彦四郎の中国生活

中国滞在記

再び日本食が中国では人気となり、人々の日常食の一つとなっている感がある―最近できたらしい日本料理店に行くと‥それは日本にもないような素晴らしい店だった

2024-07-12 08:54:03 | 滞在記

 2013年9月から中国福建省福州市の二つの大学に赴任して、時々は市内に数軒ほどしかなかった日本料理店に行って食事をしたり、学生たちや友人、知人たちと乾杯🍻🥂の会食をしたりもしてきた。2019年12月頃までは市内にあった日本料理店や日本式料理食堂、居酒屋は、私が知る限り市内に10店舗ほど(「古都」「上野一番」「熊本家」「吉野家」など)だった。その中で、日系企業駐在員など、最も日本人の多くが行きつけの店にしていたのが、日本料理店「古都」。

 2020年1月から始まった新型コロナ感染パンデミック問題で、私は市内にあるアパートは3年間、家賃は毎月電子決済で日本から送金して借りていたが、中国に戻ることは難しく、日本からのオンライン授業を行い続けた。2023年3月に中国に戻って驚いたことの一つに、日本料理店や日本式料理食堂や居酒屋が激増していたことだった。日本食、日本の和食、日本料理が大人気になっていたのだ。特に「日本式すき焼き」はどの店に行っても人気が高かった。アパート近くにも「深夜食堂」という、日本のドラマの影響のある店名の日本式居酒屋もできていた。

 ところが、昨年の2023年7月から9月にかけて、中国政府は日本の福島原発の処理水排出を巡る問題で、日本を強く批判することとなり、日本食の安全性なども風評被害が中国で大きく広まり、日本料理店や食堂、居酒屋は中国人の足が遠のき、店主は困り果てることとなった。そして、それから半年後の2024年3月ころになると、日本料理関連の店には、客足がもとに完全に戻ったという状況となり、再び日本式料理の人気が再燃しているという感がある。

 このことを中国人に聞くと、「もう、中国の人々のほとんどは、福島のことなんか完全に忘れていますわ」とのことだった。そして、今、日本式の料理の人気が昨年の人気の高まりの時以上に高まっているとのことで、中国人の人にとっては特別な料理ではなく、家族や友人で定期的に食べる食事の一環になってきている(日本式料理が食事の定番化してきてもいる)ようにも思われた。

 ここにも、この10年間で、衣食住における和式(日本式)への日常化というか関心の高まりというか、好みの変化というか、そのようなことが20代から30代にかけての若い世代を中心に中国で起きていることを実感もする。(※衣食住の衣住については次号のブログで紹介したい。)

 日本帰国2日前の、この7月1日(月)の夜、最近できたらしい福州市内の新しい日本料理店に、王さんに誘われて行くこととなった。アパートからライドシェアタクシー(中国ではもうこれが一般的)で20分ほどして、王さんとその店に午後7時過ぎに到着した。店の外観を見て驚いた。中国のここ福州の伝統的な立派な民家(建物)を買い取って料理店にしたような門構えと周囲の白壁の塀。店名は「食べ物家」と日本語で書かれている。門の上の木々がライトアップされていて幻想的な雰囲気がとても良い。

 店内に入ると、中国の伝統的な建築物を生かしながらも、シンプル簡素な和風の趣(おもむき)が随所に感じられる。これまでの中国の飲食店にはない板敷の床。日本の掘り炬燵(こたつ)のように足が広く伸ばせて座れるテーブル席。席と席を区切る木製のシンプルな衝立(ついたて)。店の天井から吊るされた丸く白ぽい提灯のような飾り灯り。接客にあたる店員さんのどこか日本の袴(はかま)っぽい衣装。

 このような店内の内装や衣装は、中国の飲食店には見られないものだった。まあなんというか、ほとんど日本の居酒屋チェーン店の「魚民」のような雰囲気と、中国の伝統的な建物がうまく融合した店内だった。

 しばらくして、王さんのフィアンセ(今年の1月に婚約)した甘(かん)さんがやってきた。甘さんの大好きなすき焼きをはじめとして10品ほどの料理を注文。どの料理を食べても、日本の「魚民」で注文する料理と味はよく似ていて、特に中国人の好みに味付けをアレンジしているということもない。実は、甘さんは広告会社に勤めていて、福州市内の飲食店をインターネット(携帯電話などで視聴できる)で紹介するような仕事をしているとのこと。この「食べ物屋」も仕事で取材しネット広告を作成したとのことだった。(※この店「食べ物屋」の店主・オーナーは中国人。)

 2階に行くと、日本式の簡素な生け花がさりげなく置かれていた。

 2階は個室が数部屋あり、これも日本の「魚民」に来ているような雰囲気の個室。店内の広い1階には、超大型スクリーンテレビが置かれていた。音量は小さく、前には一人でも利用できるカウンター席があり、テレビ画面に映る景色を眺めて食事をしたり、時には、スポーツ競技中継を見たりして食事を楽しめるようになっていた。7月1日のこの日は、ヨーロッパサッカー選手権が中継されていた。(※この日は月曜日の平日にも関わらす、たくさんの客で店内は賑わっていた。)

 まあ、この日初めて来てみたこの「食べ物屋」のように日本料理店は、その素晴らしさに驚いたが、私はまだこのような店を日本では見たことがなかった。中国ではこれから増えていくのかと思われた。

 午後9時頃に店を出て、歩いて5分ほどの「三坊七巷」の伝統的古街に3人で行くと、たくさんの人々が通りを歩いていた。この日から中国の小学・中学・高校は夏休みに入ったこともあるのか、月曜日の夜にもかかわらず、親子連れの人たちも多い。中国の人たちにとっての日常では、午後9時頃はまだ宵の口(よいのくち)で、午後10時半ころまでは街中は人でにぎわっている。

 

 


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