彦四郎の中国生活

中国滞在記

他人事(ひとごと)ではない、中国重慶市での「長江へのバス転落・水没事故(事件)」❸人間の関係

2018-11-18 13:43:16 | 滞在記

 11月上旬、日本のNHKの報道でも、この重慶のバス事故が報道されていた。「乗客の暴行で事故—中国で相次ぐ」「事故—乗客と運転手の喧嘩が原因で路線バスが川に転落、10人以上死亡」、「中国国営中央テレビ—前日にも吉林省で乗客がバス運転手に暴行し事故」、「運転手に暴行、バスはトンネルに激突」などのテレップが流れた。

 「車内で喫煙を注意され、腹いせに運転手を殴る」、「海南省—男性乗客が酒を飲み、酔って運転手に暴力—3年の懲役判決」、「運転手と口論し、運転手を蹴りつける」などもNHKで報道されていた。

 ◆10月28日に起きた重慶でのバス事故の発生後に起こった実例を挙げると、以下の通りとなる。

①10月29日の午前中、北京の路線バス内で57才の女性が、本来下車予定のバス停を通り過ぎたと言って、バス停車を運転手要求。それを拒否した運転手に、牛乳パックの詰まった思い紙箱を振り上げて、「ドアを開けろ」と怒鳴りながら運転手の手に攻撃を加えた。このため対向車線を走ってきた乗用車にバスは接触し、双方の車体が傷つく。

②11月2日午前中、江西省新余市で、65才の男性乗客が突然運転手に近づき、下車するから停車しろと女性運転手に要求。女性運転手が前方十数メートルのところに停留所があるから少し待つように応じると、男性が激高し、いきなり運転手が握るハンドルをつかんで回そうとした。危険を感じた運転手はバスを急停車し、交通警察に通報した。

③11月4日午前中、湖南省でも、②のような問題が起きていた。乗客は高齢の男性。

 なお、中国メディアの調査によると、2018年4月から9月までの間に報じられた「乗客がバスの運転手に暴力をふるい、運転手からハンドルの操作を奪い取った事件」は中国全土で7件に及んだという。

◆—どうして中国では この種の発生が多いのか―

 単純に分析はできないが‥‥。中国人は日本人に比べて自己主張が強く、思い込んだら一歩も引かないという意固地なところがある。バスで降りるはずの停留所を乗り過ごして、慌ててバスを降りようと思ったら、事の善悪はともかくとして、バスの運転手を意のままに従わせようとするのである。

 日本人ならバスの運転手に文句を言うのが関の山で、実力行使に出て運転手からハンドル操作を奪うなどということはあり得ない話だが、中国人の場合は、「俺は客なのだから、自分が降りたいところでバスを停車させて何が悪いのか」という身勝手な考えを正当化する傾向があるように感じるのである。バスの運転手も「俺のやりたいようにやる」「客は乗せてやっているもんだ」意識が強い。

 その根本にあるのは、「自分さえよければ、他人はどうなってもよい」という自己中心的な考え方だが、この考え方の傾向は中国人という民族には、その歴史的な民族のおかれてきた背景もあり、けっこう強いように思う。つまり、中国人は同志は、お互いの自己中心的は発想のバランスの微妙な関係性の上に立って「社会生活」を営んでいるように思うのである。「すみません」の言葉を言って対立を避け合う日本のような言語文化は中国では極めて薄い。

◆―このような中国社会で、日本人が生きるということは、けっこうな大変さが多い、ストレスも大きい—

 バスに乗っても、歩道を歩いていても、横断歩道を渡る時も、片時も気が休まることの難しい中国での都市生活を過ごして6年目となる。買い物をしても、「ありがとう」の言葉も少なく、邪険に対応される中国社会。日本の、「ありがとう」「すみません」の感謝や謝罪の言葉というものが他人に対して極端にない中国社会。親しい関係の家族や親族や親しい仲間以外を信じず、他人に対して警戒と冷淡な態度をとる中国社会。それでも、年々、ほんとうに少しずつだが、公共的なマナーは向上してきている感じもする。

 日本人と中国人は、顔はとてもよく似た民族だが、その考え方や行動様式には 真逆的な違いが存在している。大陸という異民族間の攻防が激しく行われた中国の激しい歴史と異民族の侵入がほとんどなかった島国日本の歴史の違いが民族性に大きな影響を与えている。よく言えば、このような中国社会では「自己主張」を強く出さなければ生きていくのは大変だ。日本人はそれはあまり美徳ではなく「恥の意識」も強い。したがって、ここ中国で日本人が生きていくのは、けっこう大変ではある。

 中国人は自分の力量や地位が相手よりも劣ると思う時は、とても「へりくだるくらい」に丁寧に追従する。しかし、関係が逆転するとその態度は大きく変わる。経済規模的にも軍事的にも日本をはるかに上回って国力をつけた中国という国を相手にする外交は、日本人や日本政府にとってはかなり難しさがある相手だと思う。しかし、中国人は日本人と違って「いったん仲間意識をもった他人」に対しては、「これまでしてくれるのか」というくらいに、人間関係の距離を縮めて、心から親密な関係をもってくる「親しき仲には礼儀はいらぬ/親しき仲には距離なし」となる。一方、日本人は「親しき仲にも礼儀あり/親しき仲にも距離あり」であり、どこか他人行儀なところが人間関係にはある。

 


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