彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国人と「花」の文化

2017-06-03 08:20:29 | 滞在記

 福州「茶亭公園」の蓮の開花が始って2週間後の5月24日(水)、「健康診断証明書」を受け取りに行く途中に立ち寄ってみたら、開花した蓮がかなり増えていた。6月中旬くらいになると、開花した蓮や睡蓮で見事な景色を見ることができるだろう。この蓮だが、中国でも「泥から出て、泥に染まらない高潔高尚さ」を意味する花言葉。しかし、日本と違って、「仏教の仏」に関連するイメージというものは あまりないようだ。

 微かな高貴な匂いもするこの蓮、中国人も日本人も好きな花かと思う。私は日本人なので、「極楽の花」というイメージがあるが、中国人は仏教とは関係なく、「高尚な貴賓的な花」として受け入れられている。また、蓮のレンコンを好んでよく食べる。大学の食堂のメニューにも薄く切ったレンコンを油で炒めたものがある。

 以前のブログで書いたことがあるが、中国人は個人的に「生け花」というものをほとんどしない。花は野や庭にあって愛でるものという感じかな。花を室内に生けてあっても、大きなホテルや立派な宴会場に豪華な花を生ける時ぐらいで、日本の生け花のような風情というものは感じられない。これは、日本人と中国人の自然観の違いによる。しかし、中国人も「自然の風情」を愛するということに変わりはない。(日本人の方が細やかな自然の風情に対して敏感だが、日中 どのようなものに風情を感じるかの違いがけっこう大きいと思う)

  ―中国人と「花の文化」―

 『中国「花」文化―桂花考―』という王敏さんの論文を読んだら、中国人と「花」文化に関して次のような説明がいくつかあった。

・「花」は広い中国では草花を意味するところが多い。「花王」は牡丹(ボタン)といつしか決まった。「花中君子」は蓮。バラ科の中国原産、海棠(かいどう)には「花仙」「花中神仙」の別称を与えてきた。              ・花好きの中国人は古来、十大名花を競って選んできた。時代、地域によって違う十大名花を1987年、全国投票でリストを作った。順に名を記すと、「梅」・「牡丹」・「菊」・「蘭」・「月季(コウシンバラ)」・「杜鵑(トケン)→ツツジ」・「山茶花(サザンカ)」・「蓮」・「桂花(キンモクセイ)」・「水仙」。

・中国は漢字の国。簡潔明瞭な幹事表現の「花言葉」の花壇がつくられていた。                    〇花中両絶(りょうぜつ)-----------牡丹・芍薬(しやくやく)                                 〇園林三宝------------------------木に銀杏、花に牡丹、草に蘭                                〇花草四雅------------------------蘭・菊・水仙・菖蒲(ショウブ)                           〇花中四君子----------------------梅・蘭・竹・菊                                〇盆樹四大家(たいか)-------------黄楊(つげ)・金雀(えにしだ)・迎春(レンギョウ)・絨針柏(じゅうしんかしわ)     〇花間四友------------------------蝶(ちょう)・鶯(うぐいす)・燕(つばめ)・蜂(はち)

・宋代の曾端と明代の都卯は、友人を花に譬えて色別したことで知られる。現代に通じる「花十友」は、二人のたとえから選んだ。                                                       〇蘭--------芳友 〇梅---------清友 〇茉莉(ジャスミン)----雅友 〇蠟梅(ろうばい)---奇友 〇蓮---浄友

〇梔子(クチナシ)----禅友  〇菊---佳友  〇桂花(きんもくせい)----仙友  〇海棠(かいどう)---名友

〇芍薬(しゃくやく)----艶友

・宋代で客人、貴賓に譬えたのが、張敏叔。「宋十二客」である。                          〇牡丹----賞客  〇梅----請客  〇菊----寿客  〇瑞香(じんちょうげ)---佳客  〇丁香(ライラック)---素客 

〇蘭----幽客  〇蓮----静客  〇山茶花(サザンカ)----雅客  〇桂花(きんもくせい)---仙客

〇薔薇(バラ)----野客   〇ジャスミン花----遠客   〇芍薬(しゃくやく)-----近客

・満月は黄金色に輝く。中秋の名月のころ、その黄金色が最も鮮やかになる。これは、月世界の金木犀(キンモクセイ)・中国名「桂花」が秋の満開を迎えたから、と中国人は昔から考えた。中国では古来、民間に伝わってきた月の生きものといえば、兎(うさぎ)に蛙(カエル)、天女の嫦娥(じょうが)、男神の呉剛(ごこう)、それに金木犀(桂花)。それぞれが、特別のつながりはないまま、各物語を育みながら月との生活を楽しんできた。

 金木犀は小さな花を葉にふりかけたように咲き、満開のとき強烈な芳香を放つ。金木犀は中国語で「桂花」と書く。美しい嫦娥は、満開の「桂花」のように、いつでもどこでも目立つ魅力的な天女とされてきた。世の男性たちは、嫦娥に声をかけたくなるようだ。あの「西遊記」のおなじみ「猪八戒」も案の定 声をかけている。

◆これらの叙述は、花・植物、生物学や古生物学好きの私には、とても興味のあるものだった。ちなみに、この論文は、A4版15ページほどあったが、全体的にとても面白い。

◆上記の花や植物で、日本人には「ちょっとどんなものか分からない」ものもあるので、簡単に説明すると--。

①海棠(かいどう)→「ハナカイドウ」とも言う。桜の花を少しすぼめたような花で、桜に少し似たピンクの花を鈴なりに咲かす樹木。日本でもこの頃、庭木に植えられているものが見られる。

②黄楊(つげ)→日本では「柘植(つげ)」とも書かれる。細工物に適した低木の樹木で、「ツゲの櫛(くし)」といえば高級品。(※黄楊櫛) 日本でも見られる。

③金雀(えにしだ)→少し葉が小さくて厚い低い樹木。日本でも見られる。

④絨針柏(じゅうしんかしわ)→小さな肉厚の葉を持つ、こぶし大くらいのサボテン。中国人は、なぜかしら これがとても好きなようで、露店などでもよく売られていて 買う人も多い。これがそれほど好きだという中国人の感覚は 私には感覚的にわからない。個人的に家や部屋に生け花をすることは、ほぼない中国人だが、この小さなサボテンと、鉢植えの「観葉植物」だけは 置かれていることも多い。

 

 


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