天然居士の独り言

主に日記主体のブログです。

記憶の抹消・・・

2017年08月22日 20時05分39秒 | 日記
 少し旧聞になりますが、8月12日、アメリカ南部のバージニア州シャーロッツビルで
 白人至上主義者と反対派が衝突し死傷者が出る事件が起こりました。
 事の発端は、
 アメリカの南北戦争の時の南軍の英雄リー将軍の像を撤去する計画に対する賛否でした。

 僕は白人至上主義ではありませんし、人種差別は断固として反対です。
 しかしリー将軍の像の撤去はいかがかと思っています。

 話が古くなりますが、ローマ帝国では、
 後代の人によって、歴史を塗り替える事が制度的に行われていました。
 記憶の抹消(Damnatio Memoriae)と呼ばれており、
 ローマ皇帝の死後、元老院の採決によって行われていました。
 元老院で採決されると、その皇帝の像などはすべて破壊され、
 あらゆる公式記録、碑文、通貨からその名が削除されてしまいます。
 また、治世中に元老院の可決を待たずに発布された勅令は全て破棄されます。
 この採決を受けて、記憶を抹消された皇帝は4人います。
 暴君として名高いネロ帝(54年~68年)
 キリスト教徒を迫害したドミティアヌス帝(81年~96年)
 兄カラカラ帝に暗殺されたゲタ帝(209年~211年)
 浴場に名前を残しているカラカラ帝(211年~217年)です。
 酷い皇帝だったから、いなかった事にしようと言うのも分からないではないですが、
 5賢帝の一人ハドリアヌス帝(117年~138年)も危うく抹消されかけました。

 自分の主義主張と違うから壊してしまおうとの発想は、
 パルミラ遺跡を破壊したISなどのイスラム過激派と同じような気がします。
 リー将軍の像にどの位の文化財的な価値があるのか分かりませんが、
 それでも、アメリカ南部の人達の意識の証拠として、歴史的価値はあるような気がします。
 誤った考えに基づいて作られた物であっても、簡単に壊すのは良くないと思います。

コメント
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