MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

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Beyond DTS or Linguistic Re-Turn?

2008年10月11日 | 翻訳研究
2つ担当している講義がなかなか難物で、時間をとられてしまい更新もままなりません。それだけならまだしも、学会名変更にともなう新たな仕事(日本学術会議への変更届とかFIT加盟の準備作業とか)が増え、さらに学会誌の査読手配(「招待」の方はまだ手つかず)や編集関連作業、翻訳プロジェクトなど山積。
そういえば翻訳プロジェクトでたった一箇所の引用を確認するために、Pym, Shlesinger, Simeoni (Eds.) (2008) Beyond Descriptive Translation Studies: Investigations in homage to Gideon Toury (John Benjamins)を買った。2万円を超えるえらい高い本だ。いろいろな人が様々な方向にDTSを超えようとしている(目次はリンク先を参照)わけだが、基本的には社会・文化志向で、DTSとそれほどかわりばえしないという感想だ。(Even-Zohar - Touryがそもそもそうだったわけだし。)自分でも一本書いてみたがあまり長期的な展開は望めないように感じる。素材やテーマが面白ければいいのだが、そうでないとどうにもつまらないのだ。一方で、Vandewegheらのlinguistic re-turn(言語(学)的再転回)の議論があるが、こちらもいまひとつ面白みに欠ける。たしかにBakerが言うように言語的分析は翻訳研究の出発点であり、言語学は翻訳教育、翻訳批評、そして翻訳の実践に重要な役割を果たす(Malmkjaer)のだが、それはわざわざ言うまでもないことで、問題は翻訳固有の問題を解明するためにどういう言語(学)的分析が必要かである。語用論とコーパスだけではこちらも早晩行き詰まるのではないか。というのも、こうした言語学には翻訳に固有の問題構制にかかわる問題(たとえば意味表示)について、意外なほどナイーブな想定があり、それにもとづいて理論を構成しているからである。ちょっと分かりにくい話で申し訳ない。また詳しく取り上げます。