私が勤める中国福建省の閩江大学の新年度1学期(前期)授業は、来週月曜日(9月5日)から始まる。この9月5日授業開始に間に合うように中国に渡航してほしいとの大学からの強い要請があり、私は7月上旬から中国渡航への準備に取り組み始めた。まず、6月中旬には京都府旅券センターに行き、2023年1月で有効期限の切れる10年パスポートを、新たな10年パスポートにするため申請し、6月下旬に新たなパスポートを受け取った。
2022年の1月~3月に、世界がウイズ・コロナ政策に転換する中だが、3月下旬から6月1日までの2か月間以上に及ぶ上海市の都市封鎖など、中国だけは超厳格なゼロコロナ政策を堅持し続けて現在にも至っている。だが、外国との人的往来に関しては6月に入り、その厳戒態勢を緩め始めてきた。まず、中国渡航の際に必要だった「PU招聘状」というものの取得が6月に入りいらなくなった。このPU招聘状は、例えば私の場合は、所属する大学が中国政府に申請し、「所属日本人教員の中国渡航を認めます」という内容の文書を発行してもらう。これの取得は申請からほぼ1か月間を要するのだ。(この中国政府発行のPU招聘状は、新型コロナウイルス感染問題後に求められようになったもの)
そして、「PU招聘状」が発行されて初めて、大学側は、私が中国で就労できるための「就労許可申請書」を中国政府に申請できるというシステム。このため、これらの「PU招聘状」や「就労許可証明書」を持って、私が在日中国大使館などで就労ビザを申請するまでに2カ月間余りを要することとなる。だが、「PU招聘状」が必要なくなったので、1か月間余りで就労ビザ申請に行くことが可能になった。
外国からの中国入国者は、最低3週間の隔離(指定ホテル隔離2週間+自宅隔離1週間=3週間の隔離期間、コロナ感染がある地域では4週間の隔離(ホテル3週間+自宅1週間=1か月間)が求められていた。5月下旬に、3年ぶりに中国の実家に戻るために中国に帰国した教え子の大阪大学大学院生の場合、実に5週間の隔離期間を求められた。だが、6月28日に、外国からの入国者に対する隔離期間を10日間(指定ホテル1週間+自宅3日間)に短縮するとの内容を中国政府は発表した。かなりの隔離短縮発表に、8月下旬に渡航を予定していた私も少し安堵感をもった。
そして、大学からの要請があるので、渡航に向けた準備を7月に入り始めていった。立命館大学に行き、最終学歴(大学院)証明書を取得したり、京都府警に行き、無犯罪証明書発行の申請に行ったりと‥。そして、7月下旬になり、在日中国大使館(大阪総領事館)には就労ビザ申請に行く予定をしていた。だが、日本に滞在し、私と同じようにこの2年間オンライン授業をしていた日本人の大学の同僚から、「家庭の事情などで、この8月下旬の渡航が難しくなったので、大学側に来年の1月下旬の中国渡航を希望しました」との連絡が入ったのだった。
この9月からの1学期の担当授業では、2つの教科でその同僚と同じ教科を担当することになっていた。(大学の日本語学科は、各学年2クラスあるが、同じ教科を1クラスずつ担当することになっていた) 同僚が中国に渡航しないとなると、私は中国の大学の教室で学生との対面授業、もう一方の同僚の授業は日本からのオンライン授業となってしまうこととなる。学生から不満が出ることは目に見えていた。
そして私は8月上旬に、大学側に事情も説明して「今回8月下旬の中国渡航はやめることにしたいです。来年1月下旬の渡航を希望します」との要請を行った。そして、8月20日すぎになり、ようやく大学側から「了承しました」の返答があった。大学側の、できるだけ早く中国に渡航してほしいという気持ちもよく分かるのだが‥。
中国渡航の困難さは、さまざまな理由があるのだが、やはり超厳格なゼロコロナ政策継続下での中国生活の大変さへの不安は大きい。そして、飛行機代の高騰も中国渡航者にとっては大変だ。コロナ前には、「福建省福州空港—日本・関西国際空港(厦門[アモイ]航空便)」での往復料金は5〜6万円、片道では2.5万円~3万円程度だったが、現在8月下旬~9月中の片道料金は40万円超にも高騰している。15倍余りもの高騰だ。一応、大学側は、10万円の補助金を出してくれるのだが‥。あとは実費となる。
中国渡航前の在日中国大使館指定の日本の病院でのPCR検査3回の費用が約6万円、中国での隔離ホテル1週間分の費用が約6万円、中国入国後の5回余りのPCR検査代(?)と、総額で60万円余りの出費となる。大学側からの飛行機代10万円の補助があっても50万円余りもの実費負担となる。このため、もし8月下旬に中国に渡航したら、少なくても来年の7月・8月の2カ月間の大学の夏休み期間までは日本に一時帰国することも、まず、実費負担の大きさでできない。往復で100万円近くかかることになってしまう。
まあ、こんな事情で、今回の8月下旬渡航は取りやめとなり、大学側からも了承をもらった。だが、来年1月下旬には中国に渡航するつもりではある。5カ月後の来年の1月下旬、中国のゼロコロナ政策や航空運賃はどのようになっているだろうか。
9月の福建省福州市は、まだまだ真夏の最中であり、気温は30度から36度という日々が続く。10月に入っても気温は28度〜33度前後、11月になり25度前後と少し暑さがやわらいでくる。8月20日すぎに、新学期の時間割や大学の1年間カレンダーが送信されてきて、1学期担当4教科のオンラインシステムの設置が私の携帯電話やパソコン行われた。
担当教科は、①4回生2クラスの「日本文学作品選読」、②3回生2クラスの「日本概況」、③3回生1クラスの「日本語講演とディスカッション」、④2回生1クラスの「日本語会話3」。時間割的には月・火・木・金の週4日の午前中が授業となる。今週の8月29日(月)からの1週間、各教科のオンライン授業システムが正常に稼働するかどうかを確かめるための試行授業を行った。
9月の大学構内は、真夏継続の中、さまざまな草花や樹木の花も咲く。日本でもよく見られる百日紅(さるすべり)の花。亜熱帯地方のハイビスカスやブーゲンビリア、ジャスミンなどの花々やインドソケイという名の白や赤の花。バナナもこの年の3回目の実が大きくなり始めるころだ。
大学の光景も少し懐かしくなり始めてもいる。大学の私の研究室は今、どうなっているだろうか。大学の廊下などに並べられた各個人の自習用の机に置かれたダンボール内の書籍。学生たちの日傘の群れ。大学構内の川や水辺に落ちる夕日の光景などなど‥。
今年度の新入生たちは、来週火曜日・水曜日に(9月6・7日)に、全国からやって来る。広い大学構内のいたるところで新入生を迎える各学部のブースが設けられる。閩江大学の新入生は毎年6000人余り。ほぼ全員が学生寮に入る。
父母とともに大学に来る学生もいて、各学部のブースに行き、在学生が寮まで案内をする。大学構内は一つの小さな町のようで、さまざまな生活に必要な店は揃っている。寮に行き、父母とともに布団やマットレス、洗面器などなど、とりあえずの生活に必要な物を購入し、寮の部屋に行く姿も恒例の光景だ。故郷から布団を持って飛行機や新幹線などに乗り、大学に到着する新入生もけっこう多い。
来週中に入学式や大学生活ガイダンスがあり、再来週の火曜日(9月13日)から新入生は授業が始まる。