彦四郎の中国生活

中国滞在記

奇想の画家・伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)のこと❸—旧三井家下鴨別邸で「樹花鳥獣図屏風」を見た

2019-03-02 19:43:57 | 滞在記

 2月12日(火)、午前10時から娘の家に子守の手伝いをし、午後2時頃に近くのバス停からバスで出町柳で下車。ここから下賀茂神社に向かう。鴨川を渡るともうそこには下賀茂神社の赤い「一の鳥居」が見えてくる。この鳥居の前に重要文化財となっている「旧三井家下鴨別邸」がある。京阪電鉄の駅などに置かれていた「奇想の画家・伊藤若冲—樹花鳥獣図屏風を身近で見る 旧三井家下鴨別邸」と記されたポスターを見てここに来た。別邸の屋敷に入ると3階が楼となっている建物が見えてきた。初めてここに来たが、なかなかの建物と庭だ。

 建物に入り、3階の楼にまず案内された。ここでの撮影は禁止されていたのが残念だが、五山の送り火の「妙法」の山、比叡山、そして大文字山や東山が一望に見える絶景の楼だった。2階には伊藤若冲の「樹花鳥獣図屏風」が置かれていた。ここにあるのは忠実な複製品とのこと。本物は静岡県の美術館にあるようだ。実在の身近なものから空想上の生き物まで、水辺と樹木を背景にたくさんの動物が描かれていた。左隻は鳳凰が主役、右隻は白象が主役となっているようだ。モザイク画法と呼ばれる技法を用いて2センチ四方のモザイクを合わせて描かれていた。幻想的なものを感じる傑作だと思った。若冲のこの絵はとても見て見たかったものだった。複製なので写真撮影は許可されていた。

 錦市場は京都の中心部に位置している。この錦市場の近くに「宝蔵院」という小さな寺院がある。ちょうど新京極通りと河原町通の真ん中にある細い路地に寺の門はあるが、ここは伊藤若冲の実家(枡源)の菩提寺であり、枡源はこの寺の檀家であった。「宝蔵院寺宝展」が2月7日から11日までの5日間だけ開催されていた。若冲の弟・伊藤百歳の生誕300年記念として、彼の絵を中心に展示をしていた。若冲の「竹に雄鶏図」も展示されていた。

 2月14日、八坂神社の近くを通っていたら、「木村英輝」さんという人がデザインしたさまざまなものが売られている店があった。この木村さんという人は、ここから近い「青蓮院」の襖絵も描いた人のようだ。絵やデザインは、なにか伊藤若冲から なにがしかの影響を受けているような作風だと思った。絵の構図や色使いなどが‥。

 2月22日の深夜に中国に戻り、アパートの部屋に置いてあった『若冲』を また再読し始めている。

 

 

 

 


奇想の画家・伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)のこと❷—金閣寺・銀閣寺の本山「相国寺」と若冲

2019-03-02 10:27:41 | 滞在記

 2月1日(金)、午前10時から午後2時すぎまで、娘の家で孫たちの子守の手伝い。それから近くのバス停から同志社大学に向かう。同志社前で下車し、同志社大学と同志社女子大学の間の道を北に進むとすぐに「相国寺」があった。20才の前半の頃から京都に住んでいたが、この寺院に来たのは初めてだった。門をくぐると大伽藍が見える。そうとう広く大きな禅宗の本山だった。伽藍の絵地図を見ると墓地があった。「足利義政、伊藤若冲、藤原定家」などの名前があった。

 さっそく墓地に向かう。墓地はけっこう広いが、伊藤若冲の墓はどこだろう。藤原定家と足利義政と伊藤若冲の3人の墓が並んでいた。不思議な3人の取り合わせだ。横には長州藩士亡霊塔がある。今の同志社大学は幕末には薩摩藩屋敷があったのだが、蛤御門の変当時、薩摩と長州は仇敵だったのだが、なぜここに長州藩士たちの墓があるのだろう。本堂に向かって長い塀が続く。浴室の建物もあった。

 この相国寺は、足利幕府(室町幕府)の足利家の庇護・支援をうけた大寺院で、三代将軍・足利義満が建立させた金閣寺(鹿苑寺)や八代将軍・足利義政が建立させた銀閣寺などの本山にあたる。11年間にわたった応仁の乱の当初、ここ相国寺に籠った東軍は、おしよせる西軍をここでくいとめた。

 江戸期中期の絵師・伊藤若冲はここ相国寺と縁が深い。錦市場の実家の大店の菩提寺ではない。相国寺の大典和尚に帰依し、彼に絵の才能を認められ、金閣寺大書院の障壁画を描く絵師に推挙されていもいる。二人のつながりは終生続いた。

 本堂に向かうと、近くに「相国寺承天美術館」があった。「温故礼讃」と題した展示がおこなわれていた。紅梅がほころび始めていた。美術館の入り口に入るとヨーロッパのギリシァ・ローマ的な大理石の女性彫刻が置かれていた。

 美術館内には、足利家将軍が何代にもわたって収集した絵画などが陳列されていた。とりわけ、義満が多く収集した中国絵画も多い。雪舟の水墨画もあった。中庭からは銀閣寺の裏山である大文字山も見える。

 長谷川等伯や円山応挙などの絵もある。大老木の障壁画はとても迫力がありすばらしい。伊藤若冲の「月夜芭蕉図」の障壁画。墨を使った絵画だが、とてもいい。若冲は奇想の絵師と言われ、奇抜な絵、原色的な色使いのイメージが強いが、このような墨絵も描いていたのかと感嘆した。この作品が欲しいと思った。

 若冲の「竹虎図」や「葡萄小禽図」なども展示されていた。