。

 米国軍は、ペロシ氏訪台での不測の事態に備え、原子力空母「ロナルド・レーガン」を中核とする空母打撃群を西太平洋のフィリピン海に、強襲揚陸艦などを台湾周辺の海域に展開した。また、沖縄の米軍基地でも、事態への待機態勢に入っていた。

 8月4日付朝日新聞には、「米国は台湾を見捨てない―ペロン氏、蔡総統と会談」「中国・対抗措置続々—軍事演習・経済制裁・台湾人拘留」などの見出し記事。ペロシ氏を乗せた専用機は、マレーシアから台湾に向かう際、中国がほぼ全域で領有権と管轄権を主張する南シナ海を大きく迂回し、2日夜11時前に台湾・台北市の松山空港に到着した。その後、4日には日本に到着。岸田首相との会談に臨んだ。

 中国政府は、これに対して「強烈な抗議」を表明し、2日夜、台湾周辺で実弾射撃などの軍事行動を行い始めた。そして、4日~7日にかけて、台湾をぐるりと囲むように6つもの海域において、空母群を含む大規模軍事演習を行った。中国の駅構内のモニター(大型スクリーン)やコンビニエンスストアーの大型モニターには、中国の携帯アプリ「微博」(ウェイ・ボー)に投稿された「年老いた魔女の台湾非公式訪問は、祖国の主権に対する深刻な挑発である。積極的に迎え入れた人たちは、いつか人民の審判を受けることとなる」や、「戦争屋のペロシは台湾から出ていけ」などが映し出されていた。

 中国のネットでは、ペロシ氏を「老妖婆」と呼んで、彼女への罵詈雑言が飛び交っていた。中国人は、日本人とは比べものにならないくらい、現在でも敬老精神がとても高い。ネット上とはいえ、露骨な年齢差別の表現を行うのは珍しく、それだけ今回の訪台が、最近の国策によるナショナリズムが沸騰している中国人の怒りを買ったともいえる。

 私が勤める大学やアパートのある福建省の省都・福州市から、台湾海峡を挟んで約160km向こうの台湾の台北はすぐそこだ。この台湾に対する威嚇軍事訓練において、福州市の平譚島などからも台湾島間近の海域などにたくさんの弾道ミサイルが撃ち込まれた。このうち5発は、日本の領海内(EEZ)に着弾もした。

 当初、中国政府が発表していた8月7日までの軍事訓練。しかし、この期間が過ぎても、中国政府は台湾への威嚇軍事訓練の継続を行った。この8月の1か月間で、中国と台湾との中間線を越えて台湾に襲来した中国軍機は400機を超えた。

 このような威嚇軍事訓練に対し、日本政府は抗議をしたが、中国側は、「そのような日本のEEZは認められない」として、日本政府を批判した。そして、8月4日に予定されていた日本の林外相と中国の王毅外相との会談を突如、取りやめるとの声明を中国側は発表した。

 そのような、台湾を巡る8月の情勢があったわけだが、8月下旬になり、中国側は日本政府に対して歩み寄り的なことを行い始めたのだ。きっかけの一つは、日本の岸田首相が8月21日にコロナ感染が判明した出来事だった。これに対し、中国の習近平国家主席は、「一日も早い回復を願う。今年は中日国交正常化50周年にあたり、岸田首相とともに新時代の要求に合致した中日関係の構築を進めていきたい」との、見舞い電報を送ってきたのだった。

 これに先立つ、8月17日、中国天津市で、日本の秋葉国家安全保障局長と、中国外交部のトップである楊潔篪(ようけっち)共産党政治局委員は、7時間もにわたって会談を行っている。中国の王毅外相は、この楊潔篪氏の部下だ。なぜ、中国がこのような姿勢を見せ始めたのか? いくつかの背景が考えられる。まあ、確実に言えることは、「硬軟(こうなん)織り交ぜた中国得意の外交」術かと‥。だが、中国経済がさまざまな要因(「ゼロコロナ政策」「ウクライナ問題による一帯一路政策の行き詰まり」「住宅バブルの終焉」などなど‥)深刻な不況に陥り、失業者の増大や就職難などの問題が背景にあると考えられもする。

 日本との外交関係は、この経済問題のより悪化をさけるためにも、ある程度の関係改善に、関係を持っていきたいのかと推測もされる。8月25日付朝日新聞には、「工場、国内に回帰続々—脱中国/コロナ・経済安保念頭—家電・半導体」の見出し記事が掲載されていた。欧米日などの脱中国化が進み始めている。このため、岸田・習首脳会談の実現についても双方が模索しているようにも思われる。このような動向に対し、8月24日付の「夕刊フジ」には、「狂気の日中首脳会談—林外相 暴走/対日暴挙のケジメもなく‥」の見出し記事が掲載されていた。

 8月中旬の京都新聞には、「中韓THAAD対立再燃—尹政権配備を整備」の見出し記事。THAADとは、米国の移動式陸上配備型ミサイル防衛システムで、約800kmを探査するレーダーを備えている。韓国としては、対北朝鮮の弾道ミサイルに備えるためのものだが、中国は、中国領域もレーダー探査されると反発している。尹大統領は、訪台関連のペロシ氏との会談は行わず中国に配慮したが、このTHAADの問題では米国に配慮している。また、8月21日から昨日の9月1日にかけて、4年ぶりに大規模な米韓軍事訓練を行った。

 「今年の中国は、ものすごく暑いですよ」と、ここ2週間ほど前から中国の大学関係者に連絡をとると、この言葉が多くから伝えられる。日本も梅雨明けが異常に早く、もう6月下旬から暑い日が続くという異常猛暑の2カ月間以上の夏だった。福建省の福州市の暑さは中国でもベスト3に入る都市だが、今年の夏は特に異常だったようだ。中国の今年の夏は、はるかに日本を上回る熱波の夏だったと報じられる。最高気温40度〜43度という日々が長く続き、しかも深刻なことに、全国的に8月の1か月間は降水量が0mmという地域も多かったのだ。「日照り干ばつ」という言葉通りの中国の今年の夏。1961年に中国政府が統計を取り始めて以来、「最悪」であると中国の気象庁は発表した。

 このため、揚子江の大河や流域の大小河川の水はかなり干上がり、水力発電ができなくなったために、全国的に深刻な電力不足や管理停電が起きた。猛暑の中、クーラーをかけることもできない人々も多く、やや涼しい洞窟などで過ごし、熱中症をのがれる人々の映像も報道されていた。また、農業への被害もまた深刻なものとなっている。飼育している数千羽の鶏が異常な熱波のためにすべて死んでしまい、とほうにくれている女性の映像も流れていた。

 この夏、中国の新型コロナは政府による超強力な「ゼロコロナ政策」の継続で、新規感染者数は抑えられてはきている。だが、中国では、コロナに感染する恐怖感の大きさは、世界でも類をみないだろう。自分がもし感染したことが発覚したら、その地域全域が閉鎖となるためだ。この恐怖感は想像を絶する怖さだろう。

 中国内陸部の四川省の政令都市・重慶ではこの8月下旬の24日、新規感染者が40名近くにのぼった。8月半ば以降の感染累計は150人余り。1000万人を超す市民全員のPCR検査が実施された。全員をもれなくPCR検査を受けさせるために、市政府がとった方策は、驚くことに、市民のスマホ携帯電話に表示される陰性証明となる緑色を、市当局から指示を受けたアプリ担当機関が、市民全員を赤の陽性に操作して、PCR検査後に陰性が証明されたら緑色に戻すということをやった。ここまで徹底してPCR検査を実施している。緑色の陰性証明を提示しないと、スーパーにも入店できない、交通機関にも乗車できないなど、社会生活ができないシステムが中国だ。

 40度を超す炎天下、長時間外で直射日光にさらされ続けて、PCR検査の列に立ち尽くすものすごい数の人々の映像も報道されていた。つい最近、フィリピンで行われている8月25日のアジアカップ女子バレーボールの試合で、中国代表が全員マスクをつけて試合をしている映像が流れた。監督がマスクを外す指示を選手たちにすることをしなかったためのようだが、選手たちの心理面でも、コロナ感染をどうしても避けたい気持ちもあったのかもしれない。

 この8月下旬~9月上旬、中国の新規コロナ感染者数は、厳格なゼロコロナ政策下、少ない。だが、少数の感染者数であっても都市封鎖を行うことは続けられている。広東省の大都市・深圳ではいくつかの地区が封鎖されている。また、四川省の省都・成都では8月下旬~9月4日までの都市封鎖が行われ、2500万人の市民全員のPCR検査が実施されている。香港では、8月下旬の1日の新規感染者数は8000人余りと突出している。

 8月27日に中国政府が発表した、中国本土(香港などは含まない)での1日の新規感染者数は1294人。