彦四郎の中国生活

中国滞在記

香港区議選の衝撃❸香港での、多くの若者の政治的な行動参加は、高校での「通識教育」の影響も!?

2019-12-01 18:13:27 | 滞在記

  2019年6月から本格化した香港の民主化を求める運動は6カ月以上にわたって続き、12月に入っても終息するようすがない。香港人750万人の4人に1人が参加した6月16日の200万人集会・デモなどをはじめ、その先頭には大学生たちが多いが、高校生や中学生もかなり多く参加していると伝えられる。

 11月下旬の日本のNHKテレビ報道(午前7時から)で、「香港での、多くの若者の政治的行動参加は、香港の高校での”通識教育”の影響も!?」と題する内容が伝えられていた。私もこの「通識教育」という言葉は初めて聞くものだった。「大学生に交じり高校生もデモに」「香港の高校生語る―私たちが諦めてしまえば、世界はより閉鎖的になってしまいます。—抗議活動にも影響!?-香港・議論重視授業―」「政治や社会に高校生も強い関心―政府批判する若者たち」「高校の必修科目」などのテレップ(字幕)。

 「私たちが民主化運動を諦めてしまえば、世界はより閉鎖的になってしまいます」と行動に参加する意義のを語る男子高校生の話には「意識の高さに」驚かされる。

 世の中に「通」じる知「識」を意味する必修科目の「通識教育」。社会問題について生徒が議論し理解を深める科目だという。NHKが取材した高校での「通識教育」のこの日のテーマは「行政長官選挙の改革について」。ある女子生徒は「選挙制度改革の可否を市民全員の投票で決めてみたら!?」と発言していた。「民主」という言葉の意味は、中国国内では共産党の一党支配を前提とした「民主」であるが香港では複数政党の選挙による政治との説明も。

 この高校の校長・王庭軒氏は、「生徒たちは香港や中国、世界の出来事をより多く学ぶことができます。通識教育とは、今の社会を深く知ってもらう方法です」と報道番組の中で語っていた。

 一方、香港の親中派の幹部の、「通識教育は若者たちを抗議活動に駆り立てている」との批判。中国共産党幹部の、「7年前に香港市民の反対で断念した中国への愛国教育の導入を改めて検討する」との見解。全国人民代表者会常務委員の沈春耀氏の、「中国の歴史や文化などの教育を通して、香港の人々の国家意識と愛国精神を増強する」と述べているコメントなども報道されていた。

 閩江大学の学生などが必修科目の一つとして学んでいる時事問題授業の教科書『時事報告 2018―2019下学期 大学生版』を見てみた。1980年以降の中国政府による「貧困・格差是正の取り組み」「一帯一路」「経済発展」などのことが教科書には掲載されている。「港澳与内地融合 共享発展机遇」という項目もある。香港やマカオは大陸と融合して共に発展できるという内容。中国の大学の授業では、マルクス主義思想や習近平氏が提唱する「新時代の中国社会主義」、中国共産党の歴史などの授業がとても多い。全て必修だ。その授業での、教員と学生、学生同士の”議論”は原則、2013年の大学への「七不講」通達により ほとんど行われないようだ。

 2015年頃より、ものすごく強大な政治的宣伝活動や愛国宣伝活動が政府により取り組まれ始め、掲載電話アプリなども通じて学生たちにも大きな影響を与えてきている。

 ◆「愛国教育」は どこの国においても大切な教育だとは私は思う。むしろ日本などは、「愛国教育」がかなり欠如しているのではないかと心配にもなる。しかし、一党支配下の「愛国教育」というものは、どのようにでも国民の意識を操作できるという可能性はとても高いし怖いものだ。政府にとって知られたくない香港区議会議員選挙結果を国民に一切知らせない事態もその一つの現れだ。

 

 


香港区議選の衝撃❷中国国内では議席についての報道は一切されず、報道規制徹底―悲しみと確信が

2019-12-01 16:01:31 | 滞在記

 香港区議選挙の結果について、投票日翌日の11月25日(月)と翌々日の26日(火)の二日間、中国国内での報道記事やニュースを探した。インターネット記事では、50以上の「香港問題関連」の記事を閲覧したが‥‥。「乱港暴徒」「乱港止暴制危急時刻!」「「香港理工大学暴徒」「王毅強烈警告」「港警全力保障的这場選挙目前超274万人投票」との見出し記事や。

 「投票率66.5% 今早7点半274万人」「暴徒」「6月至今、暴徒乱港実録」「暴制乱戦術」「香警各界堅反対 美国公然違反国際法干渉中国内政」(中国中央テレビCCTV)、「香港区議会選挙結束 王毅:不管発生什么 香港是中国領土的一部分」などの見出し記事やテレビニュース報道。

 「香港警所長と林鄭月娥決意」「港警在理大与600名暴徒"対峙"」「暴徒首領導 黄之鋒」などの見出し記事。

 「渉港法案己到特朗普手里签不签?特朗普么説」、「談香港区議会選挙:止暴制乱秩序」、「人民解放軍整備香港被破壊場」、「中央電視記者帯与香港警察一起香港理工大学」などの見出し記事。11月11日に日本のNHKが放映した林鄭月娥長官の「あなたたちの政治的要求を手に入れることは絶対にできない」という日本語字幕入りのものもインターネット記事とされていた。こんな記事が100%だった。

 記事に対するコメントは、「正義必能戦邪悪点賛港警」(※正義は必ず邪悪に勝つ、香港警察は賞賛に値する)「議員要愛国愛港、港独没資格当議員」(※区議議員は愛国愛香港精神が必要、香港の独立や民主を言う者など議員になる資格はない)など、50以上の香港関連記事にはほとんどこのような内容が溢れていた。

 中国には、常時100万人をこえるネット監視職員がいるとされている。また、中国政府の政策を小銭稼ぎで応援するネットへのコメント書き込み者が1000万人以上(※1つの書き込みコメントに対して3元=50円ほどの支払いがされる。大学生でこれをやっている学生もけっこう多いようだ。)存在しているとされている。政府批判のコメントをしたものが見つけられると ネット上から削除・抹消される。そして、インターネット会社に政府機関が要請して、書き込みをした人間は特定化もされるようだ。

 いずれにしても、投票日翌日の25日、26日、そしてそれ以降も、香港区議会議員選挙の結果は、投票率が71%だったことは一部記事で書かれていたが、肝心の議席数に関しては一切の報道がされていなかった。報道規制が徹底されているというか、ここまでやるかという思いを、現地中国にいて経験した。情けないというか、一党独裁国家の現実というものをまた一つ強烈に体験したという感がある。中国という国に暮らし始めて7年目に入っているが、私はこの国で暮らすことに深い悲しみを感じてしまった。

 中国共産党機関紙新聞の人民日報(電子版)は25日夜、民主派の圧勝と親中派の大敗には一切言及せずに、選挙の終了を伝え、「一部選挙区で選挙民への脅迫や投票妨害があった」と選挙の公平性に問題があると指摘、選挙結果の論点をすり替えての報道のみ伝えた。選挙結果に関する中国共産党指導部の困惑ぶりが間接的に伝わってくる記事だった。

 民主主義の確立した国では、選挙の惨敗がそのまま政権交代につながるのだが、中国では選挙結果そのものが、政府に都合が悪い場合は報じられないので、中国国民もその事実は知らないままだ。だから14億中国国民は、中国政府のデゴマギー(宣伝)に洗脳されたままの思考判断や感情(思い)となるのが現実だ。

 26日(火)の夜の日本の民放テレビ報道番組。「中継・中国で異例の政府批判相次ぐ」との報道内容だった。「新華社通信、中央テレビCCTV、香港の選挙について報じるも獲得議席数など書かれず」「中国国内のネット 異例の政権批判が相次ぐ」「中国国内のネット上、"選挙結果が言えないのか""中国大陸の人たちにも結果を伝えるべきだ""なぜ発表がこんなに遅いのか 自信がないんだろう"などの書き込みコメントが」のテレップ(字幕)。北京特使員とテレビ局をつないだ中継報道だった。

 報道は続けて、「習近平政権、中国国内の"香港への反発"を逆手にとり愛国心を鼓舞し 求心力を高める」などと報道もされていた。このような批判的なコメントを書いた人は、ほんの一握りというか、とても珍しいというか、それが実際だと私は思う。決して「中国国内のネット 異例の政権批判が相次ぐ」というのは、実際とはまったく合わない報道だと思う。

 このようなコメントを私は目にすることができなかったが、しかし、事実を知れば中国国民も、「香港市民は単なる暴徒・邪悪の民なのか?香港市民は何を求めて(要求して)いるんだろうか?」という疑問に至って 今までの香港に対する考えが揺られてしまう。これが、中国政府が最も怖がることなのだと思う。お互いの信頼関係のもと、事実を知らせて 分かりやい説明を駆使し 考えてもらえば必ず、中国人の人たちの考え方に変化が生まれることを、私は11月〇〇日の〇〇を通じて初めてを確信した。201〇年11月〇〇日は、私にとってはそんな日でもあった。

 

 


香港区議会議員選挙の衝撃❶—民意強烈―民主派87.9%の圧勝・389議席という結果に

2019-12-01 12:02:35 | 滞在記

 1週間前の11月24日(日)、世界中が注目する中、香港区議会議員選挙が行われた。(午前7時半〜午後10時半)この日の午後8時半頃、中国のインターネット記事には、「午後7時30分時点で投票率が66.5%にも達している(すでに274万人超が投票)、香港での6カ月間にもわたる暴徒・示威の蛮行に”NO!”を示すために多く人民が投票所に足を運び、”暴徒NO!NO民意!!”が集まるか―」という記事があった。この時点では、まさか民主派が80%超の議席を獲得するなど、中国の報道各社(※この日、24日夜には、各紙とも「親中派圧勝」の原稿しか作っていなかったとも言われている。)も中国政府も思いもしていなかったようだ。なぜこのような結果、事態となったのだろうか。

 翌日25日の早朝4時に起床して、日本でのインターネット記事やテレビ報道などを〇〇なルートを通じて閲覧・視聴すると、前日の区議会議員選挙の開票の途中結果がかなり入っていた。それによると投票率は71%(前回は47%)、選挙の午前5時の途中結果は、「民主派253議席(90%)、親中派27議席(10%)」となっていて、ようやく香港市民の民意が強烈に そして正式に表れたという印象だった。私も少なからず この中間選挙結果報道には驚いた。

 午前8時過ぎにアパートを出て大学の授業に向かう。この日の授業は「日本概況」(3回生)で、この日のテーマは奇(く)しくも「日本の政治体制―政体の日中比較」だった。大学のバスの中で中国のインターネット記事を閲覧する。香港関連の記事・ニュースはとても多いが、選挙結果は投票率以外は、どの記事も議席数に関しては一切の報道がされていなかった。

 午前中の「日本概況」の授業を終えて、午後3時ころにアパートに戻って、日本のインターネット記事やテレビ報道などを再び閲覧・視聴した。この日の夜、日本から発信されたニュース等では区議会議員選挙の議席数などの最終結果が報道されていた。ちょうど、日本の安倍首相と会うために来日していた王毅外相は、選挙結果を受けての日本でのインタビューに「何が起ころうと香港は中国の一部、米国の内政介入は絶対許さない」と、議席数結果にはまったく触れずにコメントしていた。この王毅外相のコメントは、「王毅強烈警告!」と、中国のインターネットでも報道されていた。

 この日から翌日26日の二日間にかけて、中国のインターネット記事で50以上の香港関係の記事を閲覧したが、どの記事も選挙の議席数にはまったく触れていなかったのには、改めて中国という国家体制下での報道規制のもの凄さに驚かされた。

 選挙から一夜あけた25日(月)の午後8時から、日本の報道番組・BSフジ「プライムニュース」(キャスター:反町隆・竹内友佳)を見た。この報道番組は日本の報道番組の中でもかなり優れた番組だ。この日のテーマの一つは「香港区議会選挙―民主派が圧勝」。コメンテーターとして、小野寺五典(元防衛相・自民党安保調査会会長)、富阪聡(拓殖大学教授)、手嶋龍一(外交ジャーナリスト)が出演。それぞれが的確なコメントを述べていて、とても香港時局に関しての参考になった。

 他の民放局においてもこの日の夜、「香港問題」に関しての報道がされていた。「この日、香港トップ・林鄭月娥行政長官、”選挙結果を真剣に受け止める”とコメント」「選挙前、民主派120(27%)・親中派293(65%)➡選挙後、民主派385(85%)・親中派59(13%)、投票率71.2%」「林鄭月娥―社会の現状に対する市民の不満が反映された 市民の意見を謙虚に聞き真剣に受け止める」、「王毅外相―香港でいかなることが発生しようとも 香港は中国の一部であり特別行政区だ。香港を混乱させたり発展や繁栄を損なったりする どんなたくらみも達成しない」「香港人権民主主義法案が米議会で可決」「中国政府指導部は 本音はびっくりしているのではないか」「(行政長官の選挙などで)普通選挙させたら親中派が負けることが証明された」などのテレップ(字幕)が。

 この日午後9時のNHKの「ニュースウオッチ9」でも選挙結果報道がされていた。この番組は11月11日に、香港市民の間で”喝采”を浴びた日本メディア。同番組は、11月11日、香港の林鄭月娥・行政長官が激化するデモについて「香港を破壊しようとする暴徒たちに厳しく言いたい。あなたたちが政治的な要求を手に入れることは絶対にできない」と厳しい表情で語った会見のもようを放送した。

 中国側の主張を報じた内容にもかかわらず、デモ支持派が注目した理由は「字幕」にあった。長官の名前の「娥」が「蛾」と「虫偏」の誤表記なっていたのだ。かって「鉄の女」と言われた彼女を、「蛾」呼ばわりとなる誤表記してしまったのである。報道終盤でキャスターの桑子真帆アナが謝罪したが、香港では意外な大うけの反響となった。「日本の国営放送がよくやってくれた」と話題にも。香港ネットではその後、林鄭氏を蛾のように加工して、殺虫剤を吹きかけるコラージュが出回っているとも伝えられる。(※「娥」は伝説上の女性で、船の航海の安全を空から見守る女神である。中国南部の媽祖教寺院では、船に乗る「七福神」とともに絵馬に描かれている。)

 26日(火)の日本の民放テレビの午前中の報道番組。「香港区議選 452争われ 民主派が全議席の80%超獲得し圧勝」「民主派政党トップ―この6カ月間の抗議活動があったからこそ 選挙で市民の意見が爆発的に表れた」「当選したばかりの民主派議員50人余 香港理工大学近くで、構内にとどまっている若者たちを即座に解放するよう訴え」「民主派、政府への圧力強めた形」とのレテレップ(字幕)。

 また、26日朝刊の日本の大手各新聞の一面の見出しが紹介されていた。「毎日新聞」―「香港デモ支持民意鮮明―民主派85%圧勝385議席」、産経新聞―「香港民主派圧勝8割超 区議選 行政長官”不満反映”と発言」、「朝日新聞」―「民意強烈 香港区議選 民主派8割超す」など。

 新聞の記事では、議席数的には民主派が85%と圧勝だが、香港区議選は「小選挙区制度」のためこのような議席数となったのであり、実際の得票率は、「民主派が57%、親中派が41%」であったことも伝えていた。

 選挙後の最終の党派結果として、452議席中、民主派は389議席が確定(87.9%)。一方の親中派は61議席が確定(11.9%)。独立派と言われる区議が2議席(0.05%)となった。投票者数は約294万人(1997年の香港返還後最高の71.2%の得票率)。「議席的には民主派が9割、親中派が1割」で民主派の圧勝となり、中国政府も親中派も「仰天したとも 呆然(ぼうぜん)とした」とも言われる。しかし、「投票率的には、民主派が6割、親中派が4割」と香港市民の世論は2分されているのが実情だ。

 著名な親中派の現職政治家、何君嶤氏は、投票日の24日、「投票率が高いのは、最近のデモ隊の暴力事件を受けて、沈黙していた市民たちが目覚めた結果だ」と主張、民主派の暴力に異議を唱える市民たちが投票所に向かった―と強弁していが、現職だった何氏自身、まさかの区議落選をしてしまったのは親中派惨敗の象徴的な出来事として語られている。(※何氏は、7月21日、暴力団構成員とみられる集団がデモ参加者を襲撃した事件の黒幕とも言われ、民主派の人々からは目の仇にされていた。選挙後、何氏は「異常な選挙だった」とコメントした。)6月9日の100万人デモ、6月16日の200万人デモの衝撃に匹敵する今回の香港区議会議員選挙の結果となった。

 11月25日(月)、選挙の結果を受けて、さまざまな外国メディアから取材を受けた民主活動家の周庭氏({民主の女神}とも言われるが、中国国内では黄之鋒氏とともに暴徒・凶徒の首領と呼ばれる)は、「これはけっして終わりではない。これからも警察による暴力を解決し、民主主義を実現するために戦わなければならない。民主派がもらった一票一票はすべて市民が流した血だ。たくさんの人が負傷し、暴行され、実弾に撃たれ、亡くなった人もいる。仲間たちのことを忘れずにデモに参加していきたい」と語っていた。

 次号は、11月25日(月)〜26日(火)の2日間の「香港」に関する中国国内での報道について記したい。