彦四郎の中国生活

中国滞在記

京都市長選挙について考える➋―選挙結果や終盤の選挙情勢からすると、松井氏の当選は紙一重だったことが見えてくる

2024-02-08 08:28:32 | 滞在記

 京都市長選挙で松井氏を推薦した自民・公明・国民・立憲の国政での与野党相乗りパーターンが、この京都市長選挙や京都府知事選挙では1985年以降、おおむね続いてきている。(※国民・立憲は政党名などの変遷はあったが) その壁を日本共産党が推薦又は支持する候補が打ち破れないという状況が40年近くも続いている。今回の松井氏と福山氏の得票差は約1万6000票と接戦だった。無党派層の支持率調査では福山氏が松井氏を上回ってもいたが、日本共産党が支持する(他に社民党とれいわ新選組が支持)福山氏は、与野党4党の組織票の壁を今回も破れなかったという結果になった。

 4人の立候補者での混戦・混迷とも言われた今回の京都市長選挙。特に、松井氏・福山氏・村山氏の3候補者は、選挙投票日の1か月前の1月4日頃は、松井氏がややリードだが、最終的に誰が当選しても不思議ではない状況とも報道されてもいた。だが、その後、村山氏が昨年12月から1月にかけて資金獲得のための不正政治パーティが発覚し、日本維新の会や前原誠司氏ら5人が国民民主党から離党して昨年12月に立ち上げた教育無償化を実現する会が、村山氏の推薦を取り消すと、1月13日に発表されたことにより、村山氏は失速し、前回の京都市長選挙の時よりも支持の広がりがなくなった。

 選挙結果は、「松井氏17万7454票(37.9%)、福山氏16万1203票(34.4%)、村山氏7万2613票(15.5%)、二之湯氏5万4430票(11.6%)」投票率は前回とほぼ同じくらいの41.67%だった。福山氏陣営は選挙結果について、「前回に比べても、大接戦となり、大善戦となる選挙結果だった」と述べた。

 だが待てよ、確かに票差は約1万6000票の大接戦となったが、日本共産党が支持する福山氏の得票数や得票率は、前回選挙と比べてどうなんだろうと考える。前回2020年の京都市長選挙の結果は、「門川氏21万640票(45.1%)、福山氏16万1618票(34.6%)、村山氏9万4859票(20.3%)」。投票率は40.6%だった。

 つまり今回の選挙結果と前回の選挙結果を比べると、自民・公明・国民・立憲の国政与野党4党の相乗り候補の中で、京都府市、自民党市会・府会議員の一部が二之湯氏を支持したことにより、前回に門川氏が獲得した21万票余りのうち、二之湯氏に今回は5万4000票余りが行ってしまったという結果になる。京都市の自民党勢力の分裂という状況があった。

 そうなると、松井氏は15万6000票余りの得票になったとも予想されるが、日本維新の会を支持する有権者や前原氏を支持する有権者の一部は、「このままでは日本共産党支持の福山氏が勝ってしまう」という危惧もあり、推薦が取り消された村山氏ではなく松井氏に投票したと予測もされる。実際に村山氏は前回よりも2万2000票余りを減らしている。つまりこの票数のうちの多くが松井氏に流れたと推測される。そして、日本共産党が支持した福山氏は、4年前の前回と、得票数も得票率もほぼ同じだった。

 こう選挙結果を分析すると、村山氏が維新などの推薦を取り消されたことにより、松井氏が辛うじて勝利に至ったことが見えてくる。前回の京都市長選挙とは少し違っていて、自民党の分裂、日本維新の会の動向、国民民主党の分裂など、相乗り候補の松井氏にとっても相当に厳しい選挙であり、日本共産党が支持する福山氏にとっては千載一遇・絶好の選挙情勢だったのだが、前回以上の支持の広がりを獲得できなかったということになる。

 なぜ、福山氏への支持の広がりが得られなかったのか。自民党の金権問題がこの3か月間大きな社会問題となり、維新の会は万博・カジノ問題などで支持率が低下もしている選挙情勢だったのだが。まあ、いろいろあるが、そのうちの一つには、京都市の日本共産党党員のうち少なからぬ人たちが、日本共産党の民主主義的党内運営改革を求めた、京都市内在住の党員である松竹伸幸氏や鈴木元氏を日本共産党が除名処分としたことへのわだかまり(党への不信感)で、今回の市長選挙にての選挙活動に熱心になれなかったこともあったのかと多少だが推測もされる。また、ここ10年間余りは、日本において「共産党」という党名へのアレルギーをもつ国民の増加もあるかと思う。

 1985年の京都市長選以降は、「自民・公明・国民・立憲などの推薦候補VS日本共産党の推薦候補」という選挙構図が40年間近くも続いている。この40年間で共産党推薦候補が最も当選に迫ったのが1989年の京都市長選挙だった。相乗り推薦の田邊朋方氏に、共産推薦の木村万平氏は321票差まで迫った激戦だった。その後1996年、共産推薦の井上吉郎氏は約4000票差まで迫ったこともあった。そして、2000年代以降もこの選挙構図は続くが、大差で共産推薦候補が敗れるという選挙情勢が20年余り続いていた。

 京都市長選挙の投開票が行われた2月4日、群馬県の県庁所在地の前橋市でも市長選挙が行われた。5日の朝日新聞には、「自公系の現職破れる―前橋市長に小川氏初当選」の見出し記事。選挙結果は、小川晶氏(44)6万486票[56.6%]、山本龍氏(64)4万6387票[43.4%]。自民・公明が推薦する現職の山本氏を、連合群馬や共産党系市民団体が支援する小川氏が勝った選挙となった。

 京都市長選挙投開票日の前日の夜、京都南座の近くにある「壱銭洋食」の店で夕食代わりの「日本の元祖お好み焼き」を10数年ぶりに食べた。店内の等身大の和服姿女性の像が何体もテーブル席に座っている。学生時代から変わらぬ店内と壱銭洋食。

 そのとなりにある「COFFEマルヤマ」。全席喫煙可能で1時間いてもいい雰囲気の喫茶店だ。パソコンを持ち込んで仕事をしている人や、これから祇園のクラブに出勤する女性たちの姿も。小さな看板と入口の喫茶店で昭和レトロ感のある、隠れた名店ではないかと思う。

 この喫茶店に置かれていた1月下旬発売の週刊現代には、「2024年 世界情勢が日本を揺るがす」と題された特集記事が掲載されていた。記事の見出し項目には、「➀中国の武力侵攻で日本も戦争当時に」➁「トランプ2.0で、日米貿易摩擦が再発、③ロシアとの戦況こう着、ゼレンスキーがNATOを戦争に引きずり込む」。

 まあ、2024年11月のアメリカ大統領選挙結果次第で、2025年は世界情勢がとても大変なことになる可能性は大きい。そして、その世界情勢の大変化に、日本の自民・公明・国民・維新・立憲・共産の各政党、そして自民・公明の現政権の状況では、確固たる外交方針がもててずに日本は混迷することになりそうだ。

 

 


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