(以下、SankeiBizから転載)
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空洞化招く外国人規制 シンガポール、製造業への「しわ寄せ」深刻
2014.1.22 05:00
シンガポールにあるコンテナ用冷凍庫工場で働く作業員ら。シンガポールの製造業は外国人労働者の雇用を制限する規制強化により、深刻な労働力不足に陥っている(ブルームバーグ)
シンガポールにあるコンテナ用冷凍庫工場で働く作業員ら。シンガポールの製造業は外国人労働者の雇用を制限する規制強化により、深刻な労働力不足に陥っている(ブルームバーグ)【拡大】
シンガポールが深刻な労働力不足に陥っている。人口の高齢化に加え、当局の規制や世論への対応として外国人労働者の雇用を縮小せざるを得ない企業が急増しているためだ。とりわけ製造業へのしわ寄せは大きく、生産能力の低下を食い止める目的での海外移転が相次ぎ、国内の産業空洞化を引き起こすとの懸念が広がる。
◆人手不足響き輸出減
電球のソケットや半導体の製造を手がけるシンガポールのメーカー、アルコテック・プレシジョン・エンジニアリングは昨年、受注のうち3分の1近くを断らなければならない事態に追い込まれた。政府の方針に従い外国人従業員の数を半分に削減した結果、すべての注文に対応できるだけの生産能力が失われたためだ。
同社オーナーのコリン・クア氏は「作業にあたる人員が不足する中で受注を増やせるはずもない。将来の状況は一段と悪化する見通しで、生産拠点の海外移転以外に打つ手はないのではないか」と語った。
シンガポール政府は過去4年間にわたり、企業に対し従業員数の縮小を呼びかけてきた。低賃金の外国人労働者が増えることに対する有権者の不満を念頭に置いたものだが、こうした方針は今年一段と強化される可能性がある。企業の生産能力が大幅に制限される事態となれば、近年の経済回復を支えてきた輸出の伸びにも影響が及ぶことは避けられない見通しだ。
バンク・オブ・アメリカ(BOA)のエコノミストでシンガポール通貨庁(中央銀行に相当)での勤務経験があるチュア・ハクビン氏(シンガポール在勤)は「政府は外国人労働者に対する新たな規制を7月に打ち出す予定だ。誰もが待ち望む製造業の復調も、労働力の制約がネックとなり再び勢いを失うように思える。シンガポールは世界的な需要拡大の波に乗り遅れるのではないか」と不安を隠さない。
昨年のシンガポールからの輸出は11カ月のうち9カ月で減少を記録。韓国やマレーシアといったアジアの国々に後れをとった。ブルームバーグのまとめによれば2013年10~12月期の製造業生産高は前四半期から縮小し、過去2年間の伸びはサービス部門の6割程度にとどまる。
当局がまとめたシンガポールの国内総生産(GDP)に占める製造業の割合は、13年7~9月期で19.9%と2年前の同時期の21%から低下した。05年の比率は27.3%だった。
政府は航空宇宙部門など新たな産業を呼び込むことで製造業の対GDP比を20~25%ほどに維持することは可能だとしているが、従来の労働集約型の生産体制に依存せざるを得ない地元メーカーには外国人労働者削減の影響が重くのしかかる。
◆賃金上昇も経営圧迫
DBSグループ・ホールディングスのエコノミスト、アービン・シーア氏(シンガポール在勤)は「労働力の再編を余儀なくされたことで、製造業全体の競争力がそがれてしまった。生産量の落ち込みだけでなく、従業員の賃金の上昇も各企業の経営を圧迫している」と指摘する。すでにウエスタン・デジタルなど一部の製造業者は、他の東南アジア諸国へ生産拠点を移している。
シンガポール政府は13年11月、同年の輸出が前年を下回るとの見通しを発表。14年の輸出の伸びも、GDP全体の伸びに満たないと予測する。過去30年間で平均6.4%あまりの拡大を記録してきたシンガポールのGDPは13年、3.7%の伸びにとどまった。政府は14年の成長率を2~4%程度とみている。(ブルームバーグ Sharon Chen)
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空洞化招く外国人規制 シンガポール、製造業への「しわ寄せ」深刻
2014.1.22 05:00
シンガポールにあるコンテナ用冷凍庫工場で働く作業員ら。シンガポールの製造業は外国人労働者の雇用を制限する規制強化により、深刻な労働力不足に陥っている(ブルームバーグ)
シンガポールにあるコンテナ用冷凍庫工場で働く作業員ら。シンガポールの製造業は外国人労働者の雇用を制限する規制強化により、深刻な労働力不足に陥っている(ブルームバーグ)【拡大】
シンガポールが深刻な労働力不足に陥っている。人口の高齢化に加え、当局の規制や世論への対応として外国人労働者の雇用を縮小せざるを得ない企業が急増しているためだ。とりわけ製造業へのしわ寄せは大きく、生産能力の低下を食い止める目的での海外移転が相次ぎ、国内の産業空洞化を引き起こすとの懸念が広がる。
◆人手不足響き輸出減
電球のソケットや半導体の製造を手がけるシンガポールのメーカー、アルコテック・プレシジョン・エンジニアリングは昨年、受注のうち3分の1近くを断らなければならない事態に追い込まれた。政府の方針に従い外国人従業員の数を半分に削減した結果、すべての注文に対応できるだけの生産能力が失われたためだ。
同社オーナーのコリン・クア氏は「作業にあたる人員が不足する中で受注を増やせるはずもない。将来の状況は一段と悪化する見通しで、生産拠点の海外移転以外に打つ手はないのではないか」と語った。
シンガポール政府は過去4年間にわたり、企業に対し従業員数の縮小を呼びかけてきた。低賃金の外国人労働者が増えることに対する有権者の不満を念頭に置いたものだが、こうした方針は今年一段と強化される可能性がある。企業の生産能力が大幅に制限される事態となれば、近年の経済回復を支えてきた輸出の伸びにも影響が及ぶことは避けられない見通しだ。
バンク・オブ・アメリカ(BOA)のエコノミストでシンガポール通貨庁(中央銀行に相当)での勤務経験があるチュア・ハクビン氏(シンガポール在勤)は「政府は外国人労働者に対する新たな規制を7月に打ち出す予定だ。誰もが待ち望む製造業の復調も、労働力の制約がネックとなり再び勢いを失うように思える。シンガポールは世界的な需要拡大の波に乗り遅れるのではないか」と不安を隠さない。
昨年のシンガポールからの輸出は11カ月のうち9カ月で減少を記録。韓国やマレーシアといったアジアの国々に後れをとった。ブルームバーグのまとめによれば2013年10~12月期の製造業生産高は前四半期から縮小し、過去2年間の伸びはサービス部門の6割程度にとどまる。
当局がまとめたシンガポールの国内総生産(GDP)に占める製造業の割合は、13年7~9月期で19.9%と2年前の同時期の21%から低下した。05年の比率は27.3%だった。
政府は航空宇宙部門など新たな産業を呼び込むことで製造業の対GDP比を20~25%ほどに維持することは可能だとしているが、従来の労働集約型の生産体制に依存せざるを得ない地元メーカーには外国人労働者削減の影響が重くのしかかる。
◆賃金上昇も経営圧迫
DBSグループ・ホールディングスのエコノミスト、アービン・シーア氏(シンガポール在勤)は「労働力の再編を余儀なくされたことで、製造業全体の競争力がそがれてしまった。生産量の落ち込みだけでなく、従業員の賃金の上昇も各企業の経営を圧迫している」と指摘する。すでにウエスタン・デジタルなど一部の製造業者は、他の東南アジア諸国へ生産拠点を移している。
シンガポール政府は13年11月、同年の輸出が前年を下回るとの見通しを発表。14年の輸出の伸びも、GDP全体の伸びに満たないと予測する。過去30年間で平均6.4%あまりの拡大を記録してきたシンガポールのGDPは13年、3.7%の伸びにとどまった。政府は14年の成長率を2~4%程度とみている。(ブルームバーグ Sharon Chen)