ディゴの樹木に赤い花が咲き始めた4月23日(月)、大学の研究室がある福万楼(9階建て)のエレベーターに、1時間あまり閉じ込められるはめになってしまった。その時、突然に止まってしまったエレベーターに乗っていたのは私一人だったので、よけいにいいろな不安がよぎった。人生、初めての経験だった。
いきさつは次のような次第だ。午前9時ころに大学の研究室に出勤。この日の担当授業は3講時目の10時半から開始だった。授業準備を確認して、大学外事所(外国人教員担当事務所)の鄭さんと相談を行うため、9時15分ころに7階(外国語学部教員の研究室がある階)から1階に下りるためにエレベーターに乗った。エレベーターが動き始めて、すぐ(8秒くらい)したら「ガクン!」と大きな音がしてエレベーターが突然止まった。各階を示すエレベーター内の点灯表示が点灯しなくなっていて、そこは電気が消えて「真っ暗」になっていた。しばらくして、エレベーターが突然故障して一人エレベーターに閉じ込められたことを悟った。「これは困ったぞ!‥‥。」しばらく呆然としていた。幸いにエレベーター内の電灯は切れていなかった。
何とかしようと、エレベーター内を眺めたら、「応急救援電話」の番号があった。私の「中国語」で、会話がはたして相手に状況を理解してもらえるだろうか?しかし、やってみるしかない。携帯電話で番号を押したら相手が出てきたので、「我是寺坂、我是閩江大学日本人老師。我現在、在福万楼電稊。電稊突然停。請帮助帮助!!!」と、なんとか言った。相手に通じているかどうかわからない。「助けてほしい、救助を頼む」という中国語は「救助」という単語が正しいのだが発音が思い出せない。電話で言ったのは「援助してほしい」の意味だったので、この場合は間違った表現なのは分かっていた。
次にエレベーター内に黄色い色のベルマークがあったので、押してみたら「リリリリリリーーン!」と非常ベルが鳴り響いた。何度も何度も、このベルを断続的に押し続けた。エレベーターに閉じ込められてから30分ほどしたら、中国語で呼びかける人の声がかすかに聞こえ始めた。しかし、中国語がまったく聞き取れない。とりあえず、大きな声でこちらも叫び返した。とにかく、「エレベーター内に人が閉じ込められている状況」を察知してもらえたようだ。少し安心して気持ちが落ち着いてきた。
この福万楼のエレベーターは2台ある。半年に一度くらい どちらか又は両方が故障で止まり、使えなくことが以前もけっこうあった。だいたい5〜6時間くらいで修理がされていたので、半日くらいはかかるかもと覚悟を決めた。10時半から始まる授業の2回生のクラスの学級委員に電話をかける出ない。メールもしたが返信がない。何度もしたが反応がなかった。「早く電話に出てくれ!!」‥‥。まあ、しかたがない。落ち着いてくると、タバコが吸いたくなったが、ここでは吸えない。次に不安になったことは、「完全に外から密閉されたエレベーター内、酸素はどうなるのだろう」ということだった。酸欠で苦しくなってくるのだろうか。
閉じ込められてからに1時間ほどたった10時10分頃、人声が大きくなり始め、エレベーターのドアがこじ開けられ始めた。上を見上げると人の顔が何人か見えてきた。「助かった!!」と思った瞬間だった。階と階の中間にてエレベーターが停止していたようで、ロープを投げられて階のエレベーター乗り口まで引き上げられた。大勢の学生や大学職員や修理人らしき人がいた。引き上げられた瞬間を、たくさんの人が携帯電話でバシャバシャと写真を撮っていた。おそらく、インターネット投稿で中国国内に拡散されるかもしれないなあ。
時計を見たら、10時15分。もう一台のエレベーターも故障して使えないようだったので、救出された6階から階段を駆け下りて、10時半から始まる教学楼の教室まで暑いさ中走って行ったら10時半に少し遅れて間に合った。ことの顛末を学生たちに話をしたら、とても集中して聞いていたが、大勢の人に写真を撮られた話の下りでは爆笑された。もうこんな経験はこりごりだ。この話をこの日の夕方、偶然にバスに乗り合わせた中国人教員の曾先生にしたら、「以前にもそんなふうにエレベーターに閉じ込められた人がいましたよ。その時は、夜の10時ころで、福万楼には誰もいなかったので、翌朝まで閉じ込められたようでした」との話だった。
季節が夏に向かって日本の京都より1カ月以上早く移り変わってきている。春の花々はすっかり姿を消し、新緑がやや濃くなり、ブーゲンビリアが咲き誇ってきた。なんと、トンボがもう孵化し、水の上を飛んでいる姿が確認できた。中国人は、昼寝の習慣があるが、大学構内に住みついている数十匹の犬たちも昼寝をしていた。野犬の多いこの国では、市内外にはウロウロと野犬が常に徘徊しながらたくさんたくさん暮らしている。犬が苦手で怖かった私は、この5年間あまりですっかり犬がそばに来ても平気になってしまった。人間社会と違って、犬たちにとっては、日本の飼い犬たちと違って「この国はとても自由な国」でとても幸せの国ように思える。
福州の花、「ジャスミン」の白い花が開花し始めた。満開になるのは5月中旬から6月にかけての花だ。この花が満開になると、もうすぐ夏本番となる。通勤途中のバスの中、ベビーカーに小さな孫を乗せて乗り込んできた50代中頃のおじいちゃん。市内の町並みにも真っ赤なブーゲンビリアが見られる季節。若い出稼ぎ労働者が最近働く場ともなった「出前配達業務」の人達が上司から集められて訓示を聞いていた。
出勤のためのバス停がある福建師範大学の構内、早朝の6時頃からやっている「広場ダンス」の人達の姿がいつも見られる。夏が近づき始める4月中旬ころから、果物屋や露店ではパイナップルが売られ始める。中国の果物は種類がとても多くて安い。私はパイナップルが果物の中では一番好きなので、冬でもフィリピン産の缶詰をよく買って食べている。しかし、この時期から売られ始めるパイナップルはとても美味しいので、ほぼ毎日食べている。
昨日27日(金)の早朝、いつものように午前3時ころに起きて、トイレを使ったら、ついに流れなくなってしまった。トイレが詰まってしまったのだが、トイレの詰まりを解消する「ボコボコ」を何度使っても水が流れない。今回の詰まりの具合はとても深刻な状況だというとが分かってきた。断続的に100回以上、いや300回くらいは道具を使って試みるが、ウンともスンとも どうにもならない。そのうち、器具の木の棒の先が手の内側の薄い皮膚をこすりすぎて破れてしまった。皮膚の赤身が出てきて痛い。トイレが使えないから、小便や大便は、とりあえずエレベーターに乗って、尿意を感じたその都度 まだ暗い 外に出て 用を足す。
3時間ほどやり続けて、完全に諦めかけて、無茶苦茶に自棄(やけ)になりながら、もう最後と思って「ボコボコ」を使っていた午前7時半頃に、奇跡的に「ゴボッ!ゴボッ!」という音がして、水が流れ始めた。「やった!!!!!!、よかった!!!!」と感動した。8時にアパートを出て、この日の大学での授業に急ぎ向かった。
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