MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

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ユーモアの分析

2009年10月02日 | 雑想

『月刊言語』(大修館書店)が今年いっぱいで休刊だそうである。言語学全般と一般読者の間の橋渡しの役目を果たしていた雑誌なので残念だ。以前ここから「通訳の科学」特集号を出してもらったことがある。翻訳研究特集号も出したかったなあ。
さてその10月号は[実践]認知言語学という特集で、鍋島さんが「お笑いと認知言語学」というコラムを書いている(あと「チャレンジコーナー」も)。最近の漫才やコントを例にして、フレームやイメージ、メンタルスペース理論で説明していて大いにためになった。鍋島さんのコラムにもあるが、ユーモアは基本的にはコントラスト(不調和incongruity)と優越感superiorityから説明される。コントラスト(不調和)の方は、「相容れない二つの規範」「相容れない二つの連想脈絡」(アーサー・ケストラー)と言ってもいいだろう。いわゆる「お呼びでない」状況である(復刻版はこちら)。笑いやユーモアは翻訳でも問題になる。ユーモアが言語や文化の壁を越すことができるかどうかという問題だ。数年前にユーモアの翻訳について講義をしたこともあるが、この方面の研究はあまり進んでいないようだ。ユーモアにはだじゃれによるパロディやparodic allusion等もあり、さらにアイロニーもからむからやっかいだ。Curcoなどが関連性理論によって説明しようとしているが結局はincongruityなので新味はない。Pikingtonも関連性理論だが、そこではcontextual garden-pathingという言葉を使っていて、その結果ある種のbrain activityが生ずるというのだが、問題はそこだろう。「ずれ」はなぜ笑いをもたらすような脳活動を生むのだろうか。

すでにお知らせしたように、明日は立教大学で「翻訳学への招待」という公開講演会があります。午後3時からです。お忘れなきよう。