彦四郎の中国生活

中国滞在記

日本共産党の綱領改定「中国を社会主義国と認めず」明記—香港デモ集会で、日本共産党への感謝が

2019-12-15 18:03:09 | 滞在記

  ◆「日本共産党からの香港民主運動への支援に感謝する」。11月28日夜、香港の中心部で行われた、米「香港人権・民主主義法」の成立に感謝する大規模市民集会で発表された感謝リスト。日本関係者の中でも、特に「日本共産党」の名が挙げられたという。日本共産党が香港民主派と呼ばれる人たちに支援メッセージを送っていたことに、私は少なからずの驚きをもってこの情報に接した。

 米国では、議会上下両院がほぼ全会一致で上記の法案を可決しトランプ大統領も、11月27日に法案成立への署名をせざるを得なくなった。米国と正反対な姿勢を示したのは日本。米国同様の立法どころか、安倍自民党・公明党政権は香港問題に向き合うことすら避けてきた。(※中米間での立ち位置としての難しさは分からなくもないが‥) それだけでなく、それこそ、そんな国政運営のしがらみはあまりないように思われる野党勢力の中心である国民民主党や立憲民主党も、この香港問題での国会での論議を、不思議ではあるがこれまでまったく求めもしなかった。

 ◆野党は「桜を見る会」問題で安易な安倍首相を批判することに終始し、政権への国民の不満をこれをてこに増生しようとするばかりだった。世界の人権・民主の重大問題がこの半年間も香港で続いているというのに、これまで一度も国会で取り上げたこともない。実に玉木代表も枝野代表も情けなさを通り越してあきれた人権・民主感覚の党代表政治家だと思うことしきりである。(※この半年間、日本共産党も同じようなものだと思っていたので、香港民主派への支援メッセージ配信に驚きをもった次第だ。)

 しかし、そうした与野党の中で、最近、異色の存在として際立ち始めたのが日本共産党だ。11月14日、日本共産党は「香港での弾圧の即時中止を求める」声明を発表した。声明の中では、香港警察による弾圧を「言語道断の野蛮な暴挙」「絶対に容認できない」とした上で、「弾圧強化が中国の最高指導者の承認と指導のもとに行われている」と断言し、「今日の香港における弾圧の根本的責任は、中国政府とその政権党にあることは明らかである。その対応と行動は、民主主義と人権を何よりも尊重すべき社会主義とは全く無縁のものといわなければならない」と、中国共産党を痛烈に批判した。

 声明だけでなく、11月18日には、東京都内の中国大使館を訪れ、12月上旬に予定されていた「日本共産党第28回党大会」での綱領一部改訂提案報告書を手渡し、「①香港での弾圧の中止②ウイグルにおける人権抑圧の中止③尖閣諸島の日本領海における中国公船の侵入や、他国が支配している地域に対し力で現状変更を迫る試み(南シナ海)の中止を求める」立場を、中国政府と中国共産党の指導部に伝えるよう要請した。本来なら、多くの国民の意識からしても、日本政府がやるべきことだが。そして、立憲民主党、国民民主党は、より率先してやるべきことだったのだろうが。そして日本の政党では日本共産党だけが、11月28日の香港で、世界が注視する中、香港人権・民主法案を成立させた米国の国歌が合唱される市民大集会上で、日本共産党の名を挙げられ、香港市民から感謝された。

 実は、11月上旬に日本に1週間ほど一時帰国した際に、12月に日本共産党は綱領を改定し、「中国を社会主義国と認めず」と明記することを日本のテレビ報道やいろいろな新聞、日本共産党機関紙「赤旗日曜版」などで知った。

 テレビ報道では、「批判―中国・ロシア念頭、平和と進歩に逆流」「日本共産党志位委員長"尖閣諸島での領海侵犯や南シナ海進出➡中国を名指しで批判」「綱領の改定案―いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義は世界の平和と進歩への逆行」とのテレップが流れ、報道されていた。

  11月10日付の「赤旗」日曜版を見た。一面の見出しには、「世界の大局的見方示す—党大会への"綱領の"一部改定案―中国を"社会主義めざす国"とみなす根拠なくなった。"中国・社会主義を目指す新しい探求"を削除―中国の見過ごせない動向」とあった。

 2面・3面などを詳しく読んでいくと、12月の党大会での綱領一部改定のポイントとして次の3つが挙げられていた。①「20世紀の巨大な変化と21世紀の展望―植民地支配崩壊が最大の変化」と題して、20世紀の歴史や21世紀への展望に関する綱領の叙述の改定。②2000年代初頭の綱領でキューバ・ベトナム・中国を「社会主義をめざす新しい探求」と評価していた記述を今回削除」、この中で中国を社会主義国と認める根拠を失ったとする改定。③未来社会論において、「発達した資本主義国での社会変革が社会主義・共産主義への大道であり、そのには特別の困難性とともに、豊かで壮大な可能性がある」という叙述を展開していること。

 中でも、中国と中国共産党に関する削除・改定の理由として、次のように記事では述べられていた。「‥‥。しかしこの数年来、中国の国際政治における動向は見過ごしできません。核兵器禁止条約に敵対し、核兵器保有国と競い合い核兵器の近代化・増産を進める。尖閣諸島での領海侵犯や南シナ海での軍事拠点化をはじめ、"力による現状変更"をすすめる覇権主義的な行動が深刻化している。国際会議の民主的な運営を一方的に覆す覇権主義的な振る舞いが是正されず、香港で起きたデモに対する武力による威嚇、ウイグル自治区での長期収容など人権問題が深刻化している。これらの行動は、社会主義の原則や理念と両立しえません。中国について"社会主義をめざす新しい探求が開始"された国だと判断する根拠はもはやなくなりました。‥‥」と。

◆ 日本共産党は2015年に「中国は覇権主義国である」ということに言及した。そして、今回の綱領改定へとつながってきたのだろうと思う。しかし、遅きに失しているという感も私には強い。中国と中国共産党に関する そんなことはもう5〜6年前から 日本の国民の誰もが分かりきっていたことだからだ。昨年2018年の6月に、アメリカ・トランプ大統領と北朝鮮・金正恩との初めての会談について、「大歓迎だ、すばらしい!」と、北朝鮮における人権問題にはなんらふれることなく赤旗・日曜版で礼賛していたのが日本共産党だった。

 ここ数年、日本に帰国した時には、日本共産党の活動をしている知り合いの党員たちや支持者の友人・知人たちに対しても、「私の目に映った中国という国や中国共産党の実態」について機会があればよく話していた。また、日本共産党の対外・外交政策に関する問題や批判もしてきた。しかし、まあ、今回の綱領改定と香港へのメッセージ、中国大使館にむけての行動等については 評価をしたいとは思う。

◆ 日本共産党の党内民主主義に関しては、いまだ問題が大きい。党規にある「民主集中制」という言葉には「民主」という言葉は使われてはいるが、実態は民主的ではない。自由に意見を言いにくい雰囲気が党内にはかなり強くあるようだ。自由に党員が意見を言えるためにはこの「民主集中制」は党規から無くした方がいいように 私などは思っている。

 日本共産党の委員長などは在籍期間がものすごく長い。党の実権をにぎる役職は、委員長・書記長・議長の3役だ。戦後、党内路線闘争を勝ち抜いて日本共産党の実権をにぎったのは宮本賢治氏。(1908年生—2007年・99歳で死去)  彼は、党内権力闘争・路線闘争を勝ち抜いて、1958年に書記長になり党内実質NO1となる。そして、1970年~1982年までは委員長。その後1997年まで議長となった。実に40年近くの年数だ。次いで、不破哲三(実名・上田健二郎)氏(1930年生・89歳)は、1970年に書記長となったあと、1982年から2000年まで委員長、その後2000年から2006年まで議長。これも実に35年間に及ぶ。議長を退いた後も、党内に長く隠然たる影響力を維持していた。

◆現委員長の志位和夫氏(1954年生・65歳)は、東京大学の学生だったころに、宮本賢治氏長男の家庭教師をしていた人だ。35歳という若さで書記長に抜擢された。宮本賢治氏の後押しがあったともされる。2000年から委員長となり、2019年に現在に至っている。これも20年以上に及ぶ。現書記長の小池晃氏(1960年生・59歳)は、2016年より書記長となっている。もともとは東北大学医学部卒業の医師だった。

◆主席や議長や委員長や書記長や首相や大統領などの在籍期間があまりに長すぎると、どこの国でもどこの党でも、必ず党内民主主義や国内の民主主義は問題が大きくなり停滞・退化するのは世の常だ。こうなるのも、その党やその国に民主主義がないからだ。日本共産党が「民主集中制」を改めて、真に党内民主主義がより行われることになることを期待したい。

◆1965年から10年間続いた、毛沢東氏が主導する中国の文化大革命。この時期に中国共産党は日本共産党に対して「修正主義批判」と批判を展開した。このため、日本共産党と中国共産党は絶縁した。それから20年以上が経過した1998年、当時の不破哲三委員長が主導して、中国共産党との関係正常化となった。このことを不破氏は高く誇りにした。そして、その後の綱領改定では、「社会主義を目指す探求の国」と中国共産党を高く評価した。不破氏にとっては誇るべき業績と思っていたようだ。

 そもそも、1949年以降、一党独裁を長年続けていて、政治的民主主義への移行を計らずにきている国家に対して2000年に「社会主義を目指す探求の国」として高く評価し、綱領にまで明記することを党全体で認めていたことこそが問題であり、北朝鮮も含めて 人権的な大きな問題や民主主義のない 社会主義を名乗る国々をいままで批判できなかったことは、日本共産党の大きな責任問題を問われるものだった。それがようやく変わりつつあるかという感がする。 

 2015年、日本共産党は「中国は覇権主義」と言及、そして今回の綱領改定となっていったということは、ようやく日本共産党内における不破氏の影響力が薄れたということを意味し、党員のみならず、幹部党員の多くも思っていた中国に対する評価を前面に出すことができるようになったのだろう。このあたりもこれまでの党内民主主義の欠如を物語るものである。

◆不破哲三氏については、功罪の両面があるように思える。1970年代の書記長時代は「民主連合政府」の旗振りとして輝きを持っていた人だった。彼の演説などを 京都市内で聞いたことも何度かあるが、演説はとても上手だった。マスコミなどでも「赤い貴族」として近年取り上げられてもいる。彼が住む豪邸のことだ。私が知る限り、日本共産党の専従職員などは、とてもとても給料が低く、世間の半分以下だった。だから、看護婦や教員の女性など堅い職業で収入があり、日本共産党を支持している人と結婚して家庭を営んでいる人も多かった。

 不破氏の自宅は神奈川県内の山麓にあるが、付近の小学校の敷地面積と同じくらいの坪数(約1000坪)もある豪邸だ。敷地内には4棟の建物があり、このうち2棟は一応は党名義の建物。これも実質的には不破氏が使う建物と言われ、公私混同も批判される。運転手兼ボディーガードや料理人も常駐しているという。高齢となり党内影響力が減少した中、今もこの豪邸で暮らしているのだろうか。一方、現在の委員長の志位氏は、千葉県船橋市の公団の分譲住宅に庶民と同じように暮らしているという。